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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
34/254

30.嫉妬の結末

<<エレーネ>>

 作戦は多分うまくいくと思うが、100%成功するとは言い切れない。

 どうなるかは、作戦を実行してみるまでわからない。

 ラーファは、ミディアと琴音の仲に嫉妬している。

 だから、琴音が誰とでもスキンシップを取る子であることをラーファが認識してくれれば成功するだろう。

 でも、それだけで済まない可能性もある。

 今から想定できる最悪の事態も考えていた方がいいかもしれない。

 最悪の事態を考えるとしたら、やっぱりミディアとラーファのことだろう。

 琴音は私には見えないし、アトゥアに実在するわけじゃないからね。

 琴音が暴れたところで、私には何の影響もないし、私には何もできない。


 まずはミディアから考えてみるかな。

 ミディアは琴音がラーファに抱きつくところを見て、正気でいられるかな?

 多分、ミディアと琴音の関係は恋愛関係なんてものではないと思う。

 とはいえ、そうである可能性もないわけじゃない。

 特にミディア、あの子は無自覚なところがあるからなあ。

 琴音がラーファに抱きついてキスするところを見た瞬間に、自分が恋をしていたと自覚する可能性だってあるわけで。

 そうなったら、ミディアはどうするだろうか?

 私の知る限りでは、ミディアは嫉妬深い性格ではないと思う。

 でも、それは今までミディアが恋というものを知らなかったからであって、実際に恋をしたら、どうなるかわからない。

 よく、恋は人を変えるなんて言うけど、それが悪い方向に働いたとしたら・・・

 ミディアが嫉妬の鬼になる可能性だって十分考えられる。


 そうなったら、ラーファは多分、ミディアに対して何もできないか、逆にミディアと刺し違えるか。

 何せ、ラーファはミディアのことが好きで、おまけにすごい嫉妬深い。

 いつも、ミディアがーって言ってるし、ちょっとミディアとケンカしただけですぐに泣きだすし。

 どれだけミディアのことが好きなんだか。

 私に振り向いてくれないのなら、いっそのこと私の手で・・・なんてことを思うかもしれない。

 まあ、ミディアが嫉妬の鬼になるとか考えられないから、むしろそっちを警戒したほうがいいだろう。

「ミディア、元気か?」

「ハイ、元気ですよ。」

 ウン、普通のミディアだ。

 やっぱり一番可能性が高いのは、ラーファが嫉妬して襲ってくるパターンかな。

 まあ、万が一のことを想定して、ミディアとラーファの間に私が立つようにしよう。

 そうすれば、ミディアが切れても、直線的に飛びかかることはできなくなる。

 直線的に飛びかかることができなければ、何とか取り押さえることができる。

 ミディアがそんなことをするとは思えないけど、これは万が一の保険だ。

 それに、これはラーファの突進も防ぐことができる。

 ラーファは、私がこの街に来た時に最初にできた友達で、今では私の親友だ。

 ラーファを犯罪者にするわけにはいかない。

 面倒くさいけど、私が2人を守ってやるかな。


<<ラーファ>>

 どうして私はこんなにも心を乱してるのだろうか?

 ミディアと琴音が仲良くしているのなんて、今に始まったことじゃないのに。

 でも、今日のは明らかに行き過ぎだ。

 琴音はミディアに抱きついた上に、キスまでした。

 ミディアにキスなんて、私だってしたことないのに・・・

 しかも、ミディアの顔は真っ赤になって、体の力は抜けて琴音にされるがままだった。

 その状況を想像しただけですごい興奮する。

 真っ赤に上気したミディアの潤んだ瞳を思い出すたびに、すごい興奮する。

 ミディアをあんな状態にできるのって、琴音だけだよ。

 それが悔しい。

 私がどんなにスキンシップをしても、ミディアは嫌がるだけなのに。

 どうやったら、ミディアをあんな表情にできるのだろう?

 あんな状況をどうやったら私にも作れるのだろう?

 琴音は私にとって、未知の存在だ。

 もしかしたら、謎の力を使えるのかもしれない。

 それでミディアを毒牙にかけようとしているのかもしれない。

 だとしたら、私がミディアを守ってあげないと。

「ラーファ先輩、落ち着いてください。」

 アイが私を励まそうとしている。

 でも、アイには申し訳ないけど、今の私にとってアイは邪魔でしかない。

 ここは、ミディアの部屋だ。

 しかし、部屋の主であるミディアは今この部屋にいない。

 アイさえいなければ、この部屋を好きなだけ物色できるのに、その千載一遇のチャンスをものにできないなんて。

 今の私が苛立っているように見えるとするなら、恐らくそれが原因だろう。


 バタン。

 部屋の扉が開くと、中にミディア、エレーネ、そして琴音の3人が入ってきた。

 あーあ、帰って来ちゃった。

 せっかくのチャンスだったのに・・・

 あまりにも悔しかったので、アイを思わず睨んでしまった。

「ヒ、ヒイッ」

 私の顔を見て、アイが小さな悲鳴を上げていた。

「どうだ、ラーファ、落ち着いたか?」

 エレーネがアイの前に割り込んで入ってきた。

 そして、何やらアイに後ろに下がるように言った。

 アイはミディアの隣に下がった。

 今、私の目の前にはエレーネがいる状態だ。

「フン、私は十分落ち着いてるってーの。」

「そっかあ、それはよかった。

 実は、琴音がラーファに謝りたいって言ってるんだよ。」

「琴音が?」

 どういうことだろう?

 どうして琴音が私に謝るのだろう?

 そう思ったら、琴音がすり抜けて、私の目の前までやってきた。

 そして、私に向かってこう言った。

「ラーファちゃんゴメンね。

 私、ラーファちゃんのことも大好きだからね。」

 えっ、何何何ーーー!?

 琴音は私にそう言った後で、いきなり私に抱きついてきた。

 琴音は一体何をやってるんだろう?

 状況がよく掴めなかった。

 ミディアはと言うと、私と琴音の姿を見て、ニコニコ微笑んでいるし、エレーネは私のすぐ前で何やら構えているし。

 なんだこれは?

「よかったねラーファ。」

 ミディアが笑顔でそう言った。

 でも、何がよかったのかさっぱりわからない。

 ミディアは一体、何をよかったと思ってるのだろう?


 最初はわけがわからなかったけど、しばらくして頭に冷静さが戻ってくると、これは絶好のチャンスだと思うようになった。

 そっか、もしかしたら、これがミディアを上気させた琴音の技なのかもしれない。

 だとすれば、琴音の動きを観察することで、私にもできるかもしれない。

 私の手で、ミディアをあんな表情にしてみたい。

 そうか、さっきのミディアの「よかったね。」はこのことだったんだ。

 きっと、琴音の技を盗んで、私に同じことをやってほしいと言うことね。

 フフッ、ミディアったら案外積極的なんだね。

 わかったわ、私、琴音の技を盗んで見せる。

 待っててね、ミディア。

 琴音をじっと観察してみると、琴音は上目遣いで私に抱きついてきて、ニコッと微笑んだ。

 そして、上目遣いのままで私に

「ラーファちゃんも大好きだよ。」

と言って、ほっぺにキスしてきた。

 なるほど、これは確かに強力な精神攻撃だ。

 常に上目遣いで見つめ続けて、過剰なまでのスキンシップを繰り返す。

 もちろん、笑顔は絶やさずに。

 これが、琴音がミディアを落としたテクニックか。

「琴音、ありがとう。」

「ラーファちゃんがお礼を言ってくれたよ。」

 琴音が何か喜んでいるみたいだけど、私の意識は前方にいるミディアの方に集中していた。

 とはいえ、この位置だと前方に立ちはだかるエレーネが邪魔だな。

 どうして、エレーネは私の前にいるのだろうか?

 しかも、私が立ち上がると、エレーネまで立ち上がった。

 しかも、何やら構えている。

 まさか、私をミディアのところまで行かせないつもり?

 でも、どうして?

 エレーネとは長い付き合いになるけど、エレーネが何を考えているのかよくわからない。

 エレーネはきっと私をミディアのところまで通してくれないだろう。

 なぜそんなことをするのかはわからないけど・・・

 だったら、別の手を考えるしかない。


「私はもう怒ってないわよ。

 そんなことより、琴音の念写をするんじゃなかったっけ?」

 私がそう言うと、エレーネはホッとしたのか、構えを解いた。

「ラーファ、ありがとう。」

 ミディアが私にお礼を言ってくれた。

 まあ、琴音には色々と教えてもらったし、念写ぐらいはしてあげるかな。

 今度はちゃんと念写しないと、本当にミディアに嫌われてしまう。

 精神を集中して、琴音の姿形をしっかりと見る。

 元々、私は念写は得意な方なので、人一人を映すぐらいは簡単だった。

「ハイ、できたよ。」

 私がイデアを目の前のエレーネに渡した。

 エレーネはイデアを見ようとしたけど、そのイデアを慌ててミディアが奪い取った。

「ダメですよ。

 本当に琴音が映っているかどうか、まずは私が確認します。」

 ミディアはそう言うと、イデアフィールズのある場所、つまり私の近くまでやってきた。

 どうやら、ミディアの中で私の信用はがた落ちのようだ。

 でも、それは今に限ってはありがたかった。

 この頃になると、エレーネもすっかり安心しきったのか、完全に座っていた。

 何を警戒していたかわからないけど、油断したわね、エレーネ。

 イデアフィールズを取りに、ミディアが私の目の前まで来た。

 作戦の決行は、今だ。


「ミディア。」

「なあに、ラーファ?」

「私、ミディアのこと、大好きよ。」

「ええっ!!!」

 後方で、アイの悲鳴が聞こえたような気がしたけど、放っておく。

 私はそう言った後、琴音と同じようにミディアに抱きついた。

 そして、顔をミディアの顔の下に位置するようにしがみついて、上目遣いでミディアの方を見た。

 そして、最後にとびっきりのスマイルを浮かべた。

「ミディア、大好き。」

 ギュッとミディアを抱きしめる。

 これで、ミディアは、上気して潤んだ瞳に・・・なっていなかった。

「ラーファ、何やってるの?

 すっごい暑苦しいんだけど・・・」

 あれっ、何か反応が違う。

 これはどういうことだろう?

 そうか、キスがまだだった。

 ミディアの顔がすぐ近くにあった。

 チャンスだ。

 今のうちに、ミディアのほっぺにキスを・・・

「ラーファ、どいてよ。これじゃイデアの再生できないでしょ。」

「ハ、ハイ・・・」

 あれっ、あれえ?

 なおもしがみついて見るけど、だんだんミディアが苛立った表情に変わってきたので、仕方がなく離れた。


「ねえ、ラーファ、結局アンタは何がやりたかったの?」

 すぐ近くにいたエレーネに聞かれた。

「今はそっとしておいてほしい。」

 私がそう言うと、エレーネは察してくれたのか、それ以上何も聞いてこなかった。

 その代わりに、深いため息が聞こえてきた。


 その後、私の映した映像を見て、ミディアと琴音は大喜びしていた。

「へえ、これが本物の琴音かあ。

 やっぱり、すっごいかわいいじゃん。」

「むしろ、こっちの方がかわいいよ。」

 エレーネとアイがかわいいを連呼したから、また琴音が真っ赤になっていた。

 結局、私のやったことは何だったんだろう?

 怒った挙句、何一つ得られるものもなく、ミディアに怒られただけだった。

「なんか、ラーファ、落ち込んでるみたいだけど、どうしたんだろう?」

 ミディアがエレーネに尋ねていた。

 それを聞いて、エレーネは苦笑していた。


<<ミディア>>

 結局、ラーファは何を怒っていたのだろうか?

 それに、さっきのは何だったんだろうか?

 いきなり好きとか言われて抱きつかれたけど、何のつもりだろうか?

 まあ、ちゃんとイデアを念写してくれたお礼はしておかないとね。

「ラーファ。」

「ミディア、まだ怒ってる?」

 なぜだかわからないけど、ラーファはすごい落ち込んでいた。

「もう怒ってないよ。

 それに、琴音の念写をしてくれてありがとう。」

 素直にラーファにお礼を言った。

 すると、ラーファにいつもの笑顔が戻った。

「ミディア、いいのよ。

 これからもどんどん私に頼ってね。」

 ラーファはそう言うと、私に抱きついてきた。

 ああ、もううっとおしい。

 そう思って引き離そうと思ったけど、その時、琴音の言葉を思い出した。


「小さなスキンシップを積み重ねて、より友達になっていけると思うんだよね。」


 まあ、これは小さなスキンシップとは思えないけど、でも、たまにはいいかな。

 いつもラーファにはお世話になっているし。

 体の力を抜いて、ラーファに体を預けた。

 すると、ミディアは驚いた表情で、私の方を見た。

「ミディア?」

「まあ、たまにはスキンシップも悪くないかなって思っただけだよ。」

 なんか言ってて、恥ずかしくなってきた。

「ありがとう、ミディア。」

 再び、ラーファは私をギュッと抱きしめてきた。

 あれっ、ラーファ、もしかして泣いてるのかな?

 こんなことで、こんなにも喜んでくれるとは思わなかった。

「ミディアちゃんとラーファちゃんは、やっぱりそうやって仲良くしているのが一番似合ってるよ。」

 琴音はそう言って、私とラーファに覆いかぶさるように抱きついてきた。


<<エレーネ>>

 結局、無駄な心配をしただけだった。

 ラーファはミディアに抱きついて、勝手にハッピーエンドになってるし、私の気苦労はなんだったのだろうか?

 でも、今回のことで、一つ面白いことがわかった。

 ミディアは好きって言葉に過剰に反応するってこと。

 まあ、私達、お互いのことを好きなんて言ったことなかったし、今までわからなかったのも無理はない。

 でも、ミディア、ラーファの好きに対しては全く無反応だったな。

 私と琴音の好きに対しては、すごい真っ赤になって固まってたのに、これはどういうことだろう?

 じゃあアイがミディアに好きって言ったら、どうなるんだろう?

 実に興味がある。

 そう思って後ろを振り向いた時だった。

「ミディアばっかりラーファ先輩とずるい。ミディアばっかりラーファ先輩とずるい。・・・・」

 今度はアイが嫉妬の鬼と化していた。

「もう、勝手にやってくれ。

 私は知らん。」

 本当にため息しか出なかった。


 まあ、でも、琴音のいる世界のことを少しだけ知ることができたから、それだけでもよしとするかな。

 私達の住むアトゥアとは違う世界のことをもっと知りたい。

 できれば行ってみたいけど、さすがにそれは無理だろう。

 だから、できるだけ多くの情報は集めたい。

 そして、集めた情報を元に、いつかイデアトゥアで琴音の住む世界を作り上げてみたい。

 それが今の私の夢だ。

 多分、兄貴なら作れると思う。

 今頃、どこを探検しているのやら。

「早く帰ってこーい、バカ兄貴。」

 今のラーヴォルンには、兄貴の探し求めていた未知の世界の扉が待っている。

 きっと、アトゥアのどの秘境よりも楽しめると思うよ。

 でも、いつまでもいるとは限らない。

 兄貴は、琴音の話を聞いたら、どう思うかな?

 兄貴は私以上に好奇心旺盛だから、きっとすぐに食いつくだろう。

 そして、きっと私と同じことを考えるに違いない。

 琴音の住む世界を、イデアトゥアで再現してみたいってね。

 だから、兄貴が帰ってくるまで、琴音にはミディアやラーファと仲良くしていてもらわないとね。

 何せ、2人にしか見えない存在なんだからね。


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