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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
58/254

12.ラーファとアイの誕生日

<<ミディア>>

 いよいよ今日はラーファとアイのお誕生会の日だ。

 昨日、アイの誕生日で、今日がラーファの誕生日。

 毎年、お誕生会をどっちの日にやろうかって話は出るけど、

「そりゃあもう、ラーファ先輩の誕生日に決まってるでしょ。」

とアイが強く押すから、私が知る限りでは、いつもラーファの誕生日にお誕生会を開くことになっていた。

 今日は2人のお誕生会なので、みんなで学校をお休みすることにした。

 本当はお休みすると、授業についてくるのがつらくなるんだけど、ラーファとアイのお誕生会だからね。

 今年のお誕生会は、ルーイエ・アスクの2階にある少し大きめの部屋で行なうことになった。

 ここは本来、お客様がイベントとかを行う時に使う部屋だけど、今日はこの部屋を使うお客様はいないので、ここを借りることになった。

「今年は琴音の制服姿も見れるし、今から楽しみだなあ。」

 琴音がアトゥアのことを知りたいように、私達だって琴音の住む世界のことをもっと知りたい。

 これを提案したアイは本当に素晴らしいと思った。

 でも、アイの前で言うと、調子に乗るから絶対に言わないけどね。


 それにしても・・・

「なんか、すごい楽しそうだね、ラーファ。」

 今日のラーファは、なんかすごい楽しそうで、朝からずっとニコニコ笑みを浮かべていた。

 何かいいことでもあったのかな?

「そうかな?

 まあ、いいことはこれからあるんだけどね。」

 ラーファはそう言うと、部屋の飾りつけを始める。

 お誕生会は去年も一昨年も開いていたけど、ここまで楽しそうにしてなかったけどなあ。

 そんなに楽しみなのかな、お誕生会?

 まあ、今年は琴音が参加するから、去年までとは違うけど・・・

 もしかして、ラーファも琴音の制服姿を楽しみにしてるのかな?


「すみません。」

 突然、背後から知らない女の人に声をかけられた。

 どうやら、お客様のようだ。

「ハイ、なんでしょうか?」

「えっと、お風呂に行きたいんですけど、どうも道に迷ってしまったみたいで・・・」

「お風呂ですか。それでしたら―――」

 お客様に大浴場の場所を教えると、お客様はお礼を言って大浴場へと向かって行った。

「ここ、大浴場から離れてるから、確かに初めて来られたお客様は迷うかもね。」

 ラーファが飾りつけを行ないながら、そう言った。

「そうだね。

 でも、あの人、何度か見かけたことあるんだけど・・・」

「じゃあ、長期滞在の人じゃない。

 もうすぐルフィル・カロッサだしね。」

 そう、ルフィル・カロッサはラーヴォルン最大のお祭りなので、長期で滞在するお客様が結構多い。

 観光で長期宿泊するお客様もいるけど、多くはルフィル・カロッサの準備のために、遠方から支援に来た人達だ。

 ルフィル・カロッサは、ラーヴォルンだけでは準備できないので、毎年いろんなところから支援を募っているらしい。

「今年はいつもよりも早く行われるから、支援の数もいつもより多いらしいよ。」

「へえ、そうなんだ。」

 例年はルフィル・カロッサが行なわれるのは、もう少し後になってからだ。

 でも、今年はいろんな事情が重なって、この時期に行なわれることになった。

 だから、準備も結構ドタバタしているらしい。


「もうすぐ、エレーネとアイが来るから、早く飾りつけ終わらせちゃおう。」

 ラーファはそう言うと、部屋の飾りつけを続ける。

「もう、今日はラーファの誕生会なんだから、飾りつけは私がやるのに。」

「いいの。

 今日はなんか自分でいろいろやりたい気分だから。」

 ラーファは笑顔でそう言うと、楽しそうに飾りつけを始める。

 本当に何かいいことあったのかなあ?

 こんなに楽しそうなラーファ、久しぶりに見る気がする。


「ミ、ミディアちゃん・・・」


 あれっ、今、琴音の声がしたような気がする。

 でも、琴音の姿が見当たらない。

「ねえ、今、琴音の声がしなかった?」

「えっ、何にも聞こえなかったけど・・・」

 ラーファは首を傾げる。

 気のせいだったのかな?


「オーッス!」

「こんにちわ。」


 今度はエレーネ先輩とアイの声が聞こえてきた。

 2人とも、いつもと違って、今日はきれいな服を着飾っていた。

「まだ部屋の飾りつけなんてやってるのか。

 ラーファ、今日はお前が主役なんだから、さっさと着替えてこい。」

 エレーネ先輩はそう言うと、ラーファの持っていた飾りを奪い取った。

「わかったわよ。

 じゃあ、エレーネ、飾りつけをお願いね。」

 ラーファはそう言うと、部屋に戻っていった。

「もう、参加するの私達だけなんだし、こんな飾りつけなんてしなくてもいいのに。」

 アイがため息をつく。

「まあまあ、こういうのってやった方が気分が出るだろ。

 それに、どうせこの飾りつけやるって言い出したのって、ラーファだろうし。」

「そうですよね。

 こういう飾りつけで気分を出すのって、やっぱり大事ですよね。」

「・・・・・・」

「じゃあ、私も飾りつけ手伝いますね。」

 アイはそう言うと、エレーネ先輩から飾りを受け取って、飾りつけを始めた。

 アイの変わり身の早さには、本当に感心するよ。


 それからしばらくして、部屋の飾りつけがちょうど終わった頃に、ラーファが部屋に入ってきた。

「わあ、ラーファ先輩、きれい。」

 アイが感嘆の声を上げる。

 ラーファの姿を見た瞬間、私は言葉を失った。

 黒のドレスを着飾ったラーファは本当にきれいで、あまりの美しさに、私の目はラーファに釘付けになっていた。

「そう、ありがとう。」

「どうしたんだ、ラーファ?

 いつも誕生会やってるけど、こんなに着飾ったことなんて今まで一回もなかっただろ。」

 エレーネ先輩はラーファの姿を見て驚いていた。

「なんか今日はこうしたい気分なの。」

「へえ、なにかいいことでもあったのかな?」

「違う、これからいいことが起こるのよ。」

「そっか。

 まあ、今日はラーファが主役なんだから、好きにすればいいよ。」

 エレーネ先輩はそう言うと、飲み物の入ったグラスを手渡した。

 いつの間にか、グラスにみんなの分の飲み物が注がれていた。

 さすがはエレーネ先輩だ。

 私達の分まで用意されている。

「さすがエレーネ先輩。気が利く。」

 アイはエレーネ先輩から機嫌よくグラスを受け取った。

「ほい、ミディアも。」

 エレーネ先輩が私にもグラスを持ってきてくれた。

「ありがとうございます。」

「じゃあ、今から2人の誕生会を始めようか。」

 エレーネ先輩がそう言って、グラスを手に取った時だった。


「ま、待ってよ。」

 部屋の外から、すごい勢いで琴音が部屋に飛び込んできた。

 って、琴音の恰好、なんかすごいかわいい。

「や、やあ、ミディアちゃん、みんな、こんにちわ。」

「こんにちわ、琴音。

 今日はすごいかわいい服着ているね。

 もしかして、今着ている服が・・・」

「ウ、ウン・・・私が通っている学校の制服だよ。

 ど、どうかな?」

「すっごいかわいい制服だね。」

「本当に?

 実は大分前にここに来ていたんだけどね。

 ミディアちゃん達が気に入ってくれるかどうか不安で、なかなか姿を出せなかったんだよね。

 とりあえず、ミディアちゃんにだけ見てもらおうかなって思ったんだけど、私の声がミディアちゃんに聞こえなかったみたいで・・・

 そうこうしているうちに、みんな揃っちゃってなんか始まっちゃいそうだったら、勇気を出して出てきたんだよ。」

「そっか、あの時聞こえたのは、やっぱり琴音の声だったんだ。

 ゴメンね、気づいてあげられなくて。」

「ウウン、いいよ。」

 琴音はそう言うと、ニコッといつもの笑顔を見せてくれた。

 今日の琴音、かわいすぎるよ。

 いつも琴音はすごいかわいいけど、制服のおかげで今日は一段とかわいく見える。

 そんなにかわいいのに、どうして不安になる必要があるんだろう?


「ミディア、顔が赤いよ。」

 アイが私の額に手を当てる。

 もしかして、熱があるとでも思ったのかな?

「別に熱があるわけじゃないよ。

 琴音が制服着てきたんだけどね。

 すっごいかわいい制服で、見とれてたんだよ。」

「琴音、来たの?」

 アイはそう言うと、慌ててラーファの方へと駆け寄っていった。

「ラーファ先輩、琴音が・・・」

「ええっ、知ってるわよ。」

 いつの間にかラーファの視線も、琴音に釘付けになっていた。

「これがニホンの学校の制服なの?

 なんてかわいらしい。」

 ラーファが珍しく琴音に夢中になっていた。

「やっぱり、ラーファもそう思う?」

「ウン、今日の琴音、すごくかわいい。」

「かわいいよね。」

 珍しく、琴音のことでラーファと意見が合った。

 私もラーファも、初めて見るニホンの制服の虜になっていた。

「や、やめてよ。

 すごい恥ずかしいから、そんなにジロジロ見ないでよ。」

 琴音は恥ずかしそうに足をモジモジくねらせる。

 普段は寝間着で足は隠れているけど、今日は素足が見えるから、その琴音の仕草が妙に色っぽく感じる。


「ちょっと、2人だけで見てないで、私達にもちゃんと状況を教えろよ。」

 エレーネ先輩に頭を叩かれて、ハッと我に返った。

 私、ちょっと意識が飛んでたかもしれない。

「ゴメン、なんか琴音の姿に夢中になってた。」

 どうやら、ラーファもそうだったみたいだ。

 恐るべしだよ、ニホンの制服。

「ニホンの学校の制服って、すっごいかわいいね。」

「いやあ、そんなに気に入ってもらえるとは思わなかったよ。」

 琴音が照れくさそうにそう言う。

「キャー、なにこれ、すごいかわいい。」

 アイの声が聞こえてきた。

 どうやら、ラーファが念写した琴音の映像を見たらしい。

「すごいな。

 ニホンはこんな制服を着て学校に行くんだな。」

 エレーネ先輩はすごい興味深そうに琴音の映像を見つめていた。

「ねえ、そんなことより早く、お誕生会始めようよ。」

 あまりにもみんなが琴音の映像に夢中になっていたので、琴音は恥ずかしそうに両手で顔を隠していた。


「私、かわいいとか言われるの、慣れてないんだから、かわいいを連呼しないでよ。」

 琴音、真っ赤な顔で怒ってる。

 でも、その表情がまたすっごいかわいい。

「オホン、じゃあ、琴音の制服姿をたっぷり堪能できたし、ラーファとアイの誕生会を始めよう。」

 エレーネ先輩はそう言うと、みんなにグラスを持つように促した。

「それじゃ、2人の誕生日を祝って、乾杯!!!」


「カンパーイ!!!」


 みんなでグラスを合わせて乾杯をした。

「いやあ、今日はいきなりいいものを見せてもらったよ。」

 アイはすごい満足そうだった。

「ニホンの制服、すっごいよかったなあ。

 あれと同じもの、今度作ってみようかな。」

「エレーネ先輩、琴音の制服を作るつもりですか?」

「素材とかわからないから、全く同じものが作れるかどうかわからないけど面白そうだろ。」

「じゃあ、私が琴音の制服を念入りに調べてあげる。」

 ラーファはそう言うと、琴音の制服のすぐ近くまで顔を近づける。

「ちょ、ちょっと、ラーファちゃん、そんなにジロジロ見ないでよ。」

 琴音の顔がまた真っ赤になってる。

「琴音の制服を念入りに記憶して念写しないといけないからね。」

「や、やめてよ・・・」

 琴音の声がいつになく弱弱しい。

 あれっ、琴音ってこんなに恥ずかしがり屋だったっけ?

 いつも私にはすごい近くまで密着してくるのに・・・

 ラーファは琴音の制服を色んな視点からじっくりと観察し続けた。

 琴音はというと、声も出さずに、時折体をぶるっと震わせて、ラーファの視線にひたすら耐え続けていた。

 どうしよう。

 止めた方がいいような気もするんだけど、私もエレーネ先輩に琴音の制服を作ってほしいし・・・

 何より、今の琴音を見ていると、なんか変な気分になってくる。

 恥ずかしがっている琴音の姿を、もっと見たいと思っている自分がいる。

 なんか、私まで変な気分になってくる。

 もしかして、知らないうちに私もアイの影響を受けてるのかな?


「まあ、こんなもんかな。」

 ラーファがそう言って、琴音から離れると、琴音はその場にへたり込んでしまった。

「琴音・・・大丈夫?」

「だ、大丈夫。

 でも、ちょっとだけ疲れたかな。」

 琴音、ずっと真っ赤だったからなあ。

 汗びっしょりだよ。

「私、あんまり人に見られるのに、慣れてないんだよ。」

「いや、あんな近くで見られるのなんて、誰だって慣れてないと思うよ。」

「だよね。」

 琴音はそう言うと、ようやくいつもの笑顔を見せてくれた。


「どうよエレーネ、こんな感じよ。」

 私と琴音が話している間、ラーファは繰り返し念写した映像をつなぎ合わせて、詳細な琴音の制服の映像を作り上げていた。

「ハァ・・・ハァ・・・この琴音を見ていると、なんかすごく興奮するんですけど・・・」

 アイは琴音の映像を見て、すごい興奮していた。

 まったく、アイは相変わらずだなあ。

「ありがとうラーファ。

 よーし、ルフィル・カロッサの衣装はこれにしよう。」

 イデアを見てエレーネ先輩は、すごい張り切っていた。

 でも、ルフィル・カロッサに着るのはやめた方がいいんじゃないかな。

「エレーネ、それだと下から下着が丸見えになるわよ。」

 ウン、ラーファの言う通り・・・

「って、ラーファ!?」

 いつの間にかラーファは琴音の両足の間に寝転んで、真下から琴音を見上げていた。

 琴音も今気づいたみたいで、慌ててスカートを抑えていた。

「もう、ラーファちゃん、見ないでよ。」

 またまた、琴音の顔が真っ赤になった。

「ウン、琴音の顔は赤いけど、下着の色は白だね。」

 これはさすがにヒドイ。

「ラーファ・・・さすがにちょっとヒドイよ。」

「ゴメン、ミディア。

 もしかして私が琴音に浮気しすぎて、やきもち妬いちゃった?」

「ラーファ、いい加減にしないと、私、怒るよ。」

 私が睨みつけると、ラーファもマズいと思ったみたいだ。

「ゴ、ゴメンね琴音。さすがにちょっとはしゃすぎちゃったかもね。」

「エーン、ラーファちゃんに汚されちゃったよ。」

 琴音が涙目で私に抱きついてきた。

 いつもだったら別に抱きついてきても構わないんだけど、今日その制服で抱きついてきたら・・・

「おお、ここからだと琴音のスカートの中が丸見えだ。」

 ラーファが後ろから覗き込んでいた。

 そう、琴音は空中に浮いたまま、私に飛びついて抱きついてくるから、後ろから覗き込んだら見えてしまうわけで・・・

「もう、制服なんか着てくるんじゃなかった。」

 琴音の顔がまたまた真っ赤になった。


<<???>>

 ルフィル・カロッサが近づいて、ラーヴォルンはいつもと少し違う賑わいを見せていた。

 私は今回初めてルフィル・カロッサを見に来たんだけど、どんなお祭りなのか非常に楽しみだ。

 それに、初めてのラーヴォルンで泊まった宿は、大当たりだったようだ。

「いやあ、ルーイエ・アスクはいい旅館だなあ。」

 室内は清潔だし、料理はおいしいし、かわいい女の子はいるし・・・

 午前中、大浴場の場所がわからなくて、かわいい女の子に場所を聞いたんだけど、きれいな金髪に幼い容姿・・・実に私好みだ。

「あの子の姿を思い出しただけで、すごいときめいちゃう。」

 いやあ、本当にかわいかったなあ。

 あんなかわいい女の子が接客してるんだから、ルーイエ・アスクはさぞかし儲かっているんだろうなあ。


「おい、リッカ・・・リッカ・モンディール!!!」

 突然、頭の中に凶暴な男の声が響き渡り、さっきまで頭に浮かんでいたかわいい女の子の映像は一瞬でかき消されてしまった。

 男はすぐに怒鳴り散らすから、本当に嫌いだ。

 ていうか、テレパシーで名前を連呼するな。

 いくら偽名だからと言っても、名前は連呼していいものじゃない。

「ハイハイ、聞こえてますよ。」

「聞こえてるんだったら、さっさと状況を報告しろ。」

 本当に男はすぐ怒鳴るし、うるさい。

 今はまだテレパシーで通信しているからいいんだけど、直接会ったら、さらに臭いってのも加わるからね。

 あー本当に男は嫌いだ。

 嫌いだし面倒だけど、これも仕事だからね。

 さっさと済ませちゃうとしますかね。

 まあ、一応進展はあったからね。

 それにしてもだ。

「本日午前中にミディア・スフィルラン・ラーヴォルンとの接触を試みました。」

 あんなかわいい女の子の内偵とか、今回の仕事は本当に心が躍り出しそうだ。


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