表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
35/254

31.ラーヴォルンは私の理想郷

<<琴音>>

 今朝はさわやかな目覚めだった。

 結局、どうしてラーファちゃんが怒っていたのかわからなかったなあ。

 でも、すぐに仲直りできてよかった。

 ミディアちゃんとラーファちゃんには仲良くしてほしかったからね。

 それに、あの二人の仲のいいところを見ていると、私がすごい和むんだよね。

 ラーファちゃんがミディアちゃんに抱きつく姿を見て、すごい癒された。


 いつものように朝食をとった後、家を出て日花里ちゃんと学校に向かう。

「ふーん、そんなことがあったんだ。」

「ウン、でも、結局、ラーファちゃんは何を怒ってたのかな?」

「さあね、でも、前に私がラーヴォルンに行ったときに思ったことなんだけど、琴音って本当にミディアちゃんになついてるのね。」

「ちょっと、なついてるって、人をペットみたいに言わないでよ。」

「ゴメンゴメン。

 でも、琴音はどうして向こうではあんなに抱きつこうとするの?」

 ウーン、それはわからない。

 ミディアちゃんにはスキンシップだって言ったけど、それ以外にも何かあるような気がする。

 ラーヴォルンに行くと、いつも心が躍り出すという感じがする。

 それで、無意識のうちに体が動いてるのかもしれない。

 あんな素敵な場所だから仕方がないよ。

「ラーヴォルンは私の理想郷だからね。

 心躍り出して、自然とスキンシップも激しくなってるんだろうね。」

「理想郷とは、またえらい持ち上げたものね。

 でも、理想郷って、現実には存在しない場所のことを指すんだけど。」

「あるよ。ラーヴォルンはあるんだよ。」

「じゃあ、理想郷って表現は、少しおかしいんじゃ・・・」

「地球にはないんだからいいでしょ。

 もう、日花里ちゃんは細かいなあ。」

 日花里ちゃんは言葉の使い方を間違えると、ネチネチと注意してくるタイプの人だ。

 国語苦手なくせに、そういうところは変に細かい。

「私も一応見ているから、ラーヴォルンがどこかに存在することは否定しないよ。

 確かに素敵な街だと思う。」

「でしょ。

 毎日見ているのに全然飽きないし、ミディアちゃん達みたいな素敵な友達にも出会えたし。

 多分、これから先、こんな素敵な場所には絶対に出会えないと思う。」

「これから先って、まだ16歳なのに断言しちゃうわけ?

 アンタ、日本から出たことないし、赤川市の外だって、ほとんど行ったことないでしょ。」

「いいんだよ。

 ラーヴォルンは最高の場所だよ。

 私にとっての理想郷だよ。」

 これは間違いなく断言できる。

 ラーヴォルン以上の素敵な場所は、この地球には存在しないと。


「まあ、琴音がそう思ってるんだったら、それでいいよ。

 それはそうと、昨日、テストのことを話したの?」

「ウン、ミディアちゃんがすっごく喜んでくれてね。

 それがすごく嬉しくなっちゃって、ついミディアちゃんをギュッとして、ほっぺにチューしちゃったんだよ。

 そしたら、ラーファちゃんが突然怒りだしてね。」

「ラーファちゃんって、ミディアちゃんのお姉ちゃんみたいな人なんでしょ。

 きっと嫉妬ね。」

「でも、そんなに嫉妬するものなのかな?」

「まあ、琴音はお子ちゃまだからね。

 わからないかもね。」

 なんか、また日花里ちゃんに見下されている感じがする。

 でも、そうかもしれない。

「どうせ私はお子ちゃまですよ。

 誰かに嫉妬するような経験なんて全然ないし。」

「あーでも、幼稚園の登校の時、私が他の子と手をつないだら、散々泣きわめいてたよね。

 あれは嫉妬じゃなかったの?」

「もう、その話はしないでよ。」

 日花里ちゃんは小さな頃の話をよく持ち出してくる。

 しかも、私が恥ずかしくなるような話ばかり持ち出してくる。

 日花里ちゃんのそういうところ、すごい嫌いだ。


「おはよー。」

 私達の背後から、ニコちゃんが声をかけてきた。

「おはよう、ニコちゃん。」

「おはよう、ニコ。

 珍しいわね、声をかけてくるなんて。」

「いつもは、日花里ちゃんは琴音ちゃんと一緒だったから、遠慮してたんだよ。

 でも、琴音ちゃんとも友達になったし、もういいよね。」

 ニコちゃんはそう言うと、私達の間に割って入ってきた。

 それにしても、本当にニコちゃんで定着しちゃったなあ。

 ニコちゃんも、ニコちゃんって呼ばれてもすんなり反応しているし。

 ニコちゃんがそれでいいなら直さないけど、なんか悪いことしたような気がしないでもない。

「それはそうと、琴音ちゃん、またラーヴォルンの話を聞かせてよ。」

「さっき、日花里ちゃんに話したばかりなんだけどなあ。」

 結局、ニコちゃんに同じ話をもう一回することになった。

 今度からは、ニコちゃんが合流してから、話をすることにしよう。


「へえ、ミディアちゃんに抱きついてキスしたんだ。

 もしかして、琴音ちゃんって、男の子より女の子の方が好きなの?」

 ニコちゃんがさらりととんでもないことを言い出した。

「ど、どうして、そんな話になるの?」

「だって、話聞く限りだと、琴音ちゃん、ミディアちゃんにラブラブじゃない。」

「いや、だから、別にそういうんじゃなくて・・・」

「じゃあ、今度、琴音ちゃんの喜びそうなゲームを持ってくるね。」

 なんか、勝手に話を進めてきた。

 なんだろう、私の喜びそうなゲームって。

 すごく嫌な予感がする。

「ニコ、頼むから琴音を汚染しないで。」

 日花里ちゃんがニコちゃんの手を掴んだ。

「失礼な。私が琴音ちゃんを汚染するってどういうことよ。」

「アンタが部長になってから、文芸部が汚染されたでしょ。

 つまり、そういうことよ。」

 文芸部で一体何があったんだろう?

 やっぱり、一度ぐらい文芸部に遊びに行くべきだった。

「でも、3年の時の文芸集、すごく評判よかったじゃない。」

「一部の偏った人達にはね。

 その他大勢の人にはドン引きされたでしょ。

 それに、先生に厳重注意されたじゃない。」

「ま、まあ、その話は今は置いておこう。」

 一体、どんな文芸集を出したのやら。


 なんだかんだで、学校はあっという間に終わった。

 期末テストも終わって、夏休みが近いこの時期が一番好きだ。

 実際に夏休みが入ってしまうと、ダラダラ過ごしちゃうだけだからね。

 午前中だけ学校があるこの時期が、一番バランスがいい。

 それに、夏休みが目前と言うこともあって、一番心浮き立つ時期のような気がする。

 心浮き立つこの時期に、ラーヴォルンに行って、さらに心浮き立たせる。

 今は本当に最高かもしれない。

 授業が終わって、さっさと帰ろうとしたら、ニコちゃんが声をかけてきた。

「ねえ、琴音ちゃん、一緒にカラオケに行こうよ。」

「ゴメン、今日はちょっとやりたいことがあるから、また明日ね。」

 ニコちゃんには悪いけど、今日はやりたいことがあったので断った。

「振られたわね、ニコ。」

「う、うるさいなあ、もう。」

 教室の中で、日花里ちゃんとニコちゃんが何やら話していたけど、私は気にすることなく教室を出た。


 心浮き立つこの時期だけど、今日はさらに特別な日だった。

 なんせ、いよいよミディアちゃんの結果が発表される日だからだ。

 実技テストでは全部課題をクリアしていたし、理論の方も勉強頑張ってたから、絶対にいい点数だと信じてる。

 だから、今日はまた前みたいにおしゃれをして行きたい。

 前に着ていった服でもいいんだけどね。

 でも、せっかくだから、今日は別の服を着て行こう。

「あーでも、あまり服を着て、暑苦しくなって途中で目覚めるのも困るなあ。」

 そう考えると、やっぱりTシャツにショートパンツの組み合わせが一番いいのかな。

 いくらミディアちゃんとラーファちゃんにしか見えないとはいえ、スカートは抵抗あった。

 空を飛ばなければいいのかもしれないけど、私、あっちだと無意識のうちに大はしゃぎしてるからなあ。

 それに、スカート来て寝ると、スカートがしわしわになっちゃいそうだし。

 やっぱり、スカートはやめておこう。

 ウーン、Tシャツにショートパンツだったら、別に買い物する必要もないかな。

 家に帰って、何を着ていくか、考えよう。

 夏じゃなければ、もう少し着込んでいけたんだと思うけどな。


 こんな感じで着て行く服について色々考えていたんだけど、ちょうどその時にいいことが閃いた。

 そうだ、何か物を持っていこう。

 ポーチとかに入れておいて、それを身につけて眠れば、向こうに持っていけるような気がする。

 あまり大きなカバンだと眠れなくなりそうだけど、ポーチぐらいなら多分大丈夫だと思う。

「んー、何を持って行こうかな?」

 ポーチに入れられる程度のものだと、大したものは入れられない。

 まずはスマホかな。

 今やこれ一つで大抵なんでもできる。

 日本を紹介するには、スマホを持っていくのが一番手っ取り早い。

 でも、あっちだと、ネットが使えるかどうか。

 電話も多分使えないだろうし。

 スマホからネットと電話を取ったら、ほとんど何もできない機械になってしまう。

 そもそもスマホが使えるかどうかも怪しい。

 でも、色々と準備だけはしておこう。

 そうだ、アニメをスマホに入れて行こう。

 確か、録画していたアニメがいくつかあった。

 それをスマホに入れておこう。

 何にしようかな?

 怖い話は絶対にダメだな。

 じゃあ、魔法の出てくるアニメにしよう。

 今放送中の魔法少女もののアニメにしよう。

 私の部屋にあるレコーダーがスマホと連携可能でよかった。

 とりあえず1話だけ入れておこう。

 気に入ってくれるといいな。

 そして見たら、きっとこんなこと言ってくると思うんだ。

「二ホンの魔法少女って、どうして変身するんだ?」

 楽しみだなあ。

 後は、赤川市の風景写真を何枚か入れておこうと思ったけど、私写真あまり撮らないから全然入ってないな。

 じゃあ、ネットからダウンロードして入れておこう。

 地元の風景写真をネットからダウンロードするってのも何か変だなあ。


 何だかんだいろいろやっているうちに、気がついたら夕方になっていた。

 持っていくものも決まったし、着ていく服も決まった。

 今日は早くに寝よう。

 だって、ミディアちゃんと一緒に結果を見たいからね。


<<ミディア>>

 今日はいよいよ魔法検定の結果が出る日だ。

 昨日は琴音がすごくいい点数を取った。

 今度は私の番だ。

 今回は初めて課題を全部クリアできたし、きっといい点数になっていると信じたい。

「大丈夫よミディア、きっといい点数だって。」

 ラーファはそう言ってくれたけど、少し不安だった。

 琴音があんなに頑張っていい点数を取ったのに、私の点数が低かったら琴音に申し訳ないよ。

「私は実技は失格だったから、理論だけなんだけど、こっちも自信ないからなあ。」

「どうせハーメルトンのコンサートのことが気になって、あまり勉強できなかったんでしょ。

 結局、勉強会にも来なかったし。」

「まあ、自業自得と言われたら、それまでなんだけどね。」

 きっと、あの時のラーファもエレーネ先輩も、勉強よりもコンサートの方に意識が行ってたんだろう。

 でも、今ならその気持ちもわかるよ。

 コンサートがあんなに素晴らしいものだとは思わなかったよ。


 ラーファと一緒に学校に行くと、門の前になんと琴音が待っていた。

「琴音、どうしてこんなに早くに?」

 琴音はいつもと違って、すごいかわいい服を着ていた。

「今日は随分とおしゃれだね。」

「ウン、だって、今日はミディアちゃんの結果発表だし、一緒にお祝いしようと思って。」

 琴音はそう言うと、ニコッと笑った。

 その琴音の気持ちはすごい嬉しかったけど、今の私にはすごいプレッシャーだよ。

「ミディア、もう魔法検定は終わってるんだし、今更ジタバタしても仕方がないでしょ。」

 ラーファの言うことはわかるんだけど、でもいい点数が取れているか、本当に不安で仕方がないんだよ。

「私はミディアちゃんがいい点数を取るって信じてるよ。

 だから、こうしておしゃれしてきたんだからね。」

 琴音が力強くそう言ってくれた。

 おかげで少しだけ自信が持てた。

「あっ、ミディア、ラーファ、おはよう。」

 エレーネ先輩が来た。

「おはよう、ラーファ先輩、ミディア、エレーネ先輩。」

 そして、アイも来た。

「今日は別に来なくてもよかったんだけどなあ。」

 アイは朝からやる気なしモードだった。

「だって、私、実技は失格したし、筆記も全然できなかったからね。」

 そう言えばそうだった。

 今回の魔法検定は散々だって言ってた。

「でも、ミディアの合格を見届けに来てあげたわよ。」

 アイはそう言うと、ぷいっと横を向く。

「アイ、ありがとう。」

 みんなのおかげで、いい点数が取れるような気がしてきたよ。


 魔法検定の結果は、学年別に行われる。

 だから、私達はラーファやエレーネ先輩とは別の教室だ。

「じゃあ、また後でね。」

 ラーファ達はそう言うと、一つ隣の教室に入って行った。

 私とアイが教室に入ると、既に多くの生徒が席に座っていた。

 一応同級生なんだけど、ほとんどの生徒と面識がなかった。

 だって、実技も理論も同じクラスじゃないからね。

 しばらくすると、教室に先生が入ってきた。

「じゃあ、今から先日の魔法検定の結果通知表を皆さんに配ります。」

 先生がそう言うと、一気に教室がざわめき出した。

 多くが「私自信ない。」と言った類の会話だった。

「いよいよだね、ミディアちゃん。」

 背後にいた琴音が声をかけてきた。

「ウン、いよいよだね。」


 先生は一人ずつ名前を呼ぶと、呼ばれた生徒が前に出ていく。

「あの通知表に結果が書いてあるの?」

 琴音が訪ねてきた。

「ウン、テストの点数が書いてある。

 実技テストの場合は、課題をクリアできた場合だけだけどね。」

「そっか、いい点数が書かれているといいね。」

「ウン。」

 そうこうしているうちに、アイが帰ってきた。

 アイは結果通知表を見るなり、がっくりとうなだれてしまった。

「どうしたの、アイ。」

 声をかけると、アイは顔を起こさずに通知表を渡してきた。

「うわあ、これはヒドイ。」

 思わずそう呟いてしまった。

 でも、アイは既にうなだれていたので、私の言葉にも全く反応しなかった。

 アイのレベル15の実技テストの結果は、失格だったので横線が一本入っているだけだった。

 そして、理論テストの欄には、34点という数字が書かれていた。

「で、でも、中間テストの時の私の数学のテストの点数よりは、ずっと上だよ。」

 琴音がそう言った。

 中間テストの時の数学の点数がすごい気になった。

「ミディアさん、ミディア・スフィルランさん。」

 私の名前が呼ばれた。

 席を立って、前に結果通知表を受け取る。

 でも、結果はまだ見ない。

 結果は、席に戻って琴音と一緒に見るって決めてたからね。

 同級生の何人かが、私の方を見てクスクス笑っていた。

 多分、私の実技レベルが低いことを笑ってるんだと思う。

 だから、いつもはこの時間が大嫌いだった。

 でも、今日は琴音がいるから、全然平気だ。

「どうだった、ミディア?」

 席に戻ると、アイが尋ねてきた。

「まだ見てない。

 ここで、琴音と一緒に見るって決めてたからね。」

「ミディアちゃん。」

 琴音が後ろから覗き込んできた。

 いよいよ決着の時だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ