11.私の学校の制服偏差値
<<ミディア>>
「そんなことより琴音、ニホンでは誕生日にどんなことするの?」
困ったので、さりげなくニホンの話題に逸らしてみる。
「あっ、それ、私も興味がある。」
よかった、エレーネ先輩、ニホンの話に食いついてくれた。
「日本の誕生日?
家族や友達とお誕生日会する人が多いんじゃないかな。
みんなでケーキ食べたり、誕生日プレゼントをあげたりするんだよ。」
「へえ、楽しそうだね。」
「ラーヴォルンでは、誕生日をどうやって祝ってるの?」
「えっとね、ラーヴォルンでもお誕生会をやるんだけどね。
参加者は誕生日の人の言うことを何でも聞かないといけないんだよ。」
「えっ、そんな決まりがあるんだ。」
琴音、なんかすごい驚いてる。
でも、私も最初に聞いた時は驚いたから、多分これが普通の反応なんだろうね。
「な、何でもって・・・本当に何でもいいの?」
「いや、そこはあくまでも常識の範囲内でのお願いだよ。」
「そ、そうだよね。アハハハハ・・・」
琴音、変な笑い方してるけど、どうしたんだろう?
もしかして、何か変なことでも考えていたのかな?
「正直、2人の誕生日に参加するの、すっごい嫌なんだけど。」
私の話を聞いていたエレーネ先輩が思いきり溜息をついた。
さっきまで、ニホンの誕生日に目を輝かせていたのが嘘のようだ。
「な、なんてこと言うのよ。
エレーネは親友の誕生日を祝うのが嫌だって言うの?」
「かわいい後輩の誕生日を祝うのが嫌なんですか?」
「だって、お前らの命令、ミディアと私で差がありすぎるだろ。
去年なんか、お前ら、私のことを最初から最後まで顎で使っただろ。
それなのに、ミディアに対しては何を命令したよ?」
「えっと、何だったかな?」
「忘れちゃいました。てへっ。」
「かわいく言ってもダメだ。
今年は私とミディア、公平の待遇で頼むよ。」
「わ、わかったから・・・」
「すみません。」
エレーネ先輩の怒り爆発で、さすがのラーファとアイもタジタジだった。
そう、去年の誕生会では、エレーネ先輩はラーファとアイに奴隷のようにこきつかわれていた。
一方で、私はと言うと、お水のおかわりを汲んできたくらいだった。
エレーネ先輩が怒りたくなる気持ちもわかる。
でも、私もなんかすごいもやっとした気分になったのを覚えている。
もしかしたら、去年、ラーファとアイの会話を聞いちゃったからかもしれない。
「エレーネ先輩って、すごい扱いやすいですね。」
「エレーネはすごい器用だし、要領もいいから、色んなことをそつなくこなせるのよ。
まあ、そのせいで、私達にこき使われてるわけだけどね。」
「本当、すごいですよね。
エレーネ先輩って、何やっても、平均点以上は確実に取りそうな気がしますよ。」
「エレーネのそう言うところって、すごいうらやましいなあって思う。」
「私も・・・」
2人ともエレーネ先輩の能力が高いって言ってたなあ。
だから、仕事が集中するんだって・・・
「逆を言えば、私は全く使えないってことかあ。」
少し落ち込んだ。
「何が使えないの?」
しまった、ラーファに聞かれてた。
「な、何でもないよ。」
「今年はミディアにも色々やってもらうから、覚悟しておいてね。」
「・・・・・・」
一瞬、どうリアクションすればいいかわからなくなってしまった。
さっきまで、全然命令されないことに嘆いてたけど、いざ堂々と予告されると、なんだかすごい怖い。
「今年は私もミディアをいじめようかな。」
なんかアイまで怖いことを言ってるし。
ていうか、いじめるとか、誕生日の趣旨が変わってない?
「ねえ、ミディアちゃん・・・」
琴音が私に声をかけてきた。
「なあに、琴音?」
「お誕生日会に参加する人は、誕生日の人の言うことを何でも聞かないといけないんだよね?」
「ウン・・・そうだけど・・・」
「私も命令されたい。」
「えっ!?」
琴音の発言に思わず大声を上げてしまった。
どうして琴音は、自ら茨の道に入ろうとするんだろう?
「でも、結構キツイから、やめといた方がいいよ。」
「でも、ミディアちゃんもエレーネちゃんもやるんでしょ?」
「ウ、ウン・・・まあ・・・」
「だったら、私もやりたいよ。
私だけ何にもないのは、むしろ寂しいよ。」
「琴音・・・」
そっか、去年、私が抱いたもやっとした気持ちって、これだったのかもしれない。
あの時の自分の気持ちに当てはめるとしたら、多分、寂しいという感情だったんだと思う。
なんだか、すごいスッキリした。
今の琴音は、あの時の私だ。
だったら・・・
「琴音、わかったよ。」
琴音は透明な存在だから、ラーファもアイもそんなにヒドイことはできないだろうし、琴音にも参加してもらおう。
「ラーファ、アイ、琴音もお誕生日会に参加するって言ってるから、琴音にも何か命令してあげてよ。」
私がそう言うと、ラーファとアイの表情が変わった。
「そっか、琴音もいたんだった。
今年は命令しがいのある年だ。」
アイ、なんかすごい邪悪な表情になってる。
もし、ロクでもない命令を出したら、絶対に許さないからね。
こないだの一件もあるし、アイの言動には注意をしておかないとね。
「琴音かあ・・・命令出しても、エレーネとアイには見えないからなあ。」
一方、ラーファはどんな命令を出そうか、真剣に悩んでいた。
「どんな命令が来るのかなあ。」
琴音はすごいワクワクしているけど、本当に大丈夫かなあ?
「あっ、いいこと思いついた。」
最初に声を上げたのは、アイの方だった。
「一応確認しとくけど、まともな命令なんだよね?」
「フッフッフ・・・聞いたら多分、ミディアも絶賛すると思うよ。」
「・・・・・・」
本当かなあ?
この手のことは、アイのことを信用できない。
でも、そこまで自信があるんだったら聞いてみたい。
「何だろう?楽しみだなあ。」
琴音はすごい楽しみにしてるけど、私は不安で仕方がない。
「それじゃあ、発表するね。」
アイは自信満々な表情で、琴音の命令を発表した。
「琴音は、私達のお誕生会には学校の制服で来るように。」
「おお、それいい。」
エレーネ先輩がそう言うと、
「それいいわね、アイ。」
ラーファも頷いた。
「どう、ミディア?」
アイが私の方を見てきた。
正直、私もすごくいいと思った。
前から、琴音の学校の制服を見てみたいと思ってたからね。
でも・・・
「どうよ、ねえ、どうよ?」
さっきからのアイのねちっこい態度を見ていると、素直に認めたくなくなる。
「ねえ、ねえ、どうよ?」
「ウ、ウン・・・確かに・・・よかったけど・・・」
「へへっ、やったあ。」
アイは私を見てニコッと微笑んだ。
まあ、仕方がないね。
今回ばかりはアイを認めるしかないね。
なんかすごい悔しい気分になったけど・・・
「えっ、学校の制服かあ。
ウン、それくらいお安い御用だよ。」
琴音もなんかすごい乗り気だ。
「私、琴音の制服見てみたいと思ってたんだ。
だから、今からすごく楽しみだよ。」
「ウーン、でも、そんなに大した制服じゃないんだよね。
なんか、当日ガッカリされそうで怖いなあ。」
「大丈夫だって。
きっとみんな喜んでくれるよ。」
「ウン、ありがとう、ミディアちゃん。」
琴音も元気出してくれたし、よかった。
今年は、いつも以上に楽しいお誕生会になりそうだ。
<<琴音>>
「学校の制服かあ。」
夏服のスカートは夏休みに入ってからすぐにクリーニングに出して、昨日戻ってきたばかりなんだよね。
すごくタイミングがいいのか悪いのか。
「制服を着てラーヴォルンに行くってことは、これ着て寝るってことだよね。」
せっかくクリーニングに出したのに、まさか学校に行く前に着ることになるとは思わなかった。
それに、学校の制服を着て寝るとか、なんか変な気分だ。
ちなみに、私達の学校の夏服は、半袖のブラウスにスカート。
普通によくある夏服のスタイルだ。
正直、みんなが期待するほど大した服装じゃないと思う。
ちなみに冬服はブレザーなんだけど、さすがに夏にこれを着て寝るのはつらい。
「ミディアちゃん達はすごい期待してるけど、見たらガッカリするかも・・・」
中学校の時、同じクラスの女の子達が、高校の制服で志望校を選んでいるのを見て、バカなことをしているなあって思ったけど・・・
こんなことだったら、私も制服で志望校を選ぶんだった。
私の場合、家から近いってことだけで、何も考えずに決めちゃったからなあ。
赤川市には私達の通っている高校以外に5つの高校があるけど、かわいい制服の高校とかあったかなあ?
今まで全く興味がなかったから全然わかんない。
ちょっと調べてみるかな。
「おお、この制服は結構かわいいかも・・・」
WEBで調べてみたら、なんと市内の全高校の制服が載ったPDFのカタログが見つかった。
ネット社会は本当に便利でいい。
というわけで、早速各高校の制服を見比べてみてるんだけど・・・
「こっちの学校のスカートもいいね。」
私、本当にどうして今の学校を選んだんだろう?
わかってる。
家から一番近いからだよね。
まあ、そのおかげで、朝は結構ゆっくりできるんだけど。
「制服偏差値・・・うちの学校は赤川市で一番低いかもしれない。」
カタログを見て、少しショックを受けた。
ブルルルル・・・
スマホがバイブで揺れていた。
電話がかかってきたみたいだ。
どうやら、ニコちゃんからの電話みたいだ。
「もしもし。」
「あっ、琴音ちゃん、久しぶり。」
電話の向こうから、すごい元気なニコちゃんの声が聞こえてくる。
「実は今度の旅行のことで、ちょっと相談したいことがあってね。
それで、琴音ちゃんの都合のいい日を教えてほしいなあって思って。」
「相談したいこと?」
「ウン、詳細は会った時に話すよ。
で、いつ会えるかな?」
「私はいつでもいいよ。
毎日暇を持て余してるからね。」
「そうなんだ。」
「あっ、こないだ借りたラノベ、すごい面白かった。」
「本当?」
「だから、続きも読みたいなあって思って・・・」
「わかった。
じゃあ、次会う時に全巻持っていくね。」
全巻って、あのラノベ、全何巻あるんだろう?
まあ、あのラノベぐらいしか暇つぶしになるものないし、いっか。
「じゃあ、今度の土曜日でいい?」
「ウン、いいよ。」
そうだ、ついでだからニコちゃんに制服のことを聞いてみよう。
ニコちゃんは、うちの学校の制服をどう思ってるのかな?
「えっとね、ニコちゃんに聞きたいことがあるんだけど・・・」
「なあに、琴音ちゃん?」
「うちの学校の制服って、どう思う?」
「制服?」
電話の向こうのニコちゃんは、少し驚いているようだった。
まあ、いきなり制服の話をされたら、確かに驚くかもしれない。
でも、ニコちゃんから、意外な返事が返ってきた。
「うちの学校の制服、すっごいかわいいよね。」
えっ、そうなの?
「私がこの学校を選んだのって、制服がかわいかったからなんだよね。
スカートの柄とか、かなり好きだし。
多分、赤川市内の高校の中じゃ、一番制服偏差値高いと思うよ。」
あれっ、私と真逆の回答が返ってきた。
そんなにかわいいかな、うちの学校のスカート?
でも、ニコちゃんの話を聞いて、改めて見てみると、なんだかかわいいスカートに思えてきた。
「もしかして、琴音ちゃんって制服に興味あるの?
だったら、私の友達でそういう趣味の人がいるんだけど・・・」
「えっ、別にそう言うんじゃなくて・・・
ちょっと他の学校の制服を見て、うちの学校の制服ってどうなのかなって思っただけだから・・・」
「そうなの?」
「ウン、変なこと聞いてゴメンね。
それじゃ、土曜日ね。」
「じゃあね。」
なんか、ニコちゃん、すごい元気だったなあ。
夏休みは結構忙しいって言ってたけど、なんかすごい充実している感じだった。
それに引きかえ、私は毎日ゴロゴロと暇を持て余す日々。
「まあ、いっか。人は人、私は私。」
無理に忙しくする必要もない。
せっかくの夏休みなんだし、ゴロゴロ過ごすのも立派な休みの使い道だと思う。
「それにしても、旅行のことで相談ねえ。」
一体、なんの相談だろう?
それにしても、まさか2泊3日の旅行になるとは思わなかったなあ。
夏休み前に、日花里ちゃんとニコちゃんと一緒に海かプールのどっちかに行こうって話してたけど・・・
数日前、IP電話で海かプールのどっちにするのか、日花里ちゃんとニコちゃんと話した時のことだ。
「今度、私の親戚の家の近くで大きな花火大会があるんだけど、そこって大きな海水浴場もあるんだよね。
だから、今度1泊2日でそこに行かない?」
なぜかいきなりニコちゃんが、旅行の話を切り出してきた。
「アンタ、海は変な生き物がうごめいているから嫌だとか言ってなかったっけ?」
そう言えば、この時の日花里ちゃんは、まだいつもと同じ調子だったような気がする。
「もう、嫌だなあ、日花里ちゃんは。
そんな昔のことをいつまでも覚えているなんて。」
「昔って、まだ1週間も経ってないけど・・・」
「まあまあ・・・そんなことより、1泊2日で海水浴と花火大会旅行。
みんなで行こうよ。」
「私は別に構わないけど・・・琴音はどう?」
「お母さんにお願いしてみるけど、多分大丈夫だと思う。」
「やったあ。」
「あっ、でも、旅行の前日にルフィル・カロッサがあって、多分朝遅くまで寝ているから、今の日程だと私は無理かなあ。」
「じゃあ、2泊3日にして、1日目の夜はみんなでルフィル・カロッサを見に行こうよ。
私も日花里ちゃんみたいにラーヴォルンに行ってみたいし。」
それって、私は日花里ちゃんとニコちゃんの手をつないで眠るってことだよね。
なんか寝るのすごい大変そうだ。
「アンタ、簡単に1泊足してるけど、大丈夫なの?」
日花里ちゃんは呆れていた。
「大丈夫だよ。
親戚のおじさんおばさんは、みんなで1週間ぐらい泊まりに来てもいいよって言ってくれてたし、1日ぐらい大丈夫だよ。
それならいいでしょ、琴音ちゃん。」
「ウン、まあそれなら・・・」
「やったあ。」
こんな感じで、あっさりと旅行に決まったんだよね。
海かプールでもめてたのは何だったんだろうと思うくらいに、あっさりと決まった。
お母さんに友達と旅行に行きたいって話したら、あっさりとOKしてくれた。
「友達と素敵な夏の思い出を作ってきなさい。」
なんかお母さん、すごい嬉しそうだったな。
私が友達と旅行に行くのが、そんなに嬉しかったのかなあ?
それにしても、ニコちゃんが、まさか制服で高校を選んでたなんてね。
高校の制服、そんなにいいかなあ?
でも、ニコちゃんのおかげで少し自信がでてきた。
ニコちゃんがそこまで言うんだったら、ミディアちゃん達にも気に入ってもらえるかもしれない。
そう思ったら、ラーファちゃんとアイちゃんのお誕生日会で披露するのが楽しみになってきた。




