40.記憶を取り戻せ
<<ミディア>>
どうして、私達は琴音のことを忘れてしまったのだろう?
誰かに記憶を封印されたと言っても、大事な友達のことをこんなにも簡単に忘れることができるものなのだろうか?
何だか琴音にすごい申し訳ない気持ちになった。
「ミディア、また変な夢でも見たんでしょ。」
最初はこんなことを言っていたみんなも、私がしつこく琴音の名前を出すうちに、何か記憶の断片を思い出したのかもしれない。
3人とも真剣に琴音のことを思い出そうと考え込んでいた。
「琴音?そう言えば、どこかでそんな名前を聞いたことがあったような・・・」
ラーファは苛立っていた。
多分、昨日の私と同じで、あともう少しで思い出せそうなものが出てこないもどかしさだと思う。
「琴音かあ。そう言えば、最近、そんな子と遊んだ気がする。」
エレーネ先輩も同じもどかしさを感じているようだった。
「ウン、ミディアの言う通りだ。
確かに、琴音って子いた。」
最初に思い出したのは、なんとアイだった。
「ミディア、確認したいことがあるの?」
「なあに?」
「琴音って、確か別の場所から来た女の子で、ミディアとラーファ先輩にしか見えないんだよね。」
「ウン、そうだよ。」
「それで、以前、見えない私達のために、ラーファ先輩がイデアに念写して見せてくれた。」
「そう、それが琴音だよ。」
「やっぱりそうか。」
どうやらアイは完全に琴音のことを思い出したようだ。
「琴音ってすごいかわいかったから、色んな妄想で使わせてもらったんだよね。」
恐るべきは、アイの妄想力。
誰が私達の記憶を封印したのかわかんないけど、まさか妄想でそれを打ち破るとは、さすがの術者も想像しなかっただろう。
「でも、どうして忘れてたんだろう?
あんなに夢中に妄想していたのに。」
アイがどんな妄想をしていたのかはわからないし、わかりたくもないけど、琴音のことを思い出してくれてよかった。
「そっか、私も思い出した。」
どうやらエレーネ先輩も思い出したらしい。
「確か、琴音って二ホンって国から来たって言ってたよな。
アトゥアにはない、異世界から来た女の子だよな。」
「そうです。」
「そっかあ、部屋に置いてあったノートに、わけのわからないメモがあったから、なんだこれって思ってたんだよ。
あれ、多分、全部二ホンに関することを書いてたんだと思う。」
そう言えば、エレーネ先輩は、二ホンに関することを色々とメモしていた。
そっか、メモも残っていたんだ。
「そういや、琴音、昨日来てないよな?」
「そうですね。」
本当は来ていたんだけど、昨日のことは多分言わない方がいいと思う。
「もしかして、私達が忘れちゃったから、ショックで来なくなっちゃったのかも。
どうしよう?
二ホンのこと、もっともっといっぱい知りたかったのに・・・」
エレーネ先輩は頭を抱えていた。
まあ、目的はどうであれ、エレーネ先輩の記憶も戻ってよかった。
「ダメ、どうしても思い出せない。」
でも、ラーファだけはどうしても思い出せなかった。
ラーファは私と同じで、琴音の姿がずっと見えていた。。
だから、エレーネ先輩やアイよりも早く思い出せてもいいはずなのに、どうして思い出せないんだろう?
もしかしたら、あともう一押しが必要なのかも。
「そうだ、みんな、私の部屋に来てよ。
ラーファの念写したイデアが残っているから。
それを見たら、きっとラーファも思い出せるよ。」
「私が琴音を念写をしたの?」
「そうだよ。」
「そんなことが・・・」
突然、ラーファが頭を抑える。
「どうしたの、ラーファ?」
「今、すごく頭が痛くなって・・・でももう大丈夫よ。
それより、早く見せて。」
「ウン、わかった。」
私達は駆け足で、ルーイエ・アスクに入っていった。
「あら、みんないらっしゃい。」
ラヴィおばさんの挨拶にもほとんど答えることなく、みんな慌ただしく私の部屋まで駆け上がって行った。
「これだよ。」
部屋につくと、机の上に置いてあったイデアをみんなに見せた。
イデアフィールズにセットすると、琴音の姿が映し出された。
「そうだよ、この子だよ。」
「確か、最初に念写したのはラーファがかなり編集したものだったんだよな。」
「それで、今度はミディアも確認するって言って、ここで念写したんですよね。」
アイとエレーネ先輩は、もうほとんどの記憶を取り戻していたみたいだった。
「この子が、琴音?
確かに見覚えがある。」
ラーファの表情が変わる。
「こっちのイデアも見て。」
私はもう一つのイデアをセットする。
こっちは、私が琴音に夜景を見せるために撮った映像が収まっているイデアだった。
映像の終わりの方に、私達の会話が入っていた。
「そういや、私って、夜のラーヴォルンの街をあまり見たことないなあ。」
「ミディアは普段、夜出歩かないもんね。」
「ラーファは夜遅くまで出歩きすぎだよ。」
「かもしれないね。
でも、ミディア、よかったね。
この景色を初めて見るのは、ミディアも同じってことだね。」
「そっかあ、それはなんかうれしいな。
琴音、これを見て喜んでくれるといいな。」
「大丈夫、きっと喜んでくれるわよ。」
「思い出した・・・これ、ハーメルトンのコンサートの帰りに撮ったものよね。
確か、琴音に見せるために撮影したんだっけ。」
イデアを見て、ようやくラーファも全てを思い出したみたいだった。
でも、ラーファはすごい頭を痛そうにしていた。
「大丈夫、ラーファ?」
ラーファは2,3回首を横に振った後、私の方を見て笑みを浮かべた。
「私なら大丈夫よ。」
そんなに思い出すのがきつかったのかな?
ラーファ、本当に大丈夫かな?
「私、どうして、こんな大事なことを忘れていたんだろう?」
「仕方がないよ。私達、みんな記憶を・・・」
とっさに口をつぐんだ。
昨日、琴音にそっくりな女の子が私に話してくれたこと。
あれって、多分、みんなに話さない方がいいんだろう。
「えっ、みんなの記憶がなんだよ?」
エレーネ先輩が私に聞いてきた。
「みんな記憶喪失になっていたんだから、ラーファだけが悪いわけじゃないってことですよ。」
これでごまかせるかな?
エレーネ先輩、結構鋭いからなあ。
「そうだな、みんな記憶喪失だったんだから、ラーファだけが悪いわけじゃない。」
エレーネ先輩はそう言うと、落ち込んでいるラーファの頭を優しく撫でた。
「アンタになでなでされると、なんかムカつく。」
「なんだよ、せっかく優しくしてやってるのに。」
「じゃあ、ラーファ先輩、私が頭を撫でますよ。」
「ミディア、私の頭をなでなでして。」
「えーっ。」
どうやら、ごまかせたみたいだった。
「いつもだったら、もうとっくに琴音が来てもいい時間なんだけどなあ。」
記憶を失っていたせいか、いつも以上に琴音に会いたいと思っていた。
それなのに、今日はまだ琴音は来ない。
「確かに遅いよな。」
「いつもなら、昼食終えて下校する時間くらいに来てたのに。」
みんなも私の部屋で琴音が来るのを待っていた。
いつも以上に琴音に会いたいって思っているのは、みんなも一緒みたいだった。
それが少し嬉しかった。
でも、いつまで経っても、琴音は姿を現さなかった。
「ねえ、もしかして琴音、今日は来ないのかな?」
ラーファが不安になるようなことを言い始めた。
「なんで、そんなこと言うの?」
「だって、昨日も来なかったんでしょ?
きっと、私達が琴音のことを忘れちゃったから、ショックで来なくなっちゃったんだよ。」
そっか、みんなには見えていなかったんだ。
昨日、琴音は来ていた。
でも、あれは多分、琴音じゃない。
琴音の姿をした別人だと思う。
でも、悪い人じゃないと思った。
だって、あの人は、琴音のことを気にかけているようだった。
あの人は琴音と一体どういう関係なんだろう?
少し気になったけど、そんなことよりも今は琴音のことだ。
あの人は琴音について、何か言ってなかったかな?
そう言えば、あの人、こんなことを言ってたなあ。
「もし、次に私を見かけることがあったら、優しく声をかけてほしい。」
次に見かける時かあ。
そういや、いつもは琴音が私達のところまで来てくれてたんだっけ。
でも、今日はみんな琴音に会いたくて仕方がなかった。
だから、今日は私達が琴音を迎えに行こう。
確か、琴音はいつもあの場所に姿を現すはず。
「みんな、琴音を迎えに行こうよ。」
「えっ、どこに?」
「私達が初めて会った場所だよ。」
「そっか、ルフィルの遺跡か。」
「ウン、琴音はきっとそこに来る。」
私達は、ルフィルの遺跡に向かうことにした。
「今日はなんかみんなドタバタしてるわね。」
慌てて出ていく私達を見て、ラヴィおばさんにそう言われた。
確かに今日はそうかもしれない。
早く琴音に会いたくて、じっと待ってなんかいられなかった。
多分、みんなも同じ気持ちなんだと思う。
私達は全速力でルフィルの遺跡まで走った。
「琴音、私、待ってるから、早く来てね。」
到着すると、私は遺跡に向かって思い切りそう叫んだ。
「私に、もっともっと、二ホンの話を聞かせてよ。」
エレーネ先輩も大声で叫んだ。
「琴音、早く来て、色々と妄想させてよ。」
アイも叫んだけど、それはさすがにどうなんだろうか?
「琴音がミディアといちゃいちゃしているのを見せられるのは嫌だけど・・・
でも、琴音がいないと、ミディアが寂しがる。
それに、私もやっぱり寂しいよ。
だから、琴音、早く来てよ。」
ラーファのも何か少し変だよ。
こういう時ぐらい、まともなことを叫んでほしかったけど、まあいいかな。
「私、琴音とそんなにいちゃいちゃしてなかったよ。」
「いっつも、ベッタリくっついてたくせに。」
「あ、あれは、琴音が抱きついてくるからだよ。」
「でも、ミディア、嫌がってなかったでしょ。」
「うっ、それはまあ・・・そうなんだけど・・・」
「今の話に出てきた状況、すごい興奮するんですけど、ラーファ先輩、詳しく教えてくれませんか?」
「こうなったら、アイに妄想ネタとして提供してやる。」
「やめてよ。」
普段は閑散としているルフィルの遺跡だったけど、今日は私達の大声でとても賑やかだった。
一部変なのも混じっているけど、みんなの思いは同じだよ。
琴音、早くラーヴォルンに来て。
<<琴音>>
さっきから涙がずっと止まらなかった。
ミディアちゃんは、記憶を封印されていたにも関わらず、自力で私のことを思い出してくれたんだ。
そして、ラーファちゃんもエレーネちゃんもアイちゃんも、みんな私のことを思い出してくれた。
そして、私にラーヴォルンに来てと言ってくれている。
「もう一度聞こう。
琴音、ラーヴォルンに行くか、それとももう行くのをやめるか。
どっちにする?」
覆面が私に聞いてきた。
「ズルいよ・・・こんなの見せられたら、行くしかないじゃない。」
「ここから、ミディア達にお別れの挨拶もできるが・・・」
「行きたいよ。私だって、ラーヴォルンに行きたいよ。
でも、私が行くことで、またミディアちゃん達に迷惑をかけちゃったら・・・」
「それなら心配ない。」
覆面がそう言った。
「えっ!?」
「今回の事件の犯人に関しては、私がなんとかしよう。」
まさか、覆面がそんなことを言い出すとは思わなかった。
「どうにかって・・・あなたにどうにかできるの?」
「私の力をなめてもらっては困る。
何者の仕業か、おおよそ見当はついているが、この私相手に舐めた真似をしたらどうなるか思い知らせてやる。」
覆面、かなり怒ってるね。
私のためというよりは、思いっきり私怨っぽいんだけど・・・
でも、今回の事件の犯人は何とかするって、どうするつもりなんだろう。
何ていうか、あまり血なまぐさい結末は嫌だなあ。
「これは私にとっても邪魔な存在だからな。
今後のことを考えたら、一刻も早く駆除した方がいいだろう。」
駆除とか言っちゃってるよ。
よっぽど頭に来てるんだなあ。
まあ、動機はどうであれ、この様子だと、覆面は全力で対処してくれそうだ。
「だから、今はお前の気持ちに従って、答えを出してほしい。
琴音、ラーヴォルンに行くか、それとももう行くのをやめるか。
どっちにする?」
もう一度、覆面が私に聞いてきた。
「行くよ・・・私、ラーヴォルンに行く。」
ミディアちゃん達のためだったら、行かない方がいいと思っていた。
でも、ミディアちゃん達がこんなにも私のことを思ってくれているんだったら、私はそれに応えたいと思った。
何より私がミディアちゃん達に会いたかった。
「そうか、ならば、いくつかお前に言っておきたいことがある。」
覆面は私にそう言ってきた。
「まず、今回のことは、彼女達には絶対に話すな。」
「ウン、それはそのつもりだよ。」
「まあ、どうしても話さないといけなくなったとしても、ミディアだけにしておけ。
ミディアには少しだけ事情を話している。」
「ウン、わかった。」
「次に、今後もこの手の妨害工作を受ける可能性がある。
できるだけ未然に防ぐつもりだが、万が一ということもある。
だから、次からは私の指示には素直に従え。」
「ウン、わかった。」
「今回の敵は別にして、お前の姿が見えるのが、ミディアとラーファだけと考えるのは早計だ。
ラーヴォルンにはアトゥア中から観光客がやってくる。
もしかしたら、お前の姿が見える観光客が来るかもしれない。」
確かに、それはそうかもしれない。
ミディアちゃんとラーファちゃんの確認はしたけど、それ以外は見えてなさそうだって思っていただけだ。
もしかしたら、他にも私の姿が見えている人間がいるのかもしれない。
そう考えたら、コンサートに行ったり、北街の中を歩き回ったり、私、随分と大胆なことをやってたなあ。
「お前の姿を見た人間は、大抵何らかの反応を示すだろう。
そういう人物を見つけたら、私のことを強く念じろ。」
「えっ、覆面に呼びかければいいの?」
「そうすれば、私がチェックしてやる。
それ次第では、一度引き戻すこともあるかもしれないが、その時は素直に従ってくれ。」
「ウン、わかった。」
「私からは以上だ。
もう一度言うが、今回の事件を起こした犯人のことは、こちらに任せてくれればいい。」
「ウン、わかった。
でも、私からも一つ質問があるんだけど・・・」
せっかく、覆面に会えたのだから、もう一度疑問に思っていたことを聞いてみようと思った。
「何だ?」
「どうして、私をラーヴォルンに連れて行くの?
私をラーヴォルンに連れて行く目的は何なの?」
これこそが、ずっともやもやした気分でいる元凶だ。
覆面の目的さえはっきりすれば、もっとスッキリした気分でラーヴォルンに行ける。
でも、覆面は答えてくれるだろうか?
そう思った時、覆面が答えてくれた。
「本当の目的はまだ言えないが、世界征服でないことだけは約束する。」
体中の体温が一気に上がった。
多分、今すごい顔が赤いと思う。
「も、もしかして、私と日花里ちゃんの会話を・・・」
「ああ、聞いていたとも。
久しぶりに笑える話だったぞ。」
覆面は私達の会話を聞いて、笑ってたんだ。
こっちは真剣に悩んでたのにヒドイよ。
そういや、日花里ちゃんにも笑われたな。
「悪いが、今は目的を話せないから、私を信じてくれとしか言えない。
だが、私は地球人類の敵でもなければ、アトゥアの敵でもない。
これだけは言っておく。」
「わかったよ。
今はそれで納得するよ。」
最初は恨んだこともあったけど、ここ数日会って話してみて、この人は悪い人ではないと思った。
何をするにしても、まずは私の意志を確認しようとしてくれてるし。
「ラーヴォルンに行って、ミディア達と一緒に色んなことを体験するといい。
その体験は、きっと将来、お前の役に立つだろう。」
「ウン、ありがとう。」
地球征服じゃなくなったことで、覆面の目的がますますわからなくなったけど、とりあえず危険はなさそうだし、まあいいかな。
でも、一度ラーヴォルンに行くのをやめさせようとしたのは、何だったんだろう?
それも気になったけど、蒸し返して面倒なことになるのも嫌だったので、これ以上は聞かないことにした。
「そうだ、もう一つ大事なことがあった。」
まだあるのか?
なんか、色々と注文つけてくるなあ、この人。
日花里ちゃんの言った通り、何だかお母さんみたいだな。
「何ですか?」
「これは非常に重要なことだ。
ラーヴォルンも大事だが、お前の住む世界のことも大事にしろ。」
これはまた意外なことを言ってきたなあ。
でも、私、そんなに実生活をないがしろにしているつもりないけどなあ。
「私、普段の生活も大事にしているつもりだけど。」
「ならば、これからもラーヴォルンと実世界の両方を大事にしろ。
これは非常に重要なことだ。」
そんなに念を押させると、なんか不安になってくる。
確かに一時は、毎日がつまらないって投げやりになっていた時期もあったけど・・・
でも、ラーヴォルンに行くようになって、むしろ学校生活も大事にするようになった気がする。
それにしても、覆面がこんなことを言ってくるとは思わなかった。
日花里ちゃんが言ってたように、覆面は私が現実の世界をつまらないと思ってしまうことを心配してるのかな?
「ウ、ウン・・・わかった。」
でも、確かに大事なことかもしれない。
ラーヴォルンに夢中になって、学校の友達や家族をないがしろにするのはよくない。
これからは気をつけよう。
「じゃあ、これからお前を今からラーヴォルンに送る。
さっきから、ミディア達がずっと待っているからな。」
映像には、ミディアちゃんがさっきからずっと叫んでいた。
「行くぞ。」
「ウン。」
次の瞬間、目の前が真っ白になる。
そして、次に視界に入ってきたのは、ルフィルの遺跡とそこにいたミディアちゃん達だった。
「琴音・・・琴音ーーー!!!」
ミディアちゃんとラーファちゃんが私の方に駆け寄ってきた。
目の前のミディアちゃんは、生きていた。
さっき映像で見たから知っていたけど、目の前にミディアちゃんがいるだけで、もう涙を抑えきれなくなった。
「ミディアちゃん、ラーファちゃん。」
私は2人に駆け寄って、思い切り抱きついて泣いた。
ミディアちゃんとラーファちゃんも泣いていた。
「ゴメンね琴音、私達、みんな、琴音のことを忘れていて・・・」
「いいよ、そんなことどうでもいいよ。
こうして再会できただけで、私はすっごい嬉しいんだから。」
「おーい、ミディア、ラーファ、お前達だけで盛り上がってるんじゃねーよ。」
エレーネちゃんが大きな声でミディアちゃん達を呼んだ。
「もしかして、琴音が来たの?」
アイちゃんもミディアちゃんに聞いていた。
「ウン、琴音が来てくれたよ。」
「じゃあ、今日の琴音がどんな服装なのか、ラーファ先輩、さっそく念写お願いします。」
「もう、アイは相変わらずだなあ。」
その時、大きな風が吹き上げた。
それは、とてもさわやかな風のように思えた。
「これは多分、秋風だよ。」
ミディアちゃんがそう言った。
「へえ、ラーヴォルンの秋風って、こんな感じなんだ。」
「ラーヴォルンは夏の間は、ほとんど大きな風が吹かないんだ。
だから、こういう大きな風が吹いたら、本格的な秋の到来って言われてるんだよ。」
そっか、ラーヴォルンは夏が終わり、秋に突入かあ。
「何言ってるの、まだまだ夏は終わらないわよ。」
ラーファちゃんが笑顔でそう言った。
「琴音、行こう。」
ミディアちゃんが、私に手を差し出した。
「ウン、ミディアちゃん。」
触れることはできないけど、私はミディアちゃんの手にそっと自分の手を添えて、笑顔で頷いた。




