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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
星野と陽子と美月
120/362

妹との再会を果たすためなら…

四之宮が能力を使ってまでして美月を気絶させた。美月はしばらくの間は誰がどんなことをしても、

絶対に目を覚まさない。それに危機回避能力を持っていることから、眠っていても攻撃を察知して避け

られてしまう。四之宮はこれで阿相が自分に話してくれた未来の話から大きく逸らすことが出来ると考

え数名の正隊員を引き連れて、脅迫状に書かれていた場所へと早く到着したのだが…。


「美月ちゃんと私を会わせないようにしていたのは…貴方ですね?」

 四之宮と他の正隊員は突然奇襲に遭い、彼は星野陽子が隠し持っていたスタンガンで無様にも気絶さ

 せられ、気がつくとどこかの部屋の中で椅子に手足をロープで縛られており、そこには彼女がいた。

 どうして特殊部隊の正隊員が16歳の少女にいとも容易く倒されてしまったのであろうか?それは四

 之宮でなくとも誰だって疑問に生じただろう。もちろんそれにはちゃんとした理由があった。


 四之宮のスマホを奪い、着信履歴を確認後すぐに電話をかけた。電話の相手は浦瀬で、陽子はここで

 ある作戦を思いついた。浦瀬を利用して美月をここまで連れてこさせようと…。だが美月は四之宮に

 よって眠らされて気持ちよさそうに寝ていると言われ、陽子は四之宮をギロッと睨んだ。他人から見

 ればただ凝視ぎょうししているだけに見えるが、彼女は四之宮に怒りの炎を燃やした。浦瀬の言

 い方もあったため、陽子は彼女に恐怖と絶望を与えるかのように「四之宮さんには…今すぐに死んで

 もらいましょう」と言ったのである。


 阿相から未来の話を聞かされなければ、四之宮は恐らく美月を行かせていただろう。陽子の計画は

 四之宮ではなく、正確には阿相樹と言う未来人によってめちゃくちゃにされたのだが、そのことを

 彼女は知らない。浦瀬との電話が終わった後も、彼に対する怒りの炎は収まらなかった。


 「美月ちゃんに会わせないだけでなく、まさか眠らせていただなんて…」

 「お前を菊馬に会わせるわけにはいかなかったからな。立花が殺されて、指定された場所に行くと

  言いだしたあいつを止めるには…ああするしか方法がなかった」

 

  自分のせいで立花が殺されたことに対する罪悪感と怒り。それが彼女の弱さでもあり一番の武器

  となっているところだ。訓練棟でのことを考えると、彼女の能力も妹尾のようにそう長くは続かな

  い。怒りに身を任せて能力をフル活用させれば、恐らくは自分で自分を殺すことになるだろう。

  能力の代償と言う名の絶望に身体が付いていけず、精神を崩壊させることに…。

 

 「強面で頭の切れる方ですね。そこまで考えていたとは調査不足。いえ…予知不足、でしょうかね?」

 「予知、不足…だと?まさか…」

 「特殊部隊に所属する人間を調べるのは困難ですから…能力に頼るしか方法がない。ですがあのお方

  のように能力ばかりに頼っていると必ず限界が表れます。私は、能力と自分の意思に従って前に

  進んでいく。そう誓ったのです。他人の事なんて…全く考えずに自分のことだけを考えて生きてい

  くと、ね」


  陽子はニヤリと不気味な笑みを四之宮に見せた。四之宮は、星野陽子が単なる無能力者ではない

  ことを確信する。少なくとも…未来予知と同じ能力を持っている可能性があると。そうでなければ

  今まで彼女がしたことに納得がいかない。

 

 「あぁ~楽しみ。美月ちゃんにやっと会える~感動の姉妹の再会をついに実現することが出来る!!

  この日をどれだけ待ち望んでいたことか…。あぁ~なんかドキドキしてきたわ!」と陽子は一人で

  騒ぎ始める。16歳の少女がワイワイとはしゃいでいる姿に四之宮は理解不能だった。


 「あははははっ~!!!早く来ないかな~私の可愛い可愛い美月ちゃん」

 

  陽子の叫び声は部屋の外からでも丸聞えであり、彼女の様子を見に来た日影の耳に届いてしまう。

  これにより日影は部屋に入るのをやめ、急ぎ足でどこかへと向かっていったのである。



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