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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
未来予知の姉と危機回避能力の妹
122/362

未来人が来たことによってころころと変わっていた未来予知

 

 「美月ちゃん…私と一緒に世界を変えませんか?」

 「…はぁ?」


 世界を…変える??? 


 「どういうこと?」

 「私達二人でこの世界を変える、そのままの意味です」

 「分かりません」

 「仕方がありませんね。では小さな子供でも分かりやすいようにご説明しましょう」

 「何もそこまで言ってないんだけど…」


  絶対にバカにしてるこの女。


 「私は生まれつき『未来予知』と言われる能力を持って生まれてきました。それもあって、私はあり

  とあらゆることを悩まずに卒なくこなしてきた…いわゆる何でも出来る子でした。一人じゃ何も

  出来ない美月ちゃんと違ってね」

 「喧嘩売ってるの!?」

 

  美月は陽子の近くまで来て、彼女の胸ぐらを掴んだ。昔の自分そっくりな顔と声でそんなことを

  言われると他人に言われた時よりも腹が立ち、いつもなら黙って聞いているだけなのに声がさっと

  出て、手も出してしまう。これが姉妹というものなのかは、よく分からないものだが…。

 

 「ですが、何でも出来る子もそんなに良いものではありません。簡単に言うならば…」


 『あいつ頭も良いし運動も得意だけどさぁ~なんかつまんねぇよな~』

 『全然喋んないしな』


 「例え勉強や運動が出来ていても、コミュニケーション能力がなければ出来る子でも仲間外れにされ

  ることがある。趣味や思考…この現代社会で生き延びるには、頭が良いだけではやっていけない。

  良い大学に入ったからとはいえ、将来安定した職業や優雅な生活が約束されたわけじゃない。ただ

  履歴書に載るだけの存在にすぎないのよ!」

 「確かに…おっしゃる通りだわ」


 「相手に合わせて笑顔を振りまいたり行動したり…未来予知の超能力を持つのは結構大変なのよ。

  貴女とは違ってね」

  美月は言葉が出なかった。

 

 「そして考えるようになったのです。どうして私は生きてるのかって…どうしてこんなに苦しい思い

  をしないといけないのかって。考え出すと頭がおかしくなりそうだった。夜は全然寝られずに睡眠

  不足になった」

 「あの…そろそろ世界を変えることの意味を教えてくれない?話が長いよ」

 「それを今から話します。ある日の放課後、私は一人で学校の図書室を利用していました。その時に

  偶然見つけたのです。とある超能力者が戦争を起こしたことが書かれていた本をね」

 「えっ?そんな本が一般の学校の図書室に?」

 

  一般の小中学校にそんな本が置いてあるとは限らないと美月は考える。だが可能性はゼロとは言え

  ない。


 「その本を読んで当時の私の将来の夢は『世界征服』に変わったのです」

 ちなみにその本を読むまで陽子の将来の夢は『世界の人々を救う人間になる』だった。まとめれば

 『世界平和』が『世界征服』へと変わってしまったのである。だが彼女の夢は世界征服から別のもの

 へとまた変わってしまう。


 「でも今は…『人類を滅亡させる』ですけどね」

 「じっ、人類を滅亡!??」

 「美月ちゃんと私以外の人間をこの世から消滅させます。そして、この世界を二人だけのものにしち

  ゃうんですよ!もう頭を抱えずに済むし、二人しかいない楽しい楽園にしてしまうの!!」

 「…バカじゃない?出来るわけないだろ?現実見ろって」

 「大丈夫ですよ。しっかりと現実は見てますから」

 「どこがだよ!???たかが先の未来が見えるからって言って…人類を滅亡させるなんてこと出来る

  わけないでしょ?!もしそれが可能なら教えてよ?いったいどうやってそれを可能にさせるのかを

  私にこの場で分かりやすいように説明しろ!!!!!!!」

 「それは…「そこまでですよ。陽子様」


 すると二人しかいないはずの部屋に男性の声が響き渡った。

 「あら、日影さん」

 「お話があまりにも長いので、出てきちゃいました。まぁ把握されていたかもしれませんけど」

 「大丈夫ですよ。私が見た予知では日影さん、あのお方に連絡して私達を殺そうとしているところ

  しか見ていませんので」

 「なるほど…ですが、その予知は外れていませんよ」と日影は隠し持っていた拳銃を二人に向ける。


 「っ!?」

 「貴女方姉妹には申し訳ありませんが…ここで仲良く消えてもらいます」

 

 日影は美鶴に二人を殺すように命じられ、二人の前へと姿を現した。一方その頃、美鶴と柊先生は

 阿相に居場所を突き止められてしまい、阿相と熊木と鉢合わせする。

「そこまでだ、柊美鶴!もうお前の好きにはさせやしないぞ」

 「…誰だ、お前は?」

 初対面なのだから、誰しも美鶴のような反応をするのは当然。だが、阿相は彼の顔を未来で把握して

 るので美鶴が知らなくても阿相は彼のことを知っているのだ。そして後ろにいた熊木は、美鶴と一緒

 にいる柊先生を見て思わず叫んでしまう。

 「先生っ、なんでここにいるんですか!?まさかこの男の味方に…「えっ…いや、違う違う違う!」

 熊木が自分を先生と呼んでいることに驚くも、とりあえず反論する柊先生。美鶴は阿相と熊木をじっ

 と見て突然笑い出した。


 「ははははははっ!!!…そうか。ここ最近、俺の予知がころころと変わっていた原因はお前達だっ

  たということか」

 「はっ?どういうことだよ??」

 「瑞生、お前はやっぱり天才だな。俺はお前を弟に持てて誇りに思うぞ」と柊先生の肩を思い切り

  バシッ!と叩く美鶴。「天才」と言われて嬉しい気持ちもあるが、「それよりもなんで褒められて

  いるんだ?俺は」とそっちの方が気になって仕方がなかった。美鶴は詳しく語らなかったが、目を

  見た瞬間に二人が未来から来た人間で、自分を止めるためにここにいるのだということを把握した

  ために大笑いしたのである。

 

 「だが、お前達は選択肢を間違えたようだな?ここで俺を捕まえたところで未来は変わらない」

 「なんだと?それはどういう意味だ?」

 「星野陽子は菊馬美月に会うために…四之宮光を人質に取り、双子の姉妹は再会を果たした」

 「「なんだって!?」」

 阿相と熊木は声を揃えて叫んだ。

 

 「俺はこの世界を征服すると考えているが…星野陽子は、この世界を滅ぼそうと考えている。つまり

  …人類滅亡計画だ。日影の記憶操作を利用して、ある場所ではもう戦争が始まっている。警察や

  自衛隊でも手に負えず、特殊部隊にも要請が入った。どちらにせよ、もう手遅れだぞ?俺の予知で

  は、あの小娘共のせいで多くの犠牲者を生み出して菊馬美月は実の姉を殺す…そして自らの命を

  絶つのだ」

 「ふっ…ふざけんなよ」

 「待て熊木「邪魔しないで!!」

 

 熊木は阿相に腕を掴まれるも、それを振り切って美鶴に向かって勢いよく足蹴りする。だが未来予知

 で蹴りはさっと避けられてしまう。


 「無駄だ。俺に予知がある限り、お前の蹴りは当たらない」

 「うるさい!何が未来予知だ?貴方のせいで私は…私だけじゃなく両親や他の人達までもを…っ!」

 

  熊木は美鶴に対する怒りが頂点に達しているのを確認した阿相は、嫌な予感がした。

 「未来は大きく変わり始めてる。この世界を滅ぼしたりなんかしない…そして貴方なんかに征服させ

  たりは、絶対にさせない!!!!」と熊木はまた美鶴に足蹴りを食らわそうとする。

 「無駄だと言ってるのに、分からず屋が…」

  

  美鶴は未来予知を使って先程のように避けようとしたその時、「っ!?そこだっ!!」と熊木の

  足が美鶴の顔に直撃し、その反動で床に思い切り身体を叩かれる。


 「ぐはっ…なっ…なぜ」

 「危機回避能力だって、予知系の超能力なのよ。未来での五年間を…無駄にはしない」

  貴方の世界征服という野望は終わったのよ。


  これは紫野との勝負で使ったもの。熊木が言ったように危機回避能力も予知系に当たるため、例え

  未来予知や予知夢がなくても本人の意思次第で相手の行動を先読みすることが可能になる。だが、

  代償があるため熊木は美鶴にありったけの力を込めて攻撃したのだ。


 「熊木。ここは私に任せて、お前は戦争を止めろ!」

 「はい!」


 熊木は急いで走るのだが、彼女が向かった先は窓。

 「おいちょっと待て、ここは二階だぞ!?」と柊先生が熊木に向かって叫ぶが、彼女は既に窓を

 開けて…。


 

 「妹尾、これで全員?」

 「あぁ、そうだな。…ん?」

 「どうしたの?まさかUFOでも…って、えっ!?」


 宮木と妹尾は外にいた美鶴の手下達の相手をしており、阿相と熊木とは別行動を取っていた。倒した

 手下達を集めてどこかの倉庫からロープを引っ張りだして縛っている最中に、妹尾が窓を開けて顔を

 出した熊木に気がつき、宮木も彼と同じ方向に目を向くと彼女は窓から飛び降りたのだ。


 「っ!?」

 妹尾は怖かったのか熊木が飛び降りた瞬間目をぎゅっと数秒間つぶる。そして、ゆっくりと目を開け 

 て見ると…そこには宮木と彼女が倒れていた。先程まで自分の隣にいた彼の姿を見て、一瞬目が悪く

 なったのかと疑う妹尾。だが、これは現実だった。


 「いってててて…」

 「宮木さん、危ないじゃないですか!?死にたいんですか?」

 「って、それはこっちのセリフだよ!あんたこそ二階から飛び降りたりしてバカじゃないの?」

 「私は急いでるんです。階段使うよりも飛び降りる方がすぐで楽じゃないですか?」

 「楽より先に命落とすっての!死んじゃったらどうするんだよ?いったいあんたは何のためにこの

  世界に来たのさ。未来を変えるため…僕を助けるためでしょ?」

 「そっ、それはそうですけど…」

 「僕のことが大切なら、僕の言うこと聞けるよね?」

 「…」

 

 「こらお前達、いつまでもいちゃいちゃしてる場合ではないぞ!熊木、急げ!!このままではお前

  の存在が消えてしまうぞ!」

 「はっ、はい!!」

 

 いちゃいちゃって…むかつく。


 「ちょっと、どこ行くの?」

 「星野陽子がいる場所へ行きます。恐らく脅迫状に書かれていた場所にいるはずですから」

 「僕も行く」

 「ダメです!宮木さんは妹尾さんと一緒にここに残ってください!」

 「嫌だ。美月が危ないっていうのにじっとしてるなんて出来ないよ」

 「でも…「こらぁああああー何度も言わせるな!いちゃいちゃせずにとっとと行けぇーー!!!」

 「「はっ、はい?!!」」


 

 そして瀬楽達は美月と別れて、他の正隊員達と共に戦っていた。相手は陽子が用意した超能力・能力

 ・無能力者とさまざまであるが日影の記憶操作によって操られ、一般市民を無差別に襲っていたのだ。

 

 「あらよっと!!」

 「ぐはぁ!」

 速度計スピードメーターでの足蹴りにより相手は顔面を強く蹴られて気絶させる。


 「ぎったぎったにしてやるぜー!!」

 黒澤は動物系の能力者を人間解体でバラバラに切り裂く。



 「綾小路、あの正隊員苦戦している。足を止めろ」

 「了解」

  岸本は綾小路と共にビルの屋上にいた。双眼鏡を使い、綾小路に指示を出す。

 「宝正、どうだ?そっちの様子は」と岸本が無線で宝正と連絡を取る。

 「結構ひどい状況よ。負傷者の数が多すぎて…今にも倒れそう」

 「気をしっかり持てとしか言いようがないが、頑張ってくれ。テレパシーの力で救えるものもある

  はずだ」

 「えぇ…頑張るわ」


 「霜月、お前はどうだ?」と今度は霜月に連絡を取る。

 「今迷子になってる子供達を避難場所に誘導しているところだ」

 「お前一人か?大丈夫なのか?」

 「物質召喚次第でなんとかしてみせるさ。僕も菊馬には負けてられないし…僕は隊長だからな」

 「そうか。頑張れよ」


 「岸本さん!」

 「どうした、綾小路?」

 「今、四之宮さんが出てきた」

 「なにっ、四之宮だと?!」


 綾小路の報告により岸本は持っていた双眼鏡で確認する。そこには間違いなく彼の姿が見えた。

 「確かにあれは四之宮だ」

 「でも、美月ちゃんがいないね?」

 「小森に連絡する。…おい、小森聞こえるか?応答しろ!」

 「…優樹?どうしたの?」

 「お前今どこにいる?四之宮を見つけたんだ」

 「四之宮さんが?じゃあ美月も?」

 「いや、菊馬は一緒じゃない。それよりも四之宮の様子がおかしいんだ。ぼーっとしてる感じで…

  あっ、まずい!綾小路、敵に攻撃だ!」

 「はっ、はい!!」


 綾小路は四之宮に狙いを付けている敵の頭に狙いを定め、震えながらもライフルの引き金を引いた。

 だが死にはしない。麻酔銃なので敵は血を流すことなく、その場でふらふらと倒れる。

 「命中しました」

 「よし。小森、急いで四之宮のところへ向かってくれ!」

 「…分かった」


 小森は美月が心配となり、建物のすぐ近くまで来ていたのだが岸本の指示ですぐさま四之宮がいる

 場所へと向かって走り出したのである。


 



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