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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
保護組新担任登場と四之宮光の過去
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車に爆弾が仕掛けられていたなんて聞いてないっ!

四之宮が駅に到着した頃、美月は綾小路と担任である飛鳥と共に保護組教室へと向かっていた。

どうして飛鳥も一緒なのかというと、綾小路が宝正の部屋を訪れた際に出てきて「まだ気分が優れない」

とのことでまたしても彼女に会うことが出来なかったのだ。そして美月を迎えに行く綾小路の後ろをつい

ていき現在に至る。正直後ろに担任がいるとなかなか話したいことも話せず、二人は教室に着くまで

終始無言しゅうしむごんであった。



「何もあそこまですることないじゃない」

飛鳥が部屋を出た後、宝正は独り事を呟き、横になっていた身体をゆっくりと起こした。

本当なら今日彼女達に会って昨日のことを謝りたかったのだが、「今日一日、お部屋の中でお過ごしく

ださい」と飛鳥に言われてしまい、仕方なく休むことになったのだ。



昨日の朝、美月と綾小路を先に教室へと行かせて彼と二人きりになった際の会話を思い出す。

『どうして貴方がここに?』

『実は…私、本日から保護組の担任教師として働くことになったのですよ』

『貴方が?新しい担任に?』

『はい』

『…あの人の命令なのね。でないとこんなこと出来るはずがない』

『奏様、落ち着いて聞いてください。私が来たことで、今の状況がどういうものかお分かりかと思い

 ますが…近いうちに、動きがあると思います。そうなった場合、最悪な事態が起こり得る可能性も』

『何よそれ。私関係ないじゃないの!』

『お気持ちは分かります。ですが、あの方達にとって貴女の存在は…『もう良いです。聞きたくありま

 せん!』


HRのこともあったため、飛鳥は宝生との会話をここで終了し保護組教室へと二人で向かって行った

のである。正直、ここで飛鳥と再会するなんて思ってもみなかった宝正。もう二度と会うこともない、

記憶から消し去られていたのに…どうしてこうなってしまったのだろうと。


「本当にどこへ行ってもついて来るのね…あの人は」

宝正はまた独り言を呟いた後、ベッドへと倒れ込んだのであった。


特殊部隊本部のとある部屋では宮木達正隊員が事務仕事を行っていた。

「隼士、ちょっといいか?」

「なに、大庭。またどこか間違ってた?」と作業しながら達己に尋ねる宮木。

「いや、間違ってはいない。それよりどうしたんだ?いつもよりすごく頑張ってるじゃないか」

「それどういう意味?まぁ…苦手だし、そういうふうに見えるかもしれないけどさ」

「すまん。別に責めてるわけじゃないんだ。ただ…ちょっと気になってな」

 そう思っているのは達己だけではなく、他の正隊員達も同じだった。ただ声に出さないだけで…。


「びっくりさせないでよ。…お昼から美月を病院に連れて行くって約束してるから、午前中にやらな

 きゃいけないことは全部済ませようと思ってさ」と達己に話す。だが達己はそれを聞いてある疑問

 が浮かび、それを尋ねてみることに。

「なぜ隼士が一緒に?まさかとは思うが、お前達…「してません。変な勘違いしないでよ」

 病院と聞いて達己が何を思ったのかは予想が付いていた宮木。彼が全部言い終える前にそんなことは

 していないとはっきりと否定する。だがそう思われるのも無理はないのかもしれない。


「吸血鬼に噛まれた後遺症っていうの?その検査結果を聞きに行くんだよ。一人で行こうとしてたから

 僕が車で連れて行くって」

「そうだったのか。確かに隼士が心配になる気持ちも分かる気がする」

「だから頑張って終わらせようとしてるの。先輩も今日から一週間いないしさ」

「なるほど。隼士、ずいぶんと成長したな」

「…それより自分の仕事に戻ったら?育巳が探しに来ちゃうよ」


そう話していると育巳が迎えに来たため、達己は自分の仕事へと戻ることになった。それから宮木は

午前中にやらなければいけない仕事を終わらせるため必死に取り掛かったのである。


そして約3時間後…。

「あぁ~なんとか終わったぁ~」

「お疲れ」

「隼士、のんびりしてる場合じゃないぞ?菊馬を病院に連れて行くんだろ?」

 妹尾との会話を聞いていた達己が宮木に伝える。

「分かってるよ」と倒れていた身体を起こして椅子から立ち上がると、宮木はスマホを取り出して

 美月とのチャットを見る。どうやらまだ授業は終わっていないようで、新着メッセージは届いて

 いなかった。


「…車の準備をしておくか」

「隼士。飯はどうするんだ?」

「コンビニで何か買ってくよ」

「それならいいが…気を付けろよ」

「うん。じゃあ行ってくる」


「…大丈夫かな、あいつ」

「菊馬が付いてるから問題ないだろ。それより遥、俺達と一緒にどうだ?隼士もいないわけだし」

「だから下の名前で呼ぶのやめてくれって言ってるだろ、大庭!」

「妹尾先輩、いい加減諦めてください」と先輩に対して呆れていう育巳。だがそれでも妹尾は諦め

 ようとはしなかったし達己の方も彼の呼び方を変えようとする気は全くなく、しばらくの間その

 話をし続けるのであった。



 妹尾達と別れた後、宮木のスマホに美月からメッセージが届いた。

『こんにちは。授業終わりました』

『じゃあ駐車場まで来て』

『分かりました。ではまたあとで』と短いやり取りをした後、宮木は駐車場へと急いだ。


外へ出て駐車場へ着くと、そこには飛鳥の姿が。

「こんにちは。四之宮チームの宮木隼士様でしょうか?」

「…そうですけど」

「申し遅れました。私、保護組担任教師の飛鳥嗣巳と申します」

「保護組の担任?…あぁ~そういえばそんなこと言ってたな」

 興味なかったから、覚えてなかったけど。


「それで、保護組担任が僕に何か?」

「これから菊馬様を病院に連れて行くんですよね?その車で」

「…そうですけど?何か問題があるんですか?」

「いえいえ。ただこれだけはお伝えしておきたいなと」


「菊馬様からなるべくお側を離れないようにしていただきたい」

「それ、どういう意味?」

「外出する際、お一人だったりすると厄介なことに巻き込まれる可能性がある。…今はそれだけお伝え

 しておきます」

「ちょっと、はっきりと言いなよ!あんたはいったい…「宮木さん」


「どうしたんですか?…飛鳥先生も」

「いえ。少々道に迷ってしまったので、宮木様にお尋ねしてたところだったんですよ」

「あぁ…そうだったんですね」

「菊馬様はどちらに?今はお昼休みのはずですが…」

「これから病院に行くんです。検査の結果を聞きに」

「そうでしたか。お気をつけていってらっしゃいませ」

「あっ…ありがとうございます」

「では、私はこれで」



「宮木さん、大丈夫でしたか?」

「えっ?」

「道に迷ったって先生の嘘ですよね?教えてください、本当は何を話してたんですか?」

「…」


『菊馬様からなるべくお側を離れないようにしていただきたい』

『外出する際、お一人だったりすると厄介なことに巻き込まれる可能性がある。…今はそれだけお伝え

 しておきます』


「…大丈夫だよ。たいしたことじゃないから」

「本当に?」

「うん。それより早く病院に行こう」

「…はい」


彼女に不安を与えるようなことはしたくなかったので、宮木はこの話を黙っておくことに決めた。

だが美月はどうも宮木の言った言葉に納得がいかない様子。だがこんなことで喧嘩するのもどうだろう

と考え、あえて口に出さず助手席へと乗り込んだのである。


宮木の運転で病院へと到着すると、数分後に美月は名前を呼ばれ診察室へと入って行った。

「検査の結果なんですが、吸血鬼能力者に噛まれたことによる後遺症だと思われます。怒りによる

 暴走で爪の成長を促進させ、相手を攻撃する。まだまだこの超能力については分からないことが

 多いので、今はこれだけしか言えませんが」

「そうですか…」


槻ノ木学園の事件から数週間が経過しているが、未だマスコミはその話題から何かを掴もうと必死

らしく、医師は彼女に「他の人に左手の後遺症については話さないようにしてください」と伝えた。

そして一か月に一回は通院し、何かあれば必ず来てほしいとも。現在このことを知っているのは、

熊木を除外すれば宮木ただ一人のみなので、美月は話が済んだ後すぐに知らせることにした。


「宮木さん、お待たせしました」

「お帰り。どうだった?」

「ここではちょっと…外に出てから話します」


 人が多い場所で話せることではなかったため、美月は宮木の腕を掴んですたすたと歩き外へと出た。

 

「すみません。他の人に聞かれるとまずいと思って…実は「待って」

 美月は宮木を掴んでいた手を離そうとすると宮木がそれを阻止する。


「どうしたんですか?」

「…いや。誰かに見られてるような気がして」

「えっ?!」

美月はすぐさまきょろきょろと辺りを見渡すが…。


「特に…不審な人はいませんね」

「気のせいかな?」

「…宮木さん、行きましょう。念のためです」

「あぁ、うん。そうだね…」


確かに不審人物はいなかった。だが、決してそれは宮木の気のせいではない。宮木と美月が車に乗り込

み特殊部隊へと帰るところを一人の怪しい人物が二人が乗った車が消えるまでずっと見続けていた。



「それで、検査の結果はどうだった?」

「…待ってください」

美月は宮木が買ってきたあんパンを食べていたため、急いで飲み込む。


「やっぱり噛まれた後遺症だって。それで、他の人にこのことを話さないようにって」

「数週間経ったとはいえ、吸血鬼能力についていろいろとまだ言ってるしね。正しい判断だと思うよ」

「そうですね…」


吸血鬼能力者の存在はマスコミを通じて人々に知れ渡っている状況で、美月や小森はそれを外で派手

に見せるわけにはいかない。だが幸い、小森にはまりもや蛍のように力を振ることが出来ないので今

のところ問題はないと言える。けれど、もしかしたら…いつか彼も二人と同じようなことになってし

まうのではないかと。後遺症で左手の爪が伸びるだけの自分より、完全なる吸血鬼能力者である彼の方

が心配であると。


「もうすぐ着くよ」

「あっ、はい」


そして特殊部隊に無事到着した。エンジンを切りシートベルトを外し、美月が車を降りようとすると

…ドクン!!と突然彼女の危機回避能力が発動する。美月はすぐに宮木の方へと振り向き、すぐさま

「降りちゃダメ!!」と叫び、彼にしがみついた。


「美月?どうしたの?」

「降りないでください。降りたら…ダメなんです」

美月は今にも泣きそうな声で宮木に伝える。それを見た宮木は「落ち着いて。なんで降りちゃダメなの

?」と冷静に美月に尋ねる。


「降りた瞬間…爆発するんです」

「えっ…」

 爆発する?

宮木は美月が言った言葉を聞き、しばらくの間何も言えなくなってしまう。その様子を見た美月は

「本当です。嘘じゃないです!」と訴えた。能力で危機を察知したのだが、急に爆発すると言われれば

 誰だって混乱するし、すぐには信じられないだろう。美月は必死だった。車を降りようとして扉を

 開けた途端、爆発し二人は吹っ飛んでしまうのだから。


「待って。誰も美月が嘘をついてるなんて言ってないでしょ?でも降りたら爆発するなら、外にいる誰

 かに確認して見てもらう必要があるよね?」

「…はい」


宮木はすぐにスマホを使って妹尾へ連絡。そして数分後には妹尾が柊先生を連れてやって来た。


「あぁ~確かに車の下に爆弾が仕掛けられてるなぁ~」

柊先生が車の下を懐中電灯で照らし、爆弾が取り付けられていることを確認する。


「じゃあ菊馬さんが言っていたことは本当だったと…」

「美月が間違ったことを言うはずないだろ?それよりも…「おい、どうしたんだ?何かあったのか?」

「「うわぁ!?」」

瞬間移動の超能力者、紫野の登場により柊先生と妹尾は驚いてしまう。

「紫野っ!?」

美月は窓から紫野の姿を確認して叫ぶが、紫野には届いていないようで見向きもしなかった。


「さっきから車の下見てっけど…何かあったのか?」

「柊先生、これならいけますよ!」

「いやぁ~これで爆弾を解除せずとも二人を救出できる」

「…えっ?」

紫野は訳が分からなかったが柊先生に事情を聞いた後、瞬間移動で二人を扉を開けず無事に救出する

ことが出来たのである。


「紫野、ありがとう。助かったよ」と両手を握ってお礼を言う美月に「いや…これぐらい良いけどよ」

 と少し頬を赤く染めて目を逸らす紫野。

「瞬間移動ってこういう時役に立つよね。脱出とかさ」

「それよりさ。なんで車に爆弾なんて仕掛けられてたんだよ?」

「それは僕達が聞きたいよ。病院へ行った時はなんともなかったのに」

「ふむふむ。なるほど」

「でも、いったい誰がこんなことを…」

「とりあえず、この爆弾を解除しないとな。…美月」

「えっ!?私がやるんですか?」

「大丈夫だ。お前には危機回避能力がある」

「…はーい」


「柊先生、何かあったんですか?」

「あぁ~飛鳥先生。実は、宮木君と美月が乗っていた車に爆弾が仕掛けられてましてね~」

「爆弾ですか?」

「えぇ。それで今美月が爆弾を解除してるところです」

「菊馬さんが爆弾解除を?大丈夫なのですか?」

「問題ありません。美月は危機回避能力者で、自分の身の危険を察知することが出来ますし爆弾解除

 は何度も経験していることですから」

「…そうですか」


飛鳥は保護組の担任教師なので、美月の危機回避能力者だということは知っている。だが、彼女が

ここまで出来るとは思っても見なかったのであった。



それから数分後、美月は車に取り付けられていた爆弾を解除することに成功したのであった。



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