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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
要恵と吸血鬼能力者
145/362

槻ノ木学園に侵入する吸血鬼能力者


 「はい…そうなんです。菊馬がいなくなりました。手紙には槻ノ木学園に行くって書かれていて…

  はい。…分かりました、お願いします」

 「隊長。四之宮さんなんだって?」

 「今から槻ノ木学園へ向かうそうだ。宮木さんにも伝えるって」

 「ふむ。でも、槻ノ木学園に行ってどうするつもりなんだろうな菊馬は」

 「いや…たぶん、自分の意思で行ったんじゃないと思う」

 「…今の俺達は何も出来ないけど、黒澤達に伝えることは出来るぞ?隊長」

 「あぁ。そうだな」

 「チャットにする?それとも…「電話だ」

 


 

 「何?菊馬がいなくなった?」

 霜月が電話をした相手は岸本だった。スマホを持っているのは、美月、瀬楽、霜月を除けば黒澤と

 岸本の二人のみ。なので霜月は岸本を選択したのである。


 「分かった。僕達も今から向かう」と岸本は霜月との電話を切る。

 「おい岸本、どういうことだよ?美月がいなくなったって」

 「分からない。だが槻ノ木学園に向かうと置手紙を残していたらしい。そこに行けば菊馬に会える

  はずだ」

 「槻ノ木学園に?いったいどうして…」

 「だから分からないと言ってるだろ?何度も言わせるな」

 「すっ、すみません…」

  恵は岸本に睨まれて、身体を縮ませる。


 『美月…』

 「大丈夫よ。隊長は理由もなくいなくなったりはしないわ。私達も行きましょう、槻ノ木学園へ」

 


 そして槻ノ木学園ではまりもと蛍が侵入しひと仕事をしていた。

 『まりも、そっちはどうだ?』

 『OKよ。片付けたわ』

 『よし。後はご主人様が来るのを待つだけだが…』

 『えぇ~まだ待つの?』

 『まりも』

 『…分かったわよ。待ちます!』

 

 「どっ、どういうつもりだっ。真嶋君…これはいったい」

 「見ての通りですよ、先生。俺達は警察と特殊部隊の目を遠ざけ槻ノ木学園へ侵入した」

 「だからと言って…こんなっ」

  蛍と話している教師は目の前の光景に涙を流した。なぜなら蛍が職員室に侵入した際、一人の

  男性教師が「おい、あんたいったい誰だ?いったいどうやって…」と尋ねた瞬間、鋭い爪で腹部

  を刺されてその場で倒れてしまう。中には女性教師もおり男性教師が倒れたのを見て悲鳴を上げ

  ようとしたが、蛍の手によって何も上げず倒れ、数名いた教師はこうして蛍によって次々と殺され

  ていったのである。

 「血を見るのは初めてじゃないでしょう?ぎゃーぎゃー騒がれたりすると面倒だったので、静かに

  させました。俺が話したいのは井上先生と有村先生だけですから。…いますよね?有村先生。

  まだまだ現役のはずですよ?」


 「だっ、だがここにはいないっ」

 「じゃあ呼び出してください。待ってますので…もし呼べないならこのことを知らない生徒や他の

  教師達を仲間に…「分かった!今から呼ぶから、それだけは勘弁してくれっ」

 「ではお願いしますね」


 井上先生はすぐに校内放送を掛けた。そして蛍の言う通りに有村先生を呼ぶのだが…

 「逃げてください!真嶋蛍が来てます!早く逃げ…ぐわぁあああああああー!!!???」

 『まりも、有村先生を探せ』

 『えぇ~』


 「有村先生、今の…」

 「真嶋蛍って誰?」

 「っていうか、井上先生すごくない?」

 「なんか刺されたみたいな声だったよ、あれ」

 「大丈夫かな?」と生徒達が騒ぎ始めた。そんな生徒達に有村先生は「まさか…そんなはずは」と

  独り言を呟いていると、そこへまりもが教室の中へと入ってきて声を掛ける。


 「有村先生って貴方?」

 「っ!?君は…まさかっ」

 「腹黒ほたるから頼まれたの。一緒に来てくれるわよね?」

 「えっ…」

 「出ないと…分かってるわよね?」とまりもは右手の鋭い爪を有村先生に見せる。それを見た他の

  生徒達はおもしろ半分でまりもにちょっかいを掛ける。

 

 「うわぁ~すげぇ。なんだあの爪」

 「本物か?」

 「偽物だろっ。どうせ」

 「静かにしろー!!」

 普段滅多に怒鳴り声を上げない有村先生を見て、騒いでいた生徒達は一瞬で静まる。


 「…分かった。言う通りにする。だから、生徒に手を出さないでくれ」

 「ふふっ、OK~。じゃあ行きましょう」

 「皆すまないがここにいてくれ。あと、教室の外には絶対に出ないように」

 有村先生は生徒にそう言った後、まりもと一緒に教室を出て行った。


 「教えてくれ。君は…いったい誰なんだ?どうしてこんなことを」

 「暇つぶしよ、ひ・ま・つ・ぶ・し」

 「とぼけないでくれ。君や…真嶋蛍は私達に復讐するために来たのだろう?」

  有村先生はこの二人が学校に来た目的を分かっていた。だがまりもはそれを聞いてふと立ち止まり、

 「…私、何も知らないわ。ただ蛍の言う通りに従ってるだけよ」と言うと再び歩き出す。

 

 

 「お久し振りです。有村先生」

 「真嶋…お前、なんてことを」

 「井上先生は生かしておくつもりでした。けど、有村先生を逃がそうとしたので」

 「馬鹿者めっ」

 有村先生は蛍に殺された井上先生を見て少しだが涙を浮かべた。


 「蛍~ご主人様はま~だぁ~?」

 「もうそろそろ来るはずだ。それまで我慢してろ」

 「えぇ~」

 「まりも」

 「…分かったわよ~待つわよ」

 「まりも…じゃあ君は「有村先生もしばらくの間ご辛抱してください。もうすぐ俺達のご主人様が

  来るので」

 「あっ…あぁ…」


 有村先生は蛍にそう言われた後、まりもを黙ってじっと見つめていた。

 

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