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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
27/254

23.好きって言われたら

<<琴音>>

「ねえ、ミディアちゃん。」

「なあに?」

「私のためにイデアに映像残してくれて、アリガトね。

 私、ミディアちゃんのことが、もっと大好きになっちゃった。」

 私がそう言うと、ミディアちゃんは真っ赤な顔になっちゃった。

 私としては、軽いお礼のつもりで言ったんだけど、これは予想外の反応だった。

 そして、すごいかわいい。

 なんか胸がキュンとなった。


「あ、ありがとう、琴音。」

 真っ赤な顔になったミディアちゃんを見ていると、何だかこっちまですごい恥ずかしくなってきた。

 なんだろう、この昂ぶる気持ちは。

 ああ、どうして、ミディアちゃんに触れることができないんだろう。

 今すぐにでも、ミディアちゃんをギュッと抱きしめたいのに、触ることすらできないなんて・・・

「決めた、こっちにいる時は、もうずっとミディアちゃんにくっついてる。」

 私がそう言って、ミディアちゃんにギュッと抱きつくと、ますますミディアちゃんは真っ赤になってしまった。

「あ、あのね、琴音・・・気持ちは嬉しいんだけどね。

 す、好きとか、そういうことを気軽に人に言うのはどうかと・・・」

「そうなの?」

「ウン、好きって言うのは、もっとこう、将来を誓い合った人に対して言うものだよ。」

 ミディアちゃんって、純粋で意外とロマンチストなんだね。

 そして、何気に身持ちが堅そうだ。

 でも、ミディアちゃんが真っ赤になってるの、かわいいからもっと言っちゃおう。

「だって、私、ミディアちゃんのこと、大大大好きなんだもん。」

「・・・」

 ミディアちゃん、真っ赤になって固まっちゃった。

 少しやりすぎちゃったかも。

 でも、好きなんて言葉、普通に使うけどなあ。

 もしかしたら、ラーヴォルンでは違うのかな?


「じゃ、じゃあ、私、仕事に戻らないと。」

 ミディアちゃんが、慌てて立ち上がった。

 どうやら正気に戻ったみたいだ。

「じゃあ、私も一緒に行くよ。」

「琴音、前も言ったけど、せっかくラーヴォルンに来たのに、私と一緒にいても楽しくないでしょ。」

 確かに同じことを、以前も言っていた。

 体が浮いてるから、一人でどこにでも行けるし、さっきの映像を見て、北街をもう少し探索してみたいという気持ちはある。

 でも・・・

「今は、大好きなミディアちゃんと一緒にいるのが一番楽しいから、ミディアちゃんと一緒にいるね。」

 そう、今はミディアちゃんと一緒にいる時間を大事にしたい。

 だって、いつまでもミディアちゃんと一緒にいられるとは限らないんだから。

 私がそう言うと、ミディアちゃんの顔がまた真っ赤になった。

 本当にミディアちゃんって純粋なんだね。

 そんなミディアちゃんの反応が面白くて、ついまた好きって言っちゃった。

 でも、さすがに面白がって言っちゃ、ミディアちゃんに悪いな。

 それじゃ、日花里ちゃんと同じになってしまう。


 部屋を出て、階段を下りようとした時に、誰かが階段を上がってくるのが見えた。

 あれは、確か、ラーファちゃんのお母さんだっけ。

 相変わらず、ラーファちゃんのお母さんには見えないなあ。

 どう見ても、20歳代の女性だよ。

「どうしたのミディア、風邪でもひいたの?」

 ラーファちゃんのお母さんが心配そうにミディアちゃんの方に近づいてきた。

「だ、大丈夫だよ、ラヴィおばさん、何でもないよ。」

「でも、ミディアの顔真っ赤だよ。熱でもあるんじゃないの?」

「こ、これは・・・そ、そういうのじゃないから。」

「そう。でも、疲れているようだったら、ちゃんと言うのよ。

 無理しないでね。」

 ラーファちゃんのお母さんはミディアちゃんの頭を撫でると、ラーファちゃんの部屋の方へと歩いて行った。

「おばさん、そっちはラーファの部屋だよ。」

「ウン、知ってる。だから来たのよ。」

 ラーファちゃんのお母さんは、ラーファちゃんの部屋の扉を簡単に開けると、部屋の中に入って行った。

「おばさん、ラーファは部屋にいないよ。」

「そうみたいね。」

 部屋の中から、ラヴィおばさんの声が聞こえてきた。

「どうしよう、いいのかな?」

 ミディアちゃんはオロオロしていた。

「どうしたの、ミディアちゃん?」

「ラーファは自分の部屋に誰も入れたがらないんだよ。

 私も入ったこと、ないんだよね。」

 そうなんだ。

 そう言えば、私も入ったことないな。

 私の場合は、入ろうと思ったら入れるけど、でも、他人の秘密を暴くのはもうコリゴリだった。

 それにしても、ミディアちゃんを部屋に入れたことないって、少し意外だな。


「あー疲れたあ。」

 とそこに、ラーファちゃんが階段を上がってきた。

 ラーファちゃんは私とミディアちゃんの姿に気づくと、走って近寄ってきた。

「あれっ、ミディアに琴音まで、こんなところで何やってるの?」

「ラーファ、あのね。」

 ミディアちゃんは、ラーファちゃんを呼び寄せると、小声で今起こっていることを告げた。

「今、ラーファの部屋に、ラヴィおばさんが入って行ったんだよ。」

 刹那、ラーファちゃんの表情が真っ青になった。

「なんだって!?」

 そして、慌てて自分の部屋へと走って行った。

「お母さん、どうして私の部屋に。」

「あっ、ラーファ、ちょうどいいところに来た。

 ここにあるイデアを全部下に運んでちょうだい。」

「これは、全部私のイデアよ。

 何持って行こうとしてるのよ。」

「ほとんどのイデアの内容は、さっきざっとチェックさせてもらったわよ。」

「ええっ!!なんでそんなことをするのよ!?」

 2人の会話がここまで聞こえてきた。

 どうやら、ラーファちゃんのお母さんの目的はラーファちゃんのイデアらしい。

「ラーファは、エレーネ先輩のところのイデアをたくさん持ってるから、それを見たいのかもね。」

 ミディアちゃんが私に小声でそう教えてくれた。

 そう言えば、前もどこぞのイデアを買ってたよね。

「ミディアちゃん、お仕事に行かなくていいの?」

「あっ、そうだった。」

 ミディアちゃんは、慌てて階段を下りていく。

 私はミディアちゃんと一緒に下に降りた。

 ラーファちゃんの部屋が気にならないと言えばウソになるけど、これ以上はなんか立ち入らない方がいい気がした。

 ラーヴォルンに来ている時には、修羅場とかには関わらないことにしたんだ。


 その後、ミディアちゃんは、フロントに戻って一生懸命接客をしていた。

 私はと言うと、働くミディアちゃんの姿を見て、ずっと癒されていた。

 

「琴音、終わったよ。」

 ミディアちゃんの今日の仕事が終わったらしい。

「今日は、私達が学校に行ってる間に、ほとんどのお客さんが帰っちゃったから、あまりお仕事なかったよ。」

「やっぱり、ほとんどのお客さんがハーメルトンのコンサート目的だったんだ。」

「ウン、そうみたい。」

 へえ、ハーメルトンは、リーヴァ王国で伝説のロックグループになるかもしれないね。


<<ミディア>>

 今日は早く仕事が終わってよかった。

 今からだったら、まだ少し遊べるよ。

「ねえ、琴音、今からでもどこかに行こっか?」

「ウーン、じゃあ、さっきイデアで見た港に行ってみたい。」

「昨日も行ったのに?」

「ウン、もう一度見てみたい。

 せっかく、ミディアちゃんが撮ってくれた場所だからね。」

 なんか、今日は琴音の言うことに一々反応してしまう。

 どうして、こんなに琴音に対してドキドキするんだろう。

 さっき好きって言われたからかな?

 もしかして、二ホンでは人に対して簡単に好きとか言っちゃうのかな?

 仕事をしている時はあまり気にならなかったけど、こうやって琴音と2人きりで歩いていると、またドキドキしてきた。

「ねえ、ミディアちゃん?」

「な、なあに?」

 突然、琴音から声をかけられて、ビクッとなってしまった。

 琴音も私の反応に気づいたようだった。

「どうしたの?」

「な、何でもないよ。そんなことより、何か聞きたいことがあったんじゃあ・・・」

「そうそう、あのね、実はラーファちゃんのことなんだけど・・・」

 ラーファのことで何を聞きたいんだろう?

「ラーファちゃんって、どうしてイデアを集めているの?」

 あれっ、前に言わなかったっけ?

「それは、ラーファがエレーネ先輩のお兄さんのことを、す・・・好きだからよ。」

 あれっ、なんか好きって言いづらい。

 やっぱり、さっきの影響かな?

「あっ、そっか、以前もそんな話聞いた気がする。

 で、エレーネちゃんのお兄さんって、どんな人なの?」

 琴音にそう聞かれて、困ってしまった。

「私、エレーネ先輩のお兄さんのこと、全く知らないんだよね。」

「じゃあ、エレーネちゃんにお兄さんの話を聞きに行こうよ。」

 あれっ、港は?

 私のイデアを見て、港に行くんじゃなかったっけ?

 まあ、エレーネ先輩の家は港から近いし、ついでに寄ってもいいかな。


 でも、エレーネ先輩の家に行く必要はなくなった。

 なぜなら途中で、エレーネ先輩とアイに会ったからだ。

「あれっ、ミディア、こんなところで何してるの?」

「えっと、琴音と一緒に散歩してたんだよ。」

 私がそう言った瞬間、エレーネ先輩とアイの表情が変わった。

「えっ、琴音、今どこにいるの?」

「ミディア、琴音って今どの辺にいる?」

 何だろう、この2人の反応は?

 琴音も首を傾げている。

「えっ、今はこの辺にいるけど・・・」

 私が琴音のいる方を指すと、アイはそこに向かって突進していく。

「ええっ、何、何なの!?」

 琴音は困惑していた。

 まあ、当然だと思う。

「琴音、今ここにいるんだあ。

 なんかここだけいい香りがするかも。」

 アイは一体何を言ってるんだろう?

 一方で、エレーネ先輩はイデアルーンを構えて撮影していた。

「ちょっと、2人とも何やってるんですか?」

「いやあ、ちょっと撮影してみたら、何か映らないかなって思ってさ。」

 そういや、エレーネ先輩はこういう人だった。

「誰だって、あんなにかわいい子、イデアに残してみたいと思うだろ。」

 エレーネ先輩はそう言うと、撮影を始めた。

 まあ、エレーネ先輩はともかく、問題はアイだ。

「アイは一体なにやってるの?」

「いや、少しでも琴音の存在を感じられないかと思ってね。

 あんなかわいい子だとは思ってなかったし。」

 そう言いながら、なんか鼻をクンクンさせていた。

 正直、ドン引きです。

 琴音も、少し・・・というかかなり引いています。

 アイってこんな子だっけ?

「何言ってるの?アイは空想士を目指してるんだから、これくらい普通でしょ。」

 ああ、そうだった。

 アイは空想士を目指してるんだっけ。

 すっかり忘れてたよ。

 でも、琴音に対して、何の妄想を抱いているのだろうか?


「琴音と2人で、あんなことやこんなことをしてみたい。」

 あんなことやこんなことって、一体どんなことだろう?

「そっか、ミディアにはまだわからないか。」

 エレーネ先輩に言われた。

 なんか無知って言われているみたいで、ちょっと腹が立った。

「じゃあ、エレーネ先輩は知ってるんですか?」

「まあ、アイがどんなものを想像しているかは、わかってるつもりだぞ。」

「で、アイちゃんはどんなことを想像してるの?」

 琴音が私に聞いてきた。

 アイには内緒で、こっそり私のすぐ近くに来ていた。

「琴音もわからないみたいだよ。」

 私がそう言ったら、エレーネ先輩は困惑した表情になった。

「えーっと、琴音って確かミディアと同じ歳なんだよね?」

「ウン、そうだよ。」

「そっかあ、じゃあ、私がアイに毒されているだけなのかもしれん。」

 エレーネ先輩、なんか思い切りため息をついちゃったよ。

「ねえ、琴音は何か心当たりがある?」

 こっそりと小声で琴音に尋ねる。

「ウウン、なんだろうね。」

 エレーネ先輩は、イデアルーンを止めると、イデアを取り出して手をかざす。

「ウーン、やっぱり琴音は映ってないみたいだな。」

 エレーネ先輩は、さっき映したイデアの中身を魔法でチェックして、ガッカリしてました。

 そりゃあ、イデアに簡単に映るくらいだったら、私だってやってるよ。

「ところでミディアちゃん、さっきから出てくる空想士ってなに?」

 琴音が尋ねてきました。

 あれっ、二ホンには空想士っていないのかな?

 あー、でも、二ホンにはイデア自体がないから、もしかしたらそういう文化自体がないのかも。

 でも、私もあまりうまく説明できそうにないなあ。


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