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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
18/254

14.不安で一杯の琴音とミディア

<<ミディア>>

 理論テストは、まずまずの出来だった。

 とはいえ、レベルアップの90点に届くかと言われたら、正直かなり厳しいと思う。

 とりあえず全部解答はしたけど、自信のないところも結構多いし・・・

「ミディア、どれくらいできた?」

 私にそう聞いてきたアイは、すごい笑顔だった。

 まさか、アイはテストできたのかな?

「私はまあまあだと思うけど、アイはできたの?」

「ウウン、全然。」

 その笑顔は、開き直りの笑顔だったかあ。

 人はあまりにもダメすぎると笑うしかなくなるっていうけど、今のアイはそれだったんだね。

 まあ、アイは昨日の時点で諦めてたからね。

 そんなことだと思ったよ。

 それよりも気になったのは、ラーファとエレーネ先輩の2人。

 結局、昨日勉強会に来なかったし、一体どうしたんだろう?

 ラーファは昨日帰ってくるのも遅かったし、今朝学校に来る時もほとんど何もしゃべらなかったし。

 エレーネ先輩も、なんかいつもの元気がなかったし。

 何よりも、2人ともなんか疲れている感じがした。

 琴音は2人とも部屋にいなかったって言ってたけど、本当かな?

 今思えば、あの時の琴音の様子も少しおかしかったような気がする。


 そんなことを考えてたら、ラーファとエレーネ先輩がこっちに来た。

「先輩方は今日のテストどうでしたか?」

 アイが全く空気を読まずに、2人に話しかけた。

 でも、2人はどこか上の空だ。

「ん?・・・ああ、まあまあかな。」

 やっぱり、ラーファの様子、なんかおかしいよ。

「・・・・・・」

 エレーネ先輩に至っては、何も話してくれない。

 いつもの明るいエレーネ先輩はどこに行ってしまったんだろう?

 エレーネ先輩の様子を見て、さすがにアイも空気を読むかと思いきや、

「じゃあ、お昼ご飯食べに行きましょう。

 私、もうお腹ペコペコですよ。」

 全然空気を読んでなかった。

 それに対して、

「そうね。」

「うん。」

 2人の返事はそっけないものだった。

 どうしよう。

 琴音、早く来てーーー!!!

 私、この空気に耐えられそうにないよ。


 昼食も私とアイが話すぐらいで、ラーファとエレーネ先輩は全く何も話さなかった。

 2人とも、心ここにあらずって感じだ。

「ねえ、アイ。」

 小声でそっとアイに話しかける。

「何よ、小声で一体?」

「どう見ても、2人の様子おかしいよ。」

「そう?いつもの2人だと思うけど・・・」

 ええっ、アイは気づいてないの?

「だって、さっきから2人とも何も話してくれないし、絶対におかしいよ。」

「何言ってるの?

 2人が理論のテスト終わった時って、こんな感じでしょ。

 前回も勉強しすぎて、理論テスト終わってたら燃え尽きてたじゃない。」

 あれっ、そうだったっけ?

 前回のテストって、私達レベル14だったし、テスト終わる時間が違ったから昼食も別々で、確か私達は先に帰ったはず。

 てことはまさか・・・

「ねえ、もしかして、前の魔法検定の時、アイは2人を迎えに学校に戻ったの?」

「あっ、しまった。」

 しまったじゃないよ。

 やっぱり、そうだったんだ。

「ひどいよ、私も呼んでほしかったよ。」

「だって、あの時、ミディアすごい落ち込んでたし。」

 そうだった。

 私、終了間際に間違いに気づいて、でも直せずに試験が終わってしまって、ひどく落ち込んでたんだっけ。

「あの時のミディア、この世の終わりみたいな落ち込み方してたし、とてもじゃないけど誘えなかったよ。」

 この世の終わりってのはさすがに大げさだけど、確かにあの時は落ち込んでた。

 でも、前回の魔法検定の後も、2人がこんな感じだったというのは、さすがにちょっと信じられない。

 本当なんだろうか?

「魔法検定も終わったし、今日からまた宿屋のお仕事頑張らないといけないね。」

 私は元気よくラーファにそう言ってみたけど、

「・・・・・・」

 しばらく待ってみたけど、ラーファから何の返事も返ってこなかった。


「本当にこんな感じだったの?」

 もう一度小声で、アイに確認する。

「大丈夫だって。一晩経ったらすぐに戻ってるよ。」

 本当にそうなのかなあ?

 ラーファと3年間一緒に暮らしてたけど、こんなラーファ見るの初めてなんだけど・・・

 でも、アイがそう言うなら、今日はそっとしておくしかないのかな?

「それにしても、ラーファ先輩やエレーネ先輩がここまで頑張っても、90点取れないんだから、本当に大変よね。」

 確かに、レベル15になってから、いきなり難しくなった気がする。

 ラーファとエレーネ先輩は既に1回、レベル15で不合格になっている。

 あんなに頭のいい2人ですら、なかなか合格できないんだから、私達が一発で合格できるわけがないか。

 もし今回不合格だったとしても、次の試験に向けてしっかり頑張るしかないね。


<<琴音>>

 とうとうラーヴォルンにやって来ちゃったよ。

 今日はあまり来たくなかったけど、やっぱり寝るとラーヴォルンに来ちゃうんだね。

 今頃の時間だと、昼食が終わって、学校から帰る頃かな。

 でも、今はあまり会いたくないなあ。

 というわけで、今日はミディアちゃんの部屋で待つことにした。

「もし早くに来たら、私の部屋で待っていてね。」

 ミディアちゃんもこう言ってくれてたし、今日はお言葉に甘えるとしよう。


 ルーイエ・アスクは今日も観光客で賑わっていた。

 本当にここっていつも繁盛しているなあ。

 一気に床をすり抜けて、ミディアちゃんの部屋の前に着く。

「ミディアちゃんいる?」

 部屋に入る前に、一応声をかけてみる。

 昨日部屋に入ったら、ミディアちゃん着替え中だったからね。

 本当はもっとミディアちゃんの下着姿を見たいから、もう一度飛び込んでみてもと思ったけど、ミディアちゃんに嫌われたくないし自重することにした。

 ミディアちゃんのプライバシーは大切にしないとね。

 あと、こないだの盗み聞きで、もう懲りたってのもある。

 やっぱり、人の話を盗み聞きするのはよくない。

 こんな体だから、どんなところにでも忍び込むことができるけど、もうあんなことは二度としないでおこう。

 心の底からそう思った。


 何回か外から呼びかけてみたけど、ミディアちゃんの返事はなかった。

 さらに2回呼びかけたけど、やっぱり返事がなかったので、すーっとミディアちゃんの部屋に入った。

 部屋には誰もいなかった。

 誰もいない部屋で一人で待ってると、嫌なことばかり頭に浮かんでくる。


「ミディアちゃんが、勉強会に来なかった2人を責めて、ケンカになって泥沼状態・・・なんてこともあるかもよ。」

「バレたら多分、絶交されるね。」


 日花里ちゃんの言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。

 どうしよう?

 どんな顔して、みんなと接すればいいんだろう?


 しばらくすると、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。

 ミディアちゃんが帰ってきた。

 もしかして、ラーファちゃん達も一緒かな?

 どうしよう?


「ただいま。」

 部屋の扉が開くと、ミディアちゃんが部屋に入ってきた。

「ミディアちゃん、おかえり。」

 あれっ、なんか、ミディアちゃんの元気がない。

 どうしたんだろう?


「ミディアちゃんが、勉強会に来なかった2人を責めて、ケンカになって泥沼状態・・・なんてこともあるかもよ。」


 もう、日花里ちゃんは引っ込んでいてよ。

「どうしたの、ミディアちゃん。なんか元気ないね。」

「ウン、実はね、ラーファとエレーネ先輩の様子がいつもと違うんだよ。」

 ギクッ。

 やっぱりそうか?

「朝も昼食も心ここにあらずって感じで、ほとんど何も話してくれないし、家に戻ってきてすぐにラーファはどこかに出かけちゃったし。」

 なんと、そこまで事態は深刻化していたのか。


「琴音、もしかして何か知ってるの?」

 ギクッ。

 ミディアちゃんが私のことを疑ってる。

「ど、どうして、そう思うのかな?」

「いや、なんか琴音の様子も昨日ちょっとおかしいなって思ったから。

 違ったらゴメンね。」

 ミディアちゃん、ずっと勉強してると思ってたけど、ちゃんと私のことも見ていたんだな。

 それはすごく嬉しいけど、でもどうしよう?

 こんな思いをするのも、全ては昨日ウソをついたのが原因だよ。

 もし、あの時本当のことを言ってたら、どうなってたんだろう?

 ウウン、そんなこと、今考えても仕方がないよ。

 こうなったら、ミディアちゃんにちゃんと話すしかないかな。


「ゴメンなさい、ミディアちゃん、私、ウソついてました。」

「えっ、どうして琴音が謝るの?」

 ミディアちゃんは驚いていました。

「実はね、昨日、ラーファちゃんとエレーネちゃんはいないって言ったけど、実は部屋にいたんだよ。」

「ええっ、そうなの?」

「でもね、2人がなんかケンカしている感じだったから、話しづらくて、ついウソをついてしまいました。

 本当にゴメンなさい。」

 頭を下げてミディアちゃんに謝った。

「そうだったんだ。

 でも、どうして2人がケンカしてたの?」

「わかんない。

 でも、エレーネちゃんは泣いてたよ。」

「えっ、あのエレーネ先輩が!?」

 ミディアちゃんは驚いていた。

 まあ、私も驚いたけどね。

「で、どんな感じでケンカしていたの?」

「それが、テレビの音がうるさくて、なかなか聞こえなかったんだよ。」

「テレビ?」

 あっ、そうか。

 この世界にはテレビってないんだ。

 でも、テレビに相当するものはあると思うんだよね。

「何か、ニュースやってて、その音で2人の会話があまり聞こえなかったんだよね。」

「それって、多分イデアフィールズだよ。」

 イデアフィールズって、またイデアですか。

 どうやらこの世界において、イデアは必要不可欠なもののようだ。

「私の部屋にもあるよ。イデアフィールズ。」

 ミディアちゃんはそう言うと、机の上に置いてある小さな機械の電源を入れた。

 すると、壁に何やら映像が映し出された。


『今日は、ラーヴォルンの北街にやって来ました。

 ラーヴォルンの北街と聞いて、みなさんが思い浮かべるのは、リーブルガルトとエルフィーゼの塔だと思います。

 でも、これ以外にも、北街にはいっぱい楽しめる場所があるんですよ。

 というわけで、今日はラーヴォルン北街の観光スポットを色々と発掘しちゃいたいと思います。』


「色んな放送の電波を受信して、映像と音声に変えてくれる機械だよ。

 あと、イデアの再生を行なうこともできるよ。」

 ミディアちゃんの説明を聞く限りでは、どうやら再生機能付きテレビのようだ。

 ただ、ディスプレイはなくて、映像は空中に表示することもできるし、壁に映し出すこともできる。

 なんか映写機みたいなテレビだ。

 でも、空中に映ってる映像は、少し見づらい気がする。

 私が慣れていないだけかもしれないけど。

 今やってた番組は、旅番組かな。

 へー、こっちにも、この手の番組やってるんだ。

 まあ、ラーヴォルンは観光都市だから、旅番組の一つや二つあってもおかしくないかな。

「つまり、イデアフィールズの音声でよく聞き取れなかったんだ。」

「多分、そうだと思う。」

 あの時聞こえてきたエレーネちゃんの涙声といい、ラーファちゃんの責めるような声といい、絶対普通じゃなかった。

 ミディアちゃんは少し考え込んでいたけど、しばらくしてから私にこう言ってきた。

「琴音、ちょっと部屋から出てほしいんだけど・・・」

 それを聞いた瞬間、頭の中に昨日の日花里ちゃんの言葉が浮かんできた。


「多分、絶交されるよ。」


「ゴメンねミディアちゃん。

 私が悪かったから、どうか絶交だけはしないで。」

 すぐにミディアちゃんに向かって土下座して頼み込んだ。

「えっ、何のこと?」

「だって、ミディアちゃん、私に出て行けって言うから、私のこと嫌いになったのかなって思って。」

 私がそう言うと、ミディアちゃんはクスッと笑いました。

「違うよ。

 午後からルーイエ・アスクのお仕事手伝わないといけないから、制服に着替えたいだけだよ。」

「えっ、それだけ?」

「ウン。」

 なんだ、ただの勘違いか。

 でも、ミディアちゃんのおかげで、日花里ちゃんに植え付けられた不安を晴らすことができてよかった。

 すごいホッとした。





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