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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
49/254

3.エレーネのお兄さんとラーファの不思議な関係

<<ミディア>>

 今日、琴音が男の人に告白されたという話を聞いた。

 琴音は断ったそうだけど、私達ももうそんな年なんだって思った。

 私やアイも16歳だし、ラーファやエレーネ先輩は17歳だ。

 よく考えたら、そういう話があってもおかしくない年齢だ。

「でも、人を好きになるってどういうことなんだろう?」

 しばらく悩んで考えてみたけど、ウーン、よくわからないな。


 コンコン


 部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

 なんだろう、こんな時間に?

 これからお風呂に入ろうと思ってたのに。

 まあ、こんな時間に来るのなんて、ラーファぐらいだろう。

「ハイ、どうぞ。」

 でも、部屋に入ってきたのは、ラーファじゃなくラヴィおばさんだった。

「おばさん?」

「ミディア、ちょっと話があるんだけどいいかな?」

「ハイ、いいですけど・・・」

 何だろう?

 こんな時間に改まって。


「実は、ミディアに協力してほしいことがあるんだよ。」

「なんでしょう?」

「ラーファイムが大量にイデアを持っていることは知ってるよね?」

「ハイ、もちろん。」

 ちなみに、ラーファイムとはラーファの本名だ。

 イデアで思い出したんだけど、そういやラヴィおばさん、こないだラーファからイデアを取り上げてたような・・・

 あれ、一体何だったんだろう?

 ラーファの持ってるイデアに、何か問題でもあったのかな?

「実は、ルーイエ・アスクのお客様のために、新しいサービスを考えたのよ。

 宿泊客がラーヴォルンの色んな風景のイデアを見ることができるようにしようと思ってね。」

 えっ、もしかして、そのためにラーファのイデアを取り上げたの?

 お客様に貸すために?

 でも、ラーファの持っているイデアって、ラーヴォルン以外のイデアも結構多かったような気がするんだけど。

「ラーファイムのイデアを見て、主人やスタッフとも色々話し合ってみて、ラーヴォルンの風景だったらお客様に貸し出しても問題ないという結論になってね。

 こないだ、ヴォルティス・ブラネまで行って話をつけてきたところなのよ。」


 ヴォルティス・ブラネは、エレーネ先輩のイデアショップの名前だ。

 ってことは、これはもしかして、エレーネ先輩のお店と業務提携をするってことなのかな?

 まさか、そんな話が水面下で進んでいるとは思わなかった。

「それで、映像チェックも済んだから、イデアをラーファイムに返したいんだけどね。

 私がせっかく返すって言ってるのに、なぜかあの子受け取ってくれなくてね。

 困ってるのよ。」

 それはおかしい。

 ラーファはあのイデアをすごい大事にしていたのに、どうして受け取ろうとしないんだろう?

「確かに強引に取ったのは悪かったけど、あの子に何度頼んでも、絶対に貸してくれないし・・・

 もうすぐルフィル・カロッサもあるし、それまでにサービスを提供できるようにしたかったからね。」

 ルフィル・カロッサは、ラーヴォルンで行われるルフィル4大祭りの一つで、秋に行われる祭りのことだ。

 そっか、それでおばさん、仕方なく強硬策に出たってわけなんだ。

 確かにラーファは、自分の持っているイデアをなかなか見せてくれない。

 特にヴォルティス・ブラネで購入したイデアは、私にも見せてくれない。

 あのイデアに何かあるのかと勘繰りたくなるけど・・・

 でも、普通に市販されているイデアだしなあ。

「私が返すって言っても、あの子頑なに拒否するだけだから、ミディアに説得してほしいんだよ。

 早くイデアを取りに来るようにってね。」

「わかりました。

 私がラーファを説得してみます。」

「ありがとう。

 ミディアにこんなこと頼んで悪いわね。」

 おばさんはそう言うと、部屋を出て行った。


 早速、ラーファの部屋に行くことにした。

 そういや、私がラーファの部屋に行くのって、今まであまりなかったな。

 ラーファの部屋って、どんな部屋だったっけ?

 コンコン・・・

「ハイ。」

 部屋の中から、ラーファの声がした。

「ミディアだけど、入ってもいい?」

「どうぞ。」

 久しぶりに入るせいか、なんか変に緊張するよ。

 恐る恐る扉を開けて、ラーファの部屋の中を覗き込む。


 ラーファの部屋は、私の部屋と違って、色んなものがたくさんあった。

 特に圧巻なのは、大量のイデアを保管するための大きな棚だ。

 始めてラーファの部屋に入った時は、イデアの数に圧倒されたっけ。

 その中にはエレーネ先輩と撮影に行った時のイデアや、エレーネ先輩のお店で購入したイデアも結構あった。

 でも、それらのあった場所が、今はぽかんと空いた状態になっていた。

 そして、ベッドの横にはたくさんのイデアルディがあった。

 イデアルディは、見た目は小さな人形だけど、これも立派な魔法アイテムの一つだ。

 でも、どうしてイデアルディがベッドに転がってるんだろう?

 ラーファは、机の前の椅子に座っていた。

「どうしたの、ミディア?」

「いや、ラーファの部屋に入るの、久しぶりだから・・・」

「あれっ、そうだったっけ?

 まあ、ベッドにもかけてよ。」

 ラーファに言われるまま、ベッドに腰掛ける。

「で、何の用?」

「実は、ラヴィおばさんが、ラーファにイデアを返したいって言ってるんだけど・・・」

「ああ、あのイデアだったらもういらないわよ。

 ゴミにでも出してくれればいいよ。」

「どうして?

 あんなに必死に集めてたのに?」

「だ、大事なものだからよ。

 人に見られた時点で、価値なんてなくなったわ。」

 えっ、どういうことだろう?

 ラーファの言ってることがさっぱりわからないんだけど・・・

 イデアに映ってるのは、いろんな場所の景色の映像だと思ってたんだけど、もしかしたら違ったのかな?

 エレーネ先輩と一緒に撮影に行ったのとか、エレーネ先輩のお兄さんが撮ってきたイデアだと思ったんだけど・・・

 って、そっかあ。

 すごい大事なことを忘れてたよ。


「そっかあ、ラーファって、エレーネ先輩のお兄さんのことが大好きだったんだよね。」

「なっ!?」

 ラーファの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。

 うわあ、なんかラーファかわいい。

「エレーネ先輩のお兄さんのイデアをおばさんに見られて、それで怒ってるんだ。」

「ち、違う。」

 うわあ、ラーファ、耳まで真っ赤になってる。

 本当にラーファはエレーネ先輩のお兄さんのことが大好きなんだなあ。

 ラーファを見ていると、なんかこっちまでドキドキしてくる。

「ミディア、誤解してるよ。

 わ、私は・・・あ、あんな人のことなんか、好きでもなんでもないのよ。」

「じゃあ、どうしてエレーネ先輩のお兄さんのイデアを、全部欠かさずに集めているの?」

「そ、それは・・・」

 またまた、ラーファの顔が真っ赤になった。

「おばさんが見たぐらいで、イデアの価値が変わるなんてことないよ。

 だから、ね?」

「ウ、ウン・・・」

 か、かわいい。

 ラーファに初めてキュンとなった。

 人を好きになるって、こんなにも人を変えるものなんだね。

 ラーファがこんな反応を見せるとは思わなかった。

 そっかあ、ラーファにはもういたんだね。

 大好きな人が。

 正直、少し羨ましい。

 本当に私にも、いつの日かできるのかな?

 将来を誓えるような素敵な人が?


 ラヴィおばさんが預かっていたイデアを、ラーファはあっさりと受け取った。

 ラーファはそれを大事そうに受け取ると、慌てて部屋に持って行った。

 あのイデアの映像、いつか私にも見せてくれる日が来るのかな?


「えっ、兄貴のことを教えてほしい?」

 我慢できなかったので、イデアハントでエレーネ先輩に聞いてみることにした。

「ラーファをあんなに乙女にしてしまうなんて、エレーネ先輩のお兄さんってどんな人なのか、すごい気になったんですよ。」

「アハハハハ・・・まあ、兄貴とラーファの間には色々あったからね。

 まあ、でも、そのことを話したら、ラーファに殺されそうだ。」

 なんだろう?

 ラーファに口止めでもされてるのかな?

 一体、2人の間に何があったのだろう?

「兄貴の名前は、ヴィルトワって言うんだ。

 私達より7歳年上だから、今は24歳だよ。」

 エレーネ先輩よりも7歳も年上だったとは・・・

 随分と年の離れた兄妹だったんだね。

「私達がラーヴォルンに引っ越してきたことは前にも話したよね?」

「ハイ。」

「その時、私は8歳で、兄貴は15歳だった。

 私も兄貴もこっちの魔法学校に編入したんだけど、兄貴は結局卒業しないまま、放浪の旅へ。」

「えっ、お兄さん、魔法学校卒業してないんですか?」

「ウン、私が言うのもなんだけど、兄貴はすごい優秀な成績で、将来は優秀な魔導士になれるって言われてたんだよ。

 でも、ある日突然、アトゥアの秘境をこの目で見たいとか言い出してね。」

 なんか、すごい人だなあ。

 私には絶対に真似できない決断力と行動力だよ。

 それで、今でもアトゥアの秘境を巡って旅しているんだ。

「だから、兄貴が魔法学校にいたのは2年もないはずなんだよ。

 でも、その2年の間にラーファが兄貴に恋をしたってわけじゃないぞ。」

「えっ、そうなんですか?」

「当時、ラーファは10歳だぞ。

 いくらなんでも、恋に落ちるには早すぎるだろ。」

「まあ、言われてみれば確かに。」

「兄貴はアトゥアを旅して撮ったイデアを、たまにラーヴォルンに持って帰ってくるんだよ。

 ついこないだも持って帰ってきてたんだけどね。

 3年前に兄貴がラーヴォルンに帰ってきた時に、ラーファと色々あったんだけど、ゴメン、やっぱりその話はできないや。」

「わかりました。

 また今度、お兄さんのことを教えてくださいね。」

「ああ、いいぞ。」


 結局、エレーネ先輩から聞き出せたのは、お兄さんの名前と年齢だけだった。

 エレーネ先輩って、ああ見えて結構口堅いんだよね。

 だから、これ以上の話を聞きだすのは、多分無理だろう。

 エレーネ先輩の話を聞いて、ヴィルトワさんがどういう人か少しはわかったけど、やっぱり会ってみないとね。

 たまにラーヴォルンに帰ってくるんだよね。

 じゃあ、今度帰ってきた時にエレーネ先輩にお願いして、紹介してもらおう。

 ラーファが大好きな人がどんな人なのか、私も知っておきたいしね。


<<エレーネ>>

「ていうか、私も知らないんだよね。」

 そう、実は私もラーファがどうして兄貴のことを好きになったのか、その経緯を知らない。

 ラーファに何度か聞いてみたことあったけど、そのたびにラーファの表情が強張るから、聞かないことにしてるんだよね。

 ちなみに、兄貴にもそれとなくラーファのことを聞いてみたことはあるけど、こっちもまともな答えが返ってきた試しがない。

 兄貴は話をはぐらかすのがうまいからな。

 まあ、ラーファが兄貴のことを意識しだした時期は、はっきりわかっているけどね。

 3年前の春、まだミディアがルーイエ・アスクに来る前に、兄貴がラーヴォルンに帰ってきたんだけど、その時からだ。

 あの時は、リリム先輩もラーヴォルンに帰ってきて、私とラーファは兄貴そっちのけでリリム先輩に会いに行ったんだよね。

 あの時の兄貴の寂しそうな表情をよく覚えてる。

 思い出したら、なんかおかしくなって思い出し笑いしそうになった。

 そんな兄貴は、今もアトゥアの秘境を探して、アトゥア中を旅している。


「兄貴、今頃どこにいるんだろう?」

 ミディアの話を聞いて昔のことを思い出したら、なんだか無性に兄貴に会いたくなった。

 だって、兄貴がラーヴォルンにいるのって、長くても5日だからね。

 こないだもルフィル・コスタの朝には、もういなくなってたし。

 こないだ持ってきたイデアは、イルキスの映像イデアだった。

 でも、イルキスってヴェルク帝国の領土内だよね。

 どうやって、ヴェルク帝国に入ったんだろう?

 あそこは今すごい検閲が厳しかったはず。

 それに、国内もすごい監視が厳しいって話を聞いたことがある。

 下手に入ると、スパイの嫌疑かけられて捕まえられるなんて話も聞いたことがある。

 まあ、どれも本当のことかどうかわからないけどさ。

 よくヴェルクに入って戻ってきたものだと思うよ。

 そういや、今度は南に行くって言ってたなあ。

 今頃、どこにいるのやら。


「それにしても、ミディアもなんだかんだでラーファのことが気になるんだな。」

 普段はラーファのことをうっとおしがってるように見えても、なんだかんだであの二人、本当の姉妹みたいになってきたな。

 いい傾向だ。

 こないだ、ケンカもしてたしね。

 やっぱり、本物の姉妹になるんだったら、ケンカの一つや二つはやっておかないとね。


「兄貴・・・会いたいよ。」

 私なんて、兄貴とケンカすることすらできない。

 早くラーヴォルンに帰ってきてよ。

 今のラーヴォルンには、異世界の人間が来てるんだよ。


「エレーネ、さっさとお風呂に入りなさい。」

 お母さんの声が聞こえてきた。

「ハーイ。」

 そういや、お母さんは兄貴のことをどう思ってるんだろう?

 魔法学校を中退した時も、特に何も言わなかったし。

 普通だったら、もっと兄貴のことを怒ってもいいと思うんだけどなあ。


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