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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
24/254

20.ハーメルトンのコンサート

<<琴音>>

「ウン、いいよ。」

 なんと、あっさり承諾してくれた。

 しかも、ラーファちゃん、私の方を見て微笑んでくれた。

 少し前まで、あんなに私のことを怖がっていたのに・・・

「ラーファちゃん、ありがとう。」

 気がついたら、ラーファちゃんに抱きつこうとしていた。

 いや、触れないんだけどね。

「もう、琴音、また泣いてる。」

 あれっ、また私泣いてるの?

 ていうか、ミディアちゃん、そんなに笑わなくてもいいでしょ。

「本当にもう、琴音は仕方ないわね。」

 ラーファちゃんにまで笑われた。

「ほら、念写するから、まずは涙を拭いて、いい笑顔を見せて。」

 そっか、念写されると言うことは、初めてエレーネちゃんとアイちゃんに姿をお披露目するってことだ。

 ちゃんとお色直ししないと。

「ちょ、ちょっと待ってて。」

 涙を拭いて、髪を整えて、服を整えて、ポーズを決めて・・・

「いいよ、ラーファちゃん、お願い。」

 私がポーズをとると、なぜかラーファちゃんは大笑いし始めました。

「もう、ちゃんと念写してよ。」

「ゴメンゴメン、何ていうか、琴音は本当に見ていて面白いね。」

 それは喜んでいいのだろうか?

 まあ、怖がられるよりはずっとマシだけど、なんか複雑な気分だ。

「じゃあ、始めるね。」

 ラーファちゃんはそう言うと、一回大きな深呼吸をする。

 すると、ラーファちゃんの表情が、一気に真剣な表情に変わった。

 私の方をジーッと見つめて、手をイデアに添えて、集中しているみたいです。

 どうしよう、私はどういう表情したらいいんだろうか?

「琴音、笑顔だよ、笑顔。」

 ミディアちゃんはそう言うけど、何もないところで笑顔作るって難しいんだよ。

 しかも、ラーファちゃんに真顔で見られている状態だと、なおさら笑いにくいよ。

 でも、その時、


「琴音、笑って。」

 ラーファちゃんがニコッと笑った。

 ラーファちゃんに微笑まれると、こっちの顔もつられて自然と緩んできた。

「ウン、いい笑顔。」

 ミディアちゃんにそう言われたけど、私、うまく笑えてるのかな?

「終わったよ、琴音。」

 えっ、もう終わり?

 そんなに簡単に念写ってできるの?

「ちょっと見せてみて。」

 変な表情だったら嫌だから、事前にどんなのが撮れてるかを見せてほしいと思ったんだけど、

「ウウン、ここで見るのは無理。

 だって、ここにイデアフィールズないでしょ。」

 そっか、じゃあ、結局撮っても見られないってことか。

「ハイ、エレーネ。」

 ラーファちゃんはエレーネちゃんにイデアを渡してしまった。

 あーあ、結局映像を確認できないまま、エレーネちゃんの手に渡ってしまった。

 エレーネちゃんはイデアに手をかざすと、精神を集中し始めた。

「おー、きれいに撮れてるな。さすが、ラーファだ。」

 えっ、どういうこと?

「ねえ、もしかしてエレーネちゃんには、イデアの内容が・・・」

「ウン、見えてるよ。

 以前、ラーファもやったことあったでしょ。

 魔法を使えば、イデアの再生もできるんだよ。」

 ミディアちゃんが笑顔で答えてくれた。

 ええっ、じゃあ、今、エレーネちゃんに私の姿が見られてるってことになるの!?


「へぇ、これが琴音かあ。

 すっごい服着てるなあ。

 でも、黒髪がきれいな素敵な女の子だなあ。

 足がすらっとしてて、すっごいきれい。」

 エレーネちゃんにべた褒めされて、なんかすごい恥ずかしくなってきた。

 私、見た目でこんなに褒められたことなかったから、なんかすごい恥ずかしい。

「エレーネ、今、琴音、すごい顔真っ赤だよ。」

 ラーファちゃんが余計なことを言うから、ますます恥ずかしくなってきた。

「やべっ、琴音が照れている表情を想像したら、なんか悶々としてきた。」

 エレーネちゃん、なんか興奮してるけど、どうして悶々とするのよ。

「エレーネ先輩、私にも見せてくださいよ。」

「ハイハイ。」

 今度はアイちゃんに、イデアが手渡された。

 アイちゃんもイデアに手をかざして、精神を集中させ始める。

「えーっ、琴音ってこんなにかわいい子なの?」

 アイちゃんにもかわいいって言われた。

 どうしよう?

 こんなにかわいいなんて言われたことないから、本当に恥ずかしい。

「琴音、また顔真っ赤になったよ。」

 もうミディアちゃん、一々言わなくていいよ。

「いいなあ、ミディア、こんなかわいい子といつも話せて・・・」

 やめて、もうかわいいとか言わないで。

「琴音、なんか苦しんでるね。」

「もう2人とも、あまり琴音をからかっちゃダメよ。」

 えっ、私、からかわれてたの?

「いや、私は本気で言ってるんだけど・・・

 すっごい美しい黒髪、ぜひ触ってみたいなあ。」

 エレーネちゃんに、髪の毛が美しいって言われた。

 そんなにトリートメントとかちゃんとしてないのに・・・

「私も・・・

 でも、私にはラーファ先輩がいるし・・・

 でも、こんなにかわいい子だなんて、本当に思ってなかった。」

 アイちゃんはイデア見てなんかうっとりしてるし。


「もう、かわいいかわいい言うのやめてよ。」

 さっきからもう、ずっと顔が真っ赤のままだと思う。

 そりゃあ私だって一応女の子だから、かわいいって言われたらうれしいけど、こんなに2人からべた褒めされると恥ずかしいよ。

「エレーネ先輩とアイには悪いけど、私にはずっと琴音の姿が見えるんだよね。

 今も、私のすぐ近くに琴音がいるし。」

 なぜか、ミディアちゃんは自慢げだけど、そして、なぜかエレーネちゃんとアイちゃんは悔しがってるけど・・・

 あれっ、何だか頭が回らなくなってきた。

 ・・・と思ったら、突然体が光り始めた。


「えっ、ウソ、まだ始まってもいないのに・・・」

 さっきまでの熱が一気に引いていく。

「琴音、もう帰っちゃうの?」

 違う、そんなはずは・・・確かに遅くまでいられるように、遅くに寝たはずなのに、どうして?

「嫌だ、まだ帰りたくないよ。」

「琴音、一緒にコンサート見られるって・・・」

 そのはずなのに・・・どうして?


 そのまま光が輝いて、私は現実の世界に戻っちゃうの?

 でも、一向に目が覚めない。

 と思ったら、そのまま光がスーッと引いて行った。

 あれっ、今のは何だったのだろう?

「もう、悪い冗談辞めてよ。」

 ミディアちゃんの目に涙が浮かんでいた。

 ミディアちゃん、人のことを泣き虫だって言うけど、ミディアちゃんも結構な泣き虫だよ。

 でも、本当に今のは何だったのだろうか?


「ただいまより、入場受付を開始します。」

 突然、大きな音で、受付案内の声が響き渡った。

「受付始まったよ。みんな行こう。」

 ミディアちゃんがそう言うと、みんな慌てて受付に走って行っちゃった。

 すごい人だ。

 慌てて追いかけないと、見失っちゃう。

 しっかり、ミディアちゃんについていかないと。

 幸いにも、私の体は透き通ってるので、人ごみがいくらあっても関係ありません。

 こういう時だけは、この体でよかったと思う。

「琴音、ついてきてる?」

「ウン、大丈夫。」

 すごい人ごみをすり抜けて、何とか入場することができた。

 私は全然平気だけど、ミディアちゃん達、きつかっただろうなあ。

 全員やっぱり相当疲れているよ。

「この時だけは、琴音がうらやましく思うよ。」

 やっぱり、ミディアちゃんもそう思ってたか。

「ハーメルトンのコンサートには前も来たけど、これだけは慣れないわね。」

「まったくだ。」

 ラーファちゃんもエレーネちゃんもグロッキー状態だった。

「・・・・・・」

 アイちゃんに至っては、言葉すら出ないようだ。

 体力のほとんどを使い切ってしまったみたい。

「おーい、アイ、生きてるかあ。」

 エレーネちゃんが声をかけてるけど、アイちゃん、目が完全に死んでるよ。

「仕方がないなあ。」

 エレーネちゃんが、アイちゃんに肩を貸してあげている。

 以前も思ったけど、何気にエレーネちゃん、後輩の面倒見いいよね。

「ミディアちゃんは大丈夫なの?」

「ウン、私は大丈夫だよ。」

 そう言いながらも、ミディアちゃんも結構フラフラになっていた。

 私だったら、絶対アイちゃんみたいになってると思う。

 だって、10万人だよ。

 昔、お父さんに野球連れてってもらった時も結構疲れたけど、多分その比じゃないよ。

 入場ゲートが5か所あるけど、それだけじゃ絶対に足りないと思う。


「ここが私達の席だよ。」

 自分達の席にたどり着くまでに、もう全員クタクタだよ。

「琴音、このホール全体がイデアトゥアだよ。」

 ミディアちゃんが会場の方を指す。

「えっ!?ただのコンサート会場にしか見えないけど・・・」

 周囲を見渡してみたけど、パッと見た目、普通の会場に見えるけど、何か違うのだろうか?

「あー多分始まらないとわからないよ。」

 エレーネちゃんがそう言ってくれて、安心した。

「とりあえず、これだけは覚えておいて。

 このコンサート会場はイデアトゥアで、私達はみんな、このイデアトゥアの中にいるってことをね。」

 ラーファちゃんの説明は実にわかりやすい。

「ウン、とりあえず、それだけは覚えておくね。」


 不意に会場の照明が消えて真っ暗になる。

 それと同時に、会場のボルテージは一気に高まっていく。

「始まるわよ、琴音。」

 ラーファちゃんの声とほぼ同時に、会場の中央が光る。

 すると、中央のステージに人が現れた。

 ただ、中央までの距離があるので、どんな人なのかよくわからなかった。

 と思いきや、次の瞬間、上空に突然大きな立体映像が映し出された。

 映像に映ったのは、なんと女の子達だった。

「ええっ、もしかして、ハーメルトンって女の子のグループなの?」

 私だけでなく、ミディアちゃんも驚いていた。

「あれっ、言ってなかったっけ?」

「私、ラーファやエレーネ先輩が見に行ってるって言ってたから、男の人だと思っていた。」

「ミディア、それはどういう意味かな?」

 エレーネちゃんがミディアちゃんの方を睨んでる。

「まあ、見てなさい。」

 ラーファちゃんはそれだけ言うと、中央のステージを見た。


「行くよ。」

 リーダーと思われる女の子がそう言うと、観客席からの歓声が大きくなる。

 他の女の子はバックバンドなのかあ。

 ハーメルトンってバンド名だったんだね。

 会場全体に音楽が流れ始める。

 なんだろう、この音色は?

 日本のものとは少し違う音色だけど、これはディストーションギターだ。

 そして、この曲調にはなじみがある。

 これはロックだ。


 演奏が始まった瞬間、会場全体が突然真っ暗になる。

 違う、これは・・・宇宙空間だ。

 会場全体が宇宙空間の中にいる。

 私達、宇宙空間にいるみたいだ。

 そして、周りの景色が、曲調に合わせて動き始める。

 まるで、私達が宇宙空間を突き進んでいる錯覚になる。

「琴音、これがイデアトゥアだよ。

 イデアトゥアってのは、イデアとアトゥアを組み合わせた造語で、イデアを使って作り上げる仮想世界技術のことだよ。」

 なるほど、これがイデアトゥアかあ。

 すごい・・・すごい・・・

 もうすごいという言葉しか出てこない。

 曲に合わせて、会場に様々な仮想世界が作り上げられていく。

 この仮想世界のリアリティがまたすごい。

 次の曲はバラードで、今度は会場が美しい幻想世界へと変わる。

 なんだこれ。

 私の知っているコンサートとは全く違う。

 ハーメルトンの曲は、初めて聞いたけど、私好みの曲ばかりだった。

 人気があるだけあって、ハーメルトン、いい曲多いね。

 しかも、そんな曲に合わせて、会場が様々な仮想世界へと変わっていく。

 時には、音まであちこちから飛んでくる。

 これはもう芸術だよ。


「やっぱり、琴音、泣いてる。」

 あれっ、また泣いていたのか私は?

 ウン、でも、これは泣いていい。

「どうしてラーファちゃんやエレーネちゃんがはまったのか、わかった気がする。」

「ウン、私も。」

 どうやらミディアちゃんもはまったみたいだ。

 今ならわかる。

 なぜ、ハーメルトンのコンサートに、こんなに人が集まるのか。

 曲が素晴らしいのはもちろんだけど、それ以上に、イデアトゥアの作り上げる曲の世界がすごすぎる。

 だから、ファンは曲を聞くだけでは飽き足らずに、こうやってラーヴォルンの会場までわざわざ足を運ぶのだろう。


 なんか、あっという間に、コンサートが終わった感じがする。

「どうだった、ミディア?」

 ラーファちゃんが、ミディアちゃんに声をかける。

「本当にすごかったよ。色んな世界に行った気分だよ。」

 ミディアちゃんはコンサートの間、ずっと感嘆のため息ばかり発していた。

 でも、わかるよ。

「琴音はどうだった?」

 ラーファちゃんが私にも聞いてきた。

「すごかったよ。なんだか、夢の世界にいるみたい。」

 私がそう言うと、ラーファちゃんはクスッと笑った。

「琴音、今日はずっと夢の世界って言ってるよ。」

 確かに、今日はよく夢の世界って言ってるような気がする。

 でも、本当に夢の世界という言葉しか思いつかないんだよ。

 本当にすごいコンサートだった。

 できれば、またハーメルトンのコンサートを見たい。

 心からそう思った。


「じゃあ、少し遅くなったけど、夕飯に行こっか。」

「ウン。」

 私達がリーブルガルトを出ると、外はすっかり夜になっていた。

 夜のラーヴォルンには昨日もちょこっとだけ来たけど、こうやってみんなと散策するのはこれが初めてだ。

 夜の街にみんなと一緒にいるだけで、何だか心が浮き立ってくる。

 でも、みんなが夕飯に何を食べるのかだけは、少し気になった。

 紫色の料理は気分悪くなるけど、さっきのような食べ物は、逆にお腹がすいてきて困る。

 紫以外の料理で、あまりおいしそうでない料理にしてくれないかなあ。


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