謎の未確認生命体?
あれから数日間が経った。桜の花びらが散って緑色の葉っぱが姿を現すと
同時に気温も少しずつ暖かくなってきていた。
もうすぐしたらGWと呼ばれる長期連休が来る中、
今日も美月は柊先生の発明品のテスト試験を行い…特殊部隊は観光客を狙って
の強盗その他もろもろの騒動に備えてと忙しい毎日を送っていたのでありました。
「先生、起きてください。朝ごはんが出来ましたよ」
「うっ…うぅ…」
美月が起床したのは午前六時。
ラジオ体操で軽く運動を済ましてから、各場所に設置してあるゴミ箱を回収し
一つの袋にまとめてゴミ捨て場へと捨てに行く。
そして台所に行って二人分の朝食を作ったあと、部屋にいる柊先生を起こす。
「先生、起きてください」
「うっ…」とうなされながらも起きようとする柊先生を美月はもう仕方ない
なと先生の腕を両手で引っ張って身体を起こした。
「ほら。さっさと起きて」
「わかったよ…ふぁあ~あ」
先生を起こして朝食を食べさせ、食器を洗ってすぐに掃除と洗濯に取りかか
っていく。こうしておかないとさぼってしまうため、早め早めとしておくこと
が美月流である。
そしてすべての掃除が完了する頃にはあっという間に11時となっていた。
その頃、柊先生はまた何かを発明しているようで部屋にこもってちまちまと
作業を始めていた。この間言っていたヘルメットはすでに改良してメガネと
セットで装着できるようになっており、テスト試験も完了済みであった。
果たして、今度はどんなものを作るのか…。
掃除が終わった美月は軽く昼食の準備を始める。
台所へ行き、冷蔵庫からサンドイッチの材料を取り出すついでに
なくなりそうなものをチェックする。
「えっと…今日の晩御飯はから揚げと味噌汁。もうそろそろお味噌がないな」
それから次々と買い物メモしていく美月。
「…よし。あっ、ホットケーキの素も買っておこう」とホットケーキの素を
付け足して、エプロンに袖を通してサンドイッチを作り始めた。
数分後、サンドイッチを作った美月は柊先生にと、作り立てを部屋へ
運びに行った。
「先生、サンドイッチ…「できたー!!!」
「うわああっ!?…っと。先生、いい加減にしてください!」
「おう、悪い悪い。ありがとう」
先生は美月からサンドイッチを渡されておいしそうに食べる。
「で、今度はなんですか?」
「良くぞ聞いてくれましたっ!今回の発明品は…これだっ!」
柊先生が美月に見せてくれたのは…ただの腕時計だった。
「先生…なんですか、これは?」
「腕時計だよ。お前腕時計知らないのか?」
「いや、知ってますよ。先生作るものってだいたい世の中に出回っている
ものだからあんまり驚きようがないんですけど…」
「お前は分かってないなぁ~。あんまり目立つと怪しい物だと思われるだろ
う?腕時計なら身に着けていてもおかしくないしさ」
「確かにそうかもしれませんけど…」
美月はこういうのどこかで見たことあるような気がしてならなかった。
だが、柊先生の発明はどれも素晴らしい物であり決してガラクタということ
ではない。だから、美月はそんな曖昧なことを言って困らせようとは思わなか
ったのだ。
「それで、この腕時計にはどんな仕組みが?」
「あぁ、ここにボタンがあるだろ?ここを押せばワイヤーが出るんだよ」
「ワイヤー?」
「ここじゃあ使えないから、外に行こう」と柊先生は美月と共に外へと
出た。
外へと出ると柊先生は自分の身長よりも高い大きな木に目を付けて
「これならいいかな」と腕時計の横にあるスイッチをぽちっと押すと…
バキンっ!と金属音が鳴って勢いよく、ワイヤーが出てきて木に巻きついた。
「うわっ!?すごい」
「うーんーもう少し改良した方が良いな。きつすぎる」
「先生、これってどんな時に使うんですか?」と美月は興味を持ったらしく
柊先生に質問する。
「使い方にもよるぞ。例えばこの木を一気に上る時とか、素早く逃げるために
どこかの壁に狙いを定めてワイヤーを突き刺したりとか。敵を捕まえる際に
も使えるぞ?これにはセンサーが付いてるから設定しなくても勝手に状況に
よって使い分けすることが出来るんだ」
「なるほど」
やっぱり柊先生はすごい人だ。と美月は見直したのでありました。
「あっ、先生。買い物に出かけてもいいですか?」
「おう、いいぞ?スケートボードに乗ってくか?ヘルメットとメガネ
付けて」といつの間にか両手に持っていたので美月はそれを使って商店街
へと向かった。
その頃、商店街はまたしても騒ぎが起きていた。
「きゃあー!?」
「えっ?なんだなんだ?」と一人の女性の悲鳴が聞こえ周りにいた人達が
腰を抜かして倒れている女性に注目する。その横には、間違いなく人でない
動物がぼりぼりとリンゴを食べていた。
「なんだありゃっ!?」
「みんな逃げろ!食われるぞー!」と大げさに言った一人の男性の言葉から
商店街はパニックに陥った。
通報を受けて数分後に駆け付けた警察は、突如出現した動物に麻酔銃を撃ち
こむようにと連れてきた獣医に指示。すぐさま麻酔銃が放たれた。
これで一安心…ではなかった。
「っ!?ばっ、バカな」
獣医は驚いていた。自分の打った麻酔銃が全く当たっておらず、しかも
受け止められていたことに…。
「もう一発だ!もう一発撃て!」
警察官が獣医に指示を出し、もう一発麻酔銃を発射する。
バキュン!
勢いよく放たれた麻酔銃だが、またしても素早く受け止められてしまった。
「そんなっ、有り得ない…」
偶然にしてもできすぎる。誰もがそう思っていた。
そして大人しくしていた動物は獣医と警察官に素早く突進し、防御壁に
思いっきりぶち当たった。
「ぐはっ!?」とすごい力で大の大人を軽々突き飛ばした。
手におえないと判断し、一人の警官が特殊部隊へと通報する手を得ざる
終えなかった。
一方そんなことなんて知らず、美月は商店街までスケートボードで買い物に
出かけていた。
ヘルメットはメガネとセットで使えるようにメガネの形に合わせて改良され
ていたために邪魔にならずに済んでいた。
走行していると、アナウンスが流れる。
「この先の道を、左に曲がると、商店街までの通常ルートよりも最短で到着
します」と教えてくれたのだ。
「わぁ~すごい。よし、冒険で左に曲がろっと」
美月は、いつも通っている真っ直ぐの道を今日は左の道へと進んでいった。
しかし、この後美月は後悔することになることをまだ知らなかった。
特殊部隊本部では警察の通報により未確認生命体が商店街に出現したとの
報告を受けただちに四之宮チームを現場へと急行させたのである。
「未確認生命体ってなんなんですか?宇宙人とかですか?」
「そんなわけないだろ?だいたいそんなのが現れたら…」
「恐らく能力者だろう。中には獣になる能力を持つ人間もいると聞くからな」
「えぇ~なんだ。つまんないなぁ~」
「それよりも早く現場に行くぞ。死傷者が出たら面倒だからな」
「はい(はーい)」と四之宮チームは車を使って猛スピードで現場へと
急行するのであった。
未確認生命体とした理由は、どう見ても食べないはずなのにリンゴを食べて
いたから。あと、二足歩行で歩いており麻酔銃を素早く受け止めて阻止した
からであり、決して大げさに言っているわけではない。
「はい。大至急、住民に避難要請をかけてください!我々では対処できませ
ん!」
拳銃を乱射したものの当たるどころかかすりもしない。
そのために警察官はお手上げ状態となり、無線機で住民の避難要請を呼びかけ
たのだ。
「ぐわあああーーー!!!」
「ひぃいいっ!?たっ、助けてくれー!」と獣医が走って逃げようとする。
「バカっ、走るな。狙われるぞ!」と警官が呼びかけるのも聞かずに必死で
逃げる獣医。しかし、それを素早く追って獣医はあっという間に捕まえられ
てしまう。
「いやああああーーー!????」ともうだめだと思っていたその時だった。
「う~ん~あんまり早い気もしなかったな~やっぱりいつもの道にしてても
良かったかも~」と美月がスケートボードに乗って現れたのだ。
それを見た警官達は美月に気づいて「君、何してる!早く逃げて!」と
大声で叫ぶが美月には遠くて聞こえない。
美月を見た未確認生命体は獣医を離して、美月に狙いを定めた。
そして、やっと彼女の視界にそれは写った。
「ん?…なに、あれ?っていうか…こっちに向かってきてる!??」
美月は、意味も分からないその未確認生命体から逃げることを余儀なくされて
しまう。元来た道を引き換えし、すぐさま「猛スピード!!」と発して
逃げた。
未確認生命体も美月を追って猛スピードで追いかけていき、残ったのは間一髪
で助かった獣医と警察官数名のみ。
「…大変だ。すぐに知らせないと!!」




