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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
未来を変えた後
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吸血鬼王子様のやきもち

  あれから数日が経ち、四之宮は警察署へ行き日影と話をしていた。

 「教えろ。なんで俺の記憶を奪ったんだ?」

 「それより、ここは警察だろ?なんでお前がここにいる?」

 「黙秘を続けていると聞いたからだ。あと菊馬に「四之宮さんの言うことなら聞くかも」と言われて

  な」

 「ちっ。あの小娘…余計なことを」 

 「何か言ったか?」

 「独り事だよ。悪いがお前にも話す気はないから、とっとと特殊部隊に戻れ」

  俺は何も話さないぞ。と頑固として口を開こうとしない日影に、困ったなと頭を悩ませる四之宮。


  そんな助言をしてくれた美月だったが、陽子が死に絶望してから身体の様子がおかしくなっていた。

  毎晩のように陽子が死んだ時の映像が流れ、それを見る度に夜中に目を覚ましての繰り返し。その

  日の夜も…。


 「…くそっ。また同じ夢だ」

  いったいどういうことなんだろう。これは悪夢というやつ?何か訴えてるのか?

  これは陽子のメッセージ?死んだ時の映像が何度も出るって、何か意味が…。美月がそう考えてい

  いると、インターホンがピンポーン~と鳴る。

 

 「…誰だろ?こんな時間に」

 美月はベッドから出て玄関へと向かい、テレビモニターを見てからすぐに扉を開けると小森がすぐに

 顔を出した。

 「どうしたの、夜月?まだ夜中だけど…」と話掛けるがいつものようにノートとペンを持っておらず

  美月の部屋の中へと入って行く。訳が分からず、もう一度聞こうとするが、その前に小森は彼女の

 首元に口を近づけてガブッと噛んだ。だが、いつもより力が入っているせいか美月は「ゔぁっ!?」

 と変な声を上げてしまう。それに血を吸うのも少し長く感じて、彼はようやく美月を解放した。美月

 は噛まれたところを右手で押さえて玄関で座りこみ、痛みが引くのを黙って待っていると彼は声を

 掛けた。


 「美月、痛い?」と美月の隣に座り尋ねてくる小森に、「痛いわよ。…強く噛みすぎたんじゃないの

  ?」と美月がきつく当たると「ごめんね」と小森は美月を軽く抱きしめて、頭を優しく撫でた。

  宮木の時もそうだったが、もう拒否反応を起こすことはなくなっている。でも、もしかしたら

  また元に戻るかもしれない。同じことをすれば…。

 

  

 「美月、同じ夢見てこの時間帯に起きてるんでしょ?」

 「えっ…どうして知ってるの?」

  まさか、また先生が盗聴器を仕掛けているんじゃ…と美月は不審物がないかどうかをその場で、

  見れる範囲で確認し始めるが、どこにもそんな物はない。小森は美月から身体を離して、あること

  を告げた。


 「少しだけど…僕、美月のことなら分かるみたいなんだ。たぶん…予知だと思う」

 「えっ?」

 「いつも美月に血をもらってるせいもあるかもしれない。吸血鬼能力は血を吸った相手の能力が使え

  るから…」

 「でも私のは予知でも危機回避で、自分の身の危険しか…あっ」

 

 美月は思った。小森は自分のことを大切に想っていることに。だけどそれだけじゃなかった。自分の

 能力は使い方次第で他の人間の危機を助けられる可能性があるということにも…。

 「僕は自分のことよりも、美月が大切なんだ。だから美月の危機に反応するっていうのもおかしく

  ないって…僕はそう思ってるんだけど、おかしいかな?」

 「おかしいだなんて…そんなことないよ」

  そう。そんなこと…絶対にない。


 「だから僕に頼ってほしいんだ」

 「えっ?」

 「…宮木さんみたいに上手く出来ないけど、僕だって美月を助けたいんだ」

 「夜月?」

  なぜここで宮木さんが出てくるんだ?と美月は不思議に思った。

 

 「怖いんだ。分かってはいたけど…でも、やっぱり嫌だ。美月を…取られたくないって」

 「取られるって…大丈夫だよ。私は誰のものにもならないよ?宝正さんみたいに美人じゃないし、

  綾ちゃんみたいに可愛くない普通の女子だからさ」

  自分が誰かのものになるなんて考えられなかった。こうして親しくしてくれている友達や自分に好

  意を持ってくれる人がいたとしても…。小森が不安に感じてしまうのは、もしかしたら友達を他の

  友達に取られてしまうことと同じものなのかもしれないと美月は考えていたが、美月のネガティブ

  発言に小森は否定する。


 「そんなことない。美月だって十分可愛いよ!優しいし、料理上手だし、世話焼きだし」

 「いや世話焼きはその…たぶん違う」

 「それでもいい。とにかく僕は美月を誰かに取られるのが嫌なんだ…宮木さんにも触れてほしくない」

 「宮木さんはホットケーキ病なだけだよ。カウントしちゃだめ」

 「ホットケーキ病だっていつかは治るでしょ!?治って本当に好きになっちゃったらどうするの?」

 「えっ…」


 この子、もしかして信じちゃってる?ホットケーキ病。でも本人の口からは一生治らないって宣告

 されちゃってるんだよね~と美月は思う。それにこれはよくある話で、いくら友達でも彼女と二人

 きりはダメだし、電話もダメ、連絡もダメだと言われているようなもの。あと、触れてほしくないと

 言われると完全孤立化してしまうのだが、彼はそのことを理解しているのだろうか?美月は彼のこと

 が段々と心配になってきた。お姉ちゃん気分ではないが、もしそうならほっとけないと考える美月に

 小森は先程の続きを話し始める。


 「宮木さんはあれでも僕達より大人だし、本気になればそのうち無理やりにでも自分のものにしそう

  じゃない」

  小森の口から宮木のことを「あれでも大人」という言葉を聞いて、美月は少しばかり同意してしま

  う。何度も何度も繰り返し思うし、頭で理解していても…宮木隼士が大人には見えないし思えない

  のであるが、それでも美月は彼をフォローする。

  

 「そっ、そうかな?」

 「そうだよ!」

 即答されてしまった。そういえばいつか忘れたけど、怪力での脅迫と金で買収をしようとしていた

 ような…。

 

 「とにかく。私は誰のものにもならないから、心配しなくて大丈夫だよ」

 「…本当に?」

 「本当に本当だよ!」

  安心させようと必死に大きな声ではっきりと答えると、小森は少し間を空けて「じゃあ…約束だよ

  ?もし破ったら、僕の言うこと何でも聞いてもらうからね」と先程の暗い顔からいきなり眩しい笑

  顔で変わって言うものだから、美月は身体は電気が走ったかのようにブルブルと震えてしまう。


 「えっ…何?その王子様から冷酷な王様キャラになったようなセリフは…」

 「美月、冗談だよ。冗談」

 「いやいやその笑顔で冗談って言われると、ますます信じられないんですけど…」

  真剣な顔されても困るけど、笑顔もある意味怖いことに気がついた美月。こいつは本気なんだと、

  本能的に感じ取り無意識に警戒体勢を取っていた。でも彼は敵ではないので距離を取ることはしな

  かったが…。


 「じゃあ僕帰るね」と小森は立ち上がると美月も「あぁ…うん。おやすみな…」と言いながら立ち

 上がろうとする。だが、「さい」と言い切る前に小森が突然急接近し、左頬に唇を落とした。危機回

 避能力は発動しないので美月は目を見開き、顔を真っ赤にして硬直してしまう。くっついていたの

 はそんなに長くはなく、すぐに離れ美月の目を少し見つめた後「おやすみ」と告げて小森はすぐに彼

 女の部屋を出て行った。美月はしばらくの間、玄関で一人ぼーっとし左頬を手で押さえたまま…。


 「…くそっ。またやられた」と悔しそうに独り言を呟くのであった。



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