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私の危機回避能力はあてにならない  作者:
星野と陽子と美月
110/362

16歳の美月達の決断

 

 『とにかくお前達は下手に首を突っ込むな』


 警察の事情聴取を終えた後、美月達は特殊部隊へと戻って来た。そして、柊先生と黒澤達に星野先生

 が殺されたことを報告する。


 「うそ…だろ?星野先生が殺されたって…いったいどういうことだよ!?」

 「黒澤。それは僕達にも分からないんだって」


 黒澤にとって星野先生は父親のような存在だった。そのため、このメンバーの中では彼が一番に星野

 先生の死を受け入れることが出来なかったのだ。

 

 「それで、警察はなんだって?」

 「頭を置物で殴られたことによる出血死だったそうです。それで阿相さんのことについて聞かれまし

  た。警察は…阿相さんを疑っているみたいです」

 「阿相は星野先生を追っていた。守秘義務があると言って…警察に理由を言おうとしないんだ」

 「しゅひぎむって?」


 ここで、綾小路が聞いたことがない言葉が出て来たので岸本に尋ねる。

 「簡単に言えば、依頼者の個人情報だ。まぁ、探偵という職業だけとは限らないが…依頼を引き受け

  た以上は他の人間にぺらぺら喋ることなど許されない。だが最近それを利用して金をむしり取ると

  いう探偵の風上にも置けない者がいるという。まったく…本当にこの世の中は腐っている」

 「岸本さん…なんかごめんね」

 「綾、謝らなくていいと思うぞ」

 「探偵という職業も大変なんだな…」


 「話を戻しましょう。つまり阿相さんはその守秘義務が理由で警察から犯人と疑われている。でも、

  それだけで彼を犯人扱いするなんて…警察も地に落ちたものですね」

 「どどどど、どうしたの?!宝正さん、なんか顔色が…」

 「ごめんなさい。岸本さんの心を読んでたら、なんだか気分が悪くなってしまって…」

 「椅子を持ってくるから、ちょっと待っててくれ!」


 柊先生がどこからか持ってきた椅子を持ち出し、宝正を座らせる。

 『大丈夫?』

 「ありがとう…大丈夫よ」

 

 それにしても…いったいどんな心を読んだのだろう?

 気分が悪くなるほどのひどい内容だったのか?直接岸本に尋ねればいいことだが、誰も聞こうとしな

 かったので引き続き話をすることに。


 「まっ、まぁ…とりあえず、そういうことで阿相さんは容疑者扱いにされたんだけど…僕達は阿相さ

  んは無実だと思っている。僕達で星野先生を殺した犯人を捜し出したい」

 「でも…阿相さんに下手に首を突っ込むなって言われたんだよね」

 「言われたなぁ~」

 「確かに。でもこのままだと阿相さんは本当に犯人にされてしまうかもしれない…僕はそんなの耐え

  られない」

 「急にどうしたんだ、霜月。何かまずいもんでも食ったのか?」

  いつもの霜月らしからぬ行動に黒澤は本気で心配する。

 「明日夢君、こういうのに関しては許さないんだよ。一度小学校で仲良くしていた友達がクラスの

  いじめっこのターゲットにされて花壇かだんを荒らした犯人にされちゃったんだ。私を含めた

  他の子達はいじめっこの言いなりになってたけど、明日夢君一人だけがその子の言葉を信じた。

  上級生の人達と下級生の子達とかに話を聞いてもらったりして、その子が犯人じゃないってことを

  証明したんだよ」

 「おぉ~すごいな明日夢君」

 「瀬楽。明日夢君っていうのは霜月のことなんだぞ?」

 「えっ?そうなのか?!」

 「やっぱり忘れてたのか…」

 「冗談だよ。隊長は小学校の頃から隊長だったんだな~うんうん」

 「いや、意味が分からん」

 

 岸本は瀬楽の言っていることが理解出来なかったが、簡単に言えば「霜月は今も昔も変わってない」

 と言いたかったのだ。幼い頃を一緒に過ごさなくても、霜月は全く変わっていないということが見え

 てくる。二人が特殊部隊で出会ったあの時のように…。


 「俺は隊長がそういうなら、隊長に従う」

 「私も明日夢君…隊長に従います」

 「岸本、お前はどうする?やっぱり阿相さんに従うのか?」と瀬楽が岸本に尋ねると…。 

 「…阿相が犯罪に手を染めるはずがない。僕はあいつのアシスタントだが、特殊部隊正隊員霜月チー

  ムのメンバーでもある。想定外だったが…隊長様の命令に従うよ」

 想定外というのはどういうことなのかよく分からなかったが、岸本も賛成ということになった。

 「おぉ~隊長様。なんかかっこいいな」

 「いやいや。隊長様ってそんな王様じゃないんだし」

 霜月チームが話している間、菊馬チームもそのことについて話し合うことにした。とは言っても

 美月は黙り込んだままだったので宝正が彼女に尋ねることになったのだが…。

 

 「隊長、私達はどうしますか?」

 「…」

 「美月?」

 美月は阿相が四人に言った『下手に首を突っ込むな』という言葉が頭から離すことが出来ずに悩んで

 いた。考え込んでいると、テレパシーでそのことを読み取った宝正が彼女に声をかける。


 「あまり深く考えすぎない方がいいわよ」

 「えっ?」

 「…貴方は自分よりも周りのことを見る。自分の意思を貫きたい気持ちもあれば、相手の意思を尊重

  しようとする気持ちもある。私達は美月があってこそのチームなのよ。悩んでいるなら少しでも良

  いの。時間をかけてでも…私達に話してほしい。貴方が今、何を考えているのかを」

 『がんばって』

 「なんかよくわかんねぇーけど、話してみろよ」

 

 「阿相さんがどうして星野先生のことを追っていたのかが気になる。なんで殺されたのかも…。だけ

  ど阿相さんが言っていることも正しい。下手に首を突っ込めば、私達が警察に疑われる。でもそれ

  よりも私が思うのは…犯人のターゲットにされる可能性もあるってこと。そう考えるとどうしたら

  いいのかが分からなくなってしまって…」

 「なーんだ。そんなことか」

 「黒澤君」

 「別にバカにしようなんて思っちゃいねぇよ。美月が俺達のことを想って言ってくれてることも分か

  る。でも俺は星野先生を殺した犯人を見つけ出して、先生と同じ苦しみを味あわせてやりてぇんだ

  !!」

 「ぎったぎったにしてやるーじゃないんだね」

  同じ意味だけど。と綾小路は付け足す。


 『さすがに殺すのはどうかと…』

 「とにかく、俺達は大丈夫だから心配すんなよ。美月」

 「蓮君」

 「そうよ。貴方は一人じゃないのだから、私達を頼ってくれたらいいのよ」

 「宝正さん…」

 「おーい。そっちは決まったのか?どうするんだ?」と瀬楽が美月に尋ねてくる。


 「…阿相さんの言っていることは正しいかもしれない。だけど、私は星野先生が殺された理由を知り

  たい。だから私も犯人を捜す」

 「よしっ。そうと決まればさっさと犯人捜してぎったぎたにしてやるぞぉー!」

 「それでこそ、我らが隊長です」

 

 「よし。じゃあ霜月グループは全員参戦ということで」

 「って瀬楽。なんでお前が仕切ってるんだよ?霜月グループなんだから霜月が仕切るだろ?」

 「隊長が乗り気じゃないから俺が仕切んなきゃいけないの。俺は霜月グループの副隊長だからな」

 「じゃあ瀬楽グループでいいんじゃないのか?」

 「岸本、何を言うんだ。俺達の隊長は明日夢なんだから霜月グループじゃなきゃダメだ」

 「あっ…そうですか」

 

 「話は終わったか?」

 「うわっ?!しっ、四之宮さん」

 「いつからそこにいたんだ?」

 「ついさっき着いたばかりだ。お前達に仕事を言い渡そうと思ってな」

 「仕事?」

 

 「さっき阿相が俺の元を訪ねて来た。詳しい話は出来ないが…阿相からお前達に今日起きた事件に

 関わらせないようにしてくれと頼まれたが断った」

 

 「えっ!?」

 四之宮と柊先生以外の全員が驚いた。

 

 「お前達のことだ。忠告しても聞かないだろうと思ってな」

 「あちゃ~バレバレでしたか」

 「そこでお前達に仕事として、星野先生を殺害した犯人の手がかりを掴んで来い。ただし、部屋には

  入れない」

 「えっ!?どうしてですか?」

 「断る代わりに阿相は、お前達に「星野の部屋に入れさせるな」と言われたんだ」

 

 『あいつらを部屋に入れさせるな。これだけは譲れない…絶対にだ』

 

 「…やっぱり何か隠してるな。あの人」

 「星野先生の部屋だけが手がかりじゃない。近隣住民の聞き取りにも可能性がある。俺の話は以上だ」

 

 四之宮は話を終えるとすぐに部屋を出て行ってしまった。

 

 

 『無理に信じなくても良い。誰しもこんな話をされればお前と同じような反応をするだろう。

  それを承知で、私はお前にこのことを話したのだから…』

 

 もし、阿相が言っていたことが本当に起こるのなら…なんとしても阻止しなければならない。

 



 

 

 

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