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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
31/254

27.ニコちゃんと仲良くなった

<<琴音>>

 チャイムが鳴ると、日花里ちゃんが私の席にやってきた。

「琴音、まずは第一関門突破だね。」

「ウン。」

 そう、これはまだ第一関門でしかない。

 次の国語を突破してこそ、本当の成功なのだ。

「アンタ、国語は酷語って言うくらい嫌ってたけど、今回は自信あるんでしょ?」

「ウーン、どうだろ?わかんない。」

 そう、国語に関してはわからないというしかなかった。

 いつもできたと思っても、帰ってきたテストの点数は思わしくない。

 本当に苦手で仕方がなかった。

「それにしても、まさか90点とはね。

 本当によく頑張ったわね、琴音。」

「ありがとう、日花里ちゃん。」

「由姫咲さんすごいよ。90点だなんて。」

 二小柴さんもほめてくれた。

「ありがとう、二小柴さん。」

 私がそう言うと、日花里ちゃんは驚いた表情になった。

「あれっ、アンタ達2人って仲良かったっけ?」

「ああ、さっき声かけて仲良くなったんだよね。」

「ウン。」

「そっか、ニコは前から琴音と話したいって言ってたもんね。」

「もう、そういうこと言わないでよ。」

 二小柴さんは少し照れていた。

 日花里ちゃんと二小柴さんって仲いいんだね。

 二小柴さんのことをニコって呼んでるし。

 同じクラスだったのに、全然知らなかったよ。


「でも、どうして私と?」

「だって、せっかく席が近くになったんだから、仲良くなりたかったんだよ。

 でも、由姫咲さん、なんかずっと話しかけないでオーラ出してたからね。」

「入学した頃の琴音は、本当に毎日がつまらなそうで、誰も寄せ付けないオーラ出してたからね。」

 日花里ちゃんがそう言った。

 以前の私って、そんなに話しづらいオーラ出してたんだ。

「でも、最近になって、由姫咲さん変わったよね。

 なんか毎日楽しそうで、今ならお友達になれるかなって思って。」

 確かに、今は毎日楽しい。

 それは、きっとラーヴォルンに行けるようになったからだと思う。

 そうだとすれば、二小柴さんと友達になれたのは、ラーヴォルンのおかげだ。

「ところで、日花里ちゃんは数学のテストどうだったの?」

 二小柴さんが日花里ちゃんに尋ねると、日花里ちゃんは大きくため息をついた。

「ウン、ミスっちゃったよ。」

 日花里ちゃんはそう言うと、私達に答案を見せてくれた。

 ミスっちゃったと言う答案には、96点という数字が大きく書かれていた。

「ミスっちゃっても96点なんだ・・・」

 90点で泣くほど喜んでいた私って・・・


 そうこうしているうちに、チャイムが鳴った。

 次の国語は黙下先生だ。

 すごい物静かな先生で穏やかな男の先生だった。

 そのせいか、自然と教室が静まり返った。

「では、テストを返します。」

 黙下先生は、静かに生徒の名前を呼ぶ。

 何ていうか、すごい低い声で呼ばれるので、呼ばれる方もなんか仰々しく返事してしまう。

「・・・二小柴さん。」

「ハ、ハイ。」

 おずおずと前にいく二小柴さん。

 そして、おずおずとテストを受け取る二小柴さん。

 点数を見てもはしゃぐことも落ち込むこともせずに、おずおずと席に戻る二小柴さん。

 二小柴さんに限らず、他の生徒も同じ感じだった。

 この先生の醸し出すオーラがそうさせてるのだろうか?

 その時、二小柴さんの言っていたことが脳裏によぎった。


「でも、由姫咲さん、なんかずっと話しかけないでオーラ出してたからね。」


 少し前の私もこんな感じだったのかな?

 いや、ここまでは酷くなかったと思いたい。

「どうだった、二小柴さん?」

 小声で二小柴さんに尋ねる。

「んーまあまあかな。」

 そう言って、答案を見せてくれた。

 二小柴さんの国語の答案には、78点と言う数字が書かれていた。

「すごいね、二小柴さん。」

「いや、すごいというほどじゃないよ。」

 いや、酷語な私にとっては奇跡の数字だよ。


「・・・藤島さん。」

「ハイ。」

 今度は日花里ちゃんが呼ばれた。

 日花里ちゃんは元々国語は得意じゃない。

 というか、どちらかというと苦手だと言っていた。

 とはいえ、私の酷語ほどひどい点数じゃないけどね。

 答案を見て、日花里ちゃんは大きくため息をついていた。

 やはり、あまり結果がよくなかったのだろう。

「・・・由姫咲さん。」

 あっ、私の番だ。

「ハ、ハイ。」

 答案を受け取りに前に静々と歩いていく。

 そして、テストを受け取ると、静々と席に戻った。

 数学の時みたいに大騒ぎしたらマズいと思ったからだ。

「どうだった、由姫咲さん?」

「まだ見ていない。」

「じゃあ、一緒に見ようよ。」

「ウン。」

 私は胸に抱えているテストを、そっと机の上に置いた。

 答案の数字を見た瞬間、私は思わず大声を上げそうになったけど、私の口をとっさに二小柴さんが塞いだ。

「ゴメン。」

「いいよ。そんなことより、由姫咲さんすごいね。」

 二小柴さんは驚いていた。

 でも、それ以上に私が驚いていた。

 私のテストの答案には88点という数字が書かれていた。

「私、国語で60点以上取ったこと、今まで一度もなかったのに。」

「それは・・・さすがにどうなんだろう。」

 二小柴さんはそう言うけど、本当に苦手な科目だったんだよ。


 私の今回の戦いは、数学で90点、国語で88点を取ることができた。

 これでミディアちゃんにいい報告ができる。

 早く夜にならないかなあ。

 国語のテストが帰ってきてからは、ミディアちゃんのことばかりずっと考えていた。


 気がつけば下校時刻になっていた。

 と言っても、期末テストが終われば、学校は半日で終わりだったんだけどね。

「日花里ちゃん、私、琴音ちゃんに全敗だよ。」

 二小柴さんが日花里ちゃんに泣きついていた。

 でも、しばらくして慌てて頭を上げた。

「あっ、由姫咲さんのこと、琴音ちゃんって呼んでもいい?」

 名前で呼んだことをマズいと思ったのか、そう聞いてきた。

 そんなこと、わざわざ確認しなくてもいいのに。

「ウン、別にいいよ。」

「よかった。」

「アンタ達、すっかり仲良くなったわね。」

 日花里ちゃんにそう言われた。

 確かにそうかもしれない。

 なんか、今日一日で二小柴さんと友達になれた気がする。

「ウン、私も二小柴さんと仲良くなれてよかった。」

「じゃあ、私のことも下の名前で呼んでよ。」

 二小柴さんがそう言ってきた。

「えーっと、じゃあ・・・み―――」


「ダメよ。」

 日花里ちゃんが遮った。

「琴音、この子はニコよ。」

 なんだかわからないけど、日花里ちゃんが強くそう言ってきた。

「日花里ちゃん、その呼び方はやめて。

 美咲ちゃんって呼んでよ。

 琴音ちゃん、お願い。」

「ウン、わかったよニコちゃん。」

「うわああああ。」

 私がニコちゃんって読んだら、思い切り頭を抱えて崩れ落ちた。

 そんなに嫌なのかなあ。

 ニコちゃんってかわいいと思うけどなあ。

「よくやった、琴音。」

 日花里ちゃんは私の肩をポンと叩いて、ニヤリと笑った。

 なんだかんだで、私も日花里ちゃんに毒されてるのかもしれないと思った。


 ニコちゃんと途中まで同じ帰り道だったので、一緒に帰ることにした。

 今日は部活が休みらしく、珍しく日花里ちゃんも一緒だった。

「ニコちゃんは部活に入ってないの?」

「もう、ニコちゃんはやめてよ。」

「でも、かわいいと思うけどなあ。」

「私、名前で呼ばれるのが好きなのに、みんなニコちゃんって呼ぶんだもん。」

 呼び方ってそんなに気になるものかなあ?

「ニコちゃんって、日花里ちゃんと仲がいいんだね。」

「また、ニコちゃんって言うし・・・」

 ニコちゃんはすっかり落ち込んでしまった。

 じゃあ、名前で呼んであげるかな。

「美咲ちゃんは、日花里ちゃんと仲がいいんだね。」

 私がそう言うと、美咲ちゃんの表情がパーッと明るくなった。

「琴音ちゃん、ありがとう。」

 そして、私の両手をガシッと掴んだ。

 そんなに名前で呼ばれるのが嬉しかったのかな。

 ていうか、私の質問にはいつになったら答えてもらえるのかな?


「私と日花里ちゃんは、中学の部活が同じだったんだよ。」

 そうだったんだ。

 それは知らなかった。

 私、中学も部活に入ってなかったからね。

「てことは、ニコちゃんは私達と同じ中学だったんだ。」

「また、ニコちゃんに戻ってる。」

 また落ち込んじゃった。

 なんだか、めんどくさい人だな。

「え、えっと、美咲ちゃんは私達と同じ中学校だったんだ。」

「ウン。」

「日花里ちゃんって中学の時、たしか文芸部だったから、二・・・美咲ちゃんも文芸部だったんだ。」

「そう、同学年だと私と日花里ちゃんだけだったからね。

 3年間一緒の部活にいたら、自然と仲良くなるってもんよ。」

「でも、日花里ちゃん、高校になってテニス部に行っちゃったけどね。」

 あれっ、ニコ・・・美咲ちゃんが落ち込んでる。

「どうしたのニコちゃん?」

「またニコちゃんに戻ってる。」

「・・・・・・・・・」

 私は日花里ちゃんと顔を見合わせて、小さく頷いた。

「呼び方なんてそんなに気にすることないでしょ、ニコ。」

「そうだよ、ニコちゃん。」

「ちょっともうやめてよ。」

「私はニコちゃんってかわいいと思うけどなあ。」

「そうよ、あなたはニコでいいのよ。」

「ニコちゃん、ニコちゃん、ニコちゃん・・・」

「あなたはニコなんだからニコでいいのよ。ニコニコニコ・・・」

「いやあああ、やめてーーーー!!!」


 ウーン、ちょっと悪乗りしすぎちゃったかな。

 ニコちゃん、頭を抱えてしゃがみこんでしまったよ。

「ゴメンねニコちゃん、悪気はなかったんだよ。」

「そう、ちょっとからかっただけだから。」

 日花里ちゃんはニコニコしながら謝ってるけど、絶対に反省してなさそうだ。

「それで、どうして日花里ちゃんがテニス部に入って落ち込んでたの?」

 話を元に戻すことにした。

「だって、日花里ちゃん、高校でも文芸部に入るって思ったのに、テニス部に入っちゃったし。」

「ニコちゃんは文芸部に入らないの?」

 私と一緒に帰っているということは、帰宅部のようだけど、どうなんだろう?

「だって、日花里ちゃんと一緒じゃないとつまらないもん。」

 日花里ちゃんと一緒の文芸部って、そんなに楽しい部活なんだろうか?

 こんなことだったら、中学の時に文芸部に遊びにいけばよかったなあ。

「じゃあ、ニコもテニス部に入ればよかったじゃない。」

「そうだよ、ニコちゃんもテニス部に入ればいいんだよ。」

「無理無理、私に運動部は無理だよ。」

 どうやらニコちゃんも日花里ちゃんと同じで運動音痴みたいだ。

 それにしても、すっかりニコちゃんで定着したみたいだ。

 どうやらニコちゃんも諦めちゃったみたいだ。

 ウーン、なんか悪いことしちゃったかもしれない。


「そうだ、琴音ちゃん、ラーヴォルンの話を私にも教えてよ。」

 突然、ニコちゃんがそう言ってきた。

 まさか、ニコちゃんにラーヴォルンのことを聞かれるとは思っていなかった。

「以前、ニコにラーヴォルンの話をしたら、すっかり夢中になっちゃってね。

 よかったらラーヴォルンの話をしてやってよ。」

 ラーヴォルンの話を聞いてくれる人が増えるのは、私にとって嬉しいことだった。

「ウン、喜んで。」

 私はいろんなことを話した。

 ミディアちゃん、ラーファちゃん、エレーネちゃん、アイちゃんのこと

 魔法のことや魔法学校のこと、コンサートのことやイデアのことを色々話した。

「もうね、みんなすっごいかわいいんだよ。

 最近じゃあ、ミディアちゃんと一緒にいるだけで、頬が緩みっぱなしだと思うよ。」

「へえ、そうなんだ。

 いいなあ、私も行ってみたいなあ、ラーヴォルンに。」

 ニコちゃんはそう言った。

 てっきり夢の話だと言われるかと思っただけに、少し驚いた。

「ニコちゃんは私の話、信じてくれるの?」

「信じてるから、話を聞かせてもらったんだよ。

 こないだ、日花里ちゃんもラーヴォルンは実在したって言われたしね。」

 そっか、日花里ちゃん、あの時のことを話したんだ。

「今度、私も琴音ちゃんの家にお泊りしに行ってもいい?」

「ウン、いいよ。」

 私がそう答えると、ニコちゃんは大喜びしてくれた。

 ラーヴォルン仲間が増えることは、私にとっても嬉しい。

 ニコちゃんがラーヴォルンに行きたいって言うんだったら、私にできることは何でもするよ。


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