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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
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37.衝撃の結末

<<琴音>>

 なんだかんだで疲れていたこともあって、日花里ちゃんの抱きつきも気にならずにすぐに眠れたみたいだ。

 気がつけばラーヴォルンに来ていた。

「あれっ、覆面、出てこなかったなあ。」

 てっきり、最初に覆面が出てくると思ってたので、ラーヴォルンに到着して正直拍子抜けした。

 てことは多分、帰る時に出てくるつもりなのだろう。

「とりあえず、覆面のことは一旦忘れよう。

 ミディアちゃんのところに遊びに行くかな。」

 時間的には、ちょうど下校している時間だと思う。

 というわけで、魔法学校へと向かおうとしたその時、何と突然、覆面が目の前に姿を現した。

 いつもは周りを止めて登場するので、完全に油断してた。

「わっ、ビックリした。

 な、何?いきなり現れて?」

 突然の出現に驚いて、思わず変な声が出てしまった。

 だが、覆面は私の驚きなんて、気にも留めていないようだった。

「琴音、今日はミディアと会わない方がいい。」

「えっ、どうして?」

「どうしてもだ。

 今からお前を強制帰還させる。」

 もしかして、もうこれで終わりってこと。

 私がラーヴォルンに来るのは、これで最後ってこと?

 嫌だ、そんなの絶対に嫌だ。

 私にどれだけのことができるかわからないけど・・・

 でも、せめて自分の思いを覆面に叩きつけてやる。

 ここでやるんだ。

 今こそ、自分の思いを、覆面に全てぶつける。


「嫌、絶対に帰りたくない。」

「頼むから言うことを聞いてくれ。

 これはお前のためだ。」

 どうやら、日花里ちゃんの予想が当たってたみたいだ。

 覆面は私のことを心配してくれているみたいだ。

 覆面が何者かわからないけど、そんなに悪い人じゃないのかもしれない。

 でも、こればかりは私も引けない。

 だって、今、私の一番の望みは、ラーヴォルンでミディアちゃん達と一緒に楽しい時間を過ごすことなんだから。

「嫌です。私は、これからもラーヴォルンにずっと行きたいです。

 今すぐにミディアちゃん達と別れるなんて、絶対に嫌だ。」

「その話は、今はどうでもいい。」

「あなたは、ラーヴォルンは理想郷なんかじゃないって言ったけど、私にとっては、ラーヴォルンは理想郷そのものなんです。

 素敵な景色に囲まれていた美しい街で、ミディアちゃんのような素敵な友達ができたんですよ。

 私にとっては、ここは理想郷なんです。

 だから、お願いです。

 これからも、私をラーヴォルンに連れて行ってください。」

 私は、自分の思いを、覆面に全てぶつけた。

 言いたいことは全て言ったつもりだ。

 覆面は私の話を黙って聞いていたが、しばらく考えた後で私に聞いてきた。

「お前の目を覚ますためにも、このまま行かせた方がいいかもしれん。

 そうか、絶対に後悔しないんだな?」

「ハイ。」

「なら、行くがいい。

 だが、どうなっても知らないからな。」

 覆面はそう言うと、姿を消した。

「フンだ。後悔なんか絶対にするもんか。」

 でも、覆面がおとなしく引き上げるとは、正直思わなかった。

 だって、私をラーヴォルンに連れてきているのは覆面の力によるものだし。

 私がどんなに暴れようが、覆面なら強制的に帰還させることができるはずなんだけど、そうはしなかった。

 一体何を企んでいるのかな?

 おっと、こうしてはいられない。

 早くミディアちゃんのところに行かないと。


 やっぱり、ミディアちゃんは下校途中だった。

 でもいつもと違って、今日はミディアちゃん、エレーネちゃん、アイちゃんの3人だけだった。

 心なしか、3人ともなんか元気がなかった。

 あれっ、ラーファちゃんはどうしたんだろう?

 今日は風邪でもひいて休んでるのかな?

「ミディアちゃん、おかえり。」

 いつものように、ミディアちゃんに声をかけたけど、なんか反応が鈍かった。

「琴音・・・ただいま。」

「どうしたの、ミディアちゃん?

 なんか元気ないみたいだけど・・・」

「実は、ラーファがいなくなっちゃんだよ。」

 えっ、どういうこと?

 ラーファちゃんがいないって、一体何があったんだろう?

 3人とも元気がないのは、そういうことか。

「一体何があったの?」

 私はミディアちゃん達に事情を聴くと、ミディアちゃんが説明してくれた。

「そんなことがあったんだ。」

 ミディアちゃん達の話をまとめるとこんな感じだ。

 昨日、私が帰った後で、みんなでスイーツのお店に入ったらしい。

 そこで、エレーネちゃんがリリムと言う人にマーシャント干渉という魔法を使ってもらえれば、エレーネちゃんやアイちゃんにも私の姿が見えるかもしれないという話をした。

 そうしたら、それを聞いたラーファちゃんはひどく怯えた表情で飛び出して行ったきり、行方不明になってしまった。

 夕べ遅くまで、みんなで探したけど、ラーファちゃんは見つからず、捜索願いまで出す大事になってしまったらしい。


「ねえ、マーシャント干渉って、そんなに危険な魔法なの?」

「ウウン、考古学者が普通に使っている魔法だけど。

 私もエレーネ先輩も、どうしてラーファがあんなに怖がっていたのか、さっぱりわからないんだよ。」

 ミディアちゃんもエレーネちゃんもわけがわからないといった感じだった。

「最初は、ラーファ先輩がリリムさんのことを怖がってるんだと思ってたんだけど。

 でも、エレーネ先輩の話を聞くと、そんなことないみたいだし、本当にわけわからんですよ。」

 今日のアイちゃん、すごいテンション低いなあ。

 アイちゃんって、すごいラーファちゃんに憧れているって話を聞いたことがある。

 だから、すごい心配しているんだろうなあ。

 私としては、エレーネちゃんやアイちゃんと直接会話できるようになれたら、とても嬉しい。

 でも、それでラーファちゃんが怖がってしまうんだったら、やらなくていいと思った。

「ミディアちゃん、エレーネちゃんの気持ちは嬉しいけど、ラーファちゃんが嫌がってるのだったら、やる必要ないよ。」


 その時だった。

 なんか、周囲にいた人達がざわざわ騒ぎ出した。

 周りの人達は、どうやら学校のある方向を見ていた。

 なんだろうと思い、学校の方を見ると、向こうからマントをつけた人達が走ってくるのが見えた。

「えっ、ミディアちゃん、あの人達は何なの?」

「えっとね、あの人達は、ラーヴォルンの治安を守る憲兵隊だよ。」

 へえ、日本でいう警察官みたいなものかな。

 マントを身につけ、腰には剣のようなものを下げていた。

 漫画とかで見たことある、中世の騎士っぽい恰好をしていた。

 まさか、ラーヴォルンで見ることになるとは思わなかった。

「なにか、事件でもあったのかな?」

 エレーネちゃんは、すごい興味深く憲兵隊の方を見ていた。

 エレーネちゃんって、多分事件とかの現場に野次馬で見に行くタイプだろうな。

「憲兵隊、こっちに向かってきていますよ。」

 アイちゃんもエレーネちゃんと一緒に憲兵隊を見ていた。

 憲兵隊は、こっちに向かってきていた。

 私達の方向は南街の中心街へと続く道なので、街で何か事件でも起こったのだろう。

 私もミディアちゃん達もそう思っていた。

 でも、そうじゃなかった。

 憲兵隊は、私達の前まで来ると、私達をぐるりと取り囲んだ。

「えっ!?」

 憲兵隊に取り囲まれて、ミディアちゃん達は驚いた表情になった。

「ミディア・スフィルラン、エレーネ・ヴォルティス、アイーシャ・ミリエルだな。」

「ハイ、そうですけど。」

 ミディアちゃんが恐る恐るそう答えた。

 すると、憲兵隊の一人が何やら唱えだす。

 そして詠唱が終わると、突然輪っかのようなものが現れて、ミディアちゃん達はそれに拘束されてしまった。

 えっ、一体何が起こってるの?

「な、何をするんですか?」

 エレーネちゃんが憲兵隊に抗議する。

 だが、憲兵隊は眉一つ動かさずに、こう言った。

「お前達3人をスパイ容疑で連行する。」

 えっ、スパイ?

 私の頭は、目の前で起こっていることに頭がついてこなかった。

 どうして、この3人が?

 ミディアちゃんも、突然のことに茫然自失状態だった。

 結局、ミディアちゃん達は、憲兵隊に強制連行されてしまった。

「ミディアちゃん達がどうして?」

 わけがわからずまま、私は憲兵隊の後をついていった。


 憲兵隊の建物は、魔法学校のさらに奥に行ったところにあった。

 到着すると、ミディアちゃん達はバラバラに個室に入れられた。

 突然のことに、みんな茫然としていた。

「ミディアちゃん・・・」

 私はミディアちゃんの部屋に入ると、ミディアちゃんに声をかけた。

「琴音、私、どうしたらいいんだろう?」

 ミディアちゃんは完全にパニックになっていて、今にも泣きそうだった。

「これは何かの間違いだよ。

 とにかく、きちんと説明するして、誤解を解くしかないよ。」

「ウン、わかったよ。」

 とその時、数人の憲兵が部屋に入ってきた。

 全員大柄な上に、鋭い目つきをしていて、その威圧感にミディアちゃんの体はガタガタ震えていた。

「ミディアだな。」

「ハ、ハイ。」

「単刀直入に聞こう。

 お前達は、他国のスパイと接触しているな。」

 いきなり、スパイ扱いってあまりにも酷すぎるよ。

 一体何の証拠があって、ミディアちゃん達をスパイ扱いしているんだろう?

「い、いえ。」

 ミディアちゃんは小さな声で否定するが、

「ウソをつくな!!!」

 憲兵の大声で、ミディアちゃんはヒィっと小さな悲鳴を上げる。

「貴様達がコトネというスパイと接触していることは知ってるんだ。」

「えっ!?」

「えっ!?」

 私とミディアちゃんは、ほとんど同時に声を上げた。

 私がスパイってどういうこと?

 どうして私がスパイになっているの?

 ミディアちゃんは驚いた表情で、私の方を見ていた。

「コトネはヴェルクとガルティア、どっちのスパイだ?」

「琴音は二ホンから来たんだよ。

 ヴェルクもガルティアも関係ありません。」

 ミディアちゃんは必死に弁明してくれたけど、それを聞いて憲兵隊はニヤリと笑った。

「じゃあ、コトネがいることは認めるんだな。」

 憲兵隊がそう聞くと、ミディアちゃんは渋々と頷いた。

「そうか、そのコトネは今どこにいる?」

 憲兵隊がそう聞くと、ミディアちゃんは再び言葉に詰まる。


 私はどうしたらいいかわからなかった。

 ミディアちゃんもどう答えたらいいかわからないと言った感じだった。

 その様子を見た別の憲兵が、ミディアに向かって話した。

「諜報部隊からの報告によると、ルフィル・コスタの日に魔導士によって、ラーヴォルンに召喚されたらしい。」

「えっ!?」

 ミディアちゃんが驚いた表情を浮かべた。

 私が初めてラーヴォルンに来たのは、ルフィル・コスタの日だった。

 よりにもよって、その日にスパイがラーヴォルンに召喚されるなんて。

「そのスパイは、潜入調査を行なうために、魔法で姿を消している。

 透過魔法が使える女魔導士だということが判明している。」

 私は言葉を失った。

 透明な姿の女スパイって、スパイであることを除けば、特徴が全て私と一致していたからだ。

 ミディアちゃんもそう思ったのか、信じられないといった表情で私の方を見ていた。

「そして、とある筋の情報から、その女性スパイの名前がコトネという名前であることが判明した。

 そして、さっきお前が言った名前もコトネだった。

 つまり、お前が内通している女が、我が国に潜入したスパイだったということだ。」

「そんな・・・」

 ミディアちゃんは、絶望した表情で私の方を見た。

 やめて、そんな顔で私を見ないでよ。

「ち、違うよ、私は、そのヴェルクってのもガルティアってのも知らないよ。

 私は日本から来たんだよ。

 私は本当にスパイなんかじゃないよ。」

 私は必死に叫んだけど、ミディアちゃんは絶望した表情で、私の方を見ていた。

 それは、信じていたものに裏切られたという感情にあふれた悲しい表情だった。

「ミディアちゃん、信じてよ。

 私は、スパイなんかじゃないよ。

 お願いだから、信じてよ。」

 でも、ミディアちゃんにもう私の声は届いていないようだった。


「さあ言え、コトネはどこにいる?」

 憲兵がそう言うと、ミディアちゃんは私のいる方を指さした。

「琴音は・・・ここにいます。」

 その時のミディアちゃんの表情は、今までに見たことのない表情だった。

 それを聞いて、憲兵は腰に身につけていた刀を手に取ると、ミディアちゃんの喉元に突きつけた。

「ほう、コトネ、ここにいるのか。

 ちょうどいい。

 私が10数え終わるまでに姿を現せ。

 さもなくば、この女の命はない。」

 憲兵はそう言うと、数を数え始めた。

 そんなこと言われても、私はこの世界で姿を現すことができない。

「この女はスパイ罪でどのみち死刑だ。

 ここで殺しても何の問題もない。

 これは脅しではないぞ。出てこい。」

 他の憲兵が大声でそう言う。

 そんなことを言われても、どうやって姿を現せばいいのか、私にはわからなかった。

「私はスパイなんかじゃないよ。

 ミディアちゃんは無実だよ。」

 私は大声で必死に叫び続けたけど、誰にも私の声は届かない。

 無情にもどんどんカウントダウンは進んでいった。

 ミディアちゃんは、虚ろな目でずっと私を見つめていた。

「私は、スパイなんかじゃない。スパイなんかじゃない。」

 でも、無情にもカウントダウンは終了してしまった。

「所詮はスパイか。自分の命のためには、平気で仲間を切り捨てるってか。」

 憲兵は、刀を大きく構える。

「やめて、お願い、ミディアちゃんの命を助けて。」

 でも、私の声は、誰にも届かない。

 そして、次の瞬間、憲兵の刀は、ミディアちゃんに向けて振り下ろされた。


「うわああああああああああああああああ!!!」


 気がつくと、真っ黒な世界にいた。

 辺り一面真っ黒の世界に、私はいた。

 そして、私の目の前には、覆面が立っていた。

「これでも、ラーヴォルンは理想郷なのか?」

 私は何も言い返せなかった。

 正確には、ショックで何も考えられなかったというべきか。

「リーヴァ王国はヴェルク帝国とガルティア帝国という2大帝国に挟まれた国。

 だから、スパイの存在には敏感な国だ。

 こんなことはしょっちゅう起こっている。」

 覆面の言っていることはほとんど頭に入ってこなかった。

 私の頭の中は、直前までの絶望しきったミディアちゃんの表情しかなかった。

「だから、今日は行くのをやめておけと言ったのだ。」

 覆面はそう言うと、私の頭にそっと触れた。

 すると、目の前の視界が光に包まれて、気がついたら、自分の部屋に戻っていた。


 時間はまだ夜中の3時半だった。

 私の隣で眠っていた日花里ちゃんも、目覚めていた。

「琴音・・・」

 日花里ちゃんが私の名前を呼んだ瞬間、私は日花里ちゃんにすがりついた。

 でも、あまりのショックで、涙を流すことも声を出すこともできなかった。

 何にも考えることができなかった。

 日花里ちゃんは、何も言わずに、私をそっと抱きしめてくれた。

 それがなんかすべてを現実逃避できるほど心地よくて、気がついたら私はいつの間にか、また眠りについていた。


 翌朝、目覚めると、日花里ちゃんも隣で眠っていた。

 最初は寝ぼけていたけど、次第に頭が鮮明になっていって、徐々に昨晩見た夢の内容を思い出す。

 そして、最後に見たミディアちゃんの表情を思い出した瞬間・・・

「うわあああああああああああああああ!!!」

 気がつけば、喉がおかしくなるんじゃないかってくらいの大声で叫んでいた。

「琴音、大丈夫よ。琴音が悪いんじゃない。」

 日花里ちゃんは泣き叫んでいた私をそっと抱きしめてくれた。


「琴音、どうしたの?」

 お母さんと悟も部屋に入ってきたらしいけど、私は全然気づいていなかった。

「琴音は何も悪くない。琴音は何も悪くない。」

 日花里ちゃんはそう呟きながら、私と一緒に泣いてくれた。


 今日は日花里ちゃんも学校を休んだ。

 私の見ていた光景を日花里ちゃんも見ていたらしく、いつもは冷静沈着な日花里ちゃんもさすがにショックを受けていた。

 日花里ちゃんは家に連絡を入れると、その後はずっと私のそばにいてくれた。


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