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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
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16.なぜかお泊り会

<<ラーファ>>

 昨日今日と非常にハードな2日間だった。

 昨日から色々とありすぎて、エレーネを随分と責めるようなことも言ってしまった。

「エレーネ、随分きついこと言ってしまってゴメンね。」

 素直にエレーネに謝った。

 だって、エレーネは私にとってかけがえのない友達だからね。

「ウウン、気にしてないよ。

 それに、ラーファ、一緒に来てくれてありがとう。」

 エレーネはそう言うと、ようやく笑顔を見せてくれた。

 なんか、久しぶりに見た気がする。

「あーあ、本当は明日のコンサートのチケット、今日ミディアに直接渡すつもりだったんだけどなあ。」

 私がそう言うと、エレーネは苦笑する。

「アイにはこれからチケット渡すんだぞ。

 さっき慌てて連絡入れて、明日行けるってことだけは確認したけどさ。

 やっぱりもっと早くに確認しておくべきだったと思うんだよね。」

「だって、ミディアを驚かせたかったんだもん。」

「今からチケット渡しに行くのは、さすがに厳しいな。

 しゃーない、明日渡すかな。」

「まあ、アイの方はエレーネに任せるよ。」

「チェッ。」

 エレーネはそう言うと、少し頬を膨らませる。

 その表情が少しおかしくて、思わず笑ってしまった。


「ところで、ラーファは家にはもう連絡入れたの?」

「私は出かける前に、今日は大事な用事で遅くなるから、夕飯いらないって言ってるわよ。」

「私は・・・まだ言ってないんだよね。」

 それは大変だ。

 エレーネのお母さん、結構厳しい人なんだよね。

 しかも連絡していないってことは、仕事もすっぽかして来たってことだよね。

「まあ、私にとっては、とっても重大なことだったから、怒られる覚悟はできてるよ。」

 そっか、エレーネは家に帰ってからが、また大変だ。

「ところで話は変わるけどさ、今日の理論テスト、ラーファできた?」

「全然。」

 理論テストは昨日の夜、エレーネと一緒に勉強してみたものの、正直あまり頭に入らなかった。

「そっかあ、私もダメだった。」

「こんなことしてたら、そのうちミディアに抜かれちゃうかもね。」

「もしかしたら、今回のテストで、ミディアだけレベル16になっちゃうかもしれないね。」

「ハハッ、その可能性、十分にありえるよ。

 だって、ミディアは本当にすごいからね。」


 そう、ミディアは本当にすごい。

 それは一緒に暮らしている私だからよくわかる。

 あの子は、本当に何でも一生懸命ひたむきに頑張れる。

 どんなに結果が出なくても、必死で頑張ることができる。

 理論なんか、あっという間に追いつかれた。

 これでも私達、同学年の中ではトップレベルの成績なんだけど、あっという間に追いつかれた。

 そして、ミディアはついに魔法のコツも掴んだ。

 多分、これからすごい勢いでレベルアップしていくだろう。

 もしかしたら、実技もあっという間に追いつかれるかもしれない。

 もちろん、私だってミディアに負けたくはない。

 でも、頑張っているミディアがレベルアップする度に、嬉しくて胸がすごい熱くなる。

 ミディアの必死に頑張っている姿が、たまらなくいとおしく感じる。


「でもさ、ラーファが3年前まで実技レベルが6だったなんて嘘つく必要あったのか?」

「あ、あれは、ミディアの身近に同じ境遇の人がいれば、ミディアももっと頑張れると思ったから・・・」

 そう、私が3年前までレベル6だったってのは嘘だ。

 私は昔から、実技は同学年の中でトップクラスの成績で上がってきた。

 でも、最初に魔法のコツをつかむのに苦労したのは本当だ。

 だから多分、ミディアが魔法を使えないのもコツがつかめていないだけだと思ったのだ。

 もちろん、ミディアのやる気を上げたいってのもあったけどね。

「ったく、すぐにばれるウソをよくつくものだ。」

「すぐにばれるかな?」

「ばれるに決まってるだろ。

 アイから聞いたらすぐにばれるだろ。

 アイがどうしてラーファに憧れてるのか忘れたのか?」

 しまった、アイを仲間に入れるの忘れてた。

「ラーファはいつも何か抜けているところがあるから、ウソをついてもすぐばれる。」

 うわあ、ミディアにウソだってばれたらどうしよう?

 もしかして、ミディアに嫌われるかな?


「それはそうとさ。」

 エレーネが話題を変えてきた。

「どうして、ミディアとアイをハーメルトンのコンサートに連れて行こうと思ったわけ?」

 ここ数日、何回も聞かれた質問だ。

 でも、いつもうまく答えられなかった。

「ミディアもアイも、ハーメルトンの曲を知らないと思う。

 それでも、ハーメルトンのコンサートに連れて行こうと思ったのはなぜ?」

 どうしてだろう?

 私の大好きな曲を、2人にも聞いてもらいたいってのもあった。

 アイには、ミディアのお世話になってるから、そのお礼をしたいってのもあった。

 ミディアには・・・ミディアには・・・

 ダメだ、言葉にしようとすると考えがまとまらなくなる。


「なあ、ミディアって3年前からの記憶しかないんだよな。」

 エレーネが私に話しかけてきた。

「ウン、そうなんだよね。

 だから――」

「だから、たくさんの思い出を作ってあげたいね。」

 エレーネの言葉にハッとなった。

 私がミディアにしたかったことを、エレーネが代弁してくれたような気がした。

 なんだかんだで、エレーネもミディアには優しいよね。

「そう、ミディアには、私とのたくさんの思い出を作ってあげないとね。」

「私との思い出かあ。

 本当にラーファは独占欲強いよな。」

 独占欲か。

 ミディアに関してはそうかもしれない。

「ウン、ミディアに関しては強いかもしれない。」

 素直に認めると、エレーネはニヤッと笑った。

「だから、最初は琴音のことを嫌ってたんだ。

 ミディア、何かあるたびに琴音、琴音って言ってたものね。」

「ち、違うよ、それは。」

 あれは単純に得体のしれない存在だった琴音が怖かっただけ。

 でも、もしかしたら、それもあったのかもしれない。

 完全には否定できないかも。

「やっぱりそうなんだ。」

「・・・・・・」

 話していて、なんだか恥ずかしくなってきた。

「まあいいや。それはそうとさあ・・・」

「何?」

「私達は南行きの船にいつ乗れるんだ?」

 そう言えば、なかなか減らないなあ。

 私達の前には、凄まじい数の観光客が乗船待ちで並んでいた。

 ほとんどが、ハーメルトンの前日券購入で来た人なんだろう。


 結局、私達はさらに1時間近く船乗り場で待ち続けることになった。

 船に乗船できるまでの間、私達はミディア達のことを色々と話した。


<<琴音>>

 目が覚めたら、タイマーが鳴り響いていた。

 もう朝かあ。

 今日の目覚めは快適だ。

 昨日の不安は全て解消されたからね。

 今日は土曜日。

 私の通う学校は、基本的には休みなんだけど、たまに補習があったりする場合があるんだよね。

 ただ、今日は期末テスト明けと言うこともあり、お休みです。

 だから、これからまた寝てラーヴォルンに行ってもいいんだけど、それよりも今夜のことを考えないといけない。

 どうやったら、夜のラーヴォルンに行けるのか?

 こういう時こそ、ブレインに相談かな。


「何よ、こんな朝っぱらから電話してきて。」

 電話に出た日花里ちゃんは明らかに不機嫌そうでした。

「今日は部活ないの?」

「午後からあるわよ。

 だから、もう少し寝かせてよ。」

 本当に日花里ちゃんは大変だなあ。

 こんな時に悪いとは思うけど、でも、日花里ちゃんしか相談相手がいないんだよ。

 あっ、でも・・・


「多分、絶交されるわよ。」


 昨日は私を不安に陥れてくれる言葉をたくさん投げかけてくれたし、気にすることないかな。

 というわけで、遠慮なく話を続けてやろう。

「どうしてラーファちゃんとエレーネちゃんがケンカしてたか、昨日わかったよ。

 コンサートチケットを買いそびれてただけだったよ。」

「そう、それはよかったね。」

 日花里ちゃん、完全に話を流してるよ。

 でも、それでも強引に話を続ける。

「それで、今晩、ラーヴォルンでコンサートがあるんだけどね。

 私、いつも夕方までしかいられないでしょ。

 だから、夜までいられる方法を考えてるんだけどね。

 何かいいアイデアないかな?」

「そんなの私にわかるわけが・・・」

 そう言いかけて、なぜか会話が止まった。

 あれっ、日花里ちゃん、どうしたのかな?

「もしもし、日花里ちゃん、もしもーし。」

「ちゃんと聞こえてるわよ。

 それより琴音、一つお願いがあるんだけど・・・」

「なあに?」

「今晩、琴音の家に泊めてくれない?」

 えっ、なぜ突然そうなる?

 私は夜のラーヴォルンに行く相談をしたつもりだったんだけど、そこからどうしてお泊り会の話になるの?

「いいから、今日泊まりに行ってもいい?」

「いいよ。それより私の質問にも答えてよ。」

「それに答えるために、一つ試してほしいことがあるの。」

「何を試せばいいの?」

「そうね、今7時半だから、今から寝てみて。」

 えっ、今から寝るの?

 今さっき起きたばかりなのに・・・

「多分、私の考えだと、今寝たら夜のラーヴォルンにいけると思う。」

 なるほど、そういうことか。

 寝る時間をずらすわけね。

 そういや、早く寝た時には、いつもより早くに着いていたみたいだし、遅く寝れば遅くに行けるってことか。

「今晩、いきなり試すのはきついでしょうから、今のうちに試しておくのよ。」

「うん、わかった。じゃあ、今から寝てみるよ。」

「でも、寝る前に、お泊り会のことも頼むわよ。」

「わかってるよ。じゃあね。」

 私は電話を切ると、1階に降りてお母さんに声をかける。

「お母さん、今日、日花里ちゃんが私の部屋に泊まりに来るって。」

「また急な話ね。」

「でも、多分夕飯は家で食べてくるから、いらないと思う。」

「わかったわ。」

「あとね、私、今から寝るから、お昼になったら起こしてね。」

「琴音、いくら休みだからって、朝から寝る気なの?」

「頼むよお母さん、これはとても重要なことなんだよ。」

 私はいつもよりも真剣な顔をして、お母さんに頭を下げて頼んだ。

「そ、そうなの?わ、わかった。」

 何事も真剣に頼めば通じるものなんだなあと思った。

 時計を見ると、そろそろ8時になろうとしていた。

 普段なら、もう学校に行ってる時間だ。

「お休みなさい。」

 まだぬくもりの取れていない布団に潜り込んだ。


<<日花里>>

 お泊り会をしたいと言ったのは、久しぶりに琴音とゆっくり話したかったというのもあるんだけど、それ以外の目的もあった。

 ここ最近、琴音からラーヴォルンの話ばかり聞かされて、私も行ってみたくなった。

 ラーヴォルンは琴音の夢の世界だし、どうやったら行けるのか、琴音にもわかっていない。

 でも、琴音と一緒にいることで、なにかわかるかもしれない。

 もしかしたら、ラーヴォルンに行くための手がかりがつかめるかもしれない。

 こんなことを考えたのは、琴音から話を聞かされて、ラーヴォルンは本当にあるのかもしれないと思ったからだ。

 だって、夢って一話完結が普通なのに、琴音の夢はずっとつながっている。

 琴音の話を聞く限りでは、こっちで一日経つと、向こうでも一日経っている。

 そんな夢って、ちょっと考えられないんだよね。

 だから、こっちと向こうは時差があるだけじゃないのかって思ったんだよね。

 さっきの琴音のアドバイスも、そんな思いつきから言ってみただけなんだけどね。

 そんなわけで、私、すごいラーヴォルンに興味を持っちゃったんだよね。

 これというのも、全て琴音のせいだからね。

 そんなわけで、今日は琴音に責任を取ってもらうことにしよう。

 お泊り会の準備をしておこう。

 まあ、琴音の家、隣だから、別に着替えとかすぐに取りに来れるんだけどね。


<<ミディア>>

 ラーファは夕飯にも帰ってこなかった。

 本当にどうしたのかな?

「ラーファなら夕飯いらないって言ってたわよ。

 何でも遅くなるからって。」

 ラヴィおばさんがそう教えてくれた。

 それにしても、ラーヴォルンのコンサートのこと、もっと早く教えてほしかったよ。

 夕飯が終わって、部屋に戻ると、イデアハントにイデアレスが届いた。

「これは、ラーファからだ。」

 何だろう、こんな時間に?


「ラーファ?今どこにいるの?」

「ミディア、もう夕飯食べ終わった?」

「ウン、これからお風呂に入るところだよ。」

「そっかあ。」

 何だろう?

 こんな話をするために、わざわざイデアハントを使ってきたのかな?

「ミディア、久しぶりに声を聞いた気がするよ。」

 妙にテンション高いな。

 ていうか、昨日今日と一緒にいたはずなのに、久しぶりに声を聞いたって・・・

 まあ、昼間のようなローテンションよりはずっとマシかな。

「ラーファ、今どこにいるの?」

 なんか、さっきから向こうから騒音が聞こえてくるんだけど・・・

「あー、私なら今南街行きの船を待っているところだよ。」

 やっぱり北街に行ってたんだ。

 アイや琴音の予想通りだったってことか。

 呆れたなあ、もう。


「ところでミディア、その、お母さんからもう受け取った?」

「ウン、コンサートのチケットでしょ。明日の夜だよね。」

「本当は、私から手渡したかったんだけどね。ちょっと色々問題があってね。」

 知ってるよ。

 だから、こんな時間まで北街にいたんでしょ。

「でも、どうして、私をコンサートに?」

「ミディアにもハーメルトンの曲を聞いてもらいたかったんだよ。

 単に私のわがまま。

 だから、嫌だったら付き合わなくても・・・」

「ウウン、ありがとう、ラーファ。

 私はそのハーメルトンって人の曲を知らないけど、ラーファと一緒にコンサートに行きたい。」

「ミディア・・・」

「それにね、琴音にも言われたんだよ。

 歌はすばらしいものだって。

 だから、私、歌を聞いてみたい。」

「そっか、琴音がそんなことを・・・

 琴音にもお礼を言っておかないとね。」

「そんなことより、早く帰ってきてよ。

 いっぱい言いたいことあるんだからね。

 昨日から様子が変で心配したんだからね。」

「ご、ゴメンなさい。ミディアにもアイにも心配かけちゃったね。」

 なんか素直に謝るラーファって新鮮だなあ。

「琴音だってすっごい心配してたんだよ。」

「そっかあ、じゃあ琴音にも謝らないといけないね。明日謝るよ。」

「ウウン、今のでもういいよ。」

 えっ!?

 背後から突然聞きなれた声がしたので、振り返ってみたら、なんとそこには琴音がいた。


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