27.ルフィル・カロッサ始まる
<<ミディア>>
その日は、目覚めのいい朝だった。
私の隣で寝ていたラーファは既に起きて、窓から外の景色を眺めていた。
「おはよう、ミディア。」
「おはよう、ラーファ、今日はいつもより起きるの早いね。」
「そりゃあ、今日という日をすごい楽しみにしていたからね。
ミディアもこっちに来て、外の景色を見てごらん。」
ラーファに言われるまま、私は窓から外を眺める。すると、
「うわあ、グラド・ルガンテだ。」
そう、グラド・ルガンテが、ラーヴォルンの北側の上空に浮かんでいた。
「そういや、ミディアもグラド・ルガンテ見るの、これが初めてだったわね?」
「ウン、そうだよ。」
ここ3年間はグラド・ルガンテはラーヴォルンの近くに通ることなかったから、この目で見るのは私もこれが初めてだった。
「ベイ・カロッサが始まる夕方ごろに、このラーヴォルンに最も接近するそうよ。」
「へえ、それは楽しみだね。」
ここから見えるグラド・ルガンテはとても自然が豊かな場所みたいだ。
大きな山が見えるけど、どれくらいの高さなのかな?
見ているうちに、すごいグラド・ルガンテに行ってみたくなった。
でも、今まで誰も上陸できた人いないんだよね。
なんか、もったいないなあ。
「ミディア、そろそろ朝ごはん食べに行こう。」
「ウン、そうだね。」
もう少しだけ見ていたかったけど、朝食を済ませるために、ラーファと一緒に部屋を出た。
「おはよう、ラーファ、ミディア。」
1階に下りると、ラヴィおばさんが食事を作って、待っていてくれた。
「いただきます。」
私とラーファは席に座って、朝食をとる。
しばらくすると、レームおじさんが部屋に入ってきた。
「2人とも、今日はルフィル・カロッサに行くんだろう。」
レームおじさんはそう言うと、私達にお小遣いをくれた。
レームおじさんは、お祭りになるたびにお小遣いをくれる。
すごくありがたいんだけど、今日みたいに一番忙しい日に遊びに出かけてしまって、本当にいいのかなあ?
私が考えていることを、ラヴィおばさんは気づいたようで、
「2人とも午前中は手伝ってくれるんだし、そんなに申し訳なさそうにしなくていいんだよ。」
「でも・・・」
「じゃあ、仕事で出られない私達の分まで、今日は思い切り楽しんできて。
それで、終わったら色々と話を聞かせてちょうだい。」
ラヴィおばさんはそう言って、私の頭を撫でてくれた。
「ありがとうございます。」
レームおじさんとラヴィおばさんは、本当に優しくていい人達だ。
よーし、せめて午前中だけでも、一生懸命お仕事しないとね。
「でも、ベイ・カロッサに参加するんだったら、朝早くから並んでないと厳しいんじゃないの?」
ラヴィおばさんが心配そうにそう言うと、ラーファが
「ああ、そっちはエレーネとアイに任せてあるから大丈夫。」
と言った。
さすが、ラーファ、こういう時の手際は本当に素晴らしい。
私が知らない間に、昨日のうちにエレーネ先輩に頼んでいたみたいだ。
でも、アイはともかく、エレーネ先輩は家の仕事を手伝わなくて大丈夫なのかな?
朝食を終えると、私達は早速仕事場へと向かった。
私はフロントで接客の補助を頼まれた。
ちなみに、ラーファは併設しているレストランの方を手伝うことになった。
今日は朝から出かけるお客様が多くて、ロビーは朝から人で溢れかえっていた。
私はどちらかと言うと裏方の仕事ばかりだったけど、目が回るような忙しさだった。
こんなに忙しいのに、本当に午後から遊びに行ってもいいのかな?
ふとそんな気持ちに駆られる。
とその時だった。
「ミディアちゃん、午後からベイ・カロッサに行くんでしょ?」
すぐ傍にいたフロントの女性の従業員の人にそう聞かれて、どう答えていいか困っていたら
「ハハハ・・・気にしなくていいのよ。
ていうか、私も今日は午前で上がりだからね。」
その女性はそう言って、ニコッと笑った。
どうしてもベイ・カロッサに参加したくて、周りにお願いして午前だけのシフトにしてもらったらしい。
「つきあってる彼が久しぶりにこっちに帰って来ててね。
どうしても、一緒に参加したかったから、みんなに拝み倒したのよ。」
「へえ、そうだったんですか。」
「だからね、私が言うのも変だけど、ミディアちゃんも気にしないで、思い切り楽しんじゃった方がいいわよ。」
「ハイ、ありがとうございます。」
普段、あまり会話したことのない従業員さんだったけど、おかげで少しだけ気持ちが軽くなった。
お昼になって、一人で昼食を取っていると、ラーファが疲労困憊の表情で部屋に入ってきた。
「ラーファ、大丈夫?」
「メチャクチャきつかったあ。」
いつものレストランであれば、朝食が終わって昼食の時間帯になるまでの間、少し暇な時間帯があるんだけど、今日は全く暇な時間帯がなかったらしい。
「正直、午後から遊びに行く体力残ってないんだけど・・・」
「エレーネ先輩とアイが並んでくれているんだし、早く行かないと2人に悪いよ。」
「わかってるわよ。」
「それに、琴音も迎えに行かないと・・・」
「今日は少し遅めに来るって言ってたわね。」
「ウン、だから昼食食べ終わってから、ルフィルの遺跡に迎えに行こう。」
ラーファと話しているうちに、私は琴音と初めて会った時のことを思い出した。
あの時はルフィル・コスタの日で、遺跡はちょうど儀式の真っ最中だった。
儀式の最中に、突然、琴音が現われて、すごいビックリしたのを覚えている。
私がそんなことを考えていると、
「琴音と初めて会ってから、色んなことがあったわね。」
どうやら、ラーファも同じことを考えていたみたいだった。
「今日も儀式の真っ最中に現れるのかな?」
「時間的にみて、まず間違いないわね。
そして、ミディアのこと見つけて、まっすぐ飛んでくるわよ。」
ウン、多分ラーファの言う通りになるだろう。
その時の光景が容易に目に浮かぶ。
「あと、今日は琴音、どんな格好で来るか楽しみね。」
ラーファが笑顔でそう言った。
今じゃすっかりなじんでいるラーファも、最初は琴音のことをすごい怖がってたんだよね。
あの時は、2人が仲良くなるのは無理なのかなって思ったけど、今ではすっかり仲良くなった。
ラーファが琴音のことを楽しそうに話すのを見て、本当によかったと思う。
でも、琴音の衣装はあまり期待しないであげてほしい。
昼食を取った後、ラーファと一緒にルフィルの遺跡へと向かった。
予定だと、これからルフィルの遺跡で儀式が始まる。
今回も多分、琴音はその儀式の最中に来ると思う。
ていうか、ぜひ儀式の最中に来てほしいな。
そうすれば、きっと琴音も初めて会った時のことを思い出すだろうから。
「琴音がどんな格好で来るか楽しみだなあ。」
ラーファは相変わらず、琴音の服装のことを気にしていた。
「ラーファ、あんまり琴音にプレッシャーかけないであげてよ。」
「大丈夫、琴音のことだから、きっと少し変えて来るわよ。」
「琴音は旅行に出かけるから、衣装の準備ができないって言ってたでしょ。」
「そう?私は琴音のことだから、絶対に制服だけでは来ないと思うけどなあ。」
本当は、そうだといいなあと私も心の中で思ってたりするけど、過度に期待しすぎるのもなんだか琴音に申し訳ない気がする。
でも、もしかしたら・・・とちょっと期待してしまう自分もいて、なんか複雑な気分だ。
<<琴音>>
今日はルフィル・カロッサの日だ。
だから、またルフィルの遺跡で儀式のようなことをやっているとは思っていた。
でも、まさか、遺跡を埋め尽くすほどの人が押しかけているとは思わなかった。
ルフィル・コスタの時と比べて、圧倒的に人の数が多い。
「いやあ、こっちから見ると壮観だなあ。」
私が現われるのは、儀式が行われている場所のほぼど真ん中なので、大勢の観光客がこっちを見ていた。
初めて来た時は、全然知らない場所だし、みんな私のことに全然気づいていなくて、すごいパニックになったっけ。
あれから何度もラーヴォルンに来ているので、これだけの観光客に囲まれても、さすがにパニックにはならない。
けど、どうやら今回も私の姿に気づいている人はいなさそうだった。
約2名を除いては・・・
大勢の観光客の中で、こっちに向かって大きく手を振っている女の子が1人いた。
ミディアちゃんだ。
観光客が多くても、金髪の人の数は少ないから、すぐに見つけることができた。
その隣では、ラーファちゃんが周りの視線を気にしながら、気まずそうに立っていた。
2人とも、エレーネちゃんが作った私の学校の制服を着ていた。
ウーン、やっぱり2人ともすごいかわいい。
おっと、見とれている場合じゃなかった。
恥ずかしがっているラーファちゃんのためにも、早く2人の元に行ってあげないとね。
「ミディアちゃん、ラーファちゃん、迎えに来てくれたんだ。」
「琴音、その恰好は?」
ミディアちゃんが目を輝かせながら、私のマントを見つめていた。
「それに、その顔に書いてある絵、すごいかわいいね。」
どうやら、ミディアちゃんには喜んでもらえたようだ。
ニコちゃん、本当にありがとう。
「ねえ、とりあえずここを離れよう。」
一方、ラーファちゃんは周りの視線が相当気になっていたようだ。
観光客の何人かは、ミディアちゃん達の方を見て、首を傾げていた。
傍から見たら、ミディアちゃんは空気に向かって話しかけているようにしか見えないのだろう。
「そ、そうだね・・・」
どうやら周囲の視線にミディアちゃんも気づいたようで、急に恥ずかしくなったのか、顔を真っ赤にして下を向いていた。
そんなわけで、ラーファちゃんの言う通りに、とりあえず遺跡から移動することにした。
「とりあえず、海岸に出よう。」
ラーファちゃんはそう言って、海岸に向かって歩き出す。
私とミディアちゃんは、ラーファちゃんの後をついていく。
ルフィルの遺跡は、海岸からそれほど離れてはいないけど、周囲が高い木々で覆われていて、見晴らしはあまりよくなかった。
でも、海に近づくにつれて、視界を遮る木々は徐々に減っていって、海岸に出た瞬間、視界は一気に広がった。
私達の目の前には、いつものラーヴォルン海峡の美しい光景が広がっていた。
でも、今日はそれだけじゃなかった。
「琴音、あっちを見て。」
ミディアちゃんが指した方向を見た瞬間、私は思わず「あっ」と声を上げてしまった。
「あれは、グラド・ルガンテ!!
昨日は点にしか見えなかったのに、こんなに大きく見えるなんて・・・」
ラーヴォルンの少し北の位置まで、グラド・ルガンテは近づいてきていた。
地球では絶対にお目にかかれない浮遊大陸が飛んでいる光景に、私は完全に目を奪われていた。
「実は、私もね、この目でグラド・ルガンテを見るの、これが初めてなんだよ。」
「そっかあ、ミディアちゃんも初めてなんだ。」
「グラド・ルガンテ、きれいな場所だね。」
「ウン、できれば行ってみたいね。」
「私も・・・」
グラド・ルガンテの姿を見たら、きっと誰だって行ってみたいと思うだろう。
だから、これまで多くの人がグラド・ルガンテに挑んだんだろう。
でも、未だに誰も上陸できた者はいないと言う。
ルフィルの住んでいる場所らしいけど、あんな美しい場所を独り占めなんてずるいよ。
「ちなみに、これが上空から見たグラド・ルガンテの地図よ。」
ラーファちゃんがそう言って、私達に映像を見せてくれた。
どうやら、ラーヴォルンがグラド・ルガンテ上空に飛行船を飛ばして、映像をイデアフィールズで配信しているらしい。
その映像によると、大きな山のふもとに、大きな湖があって、山から湖に流れる川のふもとには大きな滝があるらしい。
上空から観察していると、たまに動物の群れが湖に姿を現すそうだが、どれも地上には存在しない生物らしい。
ラーファちゃんの話だと、地上と異なる生態系で独自の進化を遂げた動物じゃないかということだ。
まあ、ルガンテに上陸できないから、全部推測でしかないらしいけど。
「琴音・・・まだ泣くのは早いよ。」
ミディアちゃんがこっちを見て苦笑していた。
「いや、別に泣いてはいないよ。」
確かに、少し目が潤んでいたような気がする。
いつも美しいラーヴォルン海峡だけど、今日はその上にグラド・ルガンテが飛んでいるせいか、なんかすごい幻想的な光景に思えた。
こんな景色をこの目で見られるなんてと思ったら、なんかすごい感動してしまって・・・
でも、ギリギリ泣いてはいない。
目は若干潤んでいたけど、涙はこぼれてないからね。
最近、なぜかみんなから泣き虫と勘違いされているみたいだから、ここはビシッと否定しておかないとね。
特に、今日は日花里ちゃんとニコちゃんが見ているんだし、あまり泣いているところは見せられない。
「私もね、朝起きてグラド・ルガンテが飛んでいる光景を見て、すごい感動したの。
だから、早く琴音に見てもらいたかったんだよ。」
「えっと、ミディアちゃん・・・」
「だから、琴音が泣くほど感動してくれて、私もすごい嬉しいよ。」
「いや、だから、泣いてはいないんだけど・・・」
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
ラーファちゃんがそう言うと、ミディアちゃんは小さく頷く。
本当に泣いてないんだけど、結局このまま話は終わってしまった。
まあ、せっかくのお祭りだから、あまりウダウダ言うつもりはないんだけど・・・
でも、私、本当に泣き虫じゃないんだけどなあ。
「それで、どこに行くの?」
気分を変えて、ミディアちゃんに目的地を尋ねると、
「今日の一番のイベント、ベイ・カロッサの会場だよ。」
ミディアちゃんは笑顔でそう応えた。
そうだった。
ルフィル・カロッサの一番のメインイベントは、ベイ・カロッサと呼ばれるイベントだった。
どんなイベントなのかは、未だに明かされていない。
まあ、会場に着けば、なんとなくわかるかもしれないし、とりあえず今はこの祭りの雰囲気を楽しむことにしよう。
私達は、海岸線に沿って、南街の中心街へと歩いていく。
街はルフィル・カロッサと言うこともあり、大勢の観光客で溢れていた。
あちこちで演奏してたり、お店が出ていたりと、すごい賑やかだった。
そして、今日も海岸は多くの観光客で溢れていた。
それに、今日は上空を飛んでいる飛行船の数もいつもより多かった。
きっと、みんな、グラド・ルガンテを見ているのだろう。
南街の中心街では、ルフィルの衣装をまとった人達によるパレードが行われていた。
いつもと違って、今日は空を飛びまわっている人達も結構いた。
「あれっ、街中で飛空魔法を使うのって、禁止なんじゃあ・・・」
「いつもは禁止なんだけど、このルフィル・カロッサの日だけは特別に解禁になるんだよ。
だから、結構空飛んでる人いるでしょ。」
ミディアちゃんに言われて、山の方を見ると、結構多くの人が山に向かって飛んでいるのが見えた。
一方、海の方はと言うと、多くの船が海峡に出ていた。
「なんか、船の数も多いね。」
「ああ、あれは、空飛ぶのが解禁になったから、海峡を警護しているんだよ。
海に落ちた人を助けられるようにね。」
よくわからないけど、なんかいろいろと大変なんだね。
「でも、警護船だけじゃないよ。
観光船も結構多いんだよ。」
よく見ると、大勢の観光客を乗せた船も結構あった。
まあ、そりゃそうだよね。
ルフィル・カロッサだし、グラド・ルガンテも見えるし。
ラーヴォルン海峡からの眺めも、きっと最高なんだろうなあ。
「おーい、琴音、ミディア、さっさと行くわよ。」
ラーファちゃんに呼ばれるまで、ミディアちゃんとすっかり談笑していた。
ミディアちゃんもすっかり忘れていたようだった。
「早く行かないと、エレーネ先輩とアイに悪いね。」
そう言えば、さっきから気にはなっていた。
エレーネちゃんとアイちゃんの姿が見えないことに。
「エレーネとアイは、ベイ・カロッサのために並んでるのよ。」
ラーファちゃんがそう教えてくれたけど、並んでるってどういうことだろう?
もしかして、ベイ・カロッサって順番で何かやるイベントなのかな?
「エレーネ先輩が朝早くから並んでくれているおかげで、結構前の方らしいよ。」
ミディアちゃんがそう言った。
ベイ・カロッサは参加型のイベントだって言ってたから、参加する観光客も多いし、きっとすごい並んでるんだろうな。
でも、ますますどんなイベントなのか気になってきた。
ベイ・カロッサの会場は、初めてラーヴォルンに来た時に見た絶景ポイントの山をさらに登った山頂にあるらしい。
なんで、そんな高い場所が会場になってるんだろう?
気にはなるけど、とりあえず昨日と同じく、ミディアちゃんとラーファちゃんと一緒に山を登ることになった。
とはいえ、今日はラーファちゃんがミディアちゃんを抱えて登っているので、ミディアちゃんは昨日と違って楽そうだった。
むしろ、ミディアちゃんを抱えて飛んでいるラーファちゃんの方がきつそうだった。
「ゴメンね、ラーファ。重たいでしょ。」
ミディアちゃんがラーファちゃんにそう言うと、ラーファちゃんは首を横に振る。
「ウウン、ミディア軽いから、全然大丈夫よ。
それにね、前からこうやってミディアをギュッと抱えて、飛んでみたいって思ってたんだよね。」
ラーファちゃんは時折きつそうな表情を見せながらも、満足そうな笑みを浮かべていた。
少し前のミディアちゃんだったら、今のラーファちゃんの発言を聞いて、きっと少し引いてたと思う。
でも、今のミディアちゃんは、まんざらでもない表情を浮かべていた。
最近、ミディアちゃんとラーファちゃんの親密度がアップしたような気がするんだけど、何かいいことでもあったのかなあ?
会場に近づくにつれて、徐々に人の数が増えて行った。
ほとんどの人が飛んで会場まで向かっていたけど、中には歩いて山を登っている人達もチラホラ見かけた。
そして、以前見た絶景ポイントまで到着すると、そこで大勢の人が並んでいた。
列はどうやら山頂の方に続いているようだった。
「ウソ、まさかここまで・・・」
これにはミディアちゃんも驚いていた。
「今年は、グラド・ルガンテが来てるし、いつもより参加者が増えるとは思ってたけど・・・
まさかここまでとは思わなかったなあ。」
ラーファちゃんも驚いているようだった。
ラーファちゃんの話だと、例年は会場の広場から少し溢れる程度らしい。
「ここから会場までって、結構距離あったよね?」
「こりゃあ、エレーネとアイにお礼を言わないといけないわね。」
「ウン、そうだね。」
それから、ミディアちゃんとラーファちゃんは、並んでいる大勢の観光客の横を飛んで、山頂にある広場へと飛んで行った。
「すごい!!!」
会場に着いた瞬間、思わずそう叫んでしまった。
山頂の広場って言うから、もっと狭いのかと思ったけど、想像していた以上にかなり広かった。
会場は凄まじい人で溢れかえっていて、お店もいくつか出店していた。
「まあ、山頂と言っても、そんなに高い山じゃないからね。」
確かに、ラーファちゃんの言う通り、ここからラーヴォルンの南街がはっきり見えるし、それほど高い山じゃないんだと思う。
とはいえ、この広さにはビックリだった。
そして、それ以上に、この人の多さにビックリだ。
「ちょっと待ってね。今、ルティアでエレーネに声をかけてみるから。」
ラーファちゃんはそう言うと、目を閉じて集中しだす。
そう言えば、ラーファちゃん達ってテレパシーが使えるんだよね。
普段あまり使うところ見たことないから、使っている姿を見て少し違和感を感じる。
しばらくすると、ラーファちゃんが目を開ける。
「こっちよ。」
私とミディアちゃんは、ラーファちゃんの後をついて行く。
しばらく人の列沿いを歩いて行くと、先頭から20番目ぐらいのところで、エレーネちゃんとアイちゃんが手を振っているのが見えた。
そして、列の先頭の前には、なにやら大きな機械があった。
あの機械は、このイベントと何か関係があるようだけど、一体何に使うんだろう?
少し気になったけど、どうせベイ・カロッサが始まったら、すぐにわかることだし、そんなに気にすることもないかな。
そんなことよりも、今は目先にいるエレーネちゃんとアイちゃんの2人だよ。
2人とも、私の学校の制服を着ていた。
昨日の超ミニスカートはさすがに辞めたんだ。
学校の制服を着ているエレーネちゃんとアイちゃん、すごいかわいいなあ。
4人の制服姿を見て、改めて、みんなの可愛さを再認識したよ。
本当に、このままうちの学校に編入してきてくれないかなあ。
用語集
(1)ルフィル・カロッサ
ラーヴォルンで開かれるルフィルの4大祭りの一つで、もっとも規模の大きなお祭り。
毎年秋に開催される。
(2)グラド・ルガンテ
アトゥア唯一の浮遊大陸。
しかし、これまで誰も上陸できた人はおらず、いつからかルフィルの住む島として神聖視されるようになった。
グラドとは、神聖な人や場所につける称号で、ルフィル説が定着するようになってから、グラド・ルガンテと呼ばれるようになった。
(3)ルフィル・コスタ
ラーヴォルンで開かれるルフィルの4大祭りの一つで、毎年夏に開催される。
(4)イデアフィールズ
放送電波を受信して、映像や音声に変換する機械
また、映像イデアを再生したり、放送を映像イデアに記録することもできる
地球におけるテレビやビデオに相当する。




