14.ミディアとアイの出会い
<<アイ>>
まさか、ラーファ先輩がミディアの昔話をしようなんて言い出すとは思わなかった。
私は誕生日が近づくと、いつもミディアと出会った時のことを思い出しちゃうんだけど、ラーファ先輩も多分同じなんだろう。
ミディアはと言うと、相変わらず顔を真っ赤にして俯いていた。
私はそんなに恥ずかしがることないと思うんだけど、きっとミディアなりに色々思うところがあるんだろう。
ミディアの表情はここからじゃわからないけど、話している間に機嫌を直してくれると信じたい。
「3年前にミディアと初めて会った時、正直すごい暗い子だと思った。」
3年前の初夏、これから暑くなりそうな時期に差し掛かった頃
ラーファ先輩から呼ばれてウキウキだった私は、そこでラーファ先輩の家に居候している女の子と初めて会うことになった。
「えっとね、アイ。
こないだ話したと思うんだけど、この子が私の家に住むことになったミディアだよ。」
「ミディア・スフィルラン・ラーヴォルンです。
よろしくお願いします。」
ラーファ先輩に紹介されて、隣に立っていた金髪の女の子が私におじぎをした。
この子がミディアかあ。
髪の毛は金色なのに、なんか、すごい影がある感じがする。
「ミディアはアイと同級生だから、学校ではアイに面倒見てほしいんだけど、頼んでもいいかな?
ミディア、学校のことでわからないこと、まだいっぱいあると思うから。」
ラーファ先輩はそう言って、私に頭を下げた。
「ラーファ先輩のお願いとあれば、どんな子のお世話だってしちゃいますよ。」
私はラーファ先輩にそう言ってから、隣に立っていたミディアに初めて声をかけた。
「私の名前は、アイ―シャ・ミリエル・ラーヴォルン。
みんなは私のことをアイって呼ぶから、ミディアもそう呼んでね。
ミディア、よろしく。」
「よろしく、アイさん。」
こんな感じで私とミディアは友達になったんだけど、それからは結構苦労した。
なんせ、当時のミディアはとにかく暗かった。
それは仕方のないことだと思ってた。
事故で両親を失い、ミディア自身も記憶喪失になってしまったんだから、当時のミディアは悲しみと不安で一杯だったと思う。
おまけに、魔法学校に編入したはいいけど、記憶喪失で魔法も使えなくなってしまって、ミディアはレベル1からやり直すことになった。
当時、ミディアは13歳。
それが6歳や7歳の子達と一緒の授業を受けるなんて、相当屈辱だったと思う。
しかも、なぜかミディアは魔法が使えなくて、年下の子供達に次々と追い越されていく始末。
私達は何とかミディアを励まそうとして、気分転換に遊びに連れて行こうとしたんだけど・・・
「えっ、行けない?」
「ウン、私、ルーイエ・アスクのお手伝いをしないといけないから。」
「お父さんとお母さんには私から言っておくから、今日は遊びに行こう。」
ラーファ先輩がそう言ってくれても、ミディアは
「ウウン、お世話になってるんだから、ちゃんとお手伝いしないとね。」
そう言って、家に帰ってしまうことが多かった。
たまにラーファ先輩の説得に負けて一緒に遊びに行くこともあったけど、ミディアが笑顔を見せることは滅多になかった。
「ラーファ先輩、正直、私、あの子と一緒にいるのが辛いです。」
一度だけ、あまりにも辛くなって、ラーファ先輩に愚痴ったことがあった。
「ゴメンね、アイ。
あなたに大変な思いをさせてしまって。」
「えっ、いや、ラーファ先輩が悪いわけじゃないんで・・・
お願いですから、頭を上げてください。」
「でも、私、ミディアには元気になってほしいの。
だからお願い、アイ。
これからも私に力を貸してほしい。」
「もちろんですよ。ラーファ先輩。」
そうは言ってみたものの、それからもミディアとはなかなか仲良くなれなかった。
授業はレベル別に行われるので、学校でミディアと会うのは登校時と年齢別に行われる一般教育ぐらい。
授業が終わったら、みんなで昼食を食べに行くけど、その後、ミディアはルーイエ・アスクに帰ってしまう。
仲良くなりたくても、その時間すらない状況だった。
「ウーン、本当にどうしたものだろう?」
エレーネ先輩もミディアにはほとほと困り果てていたようだった。
「まあ、私は本当はミディアのことなんかどうでもいいんですけどね。
ラーファ先輩の頼みだから、やってるだけだし。」
夏が終わって、秋になる頃には、私はもう投げやりになっていた。
「あっ、そういうことを言っちゃうんだ。」
「だって、どうしようもないじゃないですか。
学校ではミディアずっと暗いし、一緒に遊びに行こうって誘っても、家に帰っちゃうし。」
「そうなんだよなあ。
ミディア、なんか私達との間に壁を作ってるような気がするんだよね。」
「壁ですか?」
「こないだ、ラーファに聞いたんだけどさあ。
ミディアって、ルーイエ・アスクだと結構明るいらしいんだよ。」
「それは客商売だから、愛想笑いしているだけじゃないんですか?」
「いや、まあ、それもあるとは思うんだけど。
でも、ラーファが言うには、ルーイエ・アスクだとミディアは結構笑顔を見せるらしいんだよ。
ラーファの両親と話する時も、結構楽しそうに話しているらしいし。」
何、それ・・・
じゃあ、ミディアは私達と接する時だけ、あんなに暗い顔しているってこと?
エレーネ先輩の話を聞いて、だんだん腹が立ってきた。
「ミディアは私達と一緒にいるのが嫌なんじゃないんですか?
だったら、私達も無理に仲良くなる必要ないんじゃないですか?」
「まあ、そうなのかもしれないけどさあ。
でも、どうしてミディアが私達との間に壁を作っているのか、気にならない?」
「どうでもいいですよ。」
「私はすっごい気になるんだよなあ。」
エレーネ先輩のその能天気な考え方が少し羨ましいと思った。
私はただただ腹立たしかった
ミディアが私達と他の人達とで態度を使い分けている。
そう思ったら、腹が立ってしょうがなかった。
「本当にアイには苦労かけてゴメンなさい。」
その日の夜、ラヴォルティアでラーファ先輩に謝られた。
多分、エレーネ先輩から私が怒ってるって話を聞いたんだと思う。
「ラーファ先輩、私、本当にどうしたらいいんでしょうか?」
「アイに辛い思いをさせてるのは、わかってる。
でも、ミディアは別に私達にも心を開いているわけじゃないのよ。」
「えっ、そうなんですか?」
「確かに、ミディアはルーイエ・アスクでは笑顔を見せるけど、あれは心からの笑顔じゃない。
ミディアは誰にも心を開いてない。
一緒にいる時間が一番長い私にさえね。
お父さんもお母さんも、ミディアのことをすごい心配してる。」
「そうなんですか。」
「私、ミディアの心の壁を取り除くことができるのは、私達の中ではアイだけなんじゃないかなって思ってるの。」
「えっ、私・・・ですか?」
「だって、私やエレーネには、ミディアの辛さを本当の意味でわかってあげられない。
でも、アイ、あなたは違うでしょ。」
ラーファ先輩にそう言われて、ハッとなった。
「もしかしたら、アイに辛いことを思い出させてしまうかもしれない。
私、アイにすごい酷いことを言っているような気がする。
本当にゴメンなさい。」
「私なら大丈夫ですよ。
ラーファ先輩、謝らないでください。」
そうだ、ラーファ先輩に言われるまで全く気づかなかった。
確かに、ミディアの気持ちをわかってあげられるのは私だけかもしれない。
「もうすぐ、私達の誕生日でしょ。
その日、ミディアとアイが二人っきりになる時間を作るから・・・」
「わかりました。
私、もう一回だけやってみます。」
それから、私はラーファ先輩やエレーネ先輩と一緒に毎日誕生会での作戦を練った。
「作戦は以上ね。」
「単純な作戦だし、実行するのは簡単だけど・・・
結局のところ、アイ頼みなんだよな。」
「任せてください。
私、ミディアの心の壁を破るために、全力でぶつかってみせます。」
「頼んだわよ、アイ。」
そして、ラーファ先輩の誕生日、私達は学校を休んでお誕生会を開くことにした。
この頃はまだレベル15に達していなかったので、学校を休むには親の許可が必要だったけど、ラーファ先輩が頭を下げて必死に説得してくれた。
そう言えば、この時のお誕生会もルーイエ・アスクだった。
私は今日みたいに着飾ってたけど、いつもと違って、この日はミディアのことばかりを考えていたと思う。
ラーファ先輩のためにも、今日は絶対にミディアを落としてみせるってね。
「こんにちわ。」
部屋につくと、ミディアが待っていた。
ミディアは相変わらず暗い表情だったけど、ラヴィおばさんが入ってくると明るい表情になった。
でも、この笑顔・・・確かに、これは心からの笑顔じゃない。
一回見ただけで、すぐにわかった。
今日、私がミディアの心の壁を破ってみせる。
そして、あの子の本当の笑顔を取り戻してみせる。
私達の作戦は、とても単純なものだった。
最初、私とラーファ先輩がエレーネ先輩をこき使う。
途中でエレーネ先輩が怒って出て行ったところを、なだめにラーファ先輩が慌てて出ていくというものだ。
これなら、怪しまれずに自然にミディアと2人っきりになれる。
あとは、私がミディアの心の壁を打ち破るだけだ。
「それじゃあ、カンパーイ。」
エレーネ先輩の乾杯の声で、私達の誕生会が始まった。
ラーファ先輩はミディアのことを気遣いながら、計画通りにエレーネ先輩をこき使っていた。
さすが、ラーファ先輩、芝居とは思えないくらい思い切りこき使っている。
私もこき使わないと。
「エレーネ先輩、私にも飲み物持ってきてください。」
それから、私とラーファ先輩は、エレーネ先輩をこき使いまくった。
途中で、エレーネ先輩が本気で切れかかってるのがわかって、命令するのが怖くなったけど・・・
「あの、よかったら、私も手伝いますよ。」
「えっ!?」
突然、ミディアが自分も手伝うと言い出して、ラーファ先輩とエレーネ先輩が驚きの声をあげた。
私も驚いた。
まさか、ミディアが自分から手伝うと言い出すとは思わなかった。
「ミディアはいいのよ。
私はエレーネに命令しているんだから。」
ラーファ先輩はそう言いながら、目でエレーネ先輩に合図を送っていた。
多分、あれは早く切れろって合図だったんだろう。
「な、なんだよ。
私ばっかりこきつかいやがって。
もうやってらんねーよ。」
エレーネ先輩、怒り方が少し棒ぎみだったけど、ミディアが不安そうな表情になってるし、まあ大丈夫かな。
「ちょ、ちょっと、何怒ってるのよ。
アイ、ミディア、私、エレーネを連れ戻してくるから、ちょっと待っててね。」
ラーファ先輩の演技は完璧でした。
何はともあれ、これで私とミディア、2人きりになれた。
「行っちゃったね。」
ミディアの方から私に声をかけてきた。
「まあ、あの2人だったら大丈夫だよ。」
「そう、よかった。」
あれっ、もしかして、ミディア、2人のことを心配しているの?
「へえ、ミディアってなんだかんだで、みんなのこと心配してるんだね。」
これは意外だった。
もしかしたら、ミディアってすごいいい子なのかもしれない。
この時、ちょっとそう思った。
でも、
「だって、私、ラーファの家にお世話になってるんだし、ラーファのことを心配するのは当然でしょ。」
まあ、そりゃそうだよね。
それでも、ミディアがラーファ先輩のことを心配してくれたことが、少し嬉しかった。
「ねえ、じゃあ、私達だけでも盛り上がろうか?」
今なら、ミディアの心を覆っている壁を取り除けるかもしれない。
そう思った。でも、
「もしかして、もうお誕生日会終わり?」
そう言ったミディアの表情は、いつもの暗い表情に戻っていた。
「何言ってるの?
お誕生日会はまだまだこれからだよ。
今日は朝から夜までずっと大騒ぎするんだよ。
そのための許可もちゃんととってあるんだから。
だから、今日はみんなで一日中楽しもう。」
「・・・・・・」
「まだお料理残ってるよ。
ミディア、あんまり食べてないんでしょ。
2人が戻ってくる前に私達で食べちゃおうよ。」
「・・・・・・」
私はお皿に料理を盛って、ミディアの方に差し出した。
でも、ミディアは暗い表情のまま、ずっとその場に立ち尽くしていた。
さすがに少しイラッと来た。
「ねえ、アンタ、なんなの?
いつまで、その暗くて重い空気を身にまとっているつもりなの?
そんなんじゃ、私もエレーネ先輩も、いつまで経ってもアンタと仲良くできないじゃない。」
「暗くてゴメンね。
でも、私、そんな気分になれないよ。」
「アンタ、ルーイエ・アスクだと結構笑顔を見せてるって話を聞いてるんだけど。
どうして、私達の前だと、そんなに不愛想になるわけ?」
「だって、ラーファの家族に嫌われるわけにいかないから。」
嫌われたくないじゃなく、嫌われるわけにはいかない。
ミディアのその言い方が少し引っかかった。
「嫌われるわけにはいかないって、どういうことよ?」
「だって、ラーファの家族に嫌われて追い出されたら、私一人じゃ生きていけない。」
「もしかして、毎日手伝いをしているのって・・・」
「そうだよ。ルーイエさんに気に入られるためだよ。」
「そんなことしなくても、ラーファ先輩のご両親がアンタを追い出すなんてことないよ。」
「どうしてそんなことが言えるのよ。
私は所詮他人なんだし、家に置いてもらうためにも、一生懸命お仕事を頑張るしかないんだよ。」
今思えば、ミディアの気持ちもすごいわかる。
両親が亡くなって、ミディア自身も記憶喪失だったんだから、そう考えるのも無理はないと思う。
でも、その時の私は、ミディアの発言を聞いて、腹が立って仕方がなかった。
ラーファ先輩は、いつもミディアのことをすごい心配しているというのに・・・
ラーファのご両親も、ミディアのことを実の娘のようにかわいがっているってラーファ先輩が言ってた。
それなのに、当のミディアは自分のことしか考えていない。
ミディアはラーファ先輩やラーファ先輩のご両親の気持ちに気づいてすらいない。
そう思ったら、なんかすごい腹が立って、すごい悔しくなって・・・
「アンタ、ラーファ先輩の気持ちを何だと思ってるの!?」
気がついたら、ミディアに向かって大声を上げていた。
「アイに私の気持ちなんかわからないよ。」
「ああ、わかんないよ。わかるわけないだろ。
だって、アンタ、暗い顔して何も言わずに突っ立ってるだけじゃない。
ちゃんと話してくれないと、わかるわけないじゃない。」
「話したところで、両親が生きているあなた達に私の本当の気持ちがわかるわけない。
ただかわいそうって同情されるだけ。」
「ふざけんなよ。
今のアンタなんかに誰も同情なんかしないよ。」
「もう、私のことなんか放っておいてよ。」
それを聞いた瞬間、あまりにも頭に来て、私は本当に放って部屋を出ていこうと思った。
でも、怒っているはずのミディアの表情はすごい悲しそうで、今にも泣きそうで・・・
ミディアの表情を見て、その時の私はなぜかミディアが助けを求めているように思えた。
それで、私は冷静さを取り戻すことができた。
「ミディアがすごい辛い状況だってのはわかるよ。
でも、いい加減に前に進まないと、そんなんじゃ、ミディアのご両親も悲しむだけだよ。」
「アイに私の気持ちの何がわかるって言うの?
アイなんかに・・・アイなんかに、私の気持ちがわかってたまるかーーー!!!」
この日一番のミディアの怒鳴り声に、すごいびっくりした。
なんだ、怒鳴るだけの元気があるじゃない。
感情をむき出しにして怒鳴るミディアを見て、逆に私は少し安心した。
「ミディアの気持ち・・・私にも少しはわかるつもりだよ。」
「アイにはわからないよ。」
「わかるよ。
だって、私もお母さんを亡くしてるから、アンタの辛い気持ち、少しぐらいは理解できる。」
「えっ!?」
ミディアの表情が驚いた表情に変わった。
「私のお母さん、私が10歳の時に死んじゃったんだ。
最初はちょっと風邪をひいただけだと思ってたのに、次の日に突然入院して、その翌日に死んじゃったんだ。
本当にあっという間だった。」
「・・・・・・」
「お母さんが死んじゃった時、あまりの悲しみで世界が真っ暗になった。
あんなに悲しいと思ったこと、今まで一度もなかった。
だから、両親を亡くしたミディアの気持ち、少しはわかるつもりだよ。」
「・・・ゴメンなさい・・・」
「えっ!?」
「ゴメンなさい・・・私、とんでもないことをアイに言っちゃった。」
さっきまでのケンカ腰はどこへやら、ミディアは明らかに狼狽していた。
「アイのお母さんが亡くなっていたなんて、私、知らなかった。
本当にゴメンなさい。」
私のお母さんのことで、ミディアがこんなに謝るとは思ってなかった。
正直、売り言葉に買い言葉で
「アンタにはお父さんがまだ残ってるでしょ。」
ぐらいのことを言ってくると思ってたから、この展開はちょっと予想外だった。
それにしても、私のお母さんのことで、こんなにも謝ってくれるなんてね。
なんだ、やっぱりミディア、いい子じゃない。
この時、私は初めて心からミディアと友達になりたいと思った。
「ねえ、アイ。」
ミディアが私に声をかけてきた。
「なあに?」
「アイはどうやって、真っ暗な世界から抜け出せたの?」
ミディアがそう聞いてきた瞬間、私は自分の直感が正しかったと確信した。
やっぱり、本当はミディアも悲しみから抜け出したいって思っていたんだ。
でも、悲しみがあまりにも深すぎて、抜け出す方法がわからなかっただけなんだ。
どうしてもっと早くに気づいてあげられなかったんだろう。
「ミディアはそれを聞いてどうしたいの?」
「私も・・・私も前に進みたい。
この真っ暗な世界から抜け出したい。」
よかった。
やっぱりミディアは真っ暗な世界から抜け出したがっている。
じゃあ、私が真っ暗な世界を抜け出した時のアレを試してみよう。
「暗闇から抜け出すには、ある儀式を行なう必要があるんだよ。」
「儀式?」
「ウン・・・とっても大事な儀式。
私もその儀式で抜け出すことができた。
ミディア、今すごい悲しくて辛いんだよね。」
「ウン・・・そうだよ。」
「だったら、思い切り泣こう。」
「えっ!?」
ミディア、すごい驚いた表情になった。
でも、これこそが本当に大事な儀式なんだよ。
「悲しい気持ちを抱えているだけじゃあ、いつまでも悲しい世界から抜け出せない。
悲しい気持ちを外に吐き出してあげる必要があるんだよ。
そして、その悲しい気持ちを受け止めてくれる人もね。」
「アイ・・・」
「ミディアの悲しみは、私が受け止めてあげる。
だから、私に向かって、心の中の悲しみを一気に解き放って。
私、ミディアが泣いている間、ずっと一緒にいてあげるから。」
私はミディアに近づいて、そっと抱きしめた。
「ミディア、今までよく一人で頑張ってきたね。
辛かったよね。
でも、もう大丈夫。
これ以上一人で悲しみに耐える必要ないんだよ。
ミディアには、私達がいる。
これからは私達に頼っていいんだからね。」
私がそう言ってミディアの頭を優しく撫でたら、ミディアの目に涙が溜まって・・・
「うわああああああん!!!」
ミディアは私の胸の中で大泣きした。
最初は、ミディアが泣いているのを受け止めることだけ考えていた。
でも、ミディアが泣いている姿を見ているうちに、お母さんを亡くした時の自分の姿を思い出して・・・
気がついたら、私もミディアと一緒に泣いていた。
「ゴメンね、悲しみを受け止めるなんて偉そうなこと言ってたのに、一緒に泣いちゃって。」
「ウウン、一緒に泣いてくれてありがとう、アイ。
おかげで、すっきりすることができたよ。」
そう言って私に見せたミディアの笑顔は、すごい素敵で、間違いなく本物の笑顔だった。
ミディアの心を覆っていた壁がなくなった瞬間だった。




