26.ARE YOU READY?
<<琴音>>
それから、しばらく私達は、そこでグラド・ルガンテを見ていた。
最初は点にしか見えなかったルガンテがどんどん大きくなって、浮遊大陸の形がわかるくらいになった時には、みんな感動の声をあげていた。
「これが、グラド・ルガンテ・・・」
私は、まだ小さくにしか見えないグラド・ルガンテに釘付けになっていた。
「琴音、そんなにじっと見なくても、明日ラーヴォルンに来たら、はっきり見えるよ。」
ウン、ミディアちゃんの言うことはわかるんだけど・・・
私にとっては初めての浮遊大陸なわけで・・・
結局、私は帰る時間まで、ずっとグラド・ルガンテを見つめていた。
「明日来たら、ラーヴォルン上空にグラド・ルガンテが見えるはずだよ。」
「早く明日にならないかなあ。」
私がそう言ったら、ミディアちゃんはクスッと笑った。
「浮遊大陸ねえ。確かにそれは楽しみね。」
日花里ちゃんの目が輝いていた。
私知らなかったけど、日花里ちゃん、こういうの好きだったんだね。
ちょっと意外だった。
「そろそろバスが到着するよ。」
ニコちゃんがそう言うのとほぼ同時に、バス内にアナウンスが流れた。
バスを降りた私達に、真夏の日差しが容赦なく降り注ぐ。
もしかして、この灼熱地獄の中を歩かないといけないのかあ。
そんなことを思っていたら、
「おーい、ここだ、美咲。」
バス停には、ニコちゃんの親戚のおじさんが待っていてくれた。
「ここからおじさんの車で家に行くからね。」
「初めまして。私、二小柴さんの友達の藤島日花里といいます。
お世話になります。」
「由夢咲 琴音です。よろしくお願いします。」
「あー、どうも。
何もない家だけど、ゆっくり楽しんで行ってちょうだい。」
ニコちゃんのおじさんは、とても優しそうな人だった。
車に乗って10分ぐらいで、ニコちゃんのおじさんの家に着いた。
ニコちゃんの家も大きかったけど、おじさんの家も結構大きかった。
ニコちゃんの家って、もしかしてこの辺で有名な名家なんだろうか?
「お邪魔します。」
玄関でニコちゃんのおばさんに挨拶した後、大きな部屋に通された。
「ゆっくりして行ってね。」
おばさんはそう言って、お茶を出してくれた。
やっぱり、こっちの家も和室なんだ。
部屋には立派な柱時計があった。
「この時計って、ボーンって鳴るの?」
ニコちゃんに聞いたけど、ニコちゃんは何やら探し物をしているようで、すぐに部屋を出て行ってしまった。
「何やってるんだろう?」
「あれじゃないの。バスの中で話していた仮装の衣装でも探してるんじゃない。」
「私は学校の制服でいいんだけどなあ。」
でも、ニコちゃんは、どうやらそうは思っていなかったようで・・・
「おばさん、こないだ来た時にこっちに置いて行った荷物って、どこにやったの?」
「ああ、あれなら2階に・・・」
おばさんの話を聞くと、ニコちゃんはドタドタと二階に駆け上がっていった。
ニコちゃん、まるで自分の家のようだね。
まあ、よく来ているそうだし、半分は自分の家みたいなのかもしれない。
「あったー!!!」
どうやら、お目当てのものが見つかったらしい。
それからしばらくして、再び階段をドタドタと駆け降りる音が聞こえてきた。
そして、一階に降りてきたニコちゃんの足音がどんどん近づいてきて、やがて部屋の扉がガラリと勢いよく開いた。
ニコちゃんは勢いよく部屋に入って来ると、開口一番
「トリックオアトリート、イエーイ!」
ニコちゃんは、ハロウィンの衣装を着ていた。
いや、衣装だけじゃない。
ハロウィンと言えばかぼちゃのマスクだけど、まさかそんなものまでかぶってくるとは思わなかった。
「ニコ、今はまだハロウィンじゃないわよ。」
日花里ちゃん、冷静なツッコミだね。
でも、ニコちゃんは全く気にもせずに、私にこう言った。
「琴音ちゃん、ラーヴォルンにはこれ着て行こうよ。」
「ええっ!?」
「何言ってるの?そんなもの着て、眠れるわけないでしょ。」
日花里ちゃんの言う通りだよ。
あんなかぼちゃのマスクをして眠れるわけがない。
「えー、絶対にいいと思ったんだけどなあ。」
ニコちゃんはよっぽどショックだったのか、落ち込んでしまった。
せっかくニコちゃんが提案してくれたんだし、ここは一部だけでも身に着けて行ってあげるかな。
「じゃあ、ハロウィンマントだけ借りて行くよ。」
「本当に!?」
ニコちゃんに元気が戻った。
「どうせなら、この衣装もどう?」
ニコちゃんは、赤いドレスを着ていて、これが黒いマントとなかなかよく合っていた。
でも、これは一体何の衣装なんだろう?
「私と琴音ちゃんってほぼ同じ体型だから、琴音ちゃんも着られると思うんだ。」
「琴音の方がバストが大きい。」
「もう、うるさいなあ、日花里ちゃんは・・・
ちょっとだけ胸が苦しいかもしれないけど、でも多分大丈夫だと思う。」
確かに、ニコちゃんの着ている衣装はかわいいと思う。
でも・・・・・・
「ありがとう、ニコちゃん。
でも、ミディアちゃん達がせっかく私の学校の制服を着てくるから、私もみんなに合わせて制服を着て行きたいんだ。」
「そっか、それじゃ仕方がないなあ。」
「でも、せっかくニコちゃんが持ってきてくれたから、そのマントだけ借りるね。」
私がそう言ったら、ニコちゃんは笑顔で
「ウン、ありがとう。」
と頷いてくれた。
ニコちゃんも喜んでくれたみたいだし、よかった。
それに、学校の制服にハロウィンマントって、ちょっとかっこいいかもしれない。
これでミディアちゃん達も喜んでくれるといいなあ。
<<ラーファ>>
山を降りると、すっかり日が暮れていた。
これは、またお父さんとお母さんに怒られそうだ。
「今日は夜もすごい賑やかだね。」
ミディアが楽しそうにそう言った。
エレーネとアイと別れて、ルーイエ・アスクの帰り道。
本来なら、私とミディアが2人きりになれる貴重な時間だ。
こうして、ミディアと二人きりで街を歩くのって、滅多にないからね。
「帰ったら、ちょうど夕飯の時間だね。」
「そうね。」
「今日の夕飯は何かな?」
「さあ、何だろうね。」
「夕飯食べ終わったら、また一緒にお風呂に入ろうね。」
ミディアが楽しそうでよかった。
こないだロクな事件があったから、心配してたんだけどよかった。
こんな感じでずっとミディアのことばかり気にしていたからか、曲がり角の向こうから歩いてくる人達に気づくのが遅れた。
曲がり角に差しかかって気づいた時には、もうかわせないところにいた。
ドン!!!
私達は思い切り相手にぶつかってしまい、その場で倒れてしまった。
「ゴメン、君達大丈夫?」
ぶつかったのは、動物の仮装をした二人の男だった。
「すみません。」
「いや、こっちこそゴメンね。
会話に夢中になってて、前を見てなくてさ。」
「いえ、それはこちらも同じです。
本当にすみません。」
「君、すごくかわいいね。」
もう一人の男がミディアに声をかけてきた。
「えっ、わ、私ですか?」
「ウン、俺、君に一目ぼれしちゃったかもしれない。
よかったら、一緒にこれから夕飯でもどう?」
男はそう言って、ミディアの方に近づこうとする。
でも、ミディアは怖いのか、私の背中に隠れてしまった。
ミディアが怯えている。
ここは私が何とかしないと。
「ゴ、ゴメンなさい。
私もこの子も、これから家に帰るところで、両親が夕飯作って待ってるから、ゴメンなさい。」
正直、私もすごい怖かった。
だって、相手も2人だけど、どちらも男の人だ。
2人が本気で怒ったら、私だけでミディアを守り切れるかどうか。
でも、私がそう言うと、男は
「そっかあ、それは残念だ。
もっと、君達と親しくなりたかったんだけどなあ。」
あっさりと引き下がってくれた。
「本当にゴメンなさい。
それじゃあ、これで失礼します。」
私はもう一度男達にそう言うと、ミディアを連れて早足でその場を後にした。
「ちょっと怖かったね。」
男達の姿が見えなくなってから、ミディアが私にそう言った。
「ミディア、男の人に告白されてたわね。」
「そう言えば・・・そうだね。」
今更になって、ミディアの顔が真っ赤になった。
本当に、この子はウブだなあ。
「でも、よかったじゃない。
ミディア、自分には恋人ができないんじゃないかって、ずっと不安に思ってたんでしょ。」
「ウン、でも、さっきは怖さの方が強くて、それどころじゃなかったよ。」
「そっかあ。」
まあ、あんなことがあったばかりだし、見知らぬ人に対して警戒心が強くなるのは仕方がないか。
それに、正直言うと私も少し怖かった。
見ず知らずの男性と話すこと自体あまりない上に、あの人達変な仮装してたからね。
「あの人達、動物の仮装してたけど、もしかして昼間演奏してたのって、あの人達なのかな?」
「さあ、動物の仮装をする人は結構いるからね。
そうとは断言できないんじゃない。」
「そっか、そうだよね。」
しばらくたわいもない会話をしているうちに、あっという間にルーイエ・アスクに到着した。
「えーっと、ラーファ・・・あのね・・・」
ミディアはもじもじしながら、私の服を掴んだ。
ここ最近、その動作には見慣れてはいたけど、制服姿でそれはちょっとエロい。
「ラーファ?」
いけない、ミディアのもじもじに見惚れていた。
「な、なあにミディア?」
「えっとね、今日もね・・・」
「ウン、わかってる。いいわよ。」
ミディアのお願いはわかってたので、私はすぐに返事した。
「ありがとう、ラーファ。」
ミディアはそう言うと、私に抱きついてきた。
ああ、神様ルフィル様・・・願わくば、この至福の時がいつまでも続きますように。
<<???>>
「さっきぶつかった子、すごいかわいかったなあ。」
「それはどっちの子ですか?それとも両方ですか?」
「そりゃあ、もちろん、あの金髪の少女に決まってるじゃないか。」
隣から小さなため息が聞こえてきた。
「あなたは本当に金髪と幼女が好きなのですね。」
「あの子は16歳だろ。
俺と2歳しか違わないじゃないか。」
「あなたは見た目が金髪と幼女だったら、誰でも構わないのでしょう。」
「お前なあ・・・その言い方は彼女に失礼だろう。
そんなこと言ってるから、未だに結婚できないんだよ。」
「クッ!!!」
「ああ、でも、最近では相棒ができたらしいじゃないか。」
「アイツの話はやめてください。」
やっぱり、コイツをからかうのは最高に面白い。
それに、今日はすごいかわいい女の子にも会えたし。
コイツと一緒に来て正解だったようだ。
とはいえ、実際にこの目で見て、ますますよくわからなくなった。
「なあ、さっきの金髪の少女が、ミディア・スフィルラン・ラーヴォルンだよな。」
「ハイ。そして、一緒にいたのが、ラーファイム・ルーイエ・ラーヴォルン。
2人ともリッカ・モンディールの報告にあった子達です。」
「信じられんな。
俺にはごく普通の女の子にしか見えなかったんだが。」
「もしかしたら、あの2人は知らないうちに厄介なことに巻き込まれているだけなのかもしれません。」
「報告書にあった『コトネ』の仕業とか?」
「さあ、それも今のところは何とも言えません。」
リッカ・モンディールの報告書を見せてもらったが、結局謎が深まるだけだった。
「それで、やっぱりお客さんはたくさん来ているのか?」
「ええ、私の部下の報告だと、かなりの数が入ってきている可能性があるそうです。」
「こりゃあ、明日のルフィル・カロッサは、違う意味でも盛り上がるかもしれないな。」
「できれば、そうなってほしくはないです。」
まあ、できれば俺も明日は純粋にルフィル・カロッサを楽しみたい。
噂には聞いてたけど、実物のルフィル・カロッサを見るのはこれが初めてだし。
「じゃあ、本人確認もできたことだし、さっさと飲みに行くぞ。」
「またですか?最近少し飲みすぎですよ。」
「だって、18歳になるまでずっと飲むのを我慢してたんだぞ。」
「ハイハイ、わかりましたよ。」
周りの大人たちがうまそうに酒を飲むのをずっと見てきたから、小さい頃から酒を飲んでみたいと思ってた。
でも、法律で18歳になるまでは飲んではいけないと言われて、今までずっと我慢してたんだ。
18歳になったんだし、少しぐらい飲みすぎても構わないだろ。
「それにしても、あの2人、変わった格好をしていたな。」
「明日のルフィル・カロッサに着て行く衣装じゃないですか?」
「多分そうだろうな。それはそうと、気づいたか?」
「ええ、あの服・・・何か仕掛けてありましたね。」
「まあ、それくらいのことはしてもらわないとな。
そんなことより、さっさと飲みに行こう。」
<<エレーネ>>
私は、夕食後のお風呂に入りながら、これまでのことを色々と思い出していた。
「みんなに明日の衣装も渡せたし、これで準備完了だな。」
何だかんだで、結構お金かかっちゃったけど、個人的にはすごく満足だ。
だって、みんなと同じ衣装でベイ・カロッサに参加できるからね。
毎年、なぜかいつもルフィル・カロッサの衣装に関しては、意見がまとまらなかった。
ミディアもラーファもアイも、衣装に関してあまり関心が高くなかったからね。
琴音の制服じゃなかったら、きっとこんなにうまくまとまらなかったと思う。
本当に、琴音には感謝だな。
それに、今回お揃いの制服を着て行くことには、もう一つ重要な意味があった。
実は、みんなの制服に、こっそりとイデアトロンを仕掛けさせてもらった。
これさえあれば、よっぽど遠くに行かない限り、ミディア達の居場所を把握することができる。
イデアトロンは、使い方によっては、今話していることや何をしているかまで全てわかってしまう。
だから、イデアトロンはプライバシーを著しく侵害するものということで、ラーヴォルンでは使用が禁止されていた。
私も本当はこんなものを仕掛けたくなかったんだけど、
「私は、ミディアに嫌われることよりも、ミディアがいなくなってしまうことの方が嫌です。」
アイにそう言われて、仕掛けることにしたんだっけ。
そう、イデアトロンを仕掛けることは、私とアイで決めたことだ。
ミディアとラーファには、あの事件のことをできるだけ思い出してほしくなかったからね。
とはいえ、もしかしたらお母さんにも迷惑をかけることになるかもしれないから、お母さんにも相談したんだけど、
「見つかったら、私が責任取ってあげるから、思い切りやりなさい。」
逆に背中を押されてしまった。
話を聞くと、お母さんもあの事件のことをずっと不安に思っていたらしい。
ちなみに、今回仕掛けたイデアトロンは全てお母さんが用意してくれた。
でも、あのイデアトロン、一体どこで入手したんだろう?
「いい、ルフィル・カロッサが終わったら、きちんと回収するのよ。」
「ウン、わかってる。ありがとう、お母さん。」
本当にお母さんとアイには感謝だ。
「エレーネ。」
突然頭の中にラーファの声が聞こえてきた。
「ラーファか、こんな時間に珍しいな。」
「今からちょっとラヴォルティアに来れる?」
「ラヴォルティアに?
いいけど、今お風呂に入ってるところだから、少し待ってくれ。」
「わかったわ。」
ラーファからラヴォルティアにお誘いとは珍しい。
明日のことで、何か相談でもあるのかな?
あまり、待たせるわけにもいかないので、さっさとお風呂から上がることにした。
明日は早いし、早く寝たかったんだけど、ラーファからのお誘いとあれば仕方がないね。
精神を集中して、ルティアを唱えると、意識を仮想空間ラヴォルティアへと飛ばした。
ラヴォルティアでは、意識が最初に到着する場所を決めることができる。
私やラーファは、街の外れに作った小さな小屋を最初の場所にしていた。
こんな小さな小屋だけど、手に入れるのには非常に苦労した。
仮想空間の家だから、実際の家ほどじゃないけど、結構お金かかったし。
私がラヴォルティアに到着すると、既にラーファが待っていた。
「待たせたな。」
私がラーファにそう言うと、ラーファは首を横に振った。
「ウウン、そんなに待ってないわ。
それに、色々考え事してたし。」
「そっか。」
「ここから街の眺め、結構きれいよ。」
ラーファに言われて、小屋の窓から街の景色を覗くと、上空には一足早くグラド・ルガンテが到着していた。
「明日は、あれが現実の光景になるんだな。」
「そうね、今からすごい楽しみだわ。」
「で、こんな時間に呼び出して、一体何の用だ?」
私がそう聞くと、ラーファは私の方を見た。
「エレーネ、明日は最高に楽しい思い出を作ろう。」
えっ、そんなことを言うために、私をわざわざラヴォルティアに呼び出したの?
そんなこと、ラーファに言われるまでもなく、みんなそう思ってるだろう。
それでも、わざわざ私を呼び出して、そんなことを言うとなると、考えられることは一つしかない。
「なあ、ラーファ、ミディアと何かあったのか?」
私がそう尋ねると、ラーファの表情が少し曇った。
「最近ね、私、ミディアと毎晩一緒にお風呂に入ってるの。」
「へえ、そりゃあよかったじゃない。」
「それだけじゃなくてね、最近、ミディアと一緒に寝ているの。」
「そうなんだ。」
「おかげで、私興奮しすぎて、ここ数日ずっと寝不足状態よ。」
「・・・・・・」
ラーファはミディアのことが大好きだから、すごい嬉しいことなのかもしれない。
けど、そんな話を聞かされて、私はどう反応すればいいんだろう。
「よ、よかったじゃないか。
ミディアのこと大好きなラーファにとっては夢のような時間だろ。」
「そうね、確かに私にとっては夢のような時間よ。
でも、ミディアにとってはどうなんだろう?」
ラーファの表情が一層曇った。
「エレーネも気づいてたでしょ。
ここ数日、ミディアが私にベッタリだったことに。」
「ああ、確かに少し変だなとは思ってたけど・・・」
「誰にも話さないでほしいってミディアに言われてるんだけどね。
ミディア、あの事件があってから、一人で寝るのが怖いらしいの。」
「えっ!?」
私達4人で遊んでいる時はいつもと変わらないけど、外に出ると、ラーファの近くにいることが多いなあとは思ってた。
でも、まさか、そこまで深刻だったとは思わなかった。
「ミディアが私のことを頼ってくれるのは、すごい嬉しいの。
私もミディアと一緒にいられて嬉しいし。
でも、いつまでもこのままでいいとは思わない。」
「だから、最高の思い出なのか?」
「最高に楽しい思い出ができたら、きっとミディアの不安も消えてなくなると思うの。」
「そうなったら、夢のような時間がなくなっちゃうかもしれないぞ。」
「それはそれで寂しいけど、一番大事なのはミディアに立ち直ってもらうことでしょ。」
ラーファはそう言って、ニッコリと笑った。
全く、この子はどれだけミディアのことが好きなんだ。
ラーファは立派なミディアの姉になりたいって言ってたけど、今でも十分立派な姉をやってると思う。
「わかった。
明日は、ミディアの不安をかき消してしまうくらいの再興に楽しい一日にしようぜ。」
「ウン、ありがとう、エレーネ。」
ラーファは笑顔で頷いた。
ウン、最高に楽しいルフィル・カロッサにしよう。
<<琴音>>
「ねえ、ニコちゃん、本当にこれやるの?」
あの後、ニコちゃんに
「マント以外にもせめて、ペイントだけでもやって行ってよ。」
と言われて、気軽にOKと言ってしまったのが仇となってしまった。
夕飯を食べて、お風呂から上がると、ニコちゃんがツール一式を用意して待っていた。
「琴音ちゃん、ほっぺにかわいいの書いてあげるからね。」
それから、1時間以上かけて、ニコちゃんにほっぺにかぼちゃの絵を描いてもらうことになった。
「どう琴音ちゃん、可愛いでしょ。」
確かに、ニコちゃんの書いたかぼちゃのお化けのペイント、すごいかわいい。
でも、かぼちゃのお化けというより、かぼちゃの娘だよこれは。
「それにしても、これから寝る格好にはとても見えないわね。」
日花里ちゃんにそう言われた。
確かに、学校の制服にハロウィンマント、顔にはかぼちゃのお化けのペイントだからね。
どう見ても、これからどこかに出かける格好にしか見えない。
「何言ってるのよ。これからラーヴォルンに出かけるんでしょ。」
確かにニコちゃんの言う通りなんだけど、これからやることは寝ることなわけで・・・
「もういい時間だし、そろそろ寝よう。」
日花里ちゃんに言われて時計を見ると、いつの間にか0時30分を過ぎていた。
「ウン、そうだね。」
私は3つに並んでいる布団の真ん中に入った。
スカートとマントを身に着けた状態で、布団に入るのは非常に苦労したよ。
だって、すぐにめくれ上がるからね。
まあ、スカートがめくれ上がっても、下に短パンはいてるからいいんだけどね。
そして、私の右側の布団には日花里ちゃんが、左側の布団にはニコちゃんが入った。
そして、日花里ちゃんとニコちゃんと手をつないだ。
「本当にこんな格好で眠れるのかな?」
「琴音だったら、大丈夫でしょ。
電気消したらすぐに眠ってるし。」
ニコちゃんはそう言うけど、少し不安だ。
「琴音ちゃん、ラーヴォルンがどんなところなのか、今から楽しみだよ。」
「ニコちゃんは初めてのラーヴォルンだよね。
きっと気に入ると思うよ。」
「じゃあ、電気消すわよ。」
日花里ちゃんが電気を消して、部屋は真っ暗になった。
みんなと楽しい思い出が作れるといいなあ。
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
さあ、いよいよルフィル・カロッサだ。
(1)ルフィル・カロッサ
ラーヴォルンで開かれるルフィルの4大祭りの一つで、もっとも規模の大きなお祭り。
毎年秋に開催される。
(2)グラド・ルガンテ
アトゥア唯一の浮遊大陸。
しかし、これまで誰も上陸できた人はおらず、いつからかルフィルの住む島として神聖視されるようになった。
グラドとは、神聖な人や場所につける称号で、ルフィル説が定着するようになってから、グラド・ルガンテと呼ばれるようになった。
(3)イデアトロン
イデア技術を利用した探知機。
つけた人のいる場所のみならず、使い方によっては話していることや、今何をしているかなどがわかってしまう。
そのため、プライバシーを著しく侵害するアイテムと言うことで、ラーヴォルンでは使用が禁止されている
(4)ラヴォルティア
ラーヴォルンが用意した仮想空間
ラヴォルティアに意識だけを転送することで、実際に会わなくてもいつでもコミュニケーションが取れる
ミディアがまだ使えないので、ラーファ達はあまり使っていない。




