槻ノ木学園に侵入する吸血鬼能力者
「はい…そうなんです。菊馬がいなくなりました。手紙には槻ノ木学園に行くって書かれていて…
はい。…分かりました、お願いします」
「隊長。四之宮さんなんだって?」
「今から槻ノ木学園へ向かうそうだ。宮木さんにも伝えるって」
「ふむ。でも、槻ノ木学園に行ってどうするつもりなんだろうな菊馬は」
「いや…たぶん、自分の意思で行ったんじゃないと思う」
「…今の俺達は何も出来ないけど、黒澤達に伝えることは出来るぞ?隊長」
「あぁ。そうだな」
「チャットにする?それとも…「電話だ」
「何?菊馬がいなくなった?」
霜月が電話をした相手は岸本だった。スマホを持っているのは、美月、瀬楽、霜月を除けば黒澤と
岸本の二人のみ。なので霜月は岸本を選択したのである。
「分かった。僕達も今から向かう」と岸本は霜月との電話を切る。
「おい岸本、どういうことだよ?美月がいなくなったって」
「分からない。だが槻ノ木学園に向かうと置手紙を残していたらしい。そこに行けば菊馬に会える
はずだ」
「槻ノ木学園に?いったいどうして…」
「だから分からないと言ってるだろ?何度も言わせるな」
「すっ、すみません…」
恵は岸本に睨まれて、身体を縮ませる。
『美月…』
「大丈夫よ。隊長は理由もなくいなくなったりはしないわ。私達も行きましょう、槻ノ木学園へ」
そして槻ノ木学園ではまりもと蛍が侵入しひと仕事をしていた。
『まりも、そっちはどうだ?』
『OKよ。片付けたわ』
『よし。後はご主人様が来るのを待つだけだが…』
『えぇ~まだ待つの?』
『まりも』
『…分かったわよ。待ちます!』
「どっ、どういうつもりだっ。真嶋君…これはいったい」
「見ての通りですよ、先生。俺達は警察と特殊部隊の目を遠ざけ槻ノ木学園へ侵入した」
「だからと言って…こんなっ」
蛍と話している教師は目の前の光景に涙を流した。なぜなら蛍が職員室に侵入した際、一人の
男性教師が「おい、あんたいったい誰だ?いったいどうやって…」と尋ねた瞬間、鋭い爪で腹部
を刺されてその場で倒れてしまう。中には女性教師もおり男性教師が倒れたのを見て悲鳴を上げ
ようとしたが、蛍の手によって何も上げず倒れ、数名いた教師はこうして蛍によって次々と殺され
ていったのである。
「血を見るのは初めてじゃないでしょう?ぎゃーぎゃー騒がれたりすると面倒だったので、静かに
させました。俺が話したいのは井上先生と有村先生だけですから。…いますよね?有村先生。
まだまだ現役のはずですよ?」
「だっ、だがここにはいないっ」
「じゃあ呼び出してください。待ってますので…もし呼べないならこのことを知らない生徒や他の
教師達を仲間に…「分かった!今から呼ぶから、それだけは勘弁してくれっ」
「ではお願いしますね」
井上先生はすぐに校内放送を掛けた。そして蛍の言う通りに有村先生を呼ぶのだが…
「逃げてください!真嶋蛍が来てます!早く逃げ…ぐわぁあああああああー!!!???」
『まりも、有村先生を探せ』
『えぇ~』
「有村先生、今の…」
「真嶋蛍って誰?」
「っていうか、井上先生すごくない?」
「なんか刺されたみたいな声だったよ、あれ」
「大丈夫かな?」と生徒達が騒ぎ始めた。そんな生徒達に有村先生は「まさか…そんなはずは」と
独り言を呟いていると、そこへまりもが教室の中へと入ってきて声を掛ける。
「有村先生って貴方?」
「っ!?君は…まさかっ」
「腹黒ほたるから頼まれたの。一緒に来てくれるわよね?」
「えっ…」
「出ないと…分かってるわよね?」とまりもは右手の鋭い爪を有村先生に見せる。それを見た他の
生徒達はおもしろ半分でまりもにちょっかいを掛ける。
「うわぁ~すげぇ。なんだあの爪」
「本物か?」
「偽物だろっ。どうせ」
「静かにしろー!!」
普段滅多に怒鳴り声を上げない有村先生を見て、騒いでいた生徒達は一瞬で静まる。
「…分かった。言う通りにする。だから、生徒に手を出さないでくれ」
「ふふっ、OK~。じゃあ行きましょう」
「皆すまないがここにいてくれ。あと、教室の外には絶対に出ないように」
有村先生は生徒にそう言った後、まりもと一緒に教室を出て行った。
「教えてくれ。君は…いったい誰なんだ?どうしてこんなことを」
「暇つぶしよ、ひ・ま・つ・ぶ・し」
「とぼけないでくれ。君や…真嶋蛍は私達に復讐するために来たのだろう?」
有村先生はこの二人が学校に来た目的を分かっていた。だがまりもはそれを聞いてふと立ち止まり、
「…私、何も知らないわ。ただ蛍の言う通りに従ってるだけよ」と言うと再び歩き出す。
「お久し振りです。有村先生」
「真嶋…お前、なんてことを」
「井上先生は生かしておくつもりでした。けど、有村先生を逃がそうとしたので」
「馬鹿者めっ」
有村先生は蛍に殺された井上先生を見て少しだが涙を浮かべた。
「蛍~ご主人様はま~だぁ~?」
「もうそろそろ来るはずだ。それまで我慢してろ」
「えぇ~」
「まりも」
「…分かったわよ~待つわよ」
「まりも…じゃあ君は「有村先生もしばらくの間ご辛抱してください。もうすぐ俺達のご主人様が
来るので」
「あっ…あぁ…」
有村先生は蛍にそう言われた後、まりもを黙ってじっと見つめていた。




