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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
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6.真夜中のラーヴォルン

<<琴音>>

 夏休みに入って数日が経った。

 最初の3日ほどは、朝起きて学校に行かなくてもいいことを喜んだ。

 でも、3日を過ぎると、早くも暇を持て余すようになっていた。

 友達が多ければ、みんなと遊びの予定とかで一杯になるのかもしれないけど、私は友達が少ない。

 最近はニコちゃんのおかげで友達は増えたけど、残念ながら遊びに行くような友達までにはまだ発展していない。

 今度、海かプールに行こうと日花里ちゃんやニコちゃんと約束しているけど、それまでは私のスケジュールは白紙だった。

 日花里ちゃんは毎日部活だし、ニコちゃんは友達と何か色々やっているらしく、7月は忙しいって言ってたからね。

「あー退屈だ。」

 学校がある時は、朝起こされて学校行くのが面倒だと思ってたんだけどなあ。

「持っているゲームもあらかたやりつくしたしなあ。」

 新しいゲームを買いたかったけど、そんなお小遣いも残っていなかった。

 スマホのゲームもいくつかやってみたけど、これだけで長い一日を過ごせるわけもなく、ダラダラと毎日を過ごす日々が続いていた。


「というわけで、最近、お昼退屈なんだよね。」

 最近の楽しみは、ラーヴォルンだけになっていた。

「琴音の学校には、夏休みなんてのがあるんだ。」

 ミディアちゃんは驚いていた。

 そう言えば、ラーヴォルンの学校は、行事がある日以外は基本毎日あるんだっけ。

「まとまった休みがあるなんて、羨ましいね。」

 ラーファちゃんがそう言った。

「ラーヴォルンの学校には、長期休暇とかないの?」

「一応、年末年始に20日間の休みはあるんだけどね。

 それ以外は基本ないかな。」

 そっか、ラーヴォルンの学校は大変なんだなあ。

「でも、うちの魔法学校って、一定レベル以上の人は、毎日学校に行く必要ないんだよ。」

 ラーファちゃんがそう言うと、

「えっ、そうなの?」

 ミディアちゃんは驚いた表情になった。

 どうやらミディアちゃんも知らなかったらしい。

「学校の規則で、実技か理論のレベルのどちらかがレベル15以上になった人は、基本的に登校が自由になるんだよ。

 だから、実は私達は毎日学校に行く必要はないんだよ。」

「へえ、そうなんだ。」

 なんかミディアちゃん嬉しそうだ。

 もしかして、ミディアちゃんもお休みが欲しかったのかな?

「あー、一応言っておくけど、魔法検定で結果さえ出せればって休んでもいいって話だからね。」

 エレーネちゃんがそう言うと、ミディアちゃんの表情が思い切り暗くなっちゃった。

「魔法検定で結果を出せればって・・・あんなに難しい授業、一回でも飛ばしたら絶対にわからなくなっちゃうよ。」

 そういや、こないだミディアちゃんだけ理論テストに合格して、みんなの中で一番高いレベル16になったんだっけ。

「まあ、そういうわけで、実際にはなかなか休みを取るのは難しいんだよね。」

 エレーネちゃんも思い切りため息をついた。

 うまい話はないってことだね。


「いいなあ、夏休み。

 私も、一度100日ぐらい休みがほしいよ。」

 アイちゃんは少しお疲れのようだ。

 いや、夏休み、長いと言っても100日もないから。

「休みをありがたいって思うのは、最初の1日2日だけだよ。

 そのうちだんだん退屈で仕方なくなってくるから。」

「まあ、琴音の言う通りかもね。」

 ラーファちゃんが小さく頷いた。

「休みがあったら、私はイデアグラルの準備をしたい。」

 アイちゃんが疲れ顔でそう言った。

 イデアグラル?

 なんだろう?


「あー、そう言えば、もうそんな季節だったっけ。」

 ラーファちゃんが苦笑交じりにそう言う。

「今年もあるんだ・・・イデアグラル・・・」

 ミディアちゃんは若干引いているみたいだ。

「ねえ、ミディアちゃん、イデアグラルって何?」

「イデアグラルは、様々なイデア作品を展示するイベントだよ。

 すごい魔導士や空想士から、アイのような一般人まで、誰でもイデア作品を展示することができるんだよ。」

 へえ、イデア作品の展示イベントかあ。

 少し興味があるなあ。

「年に1回、リーブルガルトで行なわれていて、アイは毎年イデアグラルに応募してるんだよ。

 まあ、応募したからといって、必ずしも展示されるわけじゃないんだけどね。

 去年、アイの作品が初めてイデアグラルで展示されるって話を聞いて、みんなで見に行ったんだよ。」

 話を聞く限りでは、楽しそうなイベントのような気がするんだけど、どうしてだろう?

 ミディアちゃんもラーファちゃんもあまり楽しそうじゃない。

「去年はアイちゃんはどんなイデア作品を展示していたの?」

 ミディアちゃんに聞いてみると、ミディアちゃんは小さなため息を一つついた。

「実は私達、アイの展示作品を見てないんだよ。」

 えっ、見に行ったのに、アイちゃんの作品を見ていないって・・・

 一体どういうこと?

「アイの作品の展示場所は、特別区画だったからね。」

 ラーファちゃんがそう言うと、エレーネちゃんがクスクス笑いだした。

「あの時のミディアとラーファの驚きようは面白かったなあ。」

「ま、まさか特別区画に入るような作品をアイが作るとは思ってなかったから・・・」

 へえ、アイちゃんの作品って、特別区画に展示されるほどすごい作品だったんだ。

「特別区画に展示されるって、もしかしてアイちゃんの作品って、かなりすごい作品だったんじゃ?」

「違うよ、琴音。

 特別区画ってのは、年齢制限のかかったイデア作品を展示する区画ってことだよ。

 私達の年齢では、アイの作ったイデア作品の展示区画に入れなかったってことだよ。」

 あっ、そういう意味の特別区画ね。

 特別という名の隔離だね。

「確か、アイのお父さんの作品も特別区画に展示されてたわね。

 親子そろって、どんなイデア作品を作ったのやら・・・」

 ラーファちゃんがジト目でアイちゃんの方を見る。

「こ、今年はきちんと全年齢が見られるものを作りますから。

 だから、今年イデアグラルに展示されたら、またみんなで見に来てほしいです。」

「わかったわかった。

 その時は見に行ってあげるから、頑張るのよ。」

 ラーファちゃんはそう言うと、アイちゃんの頭を優しく撫でた。

「ハイ、頑張ります。」

 アイちゃん、よっぽど嬉しかったのか、すごいテンションが上がってるよ。

 これは、今年の作品は期待できるんじゃないかな。


「みんなに楽しんでもらう作品を作るためにも、やっぱり休みがほしいなあ。」

 アイちゃんのその一言で、また話は夏休みの話題に戻ってきた。

「私は学校が休みだったら、もっとルーイエ・アスクのお仕事を手伝いたいな。」

 ミディアちゃん、それじゃ休みの意味がないのでは・・・

「休みかあ。

 私だったら、アトゥア中に旅に出るけどなあ。

 琴音は旅とかしないの?」

 エレーネちゃんは相変わらずアクティブだ。

 旅行かあ。

 確かに、学校がある時にはできないからね。

 でも、日本だとどこに出かけるにしても、お金がかかるんだよね。

「じゃあ、私がラーヴォルンの絶景スポットを探しているみたいに、琴音も自分の住んでいる街の絶景スポットを探してみたら?」

 絶景スポットねえ。

 でも、赤川市にそんな絶景と呼べるような場所あったかなあ?

「どんな街にも絶景スポットはあるよ。

 もしかして、琴音って自分の住んでいる街のことをあまり知らないんじゃないか?」

 確かに、エレーネちゃんの言う通り、私は赤川市のことをよく知らないかもしれない。

 多分、小中高の通学路とその周辺ぐらいしか知らないと思う。


「ねえ、琴音。」

 ミディアちゃんが声をかけてきた。

「なあに?」

「そんなに退屈だったら、一度夜のラーヴォルンに来てみるってのはどうかな?」

「夜の?」

「夜のラーヴォルンは、昼間と違って、また違った景色を見せてくれるよ。」

「そっか、その手があった。

 ありがとう、ミディアちゃん。」

「多分、私達は眠ってるから、琴音の相手できないと思うけど・・・」

「わかってるよ。

 以前、ミディアちゃんのイデアを見せてもらって、一度夜のラーヴォルンに行ってみたいって思ってたんだよ。

 すっかり忘れてたよ。

 思い出させてくれてありがとうミディアちゃん。」

「それにね、天気予報だと今日の夜は小雨が降るみたいなんだ。

 琴音、以前言ってたでしょ?

 雨の降るラーヴォルンも見てみたいって。」

「へえ、そうなんだ。」

 それは楽しみだなあ。

 しっとり雨に濡れたラーヴォルンも、見てみたいって思ってたんだよ。

 それにしてもミディアちゃん、ずっと前に私が言ったことを覚えてくれてたんだ。

 なんか、すごい嬉しいな。


 ミディアちゃんのおかげで、退屈な夏休みを過ごす方法が一つ見つかった。

 じゃあ、今日はお昼寝でもして、夜のラーヴォルンにでも行ってみるかな。


 さすがに朝起きたばかりですぐに寝るのはつらいので、昼食が終わってから昼寝することにした。

「姉ちゃん、休みになったらずっと昼寝ばっかりだね。」

 部屋でゴロッとしていると、部屋の扉がいきなり開いて、弟の悟が部屋に入ってきた。

 コイツはまた、勝手に人の部屋をノックもせずに開けやがって。

 私が着替え中だったら、どうするつもりなんだ?

 ていうか、夏休みに入ってから昼寝をするのは、これが初めてなんだけど・・・

「部屋に入る時にはノックをしろって何度も言ったでしょ。

 そういうアンタは、これから塾?」

「今日は授業はないんだけど、自習室で勉強するんだ。」

 弟の悟は、本当に私立の高校を受験することに決めたらしい。

 なんでも、難関国立大学に何人も合格者を輩出している学校らしいけど、それだけあって受験はメチャクチャ難しいらしい。

 こないだチラッと問題を見たけど、高校生の私でもサッパリわからない問題ばかりだった。

 あれを弟の悟が解いているのかと思うと、なんかすごい屈辱的だ。

 それにしても、そんな難しいところに、よく挑もうなんて気になるなあ。

 そんなに勉強したところで、どうせ・・・


 いけないいけない、また、どうせって思考に陥るところだった。

 少し気を緩めると、すぐにネガティブな思考になってしまう。

 本当にどうして私はこんなにすぐにネガティブになるんだろう?

「悟、受験頑張ってね。

 お姉ちゃんは悟のこと、応援しているからね。」

 ここは、姉として弟に励ましの言葉を送ろう。

 ついでに、自分のネガティブな感情も吹き飛ばす意味も込めて。

「えっ、あっ、ウン・・・頑張る。」

 悟は私がまさかこんなことを言うとは思っていなかったらしく、かなり驚いていた。

「なに?私がアンタのことを応援したら、何か問題ある?」

「ウウン、そういうわけじゃないけど・・・なんか姉ちゃん変わったね。

 中学の時とは別人みたいだ。」

 中学の時の私って、そんなに酷かったのかなあ?

 日花里ちゃんにも同じようなこと言われたし・・・

 確かに、あの頃は超ネガティブ人間だったけど・・・

 でも、あの頃の私って、どうしてあんなにネガティブだったんだろう?

 自分でもよくわからない。

 ただ、『どうせ』という言葉が口癖だったってのだけは覚えている。


「サンキュー姉ちゃん。

 姉ちゃんも昼寝頑張りなよ。」

 悟はそう言うと、ドタドタと階段を降りて行った。

 悟、なんか少し顔赤かったぞ。

 もしかして、私に応援されて、照れたのかな?

 憎たらしい弟だと思ってたけど、案外かわいいところあるなあ。

 あっ、でも、昼寝を頑張れは余計な一言だ。


 昼食を取った後、何もすることがなかったので、夏休みの宿題をすることにした。

 こんなに早くに夏休みの宿題に手をつけるなんて、今まで考えられなかった。

 もしかしたら、これもラーヴォルン効果なのかも。

 でも、しばらく勉強していると、だんだん眠たくなってきた。

 いつも思うことだけど、どうして、人は勉強すると眠たくなるのだろうか?

 でも、今はちょうど都合がよかった。

 よし、お昼寝タイムだ。

 今の時間は午後2時半だから、多分ラーヴォルンは真夜中だ。

 ついでだから、みんなの寝顔を覗いて行こう。

 前から一度、みんなの寝顔を見てみたかったんだよね。

 ミディアちゃんの寝顔は一度見たことあったけど、すごいかわいかったのを覚えている。

 あっ、でも、あれは気絶してたんだっけ?

 まあ、大した違いはない。

 もう一度、あの寝顔を見れるだけで、夜のラーヴォルンに行く価値は十分にある。

 それじゃあ、おやすみなさい。


 いつも眠ったら、最初にルフィルの遺跡に来るんだけど、夜の遺跡はさすがに怖い。

 ここにいたら、見えてはいけないものが見えそうだったので、早々に街の方へ向かうことにした。

 まあ、こっちでは私が幽霊みたいな存在なんだけどね。


 真夜中のラーヴォルンは街灯が消えて、街並みは暗闇の中にひっそりと佇んでいた。

「へえ、これが夜のラーヴォルンかあ。」

 誰もいないラーヴォルンの街。

 まるで、私だけの貸し切り状態になったみたいだ。

 そして、ミディアちゃんの言った通りに、ラーヴォルンには小雨が降っていて、しっとりと街中を濡らしていた。

「やっぱり、思った通りだ。」

 雨の降ったラーヴォルンは、晴れの時と違って、少し幻想的だ。

 できれば今度は昼間に雨のラーヴォルンを見たい。

「でも・・・」

 海の方を見ると、向こう側の北街は明かりで満ちていた。

「そういや、北街は眠らない街って、ラーファちゃんが言ってたなあ。」

 北街では、こんな真夜中でも多くの観光客で賑わっていそうだ。

 同じラーヴォルンなのに、海峡を挟んで全く対照的な北街と南街。

 でも、私はひっそりとしている南街の方が好きだな。

 やっぱり、夜は夜らしくひっそりしていてほしい。


 街並みを眺めているうちに、いつの間にかルーイエ・アスクの前まで来ていた。

 ルーイエ・アスクもさすがに明かりが消えていた。

「じゃあ、とりあえずミディアちゃんとラーファちゃんの寝顔を拝見していくかな。」

 そーっとルーイエ・アスクに入っていくと、ミディアちゃんの部屋に直行して、そーっとミディアちゃんの部屋に入る。

 心なしか、少し呼吸が荒い気がする。

 多分、かなり興奮しているんだと思う。

 落ち着け私、これじゃただの変質者だよ。


 ミディアちゃんは、ベッドの上で静かに眠っていた。

「やっぱり、寝顔かわいいなあ、ミディアちゃん。」

 なんか、あまりにもかわいかったので、思わずおでこにチューしちゃった。

 起きてたら、ミディアちゃん真っ赤になるんだろうけど、今は眠っているので、残念ながら無反応だった。

 いやあ、本当に寝顔かわいいよ。

 ミディアちゃん、こんなにかわいいのに、男の子から声をかけられたことがないなんて、ラーヴォルンの男の子は見る目ないなあ。


 次は、ラーファちゃんの部屋に入ってみる。

 そういや、ラーファちゃんの部屋に入るのは初めてだなあ。

 一体、どんな部屋なんだろう。

 ラーファちゃんの部屋にそーっと入ってみると、ラーファちゃんはなぜか人形を抱きかかえたまま眠っていた。

「何だろう、この人形?」

 人形と言っても、ただ人型なだけで、顔もなく衣装も身につけていない。

 正直、個人的にはあまりかわいいとは思えない人形だけど、こんなに抱きしめて眠っているところを見ると、きっとラーファちゃんのお気に入りの人形なんだろう。

 今度、ラーファちゃんの部屋に入る時には、気をつけないとね。

 寝言で、なんかミディアちゃんの名前を連呼しているけど、一体どんな夢を見てるんだろう?

 少し気になる。


 ラーファちゃんを起こさないように、そーっと部屋を出て、建物から再び外に出た。

 いつの間にか雨は上がっていて、そこには、澄み切った夜空が広がっていた。

 普段は青空しか見てないから、あまり気がつかなかったけど、こうして夜空を見ると、すごい澄んだ空だと実感する。

 おっといけない。

 思わず夜空に見とれてしまうところだった。

 夜景はまた後でじっくり堪能するとして、とりあえずエレーネちゃんとアイちゃんの寝顔も拝見しておこう。


 エレーネちゃんのお店は知っているけど、エレーネちゃんの部屋がどこなのかはわからずじまいだったっけ。

 そーっとエレーネちゃんのお店に入っていくと、2階へと上がっていく。

「それにしても、やってることはただの不法侵入だよね。」

 日本でやったら絶対に捕まるだろう。

 まあ、体が透き通ってないと、こんなに簡単に色んな建物には入れないけどね。


 エレーネちゃんのいる場所は、すぐにわかった。

 やっぱり、こないだの部屋とは別の部屋だった。

 あの部屋はきっと映像確認のための部屋なんだろうね。


 それにしても、眠っている時のエレーネちゃん、少しエロいです。

 寝間着姿が妙に胸の大きさを強調してるんだよね。

 そういや、エレーネちゃんって結構胸大きいよね。

 多分、私達の中では一番大きいと思う。

 大きいと言っても、決して爆乳サイズというわけではなく、私的には一番理想的でいいサイズだと思う。

 私も、エレーネちゃんぐらいのバストがあればなあ。

 それにしても、すごく柔らかそうだな。

 感触を確かめてみたいけど、生憎、ラーヴォルンでは私は何も触れることができない。

 今ほど、それが残念に思えたことはなかった。


 いつまでも、触ることのできないエレーネちゃんのおっぱいばっかり見ていても仕方がないので、アイちゃんの家に行くことにした。

 アイちゃんの家は、勉強会の時の一度しか行ったことないけど、場所ははっきりと覚えている。

 でも、深夜にアイちゃんの家かあ。

 何か色々とマズいものを見てしまいそうな気がする。

 アイちゃんだけにね。

 アイちゃんの家の前まで来たけど、なんか少し入るのに躊躇してしまった。

 アイちゃんの部屋で、とんでもないものを見てしまって、翌日会うのが気まずくなるなんてことだけは勘弁願いたい。

 まあ、いくらアイちゃんでも、こんな夜遅くだし、さすがに眠ってると思うけどね。


 ゴゴゴゴゴ・・・


 突然、地鳴りのような音が聞こえてきた。

 目の前の景色が少し揺れている。

 もしかして、これは地震!?

 赤川市ではしょっちゅう小さい地震が来ているけど、ラーヴォルンで地震にあったのはこれが初めてだ。

 と言っても、空中に浮いている私には、全然体感ないけどね。


「地震だ!?」


 突然、聞きなれた女の子の声が聞こえてきた。

 この声はアイちゃんだ。

 でも、家の中からじゃない。

 この近くの建物のどこからか聞こえてきた。

 一体、どこから?


 と思っていたら、すぐ隣の小さな建物から、アイちゃんが飛び出してきた。

 アイちゃん、顔真っ青になってるよ。


「アイ、ちょっと揺れているだけだろう?

 夜遅いんだし、あまり大声で騒ぐんじゃない。」

 とそこに、小柄な男の人が建物から出てきた。

「だって、ラーヴォルンに地震なんて、今までずっとなかったじゃない。

 お父さん、これはきっと悪いことの前触れだよ。」

「さては、また変なイデアでも見たな。」

「いやいや、これは天変地異の前触れだよ。」

 アイちゃん、本気で怖がっているみたいだ。

 どうやら、アイちゃんは地震がかなり苦手らしい。

 でも、怯えているアイちゃんを見て、かわいいと思ってしまった。

 人が怯えているのを見て、こんなことを考えるなんて不謹慎だとは思うけど・・・

 でも、アイちゃんが怯えるところなんて、滅多に見られない貴重なシーンだからね。


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