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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
79/254

33.タイムリミットは30分

<<琴音>>

 ここから森の向こうに大きな山が見えるけど、私達が一体どこにいるのかさっぱりわからなかった。

「ミディアちゃん、ラーファちゃん、これはどこの仮想空間なのかわかる?」

 2人に聞いてみたけど、やっぱり2人ともここがどこなのかわからないらしい。

「ていうか、ここは仮想空間じゃないよ。

 だって、ここに生えている木とか葉っぱに触れられるし・・・」

 ミディアちゃんはそう言って、すぐ傍に生えている木に触って見せた。

 てことは、ここは本当の空間で、私達はどこかの森の中にいるってこと?

 いつの間にか、エルフィーゼの塔の外にいるってこと?

「さっき、エレーネが周囲を見てくるって言ったけど、大丈夫かな?」

 ラーファちゃんはエレーネちゃんのことを心配していた。

 エレーネちゃん、一人で先に行っちゃうからな。

 ラーファちゃん、内心ずっとハラハラしてるんだろうな。


「おーい、向こうに湖があるぞ。」

 しばらくして、エレーネちゃんが戻ってきた。

「それで、ここはどこなのか、手がかりになりそうなものは見つかったの?」

 ラーファちゃんがそう尋ねると、エレーネちゃんは首を横に振った。

「だって、ここ山と森と湖しかないんだもん。

 ていうか、人のいる気配が全くしない。」

 エレーネちゃんがそう言うと、ミディアちゃんとラーファちゃんの表情が強張った。

 そりゃあ、人気のない夜の森の中に連れて来られたら、誰だって怖いと思うだろう。

 正直、私もすごい怖い。

(覆面、ここはどこなの?)

 さっきから心の中で覆面をずっと呼んでるけど、覆面から何の応答もないし、いよいよ不安になってきた。

 あと、さっきからたまに、上空から光が差し込んで来ることがあるんだけど、この光は一体なんだろう?

「でも、湖の水はすごいきれいだったぞ。

 それに、山のふもとには大きな滝があって、多分、昼に見たら結構きれいな景色だと思うぞ。」

 エレーネちゃんがそう言うので、とりあえず、みんなその湖に向かうことにした。

 どこに行けばいいのか、わからなかったからね。

 エレーネちゃんの話だと、私達を導いていた光の玉は、ここに転移された時点でなくなっていたらしい。

 てことは、もしかしたら、ここが覆面の探検ルートの終点なのかもしれない。

 でも、ここは本当に一体どこなんだろう?

 覆面は私達をどこに連れてきたのだろう?


 森の道は一本道で、湖まで続いていた。

 歩き始めて5分ぐらいで、私達は湖に到着した。

 エレーネちゃんの言う通り、湖の向こうには山が見えて、滝も流れていた。

 なるほど、エレーネちゃんの言う通り、昼間に見に来ていたら、きれいな景色だったと思う。

 でも、夜の森は非常に怖くて、場所がわからないこともあり、今は景色を楽しむどころではなかった。

「本当にここはどこなんだろう?」

 ミディアちゃんがそう言うと、それを聞いていたアイちゃんが

「だったら、琴音に空から見てもらったらどう?」

と言った。

「それだ。

 琴音、上空からこの辺の景色を確認してほしいんだけど。」

 それを聞いたラーファちゃんが私にお願いしてきた。

「ラーヴォルンがどっちにあるのか、確認してくれる?」

 ミディアちゃんも不安な表情で私にお願いしてきた。

 多分、2人とも近くにラーヴォルンが見えなかったらどうしようっていう不安なんだろうなあ。

「わかった。

 ちょっと上昇して、この辺を見てくるね。」

 私はミディアちゃんとラーファちゃんにそう言うと、空へと登って行く。

 森が見渡せるくらい高く上昇して、周囲を見渡した。

 しかし、周囲に明かりは全く見つからず、街らしき場所を見つけることができなかった。

「本当に、ここはどこなの?」

 いよいよ不安な気持ちで押しつぶされそうになったその時だった。

 突然、上空から光が差し込んできた。

 これは、もしかしてさっきの光かな?

 そう思い、上空を見上げると、私のいる更に上空に飛行船が飛んでいて、こちらに向かって時折光を照らしてくるのが見えた。

 どうして、こんなところに飛行船が?

 そう思い、更に上空まで上がると、私達のいる場所が、どうやら空中に浮かんだ場所にあることがわかった。

 それに気づいた瞬間、私は全てを悟った。

「ウソ・・・まさか、ここって・・・」

 私は、もっと上空まで上がってみる。

 すると、私達のいる場所の下には海が広がっていて、その向こうに、遠く離れていくラーヴォルンの街並みが見えた。

 もう間違いない。

 未だ誰も踏み込んだことのない浮遊大陸グラド・ルガンテ。

 どうやら、私達はそのグラド・ルガンテにいるらしい。


「どうだった、琴音?」

 地上に降りてきた私に、ミディアちゃんが声をかけてきた。

「えっとね・・・ここの場所がわかったよ。」

 私がそう言うと、ラーファちゃんが驚いた表情でこっちを見た。

「それで、ここはどこなの?」

 ミディアちゃんがそう聞いてきたので、私は見た光景をそのままミディアちゃんに説明した。

「ここは、グラド・ルガンテだよ。」

 私がそう言うと、ミディアちゃんもラーファちゃんも驚いていた。

 そりゃあそうだろう。

 未踏の地グラド・ルガンテにいるなんて話、そう簡単には信じられないだろう。

 でも、私が上空から見た光景は、間違いなくグラド・ルガンテだった。

「なあ、ここがどこなのかわかったのか?」

 エレーネちゃんが2人に話しかける。

 でも、ミディアちゃんとラーファちゃんも、私から聞いた話に驚いたまま固まったままだった。

「なあ、ラーファ、ミディア。」

 エレーネちゃんが強い口調で2人に声をかけると、ようやく2人は反応を見せた。

「ミディア、ラーファ先輩、大丈夫ですか?

 さっきから顔色が悪いみたいなんですけど・・・」

 アイちゃんも不安そうな表情で、ミディアちゃん達を見ていた。

 2人が心配していることに気づいたのか、ミディアちゃんが慌てて

「大丈夫だよ、アイ。」

と笑顔で応える。

「それで、ここはどこなの?」

 アイちゃんがそう聞くと、ミディアちゃんは小さな声で答えた。

「私達・・・グラド・ルガンテにいるらしいの。」

「ええっ!!!」

 ミディアちゃんの話を聞いて、エレーネちゃんもアイちゃんも驚いていた。

 そりゃあ、まあ驚くよね。

 アトゥアの歴史が始まってから、誰も踏み込んだことがない場所に、自分達がいるって聞かされたら、誰だって耳を疑うと思う。

「ねえ、ミディア・・・それって本当なの?」

 アイちゃんがミディアちゃんに尋ねると、ミディアちゃんは私の方を見た。

 ミディアちゃんも信じられないって表情だった。

 だから、私は自分の見た光景をもう一度説明することにした。


「上空から見たら、これが浮かんでいる島だってことがわかったの。

 それで、周りに飛行船がいて、こっちをライトアップしているのが見えて、島の遥か向こう側には、小さくなっていくラーヴォルンの街並みが見えたから・・・

 だから、ここはグラド・ルガンテで間違いないと思う。」

 私の話を、ミディアちゃんがエレーネちゃんとアイちゃんに話す。

 全員、私の話を聞いて、驚いていた。

 でも、しばらくすると、

「やった・・・やったあ!!!」

 突然、エレーネちゃんが大喜びしだす。

「ちょっと、エレーネ、何喜んでるのよ?」

「だって、グラド・ルガンテだぞ。

 今まで誰も入ったことのない場所だぞ。

 そこに、私達が初めて入ったんだぞ。

 これを喜ばずして、どうするんだよ。」

 エレーネちゃんは、すごい興奮した様子で、早速持っていた機材で撮影を始めた。

「そうだよ、ラーファ。

 私達、すごい場所にいるんだよ。

 もっと、喜ぼうよ。」

 ミディアちゃんがラーファちゃんにそう言うけど、ラーファちゃんは依然として不安な表情のままだった。

「でも、帰りはどうするのよ?」

「それは大丈夫。

 私が覆面にきっちり頼んでおくから。」

 私がそう言うと、ラーファちゃんの表情も少しだけ緩んだ。


「じゃあ、グラド・ルガンテでみんなで記念撮影しましょうよ。」

 アイちゃんがそう言うと、ミディアちゃんも「いいねえ。」と頷いた。

 でも、エレーネちゃんは首を横に振った。

「ダメだ、何か変な力が働いているみたいで、私の持っている機材じゃ撮影できないみたいだ。」

「そうなんですか。」

 アイちゃんは、少しがっかりしていた。

「じゃあ、せめて色んな場所を見て回りましょう。」

 ミディアちゃんがそう言うと、みんな頷いた。


 とりあえず、大きな湖の周りを散策してみようと話したものの、周囲は深い森で囲まれていて真っ暗だったので、さすがに入り込むのに躊躇した。

「それにしても、ルフィルはどこに住んでいるんだろう?」

 エレーネちゃんはそう言って、周りを見渡すが、建物らしきものはここからでは何も見えなかった。

 私が上空から見ても、建物らしきものは何も見えなかった。

 アトゥアでは、グラド・ルガンテにルフィルが住んでいると信じられている。

 でも、ここから見る限りでは、自然豊かなただの場所にしかない。

 私が一回り飛んで、ルフィルを探してこようかとミディアちゃんに話す。

 ミディアちゃんがそのことをみんなに話すと、

「おーその手があったか。

 ぜひ琴音に頼んでよ。」

 エレーネちゃんがミディアちゃんにそう頼む。

 でも、ミディアちゃんは

「琴音は便利屋じゃないんですよ。

 それに、グラド・ルガンテって結構大きいじゃないですか?

 琴音一人で探索するのは、さすがに酷ですよ。」

 そう言って、私のことを気遣ってくれた。

 やっぱり、ミディアちゃんって優しいなあ。


「チェッ、しょうがないなあ。

 じゃあ、湖で泳ぐか。」

 エレーネちゃんはそう言うと、服を着たままいきなり湖に飛び込んだ。

「ええっ!?」

 これには、みんな驚いた。

「だって、撮影もできないし、散策もできないんだったら、泳ぐしかすることないじゃん。」

「でも、この湖の中に何がいるかわかりませんよ。」

 ミディアちゃんがそう言うと、エレーネちゃんが泳ぎながら

「もしかしたら、湖の主みたいなのが出てきたリしてな。」

て言う。

 すると、ミディアちゃん達は怖がって湖から離れてしまった。

「ったく、みんな怖がりだなあ。」

 エレーネちゃんは仕方がないと言った表情で、湖から上がった。

「ううっ、やっぱりちょっと寒いね。」

 湖から上がったエレーネちゃんの体は少し震えていた。

「当たり前でしょ。

 少しは季節を考えなさいよ。」

 さっきからラーファちゃんは、エレーネちゃんの行動にハラハラしっぱなしのようだった。

「魔力切れじゃなかったら、空飛んで滝のふもとまで行ったんだけどなあ。

 さすがに今は無理だな。」


 その時、突然湖の中心から光の玉が打ちあがる。

 突然のことに、私もミディアちゃん達も驚いて、悲鳴に近い声を上げていた。

 光の玉は上空に打ちあがると、何やら数字を表示した。

「30:00って何だろう?」

 私がそう言った瞬間、29:59、29:58とどんどん時間が減り始めた。

 これって、まさか・・・

「なあ、あれは何の模様だ?」

 エレーネちゃんが、上空を見上げながらそう言った。

 そっか、あれは日本の数字だから、ミディアちゃん達にはわからないんだ。

 どうせなら、ミディアちゃん達にわかる文字で表示すればいいのに・・・


「ねえ、琴音、あれって何なの?」

 ミディアちゃんも私に聞いてきた。

「あれは、多分カウントダウンだよ。」

「カウントダウン?」

「多分、ここにいられるのは、あと30分だけってことじゃないかな。」

 私がそう言うと、ミディアちゃんはそのことをみんなに伝えた。

「あと30分で、一体何ができるだろう?」

 ミディアちゃんから話を聞いたエレーネちゃんは、何やら必死に考え始める。

 もしかして、何かするつもりなんだろうか?

「私は、この景色を念写してみる。」

 ラーファちゃんはそう言うと、景色をじっと見つめ始めた。

 そっか、機械で撮影はできなくても、念写ならできるかもしれない。

「じゃあ、私はとりあえず火を起こすね。」

 ミディアちゃんはそう言うと、周辺の木々を集める。

 そっか、ミディアちゃんは魔法を全く使ってないから、魔力が余っているんだっけ。

 周辺の木々を集めて、魔法で火をつける。

「ナイス、ミディア。」

 エレーネちゃんはそう言うと、慌てて火の近くへとやってくる。

 どうやらよっぽど寒かったらしい。


「グラド・ルガンテって高いところを飛んでいるから、もっと寒いのかと思ってたけど、それほどでもないな。」

「たき火に真っ先に駆け寄っているアンタが言っても、説得力ないわよ。」

「いや、まあそうなんだけど・・・」

「でも、確かにエレーネの言う通りね。」

 ラーファちゃんはそう言うと、ミディアちゃんも頷く。

「風もそれほど吹いてないし、気温もラーヴォルンとあまり変わらないもんね。」

「もしかしたら、ここは、私達の世界とは切り離されてる場所にあるのかもしれないわね。」

「でも、飛行船の光が届いていたって琴音が言ってたから、完全に切り離されているってわけでもないみたいだよ。」

 ミディアちゃんがそう言うと、ラーファちゃんは小さく頷いた。

「本当に不思議な場所よね。グラド・ルガンテって。」

「ウン、そうだね。」

「なあ、そんなことより、せっかくグラド・ルガンテに来られたんだから、私達が来た足跡を何か残していこうよ。」

 エレーネちゃんがそう言う。

 でも、私達が来た足跡って、何を残せばいいんだろう?

 私なんてこんな体だし、何も残せないと思うんだけど・・・

「足跡って言われても、こんな場所だと木に名前を彫るくらいしか・・・」

「それだ、ミディア、ナイスだ。」

 エレーネちゃんはそう言うと、ポケットからナイフを取り出した。

 そして、本当に木に自分の名前を彫り始めた。

 まさか、ナイフまで持ってきていたとは、エレーネちゃん、本当に用意周到だなあ。

「湖まで続く道沿いにある、一番湖の近くにある左側の木に私達の名前を彫っておこう。

 こうしておけば、他の人が来た時に、私達の方が先に来てたんだぞってわかるでしょ。」

 エレーネちゃんが名前を彫ると、ミディアちゃん達もエレーネちゃんからナイフを受け取って、名前を彫り始めた。

 いいなあ、私はこんな体だから、名前を彫ることもできない。

 せっかくだから、私の名前も彫ってほしいな。

 そう思っていたら、ミディアちゃんが

「ハイ、琴音の名前も彫っておいたからね。」

私にそう言ってくれた。

 木を見ると、ラーヴォルンの言葉で私の名前が書いてあった。

 アトゥアに来ている間は、私はなぜかラーヴォルンの言葉がわかるんだけど、この文字もすぐに読むことができた。

 確かに、ユメサキ コトネって書いてある。

「ミディアちゃん、ありがとう。」

 私がお礼を言うと、ミディアちゃんはニコッと笑った。


 全員、名前を木に彫り終わると、エレーネちゃんは次に何しようと言いだした。

 上空の時間を見ると、まだ10分ぐらい残っていた。

「と言っても、私達は魔力切れだし、何もできないわよ。」

「私は魔力余ってるけど・・・何にもできないし・・・」

「ゴメン、ミディア、そう言うつもりで言ったんじゃ・・・」

「ウウン、全然気にしてないよ。

 ところで、琴音、あと何分ぐらい残ってるの?」

「あと10分ぐらい。」

「そっか。じゃあ、あとできることと言ったら、これくらいかな。」

 ミディアちゃんはそう言うと、湖の方に近づいて行く。

「ミディア、何をするつもりなの?」

 ラーファちゃんがミディアちゃんに尋ねると、ミディアちゃんはニコッと笑って、

「さっき、エレーネ先輩のやってたことだよ。」

 そう言うと、なんと服のまま湖に思い切り飛び込んだ。

「ウソッ!?」

 ミディアちゃんの行動に、思わず変な声が出てしまった。

「ちょっとミディア、何やってるのよ?」

 ラーファちゃんはすごい驚いていた。

 ウウン、エレーネちゃんとアイちゃんも驚いてた。

 そりゃあそうだろう。

 私だって驚いてる。

 普段のミディアちゃんだったら、服のまま湖に飛び込むなんてこと、まず絶対にしない。

「みんな、すごい冷たくて気持ちいいよ。」

 ミディアちゃんはそう言って、服のままで泳ぎ始めた。

「よっしゃあ、じゃあ、私も行くかな。」

 たき火にあたっていたエレーネちゃんが、ミディアちゃんに続いて湖に飛び込む。

「ど、どうしちゃったの、ミディア?」

 アイちゃんは、なんかすごいオロオロしていた。

「アイもラーファも、そんなところに突っ立ってないで、一緒に泳ごうよ。」

 ミディアちゃんが驚いているラーファちゃんとアイちゃんに声をかける。

「琴音も早く。」

 私まで呼ばれた。

 ミディアちゃん、一体どうしちゃったんだろう?

 あまりのミディアちゃんの豹変ぶりに驚いていたら、

「よ、よーし、じゃあ、私も。」

 なんとアイちゃんまで湖に飛び込んじゃった。

「じゃあ、私も・・・」

 この流れには逆らえなかったのか、ついにはラーファちゃんまで湖に飛び込んだ。

「琴音も早く。」

「ウ・・・ウン・・・」


 私が湖に入ると、ミディアちゃんは、なんと私に向かって水をかけてきた。

 もちろん、私はこんな体だから、実際に湖に入っても、水をかけられても、濡れることはない。

 でも、そんなことよりも私は、ミディアちゃんの行動に驚いていた。

「じゃあ、行くよ。」

 ミディアちゃんはそう言うと、今度はラーファちゃんやエレーネちゃん、アイちゃんに向かって水をかける。

「やったな、ミディア。」

 エレーネちゃんが反撃に出ると、

「ちょっと、ミディアに何するのよ。」

 ラーファちゃんがエレーネちゃんに反撃する。

「ちょっと、ラーファ。お前もミディアにかけられただろ。」

「私は、常にミディアの味方よ。」

 そう言って、ラーファちゃんとエレーネちゃんの争いが始まった。

 その2人の水の掛け合いを見て、ミディアちゃんが楽しそうに笑っていると、

「隙あり。」

 いつの間にか、ミディアちゃんの後方に回り込んでいたアイちゃんが、後ろから思い切りミディアちゃんに水をかけた。

「やったなあ、アイ。」

「へへん、私に勝てると思ってるの、ミディア。」

 気がついたら、4人入り乱れての水かけ合戦になっていた。

 最初は驚いた。

 でも、水を掛け合っているみんなは本当に楽しそうで、私も混ざりたいと思った。


 最初は4人入り乱れての水かけ合戦だったけど、どういうわけか、いつの間にかミディアちゃんVS3人になっていた。

 どうして、ラーファちゃんまで、ミディアちゃんの敵側になってるんだろう?

「私はミディアを守ってエレーネと戦ってたのに、背後から私に水をかけるなんて・・・」

 ああ、そういうことか。

「ミディア、ちょっと調子に乗りすぎたわね。」

「覚悟しろよ。」

「ミディア、行くよ。」

 それから、ミディアちゃんはみんなから総攻撃を受ける羽目になった。

 これはさすがにミディアちゃんがピンチだ。

 助けないと。

 そう思ったけど、ミディアちゃんも、他の3人もとても楽しそうで・・・

 あんなに楽しそうに笑っているミディアちゃん達、もしかしたら初めて見たかも・・・

「あーあ、私もこんな体じゃなかったらなあ。」

 私はみんなが楽しそうに水かけ合戦するのを、ただただ眺めるしかなかった。


 ひとしきり楽しんだ後、ミディアちゃん達は湖に上がって、たき火にあたっていた。

 楽しい水かけ合戦も寒さには勝てなかったようで、結局10分も経たずに終わってしまった。

「ゴメンね、琴音。」

 ミディアちゃんが私に謝ってきた。

「どうして謝るの?」

「だって、琴音だけ仲間外れみたいになっちゃったから・・・」

「ウウン、気にしてないよ。」

 本当は、私も水かけ合戦に参加したかったけど、こんな体だし仕方がないよね。

「残りどれくらい?」

「あと1分ぐらいだよ。」

「そっか。」

 ミディアちゃんはそう言うと、満足そうに微笑んだ。

「それにしても、ミディアがまさか湖に飛び込むとは思わなかったよ。」

 エレーネちゃんがそう言うと、ラーファちゃんもアイちゃんも頷いた。

「だって、あと10分でできることで思いついたのって、これくらいしかなかったから。」

 ミディアちゃんがそう言うと、エレーネちゃん達は驚いた表情を浮かべる。

 でも、しばらくすると、みんな一斉に笑い出した。

「思いつかないから湖に飛び込むとか、またミディアはすごいこと考えるなあ。」

「でも、すごい楽しかったでしょ?」

「ウン、そうだな。」

「私も楽しかった。」

「私も。」

 残り10分では何もできないと考えたミディアちゃんは、何かを残すことから遊ぶことに切り替えたんだね。

 そして、ミディアちゃんが飛び込むことで、みんなの考えもそっちに変わった。

 なんか、ミディアちゃん、すごいね。


「グラド・ルガンテの湖で泳いだなんて、みんなに話しても信じてもらえないだろうなあ。」

 エレーネちゃんがそう言うと、みんなクスッと笑った。

 そうこうしているうちに、残り時間がもうほとんどなくなっていた。

「そろそろ時間だよ。」

 空中に刻まれている時間が0:00になった瞬間、私達は光に包まれる。

 そして、気がつくと、エルフィーゼの塔に戻っていた。


「どうやら塔に戻ってこられたみたいね。」

 ラーファちゃんがホッとした表情でそう言った。

 何階に戻って来たかは、すぐにわかった。

 フロアには多くの人達で溢れかえっていたし、すぐに巨大な門が視界に入って来たからね。

 ここは、エルフィーゼの塔1階だ。


「1階ってことは・・・これで探検終了ってことだね。」

 ミディアちゃんが少し名残惜しそうにそう言った。

「どうだった、琴音。

 エルフィーゼの塔の探検は?」

 ミディアちゃんは笑顔でそう聞いてきた。

 最初は覆面のルートってことで不安だったし、途中、命の危険を感じることもあったけど、終わってみたら楽しかったかな。

 でも、

「楽しかったけど、塔の中を探検したって気分じゃないかな。」

 私がそう言うと、ミディアちゃんは苦笑した。

「今日みたいな探検は、私達も初めてだよ。

 まさか、グラド・ルガンテに行けるなんてね。」

 多くの人で溢れかえる場所に戻ってきたせいか、さっきまでの出来事が夢のように思えてくる。

 でも、ミディアちゃん達の来ている制服がビッショリ濡れていることからも、さっきまでの出来事は夢じゃないことがわかる。

 でも、まあ、服がびしょ濡れってことは、それだけですごい目立つようで、

「君達、ビショビショだけど、大丈夫かい?」

 いろんな人から心配されて、声をかけられる羽目になってしまった。

「えっと・・・私達なら大丈夫です。」

 その度にミディアちゃんが恥ずかしそうに答えていた。

「こりゃあ、このまま家に帰るしかないか。」

 さすがのエレーネちゃんも、びしょ濡れのまま北街を観光する気にはなれなかったようだ。

「とりあえず、塔を出るわよ。」

 ラーファちゃんはよっぽど恥ずかしかったのか、一足先に塔の外に飛び出して行った。


(1)ルフィル・カロッサ

ラーヴォルンで開かれるルフィルの4大祭りの一つで、もっとも規模の大きなお祭り。

毎年秋に開催される。


(2)エルフィーゼの塔

ラーヴォルン北街のはずれにある100階建ての巨大な塔。

昔は軍事要塞施設で、今でも何箇所かにはその時の名残が残っている。

未だに多くの謎を残しており、安全が確認できていないフロアは、今でも立ち入り禁止になっている。

そのため、塔内は魔法転移装置で移動することになっている

北街の観光名所の一つとなっている。


(3)グラド・ルガンテ

アトゥア唯一の浮遊大陸。

しかし、これまで誰も上陸できた人はおらず、いつからかルフィルの住む島として神聖視されるようになった。

グラドとは、神聖な人や場所につける称号で、ルフィル説が定着するようになってから、グラド・ルガンテと呼ばれるようになった。


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