忘れられないホットケーキ
翌朝のことでした。
「美月、悪いがちょっと来てくれ」
「えっ?なんですか?」
これからお風呂掃除しようとしていたのに~と美月はぶつぶつ言いながら
柊先生のいる部屋へと向かう。
「この間のスケートボードだ。改良したから、試しに乗ってみてくれ」
「嫌です。あんな高いところから落ちたのに、また落ちたりしたら…」
「大丈夫大丈夫。だから頼む」
「…分かりました」
美月と柊先生はいつも通りの日々を送っていた頃、四之宮チームは
能力者が暴れているというと警察から報告を受けて隣町へとやって来ていた。
「弱かったですね?先輩」
「強かろうが弱かろうが、能力者に変わりはない。俺達はそのための特殊
部隊だろ?」
「そりゃそうですけど…」
「四之宮さん、本部への報告終わりました」
「よし、戻るぞ」
「はい(はーい)」と四之宮チームはすぐさま本部へと帰還したのであった。
柊家では、外でスケートボード(改)のテストを行っていた。
「よし、次は走行だが…飛ぶんじゃなくて、通常のスケートボードと同じよ
うに動かせ。飛行は緊急時の際に使用だ」
「了解。通常モードで走行開始」
「音声確認しました」とアナウンスが聞えてすぐにスケートボードはゆっくり
と走行し始めた。
「遅いからもう少し早くしてみろ」
「はい。速度アップ」
「現在速度10キロから20キロアップします」
「遅い。もう少し上げろ」
「速度40キロアップ」
「音声確認。速度40キロにアップします」
だんだんと速度が上がって来た。曲がり角の所をすばやく身体のバランスを
利用して綺麗に曲がって真っ直ぐへと立て直す。
「よし、OKだ」
「走行停止」
「音声確認。走行を停止します」とゆっくりとスケートボードは停止した。
「よし、次は飛行のテストだ。美月、メガネかけたままヘルメット被れるか
?」と柊先生がヘルメットを持ってきて美月に渡す。
手に取って頭に被るがメガネが邪魔でヘルメットが被れない。
「無理です。被れません」
「そっか~じゃあ新しいの作るから今日はそのまま飛行テストしてくれ」
「…落ちたら化けて出ますからね?」
「それは困るなぁ~。とりあえず、よろしく」と柊先生は美月から遠目に
離れる。それを確認して飛行テストを開始した。
「緊急モード。飛行開始」
「音声確認。これより飛行準備に入ります」とアナウンスが聞こえると
すぐに足が固定される。
「安全装置起動。飛行開始まで5秒前…4…3…2…1…飛行開始」
するとスケートボードはゆっくりと宙へと浮いていく。
「よし、それで円をかくように回ってみてくれ。さっき見たいにやれば
できる」
「わかりました!」
「ん?」
「どうした宮木?」と妹尾が宮木を見る方向へと自分も目を向けると
なにやら飛んでいるものが…。
「あれって…」
「菊馬だろ?柊瑞生の発明品のテストでもしてるんだろ」
「先輩見えるんですか?」
「そんなわけないだろ?あそこには柊の家がある場所だからな」と四之宮は
当然のように言う。
「ふーんー」
「ほら、さっさと本部に帰るぞ」
「はい(はーい)」
「よし、美月。もういいぞ」
「はーい。じゃあ、お風呂掃除行ってきまーす」
「いってらっしゃーい。さて、ヘルメットを作り直すか~」と柊先生は
自分の部屋へと戻って行ったのでありました。
そして本部に戻った四之宮チームは、任務を終了して各自の寮へと戻って
行った。そして夜の8時頃…
「妹尾、おなかすいた~」
「お前食いすぎだぞ。それ、なんとかならないのか?」
「だっておなかすくんだもん」
「コンビニでも行ってなにか買ってこい」
「もうお金ないもん」
「じゃあ、我慢しろ」
「けちっ…はぁ~」
妹尾が意地悪だと二段ベッドの上に寝そべっている宮木は、昨日美月が食べた
ホットケーキを思い出していた。
そして「また食べたいなぁ…ホットケーキ」と妹尾が聞えないほどの小さな
声でそうつぶやいて、仕方なくそのまま寝たのであった。
雑誌を読んでいた妹尾も、そこに記載されていた喫茶店のおすすめに
ホットケーキが載っていて、彼もまた美月の作ったホットケーキを思いだし
ていたのでありましたとさ。




