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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
19/254

15.ラーファとエレーネの様子がおかしい理由

<<ミディア>>

 琴音にもう少し話を聞いてみたかったけど、そろそろ仕事に出ないとマズい。

 ラヴィおばさんが今日は忙しくなるって言ってたし、早く下に行かないと。

 制服に着替えて、部屋の外に出ると、琴音が待っていた。

「うわあ、ミディアちゃん、その制服かわいいね。」

 そうなのかな?

 普通の制服だと思うけど・・・

 まあ、琴音はなんでもかわいいって言うからね。

 多分、ラーヴォルンの服が物珍しいだけなんじゃないかと思う。

「じゃあ、私もミディアちゃんのお仕事に付き合うね。」

「えっ、でも・・・それじゃ琴音はつまらないと思うよ。」

「そんなことないよ。

 ミディアちゃんが仕事するところ初めて見るし、とっても楽しみだよ。」

 そう言えば、私がお仕事しているところを、琴音見たことなかったかもしれない。

 琴音が一緒にいても私とラーファにしか見えないから、特に問題ないかな。

 琴音と一緒に階段を下りると、1階にレームおじさんが待っていた。

「レームおじさん。」

「ミディアか。

 ちょうどいいところに来た。

 受付を手伝ってくれ。

 今ちょうど人手が足りないところだったから助かるよ。」

「はーい」

 レームおじさんに頼まれて受付に行くと、お客さんが殺到していて大変な状態になっていました。

「大変だ。」

「ミディアちゃん、ちょうどいいところに来てくれた。」

 受付の人もあまりの忙しさに悲鳴をあげていた。

 ラーヴォルンは観光地なので、ルーイエ・アスクは毎日それなりに忙しいけど、今日はいつも以上だ。

 しかも、ほとんどが予約客のようだ。

 こないだルフィル・コスタが終わったばかりで、特にイベントもなかったはずだけど、この混みようは一体なんだろう?


 それから、2時間ぐらいずっと受付の仕事して、ようやくお客さんの波が少し収まってきました。

「こっちはもういいから、レストランの方を手伝ってやってくれ。」

「はーい。」

 レームおじさんに言われて、宿屋の隣に併設しているレストランの方に向かいます。


 レストランはいつもはこの時間はすいているのですが、今日はすごい混んでいました。

「何だろう?今日は変な時間に混んでいるね。」

「何でも、北街の方に有名人が来ているそうよ。」

 レストランの方に来ていたラヴィおばさんがそう教えてくれました。

 有名人?誰だろう?

「へえ、有名人ってどんな人なんだろう?」

「さあね、誰が来たのか私もよく知らないんだけど、どうやら歌手らしいよ。」

 へえ、歌手かあ。

「ミディアちゃん、この世界ではどういう歌が流行ってるの?」

 背後から琴音に聞かれる。

 そういや、さっきから琴音のこと、ずっとほったらかしだった。

「琴音、ゴメンね。なんかずっとほったらかしで。」

「ウウン、いいよ。ミディアちゃんの働く姿を後ろから見ているだけで、なんかすごい楽しいよ。」

 琴音がそう言ってくれるのは嬉しいんだけど、私の働いてる姿なんか見て、何が楽しいんだろう。

 勉強会の時もそうだったんだけど、琴音のこういうところはよくわかりません。

「それより、どんな歌が流行ってるの?」

 琴音に聞かれて、はたと困ってしまいました。

 というのも、私、その手の話題にすごい疎かったから。

「ゴメンね、私、歌に興味ないから、歌手とか全然わからないんだよ。」

「そうなんだ。じゃあ、今度ラーファちゃんに聞いてみるかな。」

 琴音にそう言われて、少しショックを受けた。

 琴音にアトゥアのことを教えるためにも、私も歌番組とかを見た方がいいのかもしれない。

「ところで今日はラーファちゃん、ずっといないね。

 ラーファちゃんは今日はお出かけなの?」

 そう言えば、ラーファどこに行ったんだろう?

 家に着くなり、すぐにまたどこかに出かけちゃったんだけど、やっぱりエレーネ先輩と何かあったのかな?


 ブルルルル・・・


 突然、私のポケットが激しく震えだした。

「ミディアちゃん、ポケットが何か震えてるよ。」

「あーこれは、イデアハント。遠くの人と連絡するのに使うんだよ。」

「なるほど、スマホみたいなものか。」

 スマホって何でしょう?

 二ホンの連絡手段なのでしょうか?

 イデアハントを取り出してみると、アイからのイデアレスが届いていた。

 何だろう?

 そう思って、イデアレスを開いた。


「ミディア、ラーファ先輩って今そこにいる?」

「ウウン、いないけど?」

「じゃあ、やっぱり・・・」

 やっぱりってどういうことだろう?

「今、歌手のハーメルトンって人がラーヴォルンに来ているらしいの。」

 ハーメルトン、変わった名前の人だね。

「北街の方に来ている有名人って、そのハーメルトンって人なの?

 そのおかげで、こっちは大忙しだけど。

 で、そのハーメルトンさんがどうかしたの?」

「アンタ、一緒に住んでいるのに、何も知らないの?」

 何のことだろう?

「ラーファ先輩とエレーネ先輩、ハーメルトンの大ファンなのよ。」

 ええっ、そうだったの!?

 そう言えば、ラーファとそう言う話をしたことないや。

 私、ラーファと一緒に暮らしているのに、ラーファのことを何も知らないんだ。

「じゃあ、もしかしてラーファとエレーネ先輩は、そのハーメルトンってを見に行ったってこと?」

「さっき、エレーネ先輩にイデアレス送ったけど、今忙しいからの一言で切られたんだよ。

 で、ハーメルトンの話を聞いて調べてみたら、少し前に北街でコンサートチケットの前日販売を開始したらしいんだよ。

 この前日販売って現地販売のみらしくて、今、北街はすごいことになってるそうよ。」

 えっ、ハーメルトンって、ここにコンサートしに来たの?

 観光に来たわけじゃないんだ。

「じゃあ、2人がいないのって、もしかして・・・」

「ウン、北街にチケット買いに並んでる可能性が高いね。

 でも、外からも大勢の人が来ているから、買えるかどうかわからないけどね。」

「そう言うことかあ。

 それで、今日一日、2人とも心ここにあらず状態だったんだ。

 テスト終わって、食事が終わったら、早くチケットを買いに行きたかったんだ。」


 それにしても、前日販売って・・・しかも、現地販売のみ・・・

 多分、前日にチケット販売することで、チケット買いに来た人にラーヴォルンに滞在してもらおうってことだと思うんだけど。

 以前、北街の商人は商魂たくましいってレームおじさん言ってたけど、こういうことなのかなあ。

「変ねえ?」

 いつのまにか私とアイの会話を聞いていたラヴィおばさんが首を傾げる。

「えっ、何がですか?」

「コンサートって、ハーメルトンのコンサートよね?

 あの子、ハーメルトンのコンサートチケットは、いつもエレーネちゃんに前売り券を確保してもらっているはずなんだけどね。」

 ラヴィおばさんの話によれば、エレーネ先輩のお店は、コンサートを初めとするイベントチケットの取り扱いもしているらしい。

 確かに、あそこはイデア目的の観光客多いから、イベントチケットの販売所としては絶好の場所だ。

 でも、今の今までチケット販売していることを知らなかったよ。


「ああっ、わかった。わかったよ。」

 琴音が突然叫んだので、思わずビクッとなってしまった。

「アイ、2人のこと教えてくれてありがとう。」

「ウウン、こっちこそ忙しい時にゴメンね。

 また、何かわかったら連絡するね。」

 アイはそう言うと、イデアレスを閉じた。


「で、琴音、何がわかったの?」

 ラヴィおばさんもいなくなった後で、背後で興奮している琴音に小声で尋ねる。

「さっき話したケンカの話だよ。

 ラーファちゃんがどうしてエレーネちゃんを責めていたのか?」

「私にもわかったよ。

 多分、エレーネ先輩は前売り券チケットを買いそびれたんだね。」

「そう、それでラーファちゃんはエレーネちゃんに激怒したんだよ。

 多分、こんな感じだよ。」


『前売り券買えなかったって、ハーメルトンのコンサートに行けないじゃない。どうするのよ?』

『そんなこと言われたって、私にわかるわけないでしょ。

 私、確かにちゃんと2人分のチケット分を予約してたんだよ。』

『でも、結果的にチケットは手に入れられなかった。

 アンタの店でハーメルトンのチケットを取り扱ってるんだから、私にはエレーネが前売り券を買い忘れたとしか思えない。』

『少しは私のことを信じてよ。どうして前売り券を買い損ねたのか、本当に私にもわからないのよ。』

『チケット屋が自分のところで取り扱ってるチケット買えないなんてこと、あるわけないでしょ』

『ううっ・・・』


 うわあ、なんかその光景が目に浮かぶよ。

 ラーファって、欲しいものが手に入らなかった時って、すごい性格変わるんだよね。

 でも、エレーネ先輩が泣くほど責めるとは思わなかった。

「ラーファちゃんに責められてってより、コンサートに行けなくなりそうで泣いてたんじゃないかな?」

 エレーネ先輩もそのハーメルトンって人の大ファンらしいから、その可能性もあるかもしれない。

「で、チケットの入手方法を調べたら、前日券の販売があることを知って、家に着いてから慌てて出かけたんだ。」

 何ていうか・・・心配して損したよ。

 今までの私の心配は、一体何だったんだろう?

「ああ、そうだミディア。」

 ラヴィおばさんが声をかけてきた。

「何ですか?」

「そう言えば、ラーファからミディアにこれを渡しておいてほしいって言われたんだよ。」

 ラヴィおばさんから封筒を手渡された。

 何だろう、この封筒?

 封筒を破いて、中をのぞくと、何と封筒の中に紙が一枚入ってた。

 何だろう、この紙は?

 そう思って取り出してみると、何とハーメルトンのコンサートチケットだった。

「あれっ、これって、明日のコンサートチケットだよ。

 どうして私に?」


「ああっ、そう言うことか。」

 また、琴音が何か閃いたみたいだ。

「何がわかったの?」

「ラーファちゃんは、多分、みんなの分のコンサートチケットを頼んだんだよ。

 でも、エレーネちゃんは、いつものように2人分のチケットしか確保しなかったんだよ。

 だから、足りない分の前日券を買いに行ったんだよ。」

 確かに、手元にコンサートチケットがある以上、そっちの可能性の方が高い。

「でも、どうして私までハーメルトンのコンサートに?

 私、ハーメルトンって人の歌とか全く知らないのに・・・」

「それはね、多分、ラーファちゃんがミディアちゃんに知ってもらいたかったんだと思う。

 自分の好きな歌って、友達にも教えたくなるものでしょ。」

 そんなものなのかな?

 私、歌に全く関心ないから、そういう気持ち、よくわからないや。

「それにねミディアちゃん、歌に興味ないって言ったけど、歌ってすばらしいよ。

 ラーヴォルンでどんな歌が流行ってるのかわからないけど、歌のない生活なんてつまらないよ。

 絶対に見に行った方がいいよ。」

 そんなものなのかな?

 でも、琴音がそこまで力説するんだったら、きっと歌にはそういう力があるんだろう。

「ウン、じゃあ、明日はいっぱい楽しんでくるよ。」

「私も行きたいけど、そのコンサートって夜にやるんだよね?」

「ウン、明日の夜だね。」

 そっか、琴音はいつも夕方までしかいられないから、一緒に行けないね。

「いや、何とかしてみるよ。

 明日っていうかもう今日か。

 土曜日だし、多分何とかなると思う。」

「本当?」

「ウン、絶対に何とかしてみるよ。」

 琴音はそう言うと、ニコッと微笑んだ。


 その時、琴音の体が光り始める。

「えっ、もうそんな時間?」

 琴音も驚いてるけど、私も驚いた。

 そっか、もう帰る時間なんだ。

「ミディアちゃん、明日、絶対に夜までいられる方法を考えてくるから・・・」

「ウン。」

「だから一緒にコンサートに行こうね。」

「琴音、約束だよ。」

「ウン、約束ね。」

 琴音はそう言うと、光の中へと消えて行った。

 それにしても、今日一日、なんか無駄な心配をした気分だよ。

 ラーファもエレーネ先輩も、ちゃんと話してくれたらよかったのに。

 そっかあ、歌かあ。

 コンサートってどういった感じなんだろうか?

 コンサートの場所はリーブルガルトだって。

 楽しみだなあ。


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