槻ノ木学園秘密研究所とはいったいなんなのか…
「それで、槻ノ木学園へ行くのは良いけど、どうやって行くの?まさか正面から行こうってわけじゃ
ないわよね?」
「ええ。正面から行きますよ」
何を変なこと聞いてるの?と言うかのように陽子は美月に変な顔をする。美月はこの返答に驚く。
「ちょっと待ってよ。正面から堂々と行くの?このままで?」
「そんなに心配しなくて大丈夫よ、美月ちゃん。入りやすいように綺麗に掃除はしてありますから」
「綺麗に…掃除?」
「行けばわかりますよ」
陽子の後に付いていく形で美月は槻ノ木学園へと向かっていく。途中で知り合いに会ったらどうしよ
うかと緊張していたが、幸いなのかそれとも陽子が未来予知で会わせないようにしていたのか特殊
部隊の知り合いに会うこともなく槻ノ木学園へと無事到着する。
「美月ちゃん、これが綺麗に掃除したということです」
「『綺麗に掃除』って、そういうことだと思ってたよ…どうして殺しちゃうのさっ!」
「話し合いで通してはくれないでしょ?そんなことも分からないの、美月ちゃん?」
「気絶させるって言う手もあるでしょ!?」
「はいはい。済んだことは仕方がない。それより早く行きましょう、皆さん待ってますから」
「ちょっと、まさか学校の生徒まで手を出してないよねっ?」
「…さぁ?」
「さぁ?!さぁって何?まさか…「それはあの二人に聞かないと分からないのでその質問には
お答えできません。それよりも早く行きましょう」
陽子は美月の左手首を掴み、蛍達のいる職員室へと向かって行ったのである。
「遅れてしまって申し訳ありません。久し振りに妹と話したので遅くなっちゃいました」
「ご主人様、来るの遅すぎっ!まりも待ちくたびれちゃいましたよ!」
「ごめんなさいね、まりもちゃん」
職員室にいたのはまりも、蛍、そして有村先生の三人。だが美月は中に入るとすぐに井上の遺体を
目の当たりにして、周りを見渡すと蛍が殺した教師達の遺体があり驚いていた。
「蛍さん、貴方ですか?これをやったのは」
「はい」
「貴方もそこにいる子と同じ…吸血鬼能力者ってわけ?」
「そうです。ですが、そちらにいる男性は無能力者。この学校で教師をしている有村先生です」
「教師?…この人達は殺しておいて、どうしてこの有村って先生は生かしたの?」
「本当ならそこにいる井上先生も連れて行く予定だったのですが…「申し訳ありません」
陽子が蛍をちらっと見た瞬間、蛍はすぐに謝罪する。その後、有村先生が付け加えるかのように
美月に話し始める。
「彼は私を助けようとしたんだ。それで真嶋に…そこにいる男に殺されてしまったんだ」
「まぁ、とりあえず行きましょうか。槻ノ木学園秘密研究所へ」
「秘密研究所?」
「槻ノ木学園の秘密基地兼研究所です。それは井上先生と有村先生と数名の教師・科学者しか存在
を知りません。なので、二人にはその場所への案内係をしてもらいたいたかったのです」
だが、有村先生を助けようとした井上先生は蛍によって殺され、有村先生が残ったというわけだ。
しかし…。
「その秘密基地兼研究所ってやらをどうして貴女が知ってるの?」
「それは…「ご主人様、そろそろお時間です」
「分かりました。では、邪魔が入らないように『掃除』お願いしますね」
「「かしこまりました、ご主人様」」と二人が職員室を出て行く姿を見て美月は陽子に尋ねる。
「掃除ってまさか陽子…」
「貴女の手紙でお友達が四之宮さんと連絡を取ったようです。もうすぐこちらに到着する頃かと」
「えっ?何の話?」
瀬楽と霜月に向けた手紙。あれは美月が着替えている間に、陽子が筆跡を真似して書いたもの。
とは言っても誰もそんな細かく見ているわけではないので、ただ書くだけで「これは彼女が書いた
手紙」だと勝手に錯覚する。それを見抜けるとしたら筆跡鑑定か、もしくは彼女のことを良く知る
人間でないと分からないかもしれない。
「そのままですよ。とにかく四之宮さん達に邪魔をされたくないので、まりもちゃんと蛍さんには
しばらくの間相手をしてもらいます。大丈夫ですよ、この人達のように簡単には死なないはずで
す。私の未来予知では、ね?」
「未来予知だと…ということは君はやっぱり星野の娘なのか?」
すると今まで黙っていた有村先生が陽子に尋ねる。どうやら星野先生…美月と陽子の父親のこと
を知っているらしい。
「えぇ。私達は貴方の知っている星野の娘です。ですが…その話はもう過去のことです」
「「えっ?」」
過去の話とはいったいどういう意味なのだろう?美月と有村先生は同時に同じことを考えて
陽子を見ていた。
「星野陽子は過去の話。今の私は…神野陽子なのです!」
「かっ…神野陽子?」
「ちょっと陽子。ふざけるのはやめなさいよ」
「ふざけてなんていないわよ、美月ちゃん。私は一度死んだ。そして生き返ったことによって星野
から神野になっただけのこと。それだけです」
「余計意味が分からん!もういい加減教えなさいよ、どうして死んだのに生きてるのかを!今すぐ
この場で教えなさいよ、神野陽子!!」
これを中二病というのだろうか?美月も似たようなものだが、陽子の方がかなり重症と思われる。
「はぁ…仕方ないですね。では秘密研究所に向かうとしましょう。そこですべてをお話します」




