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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
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19.初めての北街

<<ミディア>>

 北街と南街の行き来は、空路と水路のどちらかを使います。

 ただ、空路の方はかなり運賃が高いので、学生の私達は通常船を使います。

 というわけで、私達は船着き場に来ています。

 船着き場は大勢の観光客、もといコンサート客が既に並んでいました。

「へえ、ここが船着き場なんだ。

 エレーネちゃんの家から近いね。」

 琴音は、船が来るのが待ち遠しくてたまらないって感じで、さっきからずっとそわそわしています。

「船に乗るのも楽しみだし、北街に行くのも楽しみだよ。

 また、新しいラーヴォルンを知ることができて、しかもコンサートだよ。」

 琴音、さっきから興奮しすぎだよ。

「琴音、そんなに飛ばしてたら、疲れちゃうよ。」

「大丈夫だよ、だって私眠ってるんだし。」

 そう言われたら、何も言い返せません。


「それで、今日のコンサート会場はどこなんですか?」

 アイがそう言うと、エレーネ先輩は驚いた表情になった。

「あれっ、チケットに書いてなかったっけ?」

「そうなんですか。

 すみません、何せついさっき、チケットもらったばかりなので。」

 アイはそう言って、ポケットからチケットを取り出す。

 ラーファの話だと、アイは昨日の夜遅くに、エレーネ先輩からイデアハントでコンサートの話を聞いたらしい。

 そのせいか、なんかアイの機嫌がいつもより悪い気がする。

 それに、アイもハーメルトンについてはあまり詳しくないみたいだし。

 もしかしたら、あまりコンサートに行きたいと思っていないのかも?

「いいなあ、ミディアはラーファ先輩から服プレゼントしてもらえて・・・」

 アイが不機嫌な理由はそっちだったか。

 ていうか、以前もこの服見てるでしょ。

 それに、私を睨まれても困るよ。

 しかし、

「アイ、今日は来てくれてありがとう。」

 ラーファがそう言った途端、アイの表情はにこやかになった。

 アイは本当にわかりやすいなあ。


「ええっ、会場ってリーブルガルトなんですか?」

 チケットを見たアイがすごい驚いた声をあげた。

 そこは私も少し驚いたんだよね。

「ハーメルトンのコンサートよ。

 リーブルガルト以外のどこでやるって言うの?」

 ラーファが自慢げにそう答える。

 へえ、ハーメルトンってすごい人気なんだね。

 多くの観光客が来ているから、人気があるとは思ってたけど、そこまでの人気とは思わなかった。

「ねえ、ミディアちゃん、リーブルガルトって何?」

 そっか、琴音はリーブルガルトのことを知らないんだっけ。

「えーっと、リーブルガルトってのは、様々なイベントができる大きな会場の名前なんだよ。」

「へえ、日本で言うところの東京ビッグサイトみたいなものかな。」

 ものかなと聞かれても、私には二ホンのことはわかりません。

 でも、二ホンにもそう言う施設はあるみたいだね。

「その説明だけじゃ足りないわよ、ミディア。」

 私達の話を聞いていたラーファが、話に割り込んできた。

 でも、他に何かあったっけ?

「リーブルガルトが、なぜ北街でも最大の観光地になっているかと言うと・・・」

 そう言われて、ようやく思い出した。

「そっか、イデアトゥアだ。」

「そう、ラーヴォルン最大のイデアトゥア施設。

 こんなすごい施設は、そうはないわよ。」

「そんなにすごいところなの?」

「ウン、今では北街の観光スポットになってるからね。

 イベントがない日でも、観光客が結構来るらしいよ。」

「へえ、そうなんだ。

 ところで、イデアトゥアって何?」

 うん、やっぱりそう聞いてくると思ったよ。

 いつもだったらすぐに教えるところなんだけどね。

「それは、実際に琴音の目で見て確かめてほしい。」

 ウン、これは言葉で説明するより、まず見てもらいたい。

 多分、今日のコンサートでも使うのだろう。

 そうじゃなければ、イデアトゥア施設を使うなんてことないだろうし。

 去年、ラーファにリーブルガルトに連れてってもらった時に、イデアトゥアを見て、すごく感動したのを覚えてる。

 そう、あれは絶対にまず体感すべきだと思う。

 琴音はイデアトゥアを体感して、どう思うだろうか?

 私は、琴音のことだから絶対に泣くと思ってる。

 だって、琴音はすごい涙もろいからね。


 そうこうしているうちに、船がやってきた。

 いつもはこの時間は本数少ないんだけど、今日は多くの臨時便が出ているらしい。

 私の話を聞いて、琴音はさらに興奮しているみたいだった。

「なんだろう、イデアトゥアって?楽しみだなあ。」

 さっきから、ずっと同じこと呟いてる。

「でも、その前に船に乗るよ、琴音。」

「ウン、それも楽しみだ。」

 琴音は笑顔で頷いた。


<<琴音>>

 ラーヴォルンは夕方になろうとしていた。

 いつもだったら、もう少し経ったら目覚めてしまう時間だ。

 でも、今日は違う。

 夜のコンサートが終わるまで、ここにいられるはずだ。

 私達は、船に乗って、北街へと向かっていた。

 北街と南街の間のこの海域は、ラーヴォルン海峡って言われている。

 ミディアちゃんから聞いた話だと、アトゥアにある最も大きな2つの大陸が最も近づくのが、このラーヴォルンらしい。

 船から見るラーヴォルン海峡の景色が、またすごいきれいだった。

 南の街がどんどん遠ざかって、北の街がどんどん近づいてくる。

 太陽が西側に沈みかかってて、夕焼けで海が真っ赤になって、本当に美しい景色だった。


「やっぱり、琴音泣いたね。」

 ミディアちゃんがラーファちゃんにそう話すのが聞こえてきた。

 本当だ、また泣いてる。

 でも、どうしてこんなにラーヴォルンの景色に感動するのだろう?

 私にもよくわからない。

「多分、イデアトゥア見ても泣くわね。」

 ラーファちゃんが笑いながら、ミディアちゃんにそう話していた。

「もう、2人ともヒドいよ。」

「ゴメンゴメン、でも、本当に琴音はすぐに泣くね。」

 ミディアちゃんが私の頭をなでなでしてくる。

 といっても、実際に触れられたわけじゃないけど。

「本当にここは夢みたいな世界だよ。」

 まあ、私は実際に眠ってここに来ているわけだから、夢と言えば夢なんだけどね。

 でも、今日はその中でもとびっきりの夢の世界だよ。

 やっぱり、ここは私にとって理想郷の世界だ。

 イデアトゥアかあ。

 楽しみだな。

 焦らされるのはあまり好きじゃないけど、今回は別。

 こんなに心躍る時間ってのは、久しぶりかも。

 よく、遠足に行く前が一番楽しいなんて言うけど、それに近い感じかな。


 しばらくすると、北街が目の前に迫ってくる。

 船から見える景色だけでもわかる。

 北街が素敵な街だってことに。

「琴音、あそこに見えるのが、今日のコンサート会場のリーブルガルトだよ。」

 ミディアちゃんの指す方を見ると、すごい大きなドーム型の建物が建っていた。

「すごく大きいね。」

「ウン、リーブルガルトには10万人収容可能だからね。」

 じゅ、10万人!?

 東京ドームでもそんなに入らないよね。

 どれだけ大きなドームなんだろう?

 さすが、ラーヴォルン最大規模のイベント施設だけのことはある。


「間もなく、北街に到着です。」

 船内にアナウンスが流れた。

 もうじき北街に到着するみたいだ。

 北街はどんな街なのかな?

 今から降りるのが楽しみで仕方がない。

「ねえ、ミディア、ラーファ、さっきから琴音と話してばかりで、私達のことを放置してるんだけど。」

 エレーネちゃんが少し怒ってた。

 そういや、船内では、2人ともずっと私と話してたな。

「ゴメンゴメン、あまりにも琴音を見ていて楽しかったものだから。」

「琴音って本当に涙もろいのね。」

 2人ともなんか私が泣くのを見て楽しんでるみたい。

 そりゃあ、私だって、自分がこんなにも涙もろいとは思わなかったけどさ。

 あんまりだよ。


 船が到着して、北街に降りると、目の前に美しい街並みが広がっていた。

「うわあ、すごい。」

「琴音、ここが北街だよ。」

「ミディアちゃんはよく北街に来るの?」

「最近はあまり来てないけど、以前は結構こっちにも遊びに来てたよ。」

「まあ、ほとんどがエレーネのおもりだったけどね。」

 ラーファちゃんがそう言うと、ミディアちゃんがクスクス笑いだす。

「こらあ、誰のおもりだって?」

 話を聞いていたエレーネちゃんがやってきた。

「私と一緒に来たことは忘れちゃったの、ミディア?」

 アイちゃんが少し拗ねてる。

「忘れるわけないよ。

 だって、私を初めて北街に連れてってくれたのってアイだもん。」

「そっか、ミディアちゃんを初めて北街に連れてきたのって、アイちゃんだったのかあ。」

「そりゃあ、ラーファ先輩にミディアの面倒を見てやってくれって頼まれてたからね。

 ラーファ先輩の頼みとあっては、引き受けないわけにはいかないでしょ。」

「えっ、ラーファに頼まれたからだったの?」

「い、いや、それもあったと言うだけで・・・」

 アイちゃん、少し慌ててる。

 アイちゃんは、ラーファちゃんに頼まれたからだって言ってたけど、なんだかんだでミディアちゃんとすごい仲がいい。

 ミディアちゃんがアイちゃんのことを親友って言ってたけど、アイちゃんにとってもミディアちゃんは親友なんだろうな。

 近くで見ていると嫉妬しちゃうくらいだ。

 って、私の背後に、なんかすごく嫉妬しているラーファちゃんがいるよ。

 多分、ラーファちゃんは、こんなこと考えてるんだろうね。

「本当は、私が最初にミディアを北街に連れてくるつもりだったのに。」

「なっ、何言ってんのよ、琴音。」

 ラーファちゃんにすごい睨まれた。

「そんなことより、早くリーブルガルトに行こうよ。」

「ちょっと、ミディア、そんなことってひどくない?」

「まあまあ、ラーファちゃん・・・」

 そして、ミディアちゃんとラーファちゃんも仲がいい。

 こうして見ていると、本当の姉妹みたいだ。

 ラーファちゃんとエレーネちゃんは幼馴染だし。

 エレーネちゃんはミディアちゃんの面倒をよく見ているし。

 この4人が集まってるだけで、なんかいいなあって思ってしまう。


 コンサート前の北街は、大勢の観光客で賑わっていた。

 南街は落ち着いた雰囲気の街って感じなのに対して、北街はすごい賑やかな街って感じかな。

 観光客が多いってのもあるけど、こっちはお店もなんかすごい活気に満ちているっていうか、賑やかっていうか。

 そして、街の賑やかさにあてられたのか、私達のテンションもすごい上がっていた。

 みんなハイテンションのまま、リーブルガルトに到着した。

 しばらく色んな飲食店街の中を歩いていたんだけど、いきなり広い場所に出たと思ったら、そこには大きな建物がドーンと建っていた。

 なんて大きさだろう。

 こんな大きな建物、赤川市にはまずない。

 ていうか、中学の修学旅行で見た東京ドームよりも絶対に大きいよこれ。

「琴音、これがリーブルガルトだよ。」

 ミディアちゃんはそう言うと、思い切り両手を広げた。

 ウン、そうしたくなる気持ち、よくわかるよ。

 だって、すごい大きさだもんね。

「ミディア、はしゃぎすぎ。」

 そう言うアイちゃんも、いつもより十分テンション高いんだけどね。


「さてと、まだ会場まで時間あるけど、それまでどうする?」

 エレーネちゃんがみんなに尋ねると、ミディアちゃんが手を上げて、

「何か食べようよ。」

と言った。

 まあ、この時間だし、コンサートの前に軽く食事しておくのもいいかもね。

 でも、また紫色の食事なのかな。

 あれは、正直、勘弁してほしいんだけど・・・

「じゃあ、これにしよう。」

 ミディアちゃん達が買った食べ物は、意外と普通の食べ物だった。

 クレープのような生地に、お肉と野菜を包んで、何らかのソースをかけた食べ物だった。

 これはジャンクフード好きにはたまらない。

「琴音、私達だけ食べてゴメンね。」

 ミディアちゃんが気を使ってくれた。

「ウウン、私はこんな状態だし、仕方がないよ。」

 そうは言って見たものの、ミディアちゃん達の持っている食べ物、なんかすごいおいしそうだ。

 どうしよう、眠ってるのにお腹がすいてきた。

 これだったら、むしろ食欲のそそらなかった紫色の食べ物の方がよかった。


「ふー食った食った。」

 エレーネちゃんはすごく満足な表情になっていた。

 いや、エレーネちゃんだけでなく、ミディアちゃんも、ラーファちゃんも、アイちゃんもだ。

 私だけすごい空腹感なんだけど、どうしたらいいんだろう?

 まあ、どうすることもできないんだけど・・・

「ところで、まだ時間があるからさ、一つやってほしいことがあるんだけど・・・」

 エレーネちゃんはそう言うと、ラーファちゃんにイデアを渡した。

「イデア? これで何をしろと?」

「だから、これに琴音の姿を念写してよ。」

 そう言えば、前にもそんなことを言ってたなあ。

 私の姿を念写してほしいって。

 でも、あの時は、ラーファちゃんが怖がってできなかったんだっけ。

 あれから、まだ少ししか経ってないけど、ラーファちゃん、今度はやってくれるかな?


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