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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
22/254

18.私をラーヴォルンに連れてって

<<琴音>>

「お母さん、お願いがあるんだけど・・・」

「なあに?またお願い?」

「ウン、明日ね、遅くまで寝ていたいから、朝起こさないでね。」

「また変なお願いするわね。

 でも、日花里ちゃんはそれでいいの?」

 そっか、日花里ちゃんの都合を聞くのを忘れてた。

 慌てて2階に戻って、日花里ちゃんの元に戻る。

 日花里ちゃんは、明日は部活ないから大丈夫らしい。

 すぐに1階に降りて、お母さんの元へと向かう。

「ウン、日花里ちゃんも大丈夫だって。」

「それならまあいいけど、休みだからってあんまり夜更かしは感心しないわよ。」

「わ、わかってるよ。」

 これ以上はお説教に発展しそうだったので、慌てて退散することに。

「さっきからドタバタ何やってるの?」

 隣の部屋から悟が出てきた。

 一応、コイツにも釘を指しておくか。

「日花里ちゃんが泊まりに来ているから、勝手に私の部屋に入らないでね。」

「わ、わかってるよ。大体、俺、姉ちゃんの部屋に勝手に入ったことなんかないだろ。」

「いつも、ノックもしないで勝手に部屋に入ってくるでしょ。

 それをやめてほしいってことだよ。」

「ハイハイ、わかりました。」

 悟はそう言うと、とっとと部屋に戻っていった。

 本当に憎たらしいなあ。


「日花里ちゃん、お母さんには頼んできたよ。」

「そう、じゃあ、あとは私達が2時まで頑張って起きていればいいってことだね。」

「えっ、私達?」

 私はともかく、日花里ちゃんまで起きてる必要はないと思うんだけど。

 日花里ちゃん、部活で疲れてるだろうし、日花里ちゃんはさっさと寝た方がいいと思うけどなあ。

 そう思ったら、日花里ちゃんが話しかけてきた。

「琴音、お願いがあるの?」

「えっ、何?」

「私をラーヴォルンに連れてって。」

「ええっ!?」

 思わず変な声を上げてしまった。

 そっか、日花里ちゃん、ラーヴォルンに行きたかったのかあ。

 道理で、さっきからラーヴォルンのことに熱心だと思った。

「琴音があまりにも楽しそうに話すからさ。

 私も一度行ってみたくなったんだよ。」

「でも、どうやって日花里ちゃんをラーヴォルンに連れて行ったらいいかなんてわからないよ。

 だって、自分だって、どうやってラーヴォルンに行ってるのかわからないんだから。」

「それなら、私に一ついい案がある。」

 えっ、そうなの?

 なんか、今日の日花里ちゃんすごい。


「琴音は自分の着ている服で、ラーヴォルンに行けるんだよね?」

「ウン。」

「つまり、琴音の服はラーヴォルンに行ってるってことになる。」

 あっ、そう言うことか。

「てことは、私に触れていれば、ラーヴォルンに行ける可能性があるってことだね。」

「ウン、それも服のように密着した場合だけね。」

 日花里ちゃんはそう言うと、なんといきなり私を抱きしめてきた。

「な、なななな、何するの、日花里ちゃん。」

 私のすぐ目の前に、日花里ちゃんの顔がある。

 突然のことに、私はパニックになってしまった。

「こうして寝れば、私もラーヴォルンに行ける可能性があるってことよ。」

「で、でも、こんな格好で眠れないよ。」

「お願い・・・琴音。」

 日花里ちゃんはそう言うと、私の方をじっと見つめてきた。

 私の顔のすぐ前に、日花里ちゃんの顔がある。

 日花里ちゃんは、まっすぐ私を見つめていて、すごく恥ずかしかった。

 どうしよう?

 すごい鼓動が激しくなってる。

 多分、日花里ちゃんにも伝わってるだろうなあ。

「む、無理だよ。こんな状態じゃ、私、絶対に眠れないよ。」

 私がそう言うと、日花里ちゃんは私から離れる。

 そして、大笑いする。

「さっきの琴音の慌てっぷりったら・・・見ていて面白かったわよ。」

「もう、日花里ちゃん、またからかったね。」

「でも、琴音、すごくドキドキしてたでしょ。」

「もう、言わないでよ。」

 今日の日花里ちゃんも、やっぱり意地悪だった。


「ゴメン、機嫌直してよ琴音。」

「フンだ。」

 私は本当に頭に来ていた。

「大体、密着しているものがラーヴォルンに行けるんだったら、布団だってラーヴォルンについてくるはずでしょ。

 でも、布団はラーヴォルンに来てないよ。」

「そう言われたらそうだけど、でも、私もラーヴォルンに行きたいのよ。

 試してみる価値はあるでしょ?

 お願い、琴音。」

 日花里ちゃんが私に必死にすがりついてくる。

 どうしよう?

 でも、あんな格好で寝られるわけないよ。

「じゃあ、手をつないで寝る?

 それくらいだったらいいよ。」

「ウン、ありがとう琴音。」

 日花里ちゃんは喜んでくれた。

 どうやら、手で妥協してくれたようだ。

 よかった、あんな抱きつかれた状態だと、私までラーヴォルンに行けなくなるよ。

 でも、手をつないだまま寝るとか、朝起きたら手汗がすごいことになっていそうな気がする。

「じゃあ、とりあえず2時まで何する?」

「ウーン、じゃあテレビでも見る?」

「でも、テレビを見ているだけだと、すごく眠たくなるんだよね。

 何かゲームでもしようよ。」

「他の部屋に迷惑かけないように、音量は小さめにね。」

 こんな感じで、日花里ちゃんとゲームをして、2時まで過ごすことになった。

 私の家には、古いゲーム機しかないし、ゲームも古いのばかりだけど、やりはじめると結構はまった。

 おかげで、2時までそんなに退屈することはなかった。


<<日花里>>

 まあ、とりあえず、琴音との接触には成功かな。

 それにしても、琴音、すごいドキドキしてたなあ。

 こっちにすごい鼓動が伝わってきて、あまりのテンパりぶりに見ていて面白かったわ。

 まあ、実は私もドキドキしてたんだけどね。

 やっぱり、琴音はかわいい。

 かわいいから、どうしてもついからかいたくなってしまう。

 でも、結局得られたのは手の接触のみ。

 正直、手だけでは、ラーヴォルンに行くのは厳しいと思う。

 でも、何らかの手がかりは得られるかもしれない。

 今日はそれで我慢するしかない。

 これ以上ねだって、琴音までラーヴォルンにいけなくなったら、琴音に絶交されそうだ。

 手をつないで寝ると言うことは、琴音と同じベッドで寝るしかない。

 いつもだったら、別に用意された布団で寝るんだけど、今日は琴音と同じベッドで寝ることになるのかな?

「日花里ちゃん、今日は私もこっちで寝るよ。」

 なんと、琴音がこっちに降りてきたかあ。

 まあ、いいや。

 ラーヴォルンに行けるかどうかわからないけど、今夜はとても楽しい夜になりそうだ。


 私と琴音は、同じ布団に入ると、布団の中で手をつないだ。

 今夜は比較的涼しいとは言っても、今は夏真っ盛り。

 間違いなく、明日の朝には手汗でびっしょりになってそうだ。

「日花里ちゃん。」

 琴音が話しかけてきた。

「なあに?」

「日花里ちゃんもラーヴォルンに行けるといいね。

 私、日花里ちゃんに色んな所を案内したい。」

「ウン、もし行けたら、よろしくね。」

「じゃあ、また向こうでね。」

 琴音はそう言うと、目を瞑った。


 しばらくすると、琴音が寝息を立て始める。

 この時を待っていた。

 私は眠っている琴音を起こさないように、そっと近づいた。

 琴音を起こしてしまっては本末転倒だからね。

 琴音を起こさずに、それでいて、できるだけ琴音に接触できるような体勢で寝よう。

 そうすれば、ラーヴォルンに行ける確率が上がるはず。

 琴音には説明しなかったけど、多分、琴音は眠ってすぐにラーヴォルンに着くわけではなさそうだ。

 眠ってからラーヴォルンにたどり着くまでに少し時間がかかっているように思える。

 私は、琴音にそっとしがみついた。

「おやすみ、琴音。」

 琴音の寝顔に向かってそう言ってから、そっと目を閉じた。

 行けるといいなあ、ラーヴォルンに・・・


<<ミディア>>

 今日の私は、朝から少し不機嫌です。

 それというのも、ラーファのせいです。

「ねえ、ミディア、まだ怒ってるの?」

 ラーファが声をかけてきたけど、無視してやりました。

 昨日、久しぶりにラーファと一緒にお風呂に入ったけど、結局今までと全然変わらなかった。

 ていうか、むしろ今までより悪化したって感じ。

 私の体を洗うって、やたらくっついてくるし、私のことをジロジロ見るし。

「そんなに恥ずかしがることないじゃない。」

「恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ。」

 まあ、背中を流してくれるくらいなら、別に恥ずかしくないけど、さすがに前まで洗ってあげるって言われた時はびっくりした。

「ミディアの体中の隅々まで、私が洗ってあげるよ。」

 さすがに辞退したけど、ラーファがしつこく食い下がってきて、とてもうっとおしかった。

 もうラーファと一緒にお風呂に入るのやめよう。


「あーあ、おまけに琴音まだ来ないし。」

 お昼すぎて、いつもだったら琴音が来る時間だけでも、今日はまだ琴音は来ていません。

 いつもより遅くに寝るって言ってたから、多分、もう少し後に来るんだと思う。

「ホラ、お客さん来たわよ。」

 ラーファにそう言われて、ピシッと姿勢を正す。

 ルーイエ・アスクは、昨日から来たお客さんと、今日来たお客さんで満室状態だった。

「こんなに混んだのって、こないだのルフィル・コスタ以来だよね。

 このお客さんのほとんどが、ハーメルトンって人の歌を聞きに来たのかな?」

「普通の観光客もいると思うけど、半分以上はそうでしょうね。

 例年はお客さん少ない日だし。」

 何でも、北街で行われるコンサートのおかげで、北街の旅館は全て満室状態らしい。

 だから、南街の宿屋にも、こうしていつもより多くのお客さんが殺到してきているみたいです。

 ハーメルトンってすごい有名人なんだ。

 今まで全く知らなかったのが、何だか恥ずかしくなってきた。

「あと2時間ぐらいしたら船に乗って、北街に渡るわよ。」

 あと2時間か・・・

 それまで、琴音来てくれるかな?

「ラーファ、ミディア、ここにいたか。」

 レームおじさんが私達のところに来ました。

「なあに?」

「もうすぐ出かけるんだろう?

 わずかだけど、持っていきなさい。」

 レームおじさんはそう言うと、私とラーファにお小遣いをくれた。

「ありがとう、レームおじさん。」

「いいか、母さんには内緒だからな。」

 レームおじさんはそう言うと、忙しそうにまた受付の方に戻って行った。

「今日は満室状態で忙しいのに、お小遣いまでもらってコンサートに行って、本当によかったのかな?」

「ミディア、気にしないでもらっとけばいいのよ。」

 ラーファはそう言うと、ポケットにお小遣いをしまった。


 そして、しばらくして、アイとエレーネ先輩が来た。

 いつもとなんか違って、2人ともおしゃれしていた。

「アイ、エレーネ先輩、すぐに準備しますね。」

 私は慌てて部屋に戻ると、出かける準備をする。

 でも、今日、どんな服着て行こうか全然考えてなかった。

 なんか、アイもエレーネ先輩も、いつもと違ってなんかおしゃれしてたし、私もおしゃれした方がいいのかな?。

 でも、私、あまり服持ってないし・・・

「ミディア行くわよ。」

 ラーファが部屋に来た。

 ラーファの服もいつもと違って少し派手な服だった。

「どうしたの、ミディア?」

「実は、どんな服着て行こうか悩んでて。」

 私がそう言うと、ラーファにすごい驚かれた。

「えー、私がプレゼントした服、着て行ってくれないの?」

「あ、あれを!?」

「ウン、絶対にミディアに合ってるって。ねえ、お願い。ミディア~」

「わ、わかったよ。」

 あんまりしつこいので、もうラーファからもらった服を着て行くことにした。

 私もかわいいと思うけど、少し恥ずかしいんだよねあれ。


 ラーファからもらったフリフリの服を着て降りると、案の定みんなにからかわれました。

「絶対ミディアに合うと思ってた。ミディア、かわいい。」

 ラーファは私の姿を見るなり、私に抱きついてくるし、

「アンタ、その恰好で行くの?」

 アイには少し引かれるし、

「いいねえ、もしかしたらハーメルトンよりも注目されるかもよ。」

 エレーネ先輩にはからかわれるし、散々だよ。

「ヤッホー、ミディアちゃん、来たよ。」

 琴音もやって来ました。

「あっ、琴音。」

と声をかけて、びっくりしてしまいました。

「琴音、その恰好は!?」

 琴音もいつもの格好と全然違う。

「これは、日本で私が来ている服だよ。

 外に出かける時は、いつもこんな感じの服だよ。」

 どうやら琴音もおしゃれしてきたみたいだ。

 これが二ホンの普段着かあ。

 そして琴音を見て、ラーファが悔しがってるけど、なんでだろう?

 それにしても、琴音の足、すらっとしててきれいだなあ。

 なんか、すごい見とれてしまいます。


「でも、一つ残念なことが・・・」

 あれっ、琴音、ちょっと落ち込んでる?

「どうしたの琴音?」

「実は、今日、私の友達も一緒に来る予定だったんだけどね。

 なんか、こっちに来られてないみたい。」

「それって、もしかしていつも話している日花里のこと?」

「ウン、日花里ちゃん。

 私の手を握って眠れば、こっちに来られるかもって言ってたんだけど、ダメだったみたい。」

「そっかあ、それは残念だね。」

 私も琴音の友達に会ってみたかったなあ。

「だから、明日起きてから、日花里ちゃんにコンサートの話をたっぷりしてあげようと思ってる。」

 琴音はそう言うと、ニコッと笑った。

「そろそろ行かないと、本当にヤバいぞ。」

 エレーネ先輩に言われて、私達は慌てて家を出た。

 いよいよコンサートに出発だ。


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