32.たどり着いた場所は?
<<琴音>>
「うわっ!?」
転移するなり、全員が驚きの声をあげた。
「ここは・・・79階の大地の部屋のようだな。」
私達の周り、溶岩だらけだったけど、エレーネちゃんはすごい楽しそうだった。
しかも前方に見える山から、思い切り噴火していて、噴石がこっちに向かって飛んできていた。
ゴゴゴゴゴ・・・
すごい地響きが鳴り響く。
仮想空間だとわかっていても、これは怖い。
「おっ、青の光が移動し始めたぞ。」
エレーネちゃんはそう言うと、マグマの中に飛び込んで、青い光を追いかけた。
青い光は、噴火している山に一直線に向かっていた。
まさか、あの山のふもとまで行けとでも言うつもりなのだろうか?
「それにしても、エレーネちゃん、全然動じてないね。」
私がそう言うと、ミディアちゃんとラーファちゃんは苦笑していた。
これがイデアトゥアだってのは頭では理解しているんだけど、全く動じていないエレーネちゃんって本当にすごいと思う。
ミディアちゃんとラーファちゃんは、深海の時みたいに苦しそうにはしていなかったけど、少しお疲れのようだった。
そのラーファちゃんの背中で、アイちゃんはというと・・・なんと気を失っていた。
「ちょっと、アイちゃん大丈夫なの?」
驚いて思わず、ラーファちゃんに大声で尋ねると
「シーッ、大丈夫だから。
もう少しだけ寝かせておいてあげて。」
ラーファちゃんがそう言って、私に静かにするように指を口にあてた。
まあ、私が大声を上げたところで、アイちゃんには全く聞こえないんだけどね。
よかった、眠っているだけなんだ。
さっきの深海があまりにもきつかったから、てっきり気を失ってしまったのかと思ったよ。
それにしても、眠っているアイちゃんの表情、なんかすごい幸せそうだ。
「アイにとって、ラーファの背中は天国だからね。」
ミディアちゃんがクスッと笑いながらそう言った。
「私の背中は、天国のイデアトゥアじゃないわよ。
そんなことより、私達も行くわよ。」
「そうだね。」
私達はエレーネちゃんの後を追いかけることにした。
それにしても、このイデアトゥア、さっきから過酷なものばかりだ。
「ねえ、ミディアちゃん、他のイデアトゥアもこんなのばっかりなの?」
「ウーン、去年見た時は、こんな苦しくなるようなのなかったんだけどなあ。」
「確か、去年の水の部屋は、珍しい魚が泳ぐ浅い海だった。
それで、大地の部屋は、アトゥアの秘境を一度に体験できるツアー形式のものだったはず。
体験して苦しくなるようなものなんて、今まで一回もなかったわよ。」
ラーファちゃんがそう説明してくれた。
ということは、まさか、このイデアトゥア・・・覆面の仕業か?
でも、一体何のためにこんなことを?
「ここって、カレッカ諸島だよね?」
ミディアちゃんがラーファちゃんに尋ねると、ラーファちゃんは小さく頷いた。
「カレッカ諸島ってのは、ここからずっと南にある島で、10年ほど前からずっと噴火し続けている島なんだよ。」
そして、私にもちゃんと説明してくれる。
やっぱり、ミディアちゃんは優しくていい子だなあ。
それにしても、10年間ずっと噴火している島って、なんか凄いね。
日本は火山列島で、時々火山が噴火したりすることあるけど、10年間連続噴火ってのはさすがにないんじゃないかな。
いや、こんなの、なくていいんだけどね。
「10年間もずっと噴火し続けているんだったら、島に草木一つ生えてなさそう。」
「昔は結構人も住んでいたし、ちょっとした観光地でもあったんだけどね。
さすがに今では、観測用の船とか政府の船以外は誰も近づかないみたいだね。」
ミディアちゃんがそう言った。
そんな誰も近寄らない島を、よりにもよってイデアトゥアにチョイスしたわけね。
さっきの深海といい、覆面の選択したイデアトゥアは趣味が悪すぎるよ。
噴火や地割れの迫力はすごいけど、さすがにさっきの深海のような苦しさは起こらなかった。
でも、イデアトゥアのおかげで、少し暑くなってきて、汗が出てきた。
もっとも、実際に行ったら、この程度の暑さでは済まないだろうけど。
「ねえ、ラーファ、カレッカ諸島のイデアトゥアなんて、どうやって作ったんだろうね?」
ミディアちゃんがラーファちゃんに尋ねる。
「そりゃあ、ある程度地形とか見た上で、空想士がイメージして作ったんじゃないの?」
「そうなのかなあ?」
ミディアちゃんは首を傾げていた。
「何か引っかかることでもあるの?」
ミディアちゃんに聞いてみたけど、ミディアちゃんは「ウウン、なんでもない。」と言って首を横に振った。
「お前ら、歩くの遅すぎるぞ。」
先を歩いていたエレーネちゃんが、大声で私達に向かって叫んだ。
ベイ・カロッサで体力と魔力を消耗したって言ってたのに、この元気はどこから出てきてるんだろう?
「エレーネが呼んでるから、さっさと行くわよ。」
ラーファちゃんに促されて、私達はエレーネちゃんのいるところまで走っていく。
「あの山のふもとに、魔法転移装置があるみたいだ。行こう。」
エレーネちゃんに連れられて、私達は火山のふもとへと向かう。
ふもとは溶岩のたまり場になっていた。
これが実物であれば絶対に近寄れない場所だけど、ここは仮想空間だから、そんな危険な場所でも普通に入っていける。
みんなと一緒に溶岩の道を歩いて、山のふもとへと向かう。
どうやら、私もイデアトゥアに慣れてきたみたいだ。
そして、私達がふもとに到着すると同時に、大きな噴火が始まった。
火山のふもとから、噴火を見上げるなんて、仮想空間じゃないと絶対に無理だろう。
そう思うと、なんだか貴重なものを見ているように思えてくるから不思議だ。
「うわっ!?」
突然、仮想空間がすごい揺れだした。
きっと、地震が起きているんだろうけど、視界がすごい揺れるせいか、だんだん気分が悪くなってきた。
「映像酔いする前に、ここから離れよう。」
エレーネちゃんが慌てて魔法転移装置を起動する。
再び視界が光に包まれて、私達はまた別の場所に飛ばされた。
今度は普通の階だった。
「なんだ、もうイデアトゥアは終わりかあ。」
エレーネちゃんは少しがっかりしていた。
「そう言えば、塔の探検をしていたんだよね。
すっかり忘れてたよ。」
私がそう言うと、ミディアちゃんがクスッと笑った。
「私も、すっかり忘れてたよ。」
だって、さっきからインパクトのある仮想空間ばかりで、塔内の探索という感じではなかったからね。
普通のフロアが見られて、なんか少しホッとした気分になった。
でも、ホッとした気分になれたのは、わずかな時間だけだった。
覆面のルートである以上、ここもただのフロアではなかった。
「おっ、青い玉が動き出したぞ。」
エレーネちゃんがそう言って、光の玉の向かった方に歩き出そうとしたその時だった。
ゴォォォォッー―――!!!
向こうから凄まじい風が吹いてきた。
いや、風の塊が、一気に押し寄せてきたというべきか。
あまりにも凄まじい風に、目の前の視界が遮られ、全く身動きが取れなくなってしまった。
「ここは風の部屋みたい。」
ミディアちゃんが苦しそうにそう言った。
「しかも吹いているこの風は、本物の風だ。」
ラーファちゃんも苦しそうにしていた。
こんなのただのトラップ部屋じゃん。
「琴音、ちょっと向こうの様子を見てきてくれない?」
ミディアちゃんが私にそう言ってきた。
そっか、どんなに強い風が吹いても、私のこの体には全く影響がないんだった。
なんか、ずっとイデアトゥアの部屋にいるせいか、そのことをすっかり忘れていたよ。
「ウン、わかった。」
それにしても、視界が遮られるほどの風って、一体どれだけすごい風なんだろう?
まあ、こんな中でも青い光ははっきりと見えるから、それだけは感謝だけどね。
青い光の進む方向に向かうと、確かにその先には魔法転移装置があった。
魔法転移装置の周りは、すごい勢いで風が流れていたけど、魔法転移装置のある周囲だけ何も流れていなかった。
そして、魔法転移装置のすぐ傍に、なぜか紙屑が落ちていた。
なぜ、こんなところに?
魔法転移装置の近くにわざとらしく転がっていた紙屑。
もしかして、これは覆面がヒントのつもりで置いてくれたのかな?
そう思い、紙屑をよく見ると、暴風に当たっても、ゆっくりと転がるだけだった。
(あれっ、これって、もしかして・・・)
もう一度、紙屑の動きを確認する。
やっぱり、周りの風の勢いと違って、ゆっくりとしか転がらない。
もしかして、これって、イデアトゥアで作られた風がすごいだけで、実際に流れている風は大したことないんじゃ・・・
大慌てでミディアちゃん達のいるところに戻って、そのことを話すと、
「確かに、実際の風は全然大したことないわね。」
ラーファちゃんがそう言って立ち上がった。
「風の流れる映像に、すっかり騙されちゃったよ。」
ミディアちゃんも普通に立ち上がって歩き始めた。
確かに、あの風の塊がどっと流れてくる映像は、すごい迫力だったからなあ。
騙されても仕方がないような気がするよ。
「おい、お前ら、遅いぞ。」
いつの間にか、エレーネちゃんは魔法転移装置に到着していた。
もしかして、私とすれ違いで到着していたのかな?
凄まじい風も、エレーネちゃんには全く影響がなかったみたいだ。
なんか、エレーネちゃんすごいね。
「エレーネ先輩、すごいですね。」
ミディアちゃんも同じことを思ったみたいだった。
でも、エレーネちゃんは
「そうか?
イデアトゥアなんて、ただの面白風景じゃんか。」
あっけらかんとそう言った。
「まあ、確かにそうなんだけど・・・」
これには、ラーファちゃんも苦笑するしかなかった。
「お前ら、多分、イデアトゥアの景色をじっと見すぎなんだよ。
私は目的地に向かう青い玉と魔法転移装置しか目に入ってないからな。」
なるほど、道理でイデアトゥアの影響を受けないわけだ。
でも、それじゃあ、せっかくのイデアトゥアがなんかもったいない気がするんだけど・・・
「琴音の覆面も、みんなに見てほしいから、このルートを選んだと思うんだけどなあ。」
ミディアちゃんがそう言うが、エレーネちゃんはあくまで覆面ルートにしか興味がないようだ。
まあ、エレーネちゃんは何度もエルフィーゼの塔に来ているみたいだし、イデアトゥアも何度も見ているだろうから、そういう楽しみ方もありなのかもしれない。
「じゃあ、さっさと次に行くぞ。」
エレーネちゃんはそう言って、魔法転移装置を起動させる。
魔法転移装置は輝きだすと、次の瞬間、また私達は別の場所に移動した。
「!?」
転移が終わって、目の前の光景を見た瞬間、全員が息を呑んだ。
なぜなら、私達は空の上にいたからだ。
私達の足元は空の映像が広がっていて、部屋も空が広がっていた。
つまり、私達は空に浮かんでいる状態ってことになる。
それにしても、これはどれくらいの高さになるんだろう?
私達の足元を雲が流れているってことは、雲よりも高い場所にいるってことになる。
そして、下の陸地は、雲に隠れて全く見えなかった。
「こ、これは・・・さすがに・・・少し怖いわね。」
ラーファちゃんの顔がひきつっていた。
「ラーファ・・・」
ミディアちゃんも怯えた表情で、ラーファちゃんの服をしっかりと掴んでいた。
「おー、これはすごいなあ。」
さすがのエレーネちゃんも少し驚いていた。
しかし、青い玉が動き出すと、
「おっ、玉が動き出したぞ。」
そう言って、青い玉を追いかけ、空の上を駆けて行く。
「本当に、エレーネはすごいわね。」
ラーファちゃんは、その場から一歩も動けないようだった。
その後ろにいたミディアちゃんも、足が震えて動けずにいた。
いや、これは無理ないよ。
普通に見て、空の上に立っているようにしか見えないもん。
むしろ、この中を走り回れるエレーネちゃんがすごすぎる。
「うわっ、何何何!?」
突然、アイちゃんの大声が聞こえてきた。
どうやら、最悪のタイミングで目が覚めちゃったみたいだ。
アイちゃんの大声で、ラーファちゃんの体が思い切りビクッと震えていた。
「もう、アイ、いきなり大声出さないでよ。
ビックリしたでしょ。」
「ゴメンなさい。」
「ハハハ・・・タイミングの悪い時に、目が覚めちゃったね。」
ミディアちゃんがそう言って苦笑する。
もうちょっと眠っていたら、こんな怖い光景を目にすることもなかっただろうに。
「これ・・・イデアトゥアですよね?」
アイちゃんが恐る恐るラーファちゃんに尋ねると、ラーファちゃんは小さく頷いた。
そう、これはただの仮想空間だ。
だから、普通に一歩を踏み出しても大丈夫なはず。
頭ではみんなわかってるんだと思う。
でも、目の前に広がる空は、あまりにもリアルすぎて、ミディアちゃんもラーファちゃんも一歩を踏み出せずにいた。
「おーい、ミディア、ラーファ、早く来ないと置いてくぞ。」
エレーネちゃんは空の上だろうがお構いなしに、青い光を追いかけていた。
本当、ラーファちゃんはすごいと思うよ。
「ミディア、このままじゃ埒が明かない。」
最初にそう言ったのは、ラーファちゃんだった。
「ウン、そうだね。
エレーネ先輩もあんなに歩き回ってるんだし、大丈夫だよ。」
ミディアちゃんはそう言って、最初の一歩を踏み出す。
踏み出した足は、きちんと床の上に着地した。
その感触を確認して、ミディアちゃんはホッとした表情になった。
「大丈夫だよ、ラーファ。行こう。」
「ウ、ウン・・・」
それからは、ミディアちゃんがラーファちゃんを先導する形で、エレーネちゃんの方へと向かい始めた。
「おっ、光の玉が止まったぞ。」
光の玉を追いかけていたエレーネちゃんが大声でそう言うと、光の玉の場所へと向かう。
そして光の玉に追いつくと、エレーネちゃんは辺りを見渡す。
一通り周りを見渡した後、エレーネちゃんは首を傾げる。
「どうしたんですか、エレーネ先輩?」
ミディアちゃんが遠くにいるエレーネちゃんに声をかける。
エレーネちゃんは私達から随分離れた場所にいた。
このフロアだけ、やけに広く感じる。
それでも、遠くにいるエレーネちゃんが見えるのは、空以外他に何にもないからだ。
「魔法転移装置がどこにもない。」
遠くからエレーネちゃんの声が聞こえてきた。
魔法転移装置がないってことは、もしかしてここが覆面ルートの終点ってこと?
いや、こんな空の彼方で探検が終わられても困る。
そう思った時だった。
「えっ!?」
ミディアちゃんとラーファちゃんが、突然の違和感に声を上げる。
何が起こったかというと、突然、私達の足元の空に真っ黒な雲が広がりだしたからだ。
なんか、嫌な予感がする。
その私の直感は、不幸にも的中してしまった。
「うわっ!?」
突然、エレーネちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
「エレーネ・・・」
エレーネちゃんの悲鳴を聞いたラーファちゃんが、エレーネちゃんの方を見ると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
下にできた巨大な黒い雲に、空が吸い込まれるように落ちていく。
そして、青い光のすぐ傍にいたエレーネちゃんは、あっという間に黒い雲に吸い込まれて落ちて行った。
「エレーネ!?」
ラーファちゃんが悲鳴に近い声でエレーネちゃんの名前を呼びながら、慌ててエレーネちゃんいた場所に駆け寄っていく。
「待って、ラーファ。そっちは危ない。」
ミディアちゃんが慌ててラーファちゃんを止めようとするけど、ラーファちゃんは構わずエレーネちゃんの方へと走っていく。
しかし、黒い雲はどんどん大きくなっていき、ついにはミディアちゃんやラーファちゃん達も捕まってしまった。
「琴音!!!」
ミディアちゃんが私の名前を呼ぶ。
私は、ミディアちゃんを捕まえようとしたけど、私の手はミディアちゃんをすり抜けてしまった。
そうだ、ここでは私はミディアちゃん達に触れることができないんだった。
ここでは私にできることは何もない。
たった一つを除いては・・・
「ミディアちゃん。」
私はミディアちゃんと一緒に、黒雲の方へと向かう。
「琴音は逃げて。
このままだと、琴音も落ちちゃうよ。」
自分の方がピンチだって言うのに、ミディアちゃんは私の心配をしてくれる。
本当にミディアちゃんは優しい女の子だなあ。
こんな子を一人で、雲の中に落とせるわけないでしょ。
「大丈夫、私も一緒だから。
ミディアちゃん、一緒に行こう。」
私がそう言ったら、ミディアちゃんの表情が、ほんの少しだけ緩んだ。
「大丈夫だよ。
これはきっと覆面が私達を驚かすために仕掛けたアトラクションだよ。
だから、絶対に大丈夫。」
私はミディアちゃんを安心させるためにそう言った。
(そうなんでしょ、覆面?)
そして、その後、覆面に向かって頭の中で呼びかけた。
しかし、覆面からは何の返事もなかった。
「落ちる。」
ミディアちゃんは、すごい怖がっていた。
そりゃあ、空から巨大な渦に引きずり込まれて、落ちようとしているんだから、怖いに決まっている。
「きゃあああああ!!!」
遠くから、ラーファちゃんとアイちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
2人が、渦の中心に落ちていく姿が見えた。
「こ、怖いよ・・・琴音。」
「ミディアちゃん、落ち着いて。
これはただのイデアトゥアだから。」
私はミディアちゃんを落ち着かせようとした。
でも、
「イデアトゥアはただの仮想空間発生装置で、人を引きずり込むなんてことできないよ。」
「そ、それは・・・これはきっと覆面のアトラクションだよ。
心配しなくても大丈夫。」
私はミディアちゃんを勇気づけるためにそう言った。
とその時だった。
突然、私の体が巨大な渦に引っ張られた。
「えっ!?」
私はその力に耐えることができずに、あっという間に、渦の中に吸い込まれてしまった。
「ミディアちゃん!!!」
「琴音!!!」
そして、私を追いかけるように、ミディアちゃんもまた渦に吸い込まれていった。
「琴音・・・大丈夫?」
目を覚ますと、ラーファちゃんの顔があった。
どうやら、私は気を失っていたらしい。
夢の中で気を失うってのは、一体どういう状態なんだろう?
「ラーファちゃん・・・ここは?
ミディアちゃんは?」
「大丈夫、ミディアならそこにいるわ。」
ラーファちゃんが指した方向には、ミディアちゃんが座っていた。
どうやら、ミディアちゃんも無事だったみたいだ。
「琴音・・・大丈夫?」
ミディアちゃんは立ち上がると、私の元に駆け寄ってきた。
「私なら大丈夫だよ。
ミディアちゃんは?」
「ウン、私も大丈夫。
ラーファもアイもエレーネ先輩も、無事だよ。」
「よかった。」
とりあえず、みんなの無事が確認できてホッとした。
「どうやら、さっきの黒雲が魔法転移装置だったみたいね。
誰が作ったのか知らないけど、すごい悪趣味ね。」
ラーファちゃんが少し怒った表情でそう言った。
その悪趣味な人って、間違いなく覆面だと思う。
だって、さっき起こった現象。
ミディアちゃん達の話だと、イデアトゥアであんなことはできないみたいだし。
それに、私まで引きずり込まれたからね。
間違いなく、これは覆面の仕業だ。
それにしても、覆面は私達をどこに連れてきたのだろう?
辺りを見渡す限りでは、どうやら私達は森の中にいるらしい。
しかも、真っ暗なところを見ると、どうやら夜らしい。
今までのイデアトゥアはずっと昼間だったけど、今度は夜の森かあ。
夜の森は、少し薄気味悪かった。
これも覆面の作ったイデアトゥアなんだろう。
本当に、覆面の作るイデアトゥアは悪趣味すぎるよ。
用語集
(1)イデアトゥア
イデアを使った仮想空間技術
空間そのものを、別の仮想空間に作り上げるための技術である
高度な技術を持つ空想士によって作られることが多い
(2)カレッカ諸島
ラーヴォルンから南西100kmぐらいの場所にある諸島
元々火山列島ではあったが、10年ほど前から諸島にある全ての山から現在に至るまで噴火し続けている
そのため、今では草木一本生えないマグマの島と化している
(3)空想士
頭の中でイメージした空想世界をイデアに念写して、空想世界を作成する魔導師のこと
アトゥアでは、アニメ作品は空想士によって作成される
アニメ以外にも、仮想世界の制作など、その仕事内容は多岐にわたる
高い集中力と魔法力、そして高度な空間把握能力が必要。




