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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
要恵と吸血鬼能力者
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永友まりもと真嶋蛍

 翌朝。とある場所のある部屋に、一人の少女がピンクのソファーですやすやと寝ていると男が彼女を

 起こしに部屋の中へと入って来た。

 「おい、起きろよまりも」と少女の肩をぽんぽんと叩く。  

 「うぅ…まだ眠い」

 「せっかくの朝飯が覚めるだろ?良いから起きろ」

 「…は~いっ」と少女は仕方なく、重い身体を動かして今日も男によって目を覚ますのであった。

 

 永友ながともまりも。特殊危険能力系超能力者で吸血鬼能力を持つ15歳の少女。特徴は黒髪で

 肩までかかるツインテールと、クリクリっとした大きな可愛らしい目である。

 

 真嶋蛍まじまほたる。特殊危険能力系超能力者、吸血鬼能力を持つ25歳の男性。

 まりもの家庭教師兼召使い兼保護者的存在。ちなみに召使いについてはまりもが勝手に言っている

 だけであり、本人は召使いを断固否定している。


 「ねぇ、腹黒ほたる~」

 「…なんだ。毛むくじゃら」

 「その呼び方やめろって!」

 「お前が言い出したんだろう?それで、なんだよ?」

 「私達いつまでこんな場所にいなくちゃいけないわけ?ぼろぼろだしさ~。お金あるからもっと良い

  場所にお引越ししようよ?」

 「それは俺じゃなくてご主人様に言ってくれ」

 「っていうか~結局あれから何の連絡もなしよね~。まぁ、自由だから良いけどさ」

  その間に街に出かければ丸一日潰れるし~とまりもは舌をペロリとする。


 「まりも、お前は補導されるから今日も俺が行く」

 「嫌よ!昨日はあんなのだったんだから今度は自分で探しに行く!補導が怖くて吸血鬼やってられ

  るかっつーの!」

 「俺達吸血鬼能力はあっても、本物じゃないんだぞ?」

 「分かってるわよ!とにかく私は行くっ。自分好みのイケメンを見つけてお持ち帰りするの!」

 「まりも、頼むから『お持ち帰り』って言うのだけはやめてくれ」

  いやらしく聞こえるからと蛍はまりもに言うのだが、まりもは機嫌悪く次のように言う。

 「じゃあなんて言えばいいのよ?TAKEOUTテイクアウト?」とわざとなのか本気で間違え

  たのかは分からないが、英語に直しただけで意味は全然変わらず蛍は「テイクアウトも同じ意味だ

  よ」と彼女に呆れながらも突っ込みを入れる。


  本物の吸血鬼であれば昼間から平和に会話することは不可能で、日に当たれば消滅してしまう言わ

  ば自殺行為と同じ。あと今日の朝食はペペロンチーノで、この中には少量のにんにくが含まれてい

  るのだが、二人は平然と食べている。能力がそうであるからと言って、吸血鬼と同じ弱点を持ち合

  わせているとは限らないのだ。ただし、能力の代償と欠点を除いては別で。


 「ごちそうさまでした」とちゃんと手を合わせるまりもはすぐに立ち上がる。

 「どこへ行く気だ?」

 「決まってるでしょ?外よ、そ~と」

 「俺は行かないからな?厄介事に巻き込まれたら自分でなんとかしろよ?」

 「べーだ!分かってますよーだ。じゃあね~」

 まりもはすっかりご機嫌斜めの状態。蛍にあっかんべぇをして、すぐに扉を閉めて外へと出かけてし

 まう。足跡が聞えなくなったところで、蛍は一度深い溜め息を付いた後に自分と彼女の分の皿を重ね

 て「洗い物でもするか~」と自分も部屋から出て行ったのであった。


 

 「本当、腹黒ほたる。見てなさい…私の方がとびっきりの大物をゲットするんだから」

 外に出たまりもは、蛍をぎゃふんと言わせる方法・作戦を考えていた。しかし彼女達はまだ住んで

 間もないために、あまり派手な行動は出来ない。蛍が言っていたように補導されたりでもしたら

 彼女的にまずいので、避難経路を作らないといけないのだ。細くて人気の少ない場所にいけばこっち

 のもので、相手が足を止めた瞬間を狙えばあとは簡単にちょちょいとするだけ。


 「でもどうしよっかな~。私は蛍みたいにいろいろと使いこなせないから、それなりにやらないと

  すぐばれちゃうし」

  蛍はまりもよりも年上なのだから当たり前のこと。彼女が一般の学校に通っていない理由もその

  一つで、蛍からいろいろと吸血鬼能力のことを教えてもらっている。だがそれは決して当たり前で

  はなく、彼女の環境が良かっただけのことなのだ。誰もがまりものように恵まれてはいない。


 「どうしよっかな~どうしよっかな~?どうし・どうし・どうしよっか~な…ぎゃあ!?」

 「あっ、ごめん!」

 

 考え事をしながらぐるぐると回っていたせいで、人が飛び出して来ることに全く気が付いていなか

 ったまりもは高校生と思われる少年とぶつかってしまう。

 「…もう、気を付けなさいよ!」

 「ごめん。急いでたから…本当にごめんねっ!」と少年はまりもに謝罪してすぐに走り去ってしまう。

 

 「何よ。あんなに慌てちゃって…」

 それにこんな可愛い美少女に見向きもしないだなんて、よほど目が節穴なのね。と、まりもは回復 

 していた機嫌が逆流してどんどん不機嫌になっていった。結局その日の収穫はなく、蛍に任せる形で

 手ぶらで帰って来たのだった。


 「本当に、なんなのよ!人にぶつかっておいて!」

 「俺に八つ当たりするなって。謝ってたんだろ?それなら別に怒ることないじゃないか?」

 「この私を見て全然ときめきもしなかったのよ!?」

 「急いでたからナンパしてる暇もなかったんだよ、きっと」

 「だと良いけど」


 夕食のチキンライスを食べながら蛍に朝起きた出来事を話すまりも。

 「どんな奴だったんだ?」

 「背は私よりも高くて、髪はクリーム色。服は緑色の上着で胸元のポケットに模様が付いてたわ」

 「それ模様じゃなくて刺繍ししゅうだ。多分高校生だろ」

 「こうこう…なにそれ?」

 「だよな。お前、学校行ったことないもんな?」

 

 事情があり、まりもは学校という存在を知らない。いや、何度か街中で見たことはあるかもだが、興

 味がなく制服というファンションの一つとして捉えていたために気にも留めていなかったのである。

 それが今…解き放たれようとしていた。


 「そういう蛍は行ったことあるの?学校」

 「…あるけど昔の話だ。ほとんど覚えてない」

 少し間を空けてまりもに答える蛍。

 「そうなんだ~良いなぁ~」と羨ましそうに言うまりもに、まさかと思い蛍は彼女に尋ねてみる。

 「お前…まさか学校へ行きたいとか言わないよな?」

 

 蛍の言葉にまりもは身体をビクッとさせる。それを見た蛍は図星だと確信し、いつもより低く冷たい

 声で彼女に話すのだ。

 「やめておけ。あそこは俺達にとっては地獄と同じ場所だ。下手をすれば何されるか分からないぞ?」

 「それって、腹黒ほたるでも敵わないものなの?」

 「あぁそうだ。だからお前は学校になんか行かなくていい」

  勉強とか能力に関しては俺が教えてやる。と蛍はいつにも増して真剣な顔でまりもに告げる。どう

  やら学校というものは彼にとって何かあると睨んだまりもはあることを思いつき、「分かったわ。

  絶対に学校には行かない」と蛍に告げて残っていたチキンライスを一口で食べ終えるとすぐにソフ

  ァーへと座り込んだ。

 

 な~んちゃって。腹黒ほたるがそこまで言う学校とやらに、明日ちょっと遊びに行ってきちゃお~っ

 と!

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