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幽霊少女?

 二人と別れた後、美月と小森は保護棟にある柊先生の部屋へと戻って来た。

「おかえり、遅かったな?」

 「すみません。ちょっと迷子らしき人と話してて遅くなりました」

 はい、これ部品。と柊先生に買ってきた物を渡す美月。


 「迷子って小さい子?」と綾小路に尋ねられると「いいや。同い年ぐらいの男の子だったよ」と

 答える美月。

 「「えっ?」」

 「それでその子のお友達が不審者だった。霜月にそっくりだったよ」

 「「えっ?」」

 今度は小森の言葉に綾小路と宝正は驚いた。いったい二人に何があったのだろうかとお互いに目を

 見合わせていたが、そんなことも知らずに美月と小森は話を進める。

 「サインを求めてくるなんて変な人達だったよね?夜月」

 「だからやろうか?って聞いたのに」

 「それは絶対にダメ」

 

 「まぁまぁ、とにかく無事に帰って来たから良かったよ。小森君も帰ってこないし、もう少ししたら

  俺達も下に下りようかって話をしてたところだったんだ」

 「そうだったんですか。なんか心配かけちゃってごめんなさい」

 「いいのよ。気にしないで」

 「そうだよ。美月ちゃん」

 「そういえば、瀬楽達はまだ課題終わってないの?」

 「うん。まだみたいだよ」

 「課題ってそんなに多かったっけ?なんか心配になってきたんだけど…」

 「大丈夫よ。あの二人に苦戦してるだけだと思うから」

 「黒澤君は分からないけど、瀬楽君に教えるの結構大変だから」

 「まぁ…そうだよね」

 

だが、課題は既に終わっていた。それならどうして帰ってこないのか?いや、帰ってこれないでは

 なく…。


 「瀬楽…俺達、夢でも見てるのか?」

 「いや、これは夢じゃない。現実だ」

 「じゃあなんで霜月達は動かなくなったんだよ!?さっきまでは普通だったのにさぁ!」

 

 黒澤の部屋で課題を手伝っていた霜月と岸本は、どういうわけか突然二人の前でかちこちに固まった

 かのように動かなくなってしまった。最初は二人が自分達をからかうためにわざとやってるんだとば

 かり思っていたが、全然応答はないしピクリとも動かないのを見てかなり動揺する。課題は終わって

 いるから良いものの、これはこれでピンチだった。

 

 「黒澤、ここにいろ。俺は下に行って柊先生を呼んでくる」

 「あぁ…分かった」

 

 玄関へと向かい、扉を開けようとするがガコン!と言う音が鳴るだけで扉が開くことが出来ない。

 「あっ、あれ?おかしいな」

 「どうしたんだ?」

 「いや…扉が開かないんだよ」

 瀬楽は黒澤に扉をガコンガコンと開け閉めが出来ないことを実践する。

 

 「えっ、そんな…じゃあここから出られねぇってことか?」

 「いや。まだ手はあるぞ?黒澤扉から離れろ」

 「あぁ、分かった」


 瀬楽は一旦部屋の中へと戻り、黒澤が扉から離れたことを確認する。

 「…よし。3…2…1…Go!!」

 自らのカウントで速度計スピードメーターを発動させ、全速力で扉に向かって思いっきり足蹴り

 する…が。


 「いっ…いたい…」

 「そりゃあそうなるだろ?」

 瀬楽は全速力を出したために足に掛かるダメージは大きく、右足を両手で押さえて倒れていた。

 暗証番号に廊下には防犯カメラが多数設置、そして扉や窓はすべて特注品でありそう簡単には壊れな

 い作りになっている。速度計スピードメーターを全速力で使用してぶつかっても、びくともしな

 いのだ。

 

 「黒澤、お前の能力でこの扉壊せないのか…いってて」

 「無理だよ。それじゃあ「人間解体」じゃなくて「物質解体」になっちまうだろ?俺の能力でぎった

  ぎたに出来るのは人間と動物ぐらいだよ。正確には元人間だったけど」

 

 「そうか…じゃあ俺達一生ここから出られないのか…あぁ…まだ足痛い」

 「大丈夫かよ。いったいどんだけダメージ食らってんだ?」

 「HP残量、残りわずかってぐらい」

 「かなり消費してるな。回復出来ないのか?」と瀬楽の話に乗る黒澤。この場合の回復というのは、

 「薬」ではなく、「湿布しっぷ」ということになるが瀬楽はそのままの体勢で黒澤に

 「休めば何とかなる…かもしれない」と曖昧な返事をする。

 「かも、かよ。とにかくなんとかしてここから出る方法考えねぇと…」


 そこで黒澤は霜月達のいる場所へと再び戻ると、テーブルの上に見慣れない物が置かれているのを

 発見する。


 「ん?なんだこれ?」

 置かれていたのはタブレットだった。タッチペンを使って画面をタッチすると、すぐに文章が現れる。

 

 『ここから脱出だっしゅつしたければ、アンケートにこたえてください。』

 『1.あなたの能力のうりょくおしえてください。(例)強化系能力者(きょうかけい

  のうりょくしゃ)』

 「えっと…特殊危険能力系超能力者っと」

 『2.あなたのお友達ともだち人数にんずう正確せいかくこたえてくださ

  い。※教師きょうしふくみません。』

 「教師って…つーかご丁寧に全部漢字に読み仮名付けてやがるな。えっと…」

 「何してるんだ、黒澤…」

 「あぁ、瀬楽。お前は俺と友達か?」

 「…はい。友達ですよ?」

 「じゃあ…美月達は友達?」

 「…はい。友達ですよ?」

 「分かった。サンキュー」

 「えっ?何?どういうこと?」

 瀬楽は痛い足をゆっくりと動かしながら、黒澤のいる居間へと目指して歩いていく。

 

 「えっと次は…「ふむふむ。アンケートか」

 「うわっ!?瀬楽…びっくりした。お前、足大丈夫なのかよ?」

 「いやぁ…気になりまして見に来ちゃいました。それより、このアンケートどうしたんだ?」

 「あぁ。なんかそこに置いてあってさ」

 「ほぉほぉ置いてあった?それは不思議ですな?」

 「けど、脱出したければこれに答えろって書いてあったからよ」

 「ふむふむ。では続きをどうぞ」

 「あぁ…うん」


 瀬楽は考えた。自分達を閉じ込めた犯人がこの部屋の中に潜んでいると…。

 黒澤の部屋を訪れたのは初めてではないが、記憶力が良い方ではないので辺りをくまなく捜索してみ

 ることに。だが、犯人は彼らのすぐ目の前に堂々と居間でくつろいでいた。


 「無駄無駄。この部屋は私が占拠している限り、貴方達に私の姿を見ることは出来ません。もちろん

  声や足音でさえも…ね」


 彼女の名前は、夜黒沢明日奏やぐろざわあすか。圭人と昴の同級生で彼女も未来から来た

 時間旅行者タイムトラベラーである一定の領域を支配することが出来る能力を持っている。

 二人同様にミッションをクリアしないといけないので、あえて頭の悪そうな二人だけを残し霜月達

 を戦闘不能にさせた。


 「それにしても…世の中似たような人間はいるものね。あのメガネザルそっくり」

 黒澤の部屋へとやって来た彼女はすぐに能力を発動し、しばらくの間彼らが課題をやっている様子

 を見学させてもらっていた。なぜすぐミッションに取りかからなかった理由は単なる興味だ。同級生

 に雰囲気がそっくりな人間を見てしまえば、誰だって気になるものだろう。ちなみにそのメガネザル

 というのは、昴のことである。


 「よし、出来た!」

 「うーんーどこにもいないな?おかしいな」

 「瀬楽アンケート書けたから出られるぞ!」

 「ふむ…まさか幽霊?」

 

 幽霊なんて失礼な。まぁ、アンケートには応えてもらったしさっさと撤収てっしゅう致しましょ

 う。


 「…では、ごきげんよう」

 

 

 ガチャン!

 「よっしゃあ、開いた!」

 やったーやったー!と黒澤は喜ぶが、瀬楽は正直あまり嬉しくなかった。謎が謎のままで終わって

 しまって頭の中にもやもやが残ってしまったからだ。


 「やっぱり幽霊なのか…」

 その後霜月と岸本が元に戻り、二人は先程起きたことを説明したのだが「夢でも見たんじゃないのか

 ?」と全く信じてもらえなかったのであった。


 世の中にはたくさんの心霊現象だったり、宇宙人や魔女などと言った超常現象や怪奇現象が存在する

 が実際のところそれが本当なのかは、やはり人間自分の目ではっきり見ないことには信じられない。

 もしかしたら自分達が分からないだけで…彼らのような未来人に会っているかも?


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