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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
69/254

23.突然のお泊り回と一抹の不安

<<ミディア>>

 普段は左側に曲がる交差点を、今日は右に曲がった。

 しばらくすると、小さな砂浜が見えてきた。

「うわあ、きれいな砂浜。」

 琴音は感動していた。

 たしかにここはきれいな砂浜だけど、観光地から外れたところにあるので、普段はあまり人が来ない。

 そして、私達が来た時も、ほとんど人がいなかった。

「それで、こんなところに来たってことは、私に話してくれるってことかな?」

 アイがそう言って、私の顔を見た。

 そのアイの表情は、なんかいつもよりも優しい表情に思えた。


『私ね、これからもずっとミディアとは親友でい続けたいと思ってるんだ。

 学校にいる間はもちろん、大人になって別々の道を行くことになっても、ミディアとはずっとずっと親友のままでいたい。』


 昨日見たアイのイデアの言葉を思い出した。

 その時のアイの言葉と、今のアイの表情が相まって、思わず涙が出そうになった。

 何も言わなくても、アイが、すごい私のことを心配してくれていることはわかった。

 やっぱり、2人にはきちんと話さないといけないと思った。

 私は、昨日の晩から起こったこと全てをアイと琴音に話した。


 全てを話し終わると、さすがに琴音もアイも絶句していた。

「まさか、ラーファちゃんがミディアちゃんを・・・信じられない。」

 琴音は完全に言葉を失っていた。

 しかし、アイは最初こそ驚いていたものの、すぐにいつもの表情に戻った。

「ねえ、ミディア、ラーファ先輩は別人みたいだったって言ったよね。」

「ウン・・・本当に別人みたいだった。」

「それ、本当に別人だったのかもしれない。」

 アイの言葉に、私は驚いた。

「私、ラーファ先輩がミディアのことをすごい大事にしているのを知ってる。

 だから、ラーファ先輩がミディアを傷つけるようなことするなんて、どうしても思えない。」

「じゃあ、あの時のラーファは一体・・・」

「だから、別人だったんじゃないの。

 この世界には憑依魔法って、人に乗り移ることができる魔法があるって言うし。」

 憑依魔法・・・そんな魔法があるんだ。

 今初めて知った。


「ミディアちゃん、今、ラーファちゃんとエレーネちゃんはラーファちゃんの部屋にいるんだよね。

 よかったら、前みたいに私が潜入して様子を見て来るけど・・・」

 琴音は私を気遣ってくれたのだろうけど、今の話を聞いて、私は自分の目でラーファに会って確かめたいと思った。

「ウウン・・・私、ラーファに会って、自分の目で確かめる。」

「ウン、やっぱりそれが一番いいと思うよ。」

 とその時、琴音の体が光り出した。

 気がつけば、いつの間にか帰る時間になっていた。

「琴音、今日はゴメンね。

 今日は私のせいで、全然楽しくなかったでしょ?」

「ウウン、そんなことよりミディアちゃん、明日、また話をちゃんと聞かせてね。」

「ウン、わかった。」

「私は、ラーファちゃんは今までと何にも変わっていないと思うよ。

 だから、ミディアちゃん、心配しなくていいよ。」

 琴音はニコッと笑顔でそう言って、光の中へと消えて行った。

「ウン、私もそうだと信じてる。」


 琴音と別れた後、私はアイと一緒にルーイエ・アスクに戻ることにした。

「待って、ミディア・・・私も一緒に行く。」

 私はアイと一緒に、走ってルーイエ・アスクに戻ることにした。

 でも、寄り道のために曲がった場所にもうすぐ戻るところまで来た時だった。

 突然、目の前に凄まじい速さで光が近づいてきた。

「えっ!?」

 あまりの速さにかわすこともできない。

 驚いているうちに、光は私に直撃して、私は思わず目を瞑って、その場にしゃがみこんでしまった。


「ミディア・・・大丈夫・・・ミディア?」

 しばらくして、アイの声が聞こえてきた。

 そっと目を開けると、アイが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「大丈夫、ミディア?」

 そっと、立ち上がってみて、体を動かしてみる。

 どうやら、体に異変はないみたいだった。

「ウン、大丈夫みたい。

 それよりもアイ、さっきの光は?」

「わかんない。

 ミディアに直撃したと思ったら、元来た方向にすごい速さで戻っていったみたい。」

「そう・・・」

 あの光がなんなのかわかんないけど、とりあえず何事もなくてよかった。


 ラーファに会って確認したい。

 その一心で、家に着くなり階段を一気に駆け上がって、ラーファの部屋の前までやってきた。

 あとは、部屋の扉を開けて、中に入るだけ。

 でも、ここに来て、なぜか足が震えて、一歩も動いてくれない。

 あのラーファは別人で、今は私の知っているラーファに戻っているって信じているはずなのに・・・どうして・・・

 その時、アイが私の肩にそっと手を置いた。

「大丈夫だよ、ミディア・・・私も一緒についててあげるから・・・

 ミディアが扉を開けたら、いつもの優しいラーファ先輩が迎えてくれるよ。」

「でも、もし・・・違ったら・・・」

「その時は、私がミディアの盾になってあげる。

 でも、そんなことにはならないと私は信じてるけど。」

 アイの自信満々の笑顔が、私に勇気をくれた。


 コンコン・・・


「ハイ。」

 中からラーファの声が聞こえてきたので、そっと部屋の扉を開けた。

「ミディア・・・」

 部屋の中には、エレーネ先輩もいた。

 ずっと、ラーファの傍に付き添っていたみたい。

 そして、ベッドにはラーファが横たわっていた。

「ラーファ・・・」

 私は部屋に入ろうとしたけど、なぜかエレーネ先輩が私の前に立ちはだかった。

 なんか、エレーネ先輩の顔、すごい怖い。

「お前・・・本当にミディアか?」

「ハイ・・・そうですけど・・・」

 そう返事しても、エレーネ先輩はなかなか私を部屋に通してくれない。

 どうしてだろう?

 そう思っていると、

「ミディアだったら、ずっと私と一緒にいました。

 大丈夫、ミディアは憑依されてませんよ。」

 アイがそう言うと、エレーネ先輩はようやく私を部屋に通してくれた。

 どうやら、エレーネ先輩は私が憑依されているんじゃないか疑ってたみたいだった。

 アイのおかげで部屋に入れてもらえたけど、なんか複雑な気持ちだ。


「ミディア・・・大丈夫?」

 私が部屋に入った時のラーファの第一声はそれだった。

 自分の方がよっぽど大変なのに、私のことを気遣ってくれる。

 ウン、これはいつものラーファだ。

「私なら大丈夫だよ。そんなことより・・・」

 ラーファの方こそ大丈夫?

 そう聞こうとしたけど、それはできなかった。

「そう・・・よかった・・・本当によかった・・・」

 ラーファの目から大粒の涙がこぼれる。

 本物のラーファは、私のことを自分のことのように心配してくれる優しい女の子だ。

 間違いない。これは私が大好きで憧れているいつものラーファだ。

 そう思ったら、私の目からも自然と涙がこぼれてきて、気がついた時にはラーファの元に駆け寄っていた。


「いやあ、どうやってミディアの誤解を解こうか悩んでたんだけど、そんなこと考える必要なかったみたいだな。

 それに、どうやらミディアも無事だったみたいだし、よかったよかった。」

 しばらくして、私とラーファが落ち着いてから、エレーネ先輩が笑いながらそう言った。

「よかったね、ミディア。」

 アイもそう言ってくれた。

「ところでさあ、今日、私、ここに泊まって行ってもいい?」

 エレーネ先輩が突然そう言いだした。

「お誕生会の翌日にお泊り会なんて言ったら、さすがに怒られるかもしれないけどさ。

 でも、なんていうか、そうしたい気分なんだよね。」

「なんかわかります。その気持ち。」

 アイも頷いた。

 こうと決めたら、2人とも行動が早かった。

 早速ラヴィおばさんのところに話に行った後、着替えを取りに一旦家に帰っていった。


「相変わらず、エレーネはこうと決めると行動が早いわね。」

 ラーファはクスッと笑った。

「本当だね。」

 気がつけば、この部屋は私とラーファの2人きりになっていた。

 でも、もう怖いとは感じなかった。

「なんか、今日は大変な一日だったね。」

「何言ってるのよ。

 これからがもっと大変になるわよ。」

 確かに、ラーファの言う通りだ。

 エレーネ先輩とアイが家に泊まりに来たら、きっと夜通し賑やかで大変だろう。


「ラーファイム、この部屋で4人も寝るのは狭いだろうから、昨日の部屋に布団を敷いておくわね。」

 ラヴィおばさんが部屋に入ってきて、そう言った。

 どうやら、ラヴィおばさんはエレーネ先輩の申し出を快諾したみたいだ。

「ありがとうございます。ラヴィおばさん。」

「そんなことより、ゴメンね、ミディア。

 あなたを怖い目に合わせてしまったみたいで。」

「ウウン、ラヴィおばさんのせいじゃないですよ。」

「今日は、うんとごちそう作るからね。」

 ラヴィおばさんはそう言うと、部屋を出て行った。


「お母さん、明るく振る舞ってるけど、あれは結構落ち込んでるわね。」

 ラーファがそう言った。

「えっ、どうして?」

「そりゃあ、ミディアを危険な目に合わせちゃったからに決まってるじゃない。」

「私だけじゃなくて、ラーファもでしょ。」

「でも、別にお母さんのせいじゃないんだけどなあ。」

 ラーファの言う通り、私もラヴィおばさんが責任を感じることはないと思う。


「自分がすぐ近くにいたのに、ラーファの異変に気づけず、ミディアを危険な目にあわせてしまったことに、すごい責任を感じてるんだと思うよ。」

 いつの間にか、エレーネ先輩が部屋の入口に立っていた。

「なんか、今回の事件、すごい勢いで広まってるわよ。

 私のお父さんですら知っていたくらいだから。」

 アイも部屋に入ってきた。

「今回の事件で、ルーイエ・アスクに悪い評判とか起きないといいんだけどね。」

 エレーネ先輩も心配していた。

「なんせ、いきなりロビーに憲兵隊が入ってきたって話だしなあ。

 私がラーファと一緒にルーイエ・アスクに戻ってきた時には、もう憲兵隊がいたからね。」

「それに、学校の魔法結界が作動したこともあって、ニュースにもなってるみたいよ。」

 イデアフィールズをつけると、さっそくニュースがやっていた。


『本日、ラーヴォルン南魔法学校で、魔法結界が発動する事件がありました。

 憲兵隊の捜査の結果、犯人は、ルーイエ・アスクに宿泊していたリッカ・モンディールと判明しました。

 リッカ・モンディールは少女に憑依して魔法学校に入ろうとしたところを、魔法結界に阻まれたようです。

 憑依された少女は、ひどく衰弱しきっているものの、命に別状はないようです。

 現在、憲兵隊がリッカを捜索中です。』


 思い切り、ルーイエ・アスクの名前が出ちゃっている。

 変な風評被害とかなければいいんだけど・・・


 夕飯はラヴィおばさんがごちそうを作ってくれた。

 昨日もお誕生会でごちそうしてくれたのに、2日続けてなんか申し訳ない気分になった。

 ラヴィおばさんは終始明るい表情を見せていたけど、内心はどうなんだろう。

 なんかすごい気になった。

 とその時、レームおじさんが居間に入ってきた。

「さっき、憲兵隊から連絡があって、犯人が捕まったそうだ。」

 それを聞いた瞬間、みんなから一斉に歓声が上がった。

 イデアフィールズをつけると、ちょうどニュースで憲兵隊に連行されるリッカ・モンディールの姿が映し出されていた。

「よかったわね、ミディア。これでもう大丈夫よ。」

 ラーファは私の方に駆け寄ろうとしたけど、体がまだうまく動かないらしく、倒れそうになったところをエレーネ先輩が支えられた。

「まだ無理したらダメだからな。」

「ありがとう、エレーネ。」


 この後、私達は一緒にお風呂に入った。ただ、

「なんか、今日はいつも以上に汗かいてて、すごい気持ち悪いんだけどなあ。」

 ラーファはそう言って、お風呂に入りたがってたけど、この時間になってもまだ体力が回復していないので、朝起きてから入ると言って、一足先に部屋に戻っていった。

「チェッ、ラーファ先輩と一緒にお風呂に入れると思ったのに・・・」

 アイはすごい残念がってたけどね。


 お風呂から上がると、ラーファは既に眠っていた。

「よっぽど疲れてるんだろうな。仕方がないなあ。」

 エレーネ先輩はラーファの寝顔を見ながら、優しくそう言った。


<<アイ>>

 ラーファ先輩、すごい気持ちよさそうに眠ってる。

 ラーファ先輩の家に泊まるの久しぶりだったし、本当は夜通し色々お話ししたかったんだけど、仕方がないね。

 イデアフィールズをつけると、またリッカのニュースがやっていた。

 ラーヴォルンにとって、それだけ重大なニュースだってことはわかるけど、さすがにもういいんじゃないかな。

 それに、ルーイエ・アスクの名前を執拗に出すのもやめてほしい。


「そうだ、リッカがどこで捕まったか知ってる?」

 エレーネ先輩が私とミディアに聞いてきた。

 そういえば、どこで捕まったんだっけ?

「実は、ルーイエ・アスクの少し離れた潜伏先で倒れていたところを捕まったらしいんだよ。」

「どうして倒れていたんですか?」

「さあ、でもルーイエ・アスクの近くに潜伏していたってことは、きっと、まだミディアのことを狙ってたんだろうね。」

 ミディアの背筋がぶるっと震えた。

「ど、どうして私なんかを・・・

 私なんかよりも魅力的な女の子はたくさんいると思うんだけど・・・」

「人の好みなんて千差万別でしょ。

 あのド変態はミディアが好みだったって、それだけのことじゃないの。」

 思わず吹き出しそうになった。

 エレーネ先輩の中では、リッカはもう完全にド変態扱いなんだ。

 同じことを思ったのか、ミディアも笑っていた。

「とにかく、もう犯人は捕まったんだし、ミディアはもうあまり気にしないこと。」

「そうそう、これで思い切りルフィル・カロッサも楽しめるし、よかったじゃない。」

「そう言えば、もうすぐルフィル・カロッサだったね。」

「何、もしかして忘れてたの、ミディア?」

「冗談だよ、アイ。

 楽しみだね、ルフィル・カロッサ。」

 ミディアは楽しそうに笑った。

 よかった、ミディアはもう大丈夫みたいだ。


「私、ちょっと、トイレ行ってくるね。」

 ミディアにそう言って、私は部屋を出た。

 部屋から少し離れた場所でしばらく待っていると、エレーネ先輩がやってきた。

「なんだ、話って?」

 実は、部屋を出る直前に、ルティアでエレーネ先輩に声をかけておいたのだった。

 どうしても、エレーネ先輩に聞いてもらいたい話があったから。

「ミディアはどうしてますか?」

「ミディアならそろそろ寝たいって言ってたなあ。」

「ミディアって、いつもこんなに早くに寝てるの?」

「だから、寝る前にトイレに行くって言ってたぞ。」

 エレーネ先輩がそう言うとほぼ同時に、ミディアが私達のところにやってきた。

「あれっ、エレーネ先輩とアイ、こんなところで何やってるんですか?」

 しまった、ミディアに見つかってしまった。

 どうしよう、ミディアには聞かれたくない話なんだけどなあ。

「ああ、これからアイの新作話を聞かされるところなんだけど、ミディアも聞いていくかい?」

 エレーネ先輩がそう言うと、ミディアは

「いえ、私は遠慮しておきます。おやすみなさい。」

 ミディアはそう言って部屋に戻っていった。

 ミディアが部屋に戻ってくれてよかったけど、なんか納得いかない。


「で、どんな話を聞かせてくれるのかな?」

 エレーネ先輩の表情がさっきまでと変わった。

 何て言うか、さっきまで歓談していた時の表情と全く違う。

 もしかして、エレーネ先輩も同じことを考えてるのかも・・・

 自分の気にしすぎかもと思って、話すのを考えてたんだけど、少し勇気が出た。

「私のお父さんが、ホラーイデア作ってるのを知ってますよね。」

「えっ・・・ああ、まあ・・・」

 自分の想定していた話と方向性が違っていたようで、エレーネ先輩の表情が少し戸惑った表情に変わった。

「以前、お父さんが教えてくれたんですけど、見ている人を怖がらせる効果的な方法って何か知ってますか?」

「そりゃあ、突然、背後からワッと出てきて驚かせるとかじゃないの?」

「私もそれが一番だと思うんですけど、でも、お父さんの意見は違うんです。

 お父さん曰く、一番は助かった、これで安全だと思わせておいて、その後で一気に奈落の底に叩き落とすのが最高なんだそうです。」

「なんだそりゃ。

 それは単にお前のお父さんの趣味じゃないのか?」

「まあ、私もそうだと思うんですけどね。

 私が言いたいことは、そう言うことじゃないんですよ。

 なんか今のこの状況とすごく似ているなあって・・・」

「つまり、今は奈落の底に落とされる前に与えられた安全な時間ってこと?」

「変ですかね?

 犯人が捕まったって聞いた時、ミディアとラーファ先輩がすごい喜んでたでしょ。

 私はその様子を見て、なぜかお父さんのその話を思い出して逆に不安になっちゃったんです。

 エレーネ先輩も、私が変なことを考えていると思いますか?」

「いや、全然変じゃないよ。」

 即答だった。


「ミディア達にはリッカのことをド変態って言ったけどね。

 いや、まあド変態ではあるんだけど、ただのド変態だとは思えないんだよね。

 憑依魔法なんて一般人が使える魔法じゃないからね。」

「確かに・・・」

 私も、お父さんがホラーイデア製作で憑依ものを作っていなければ、多分憑依魔法の存在を知らなかったと思う。

「私が思うに、リッカは別の目的でここに来て、ラーファに憑依した。

 その目的は、多分ミディアに関する調査だったんだと思う。」

「ミディア・・・ですか?」

 それから、エレーネ先輩は私に自分の考えていることを話してくれた。

 リッカの目的は、3年より前のミディアと関係あるんじゃないかって言うのが、エレーネ先輩の考えだった。

 確かに言われてみたら、私達は3年以上前のミディアのことを全く知らない。

 さすがはエレーネ先輩、色々と考えているなあ。

 でも、私の意見はエレーネ先輩とは少し違った。


「私は琴音が目的だと思っていたんですけど・・・」

 私がそう言うと、エレーネ先輩の表情が変わった。

「しまった、どうしてその可能性を考えなかったんだろう?

 そう言えば、ミディアが奴は自分のイデアを見ていたって・・・マズイぞ。」

 エレーネ先輩は慌てて階段を上がっていく。

 後を追いかけると、ミディアの部屋の前に着いていた。

 ミディアの部屋は、真っ暗だった。

 壊された窓は修復されていたけど、部屋は朝のまま荒れていた。

 エレーネ先輩は、ミディアの部屋に入ると、散らばっていたイデアを片っ端から確認していった。

「ちょっと、エレーネ先輩・・・勝手に人のイデアを見るのは・・・」

「ミディアのイデアなんて、私達の見たことあるものばかりでしょ。

 そんなことより、見つけた。」

 エレーネ先輩はそう言って、私にあるイデアを手渡した。

 そのイデアの中を見て、ようやく私もエレーネ先輩が何を気にしていたかわかった。


「これは、以前、ラーファ先輩が念写した琴音のイデアですね。」

「リッカは、もしかしたら憑依する前から、私達の会話とかから、琴音の存在に気づいていたのかもしれない。

 ラーファに憑依したのは、琴音の存在を確認するためだったのかもしれない。」

「でも、ミディアやラーファ先輩に憑依したからといって、琴音が見えるとは限らないんじゃ。」

「そこをはっきりさせたかったんじゃないかな。

 憑依するだけで見えるのか、それとも憑依しただけでは見えないのかを。

 まあ、琴音が来る前にラーファから離れちゃったみたいだから、確認できずじまいのようだけど。」

「まあ、リッカは捕まったから、もう確認することもできないでしょうけど。」

「彼女にはね。でも、私はリッカに仕事を依頼した連中がいると思っている。

 大体、スパイなんて誰かから依頼されて仕事するもんでしょ。

 多分、このイデアのデータは、依頼元に転送済みだと思った方がいいだろうね。」

 エレーネ先輩の話を聞いて、背筋に冷たいものが走った。

 もし、そうだとしたら、これからもまた狙われる危険があるってことじゃない。

 そう言えば、夕方、ミディアに正体不明の光が向かってきたけど、あれってやっぱり・・・


「へえ、そんなことがあったんだ。」

 エレーネ先輩に話すと、エレーネ先輩は驚いた表情になった。

「あれって、まさか・・・」

「多分、リッカ・モンディールだろうね。

 でも、弾き返されたんだろう。

 リッカはその衝撃で意識を失ってしまって、憲兵隊に捕まったのかもしれない。」

「弾き返したって・・・ミディアがですか?」

「ウウン、やっぱり、ミディアにもいるんだ。」

 エレーネ先輩はそう言うと、なんか一人で納得してしまった。

 でも、私にはなんのことかちんぷんかんぷんだ。

「ねえ、エレーネ先輩・・・私にもわかるように教えてくださいよ。

 ミディアに何がいたんですか?」

 でも、エレーネ先輩は、それ以上は何も話してくれなかった。


<<エレーネ>>

 リッカに襲われた時に、ミディアがリッカを弾き飛ばしたという話を聞いた時は、ミディアすごいなあとしか思わなかった。

 でも、さっきのアイの話を聞いて確信した。

 ミディアにも、私と同じように守護人がいるんだ。

 私の守護人は兄貴だけど、ミディアの守護人は、きっとミディアのお母さんだ。

 ミディアがよく夢に出てくるって言ってたし、多分間違いない。

 守護人は魂を分け与えられた存在だから、本人が亡くなっても守護人は生き続けるって聞いてたけど、どうやら本当らしい。

 ミディアのお母さんは、今でもミディアのことを守っているんだ。

 よかったな、ミディア。


 ただ、今周囲で起こっていることを考えたら、このことはあまり人に話さない方がいいと思った。

 守護人ってのは、ピンチに陥った時の切り札的存在だからね。

 だから、切り札がみんなに知られてしまうのは、よくない。

 このことは、アイはもちろん、ミディアにもラーファにも内緒にしておこう。

 部屋に戻るまでの間、アイはしつこく私に聞いてきたけど、部屋の前までつくとようやく諦めてくれたようだ。


 部屋に入ると、布団が4つ並んでいた。

 そして、真ん中の2つにはミディアとラーファが並んで眠っていた。

「ミディア・・・本当にもう寝ちゃったんだ。」

 アイは溜息をついていた。

「まあ、今日はいろいろあったんだし・・・仕方がないよ。」

「それはわかるんですけど・・・せっかくのお泊り回なんですよ。

 もっと、色々話したかったなあって思うんですよ。」

「まあ、気持ちはわからんでもないけど・・・」

 その時、布団で眠っていたミディアが体を起こした。


「もう、おそいよ2人とも。

 待ちくたびれて、本当に眠っちゃうところだったんだから。」

「ミディア・・・起きてたの?」

「すごい眠たいから、あまりお話とかできないけど、でもね・・・」

 ミディアはそう言うと、左手を差し出してきた。

 よく見ると、ミディアの右手はラーファの左手とつながっていた。

「今日はこうやって、みんなと手をつないで眠りたいんだって。」

 なんと、ラーファも起きていた。

「だって、なんかこうしたい気分なんだもん。」

 ミディアの顔が赤くなった。

 でも、今日はその気持ち、なんか少しわかる気がする。

「じゃあ、ミディアの左手もーらい。」

 アイが自分の右手を、ミディアの左手とつないだ。

「えへへへへ・・・なんか、こういうのいいね。」

 なんか、アイも照れていた。

 そういや、さっきアイがミディアに渡したイデアを見ちゃったんだけど、アイも変わったよな。

 歳をとっても、ミディアとずっと親友でいたいなんて、3年前だったら絶対に言わなかっただろうな。


「エレーネ、私の右手が空いてるんだけど・・・」

 ラーファが右手を私の方に差し出してきた。

「しょうがないなあ。」

 私は自分の左手をラーファの右手とつないで、ラーファの隣の布団に入った。

 なんか、4人手をつないで寝ているんだなあって思ったら、不思議と安心できた。

 きっと、ミディアとラーファもアイも同じ気持ちなんだろう。

 今夜はぐっすり眠れそうな気がする。

 そんな気がした。


 ・・・・・・

 そう思ったんだけど、実際には手をつないで眠るのって、姿勢的に結構大変だったりするわけで・・・

 その上、寝相の悪いのと手をつないで寝ると、大変なことになるわけで・・・

「ラーファ・・・寝相悪すぎだよ。」

 ミディアもどうやら起こされたようだ。

 ミディアと手をつないでいたアイも目を覚ましてしまったらしい。

 そういや、看病していた時に、ラーファの寝相が悪いなあと思ってた。

 もっと早く、こうなることに気づいてもよかったんだけど、昨日は他に考えることがたくさんありすぎて、そこまで気が回らなかったよ。

 結局、この日、ラーファ以外は全員寝不足状態で目覚めることになった。

用語集

(1)ルーイエ・アスク

ラーファの両親が経営する宿泊施設。

施設内にはレストランもあり、比較的大きな宿泊施設のように思えるが、これでもラーヴォルンの宿泊施設の中では小さい部類に入るらしい。


(2)イデアフィールズ

放送電波を受信して、映像や音声に変換する機械

また、映像イデアを再生したり、放送を映像イデアに記録することもできる

地球におけるテレビやビデオに相当する。


(3)イデア

様々な用途で使用される魔法媒体のこと。

ミディア達が使う場合、イデアは、主に映像を記録した映像イデアのことを指す。


(4)守護人

特殊な魔法により、意思を持った魔法。

大抵は術者の意識、魂の一部を魔法術式によって対象にかける。

対象に何らかの危機が訪れた場合に、守護人は発動する。

守護人は対象を脅威から守るために様々な行動を起こすが、実際にどういう行動を起こすかは守護人による。


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