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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
16/254

12.勉強会のはずが・・・

<<琴音>>

 食事が終わって、みんなすごい満足な表情になっていた。

「やっぱり、ここのお店のクーフィー料理は一番だね。」

 食前は落ち込んでいたアイちゃんも、すっかりご機嫌になっていた。

「じゃあ、私はまた学校に戻るよ。」

 ミディアちゃんはそう言って、ラーファちゃん達と別れて学校へと向かった。

「あれっ、ラーファちゃんは一緒じゃないの?」

「ラーファはいつも家に帰って、家の手伝いを少ししてからこっちに来るんだよ。」

 へえ、あのラーファちゃんがね。

 ミディアちゃんから、ラーファちゃんはあまり家の手伝いしないって話を聞いたことあったけど、もしかしたらミディアちゃんの代わりにお手伝いしてるのかもね。

 ミディアちゃんのことになると、ラーファちゃんはなんかすごいね。


「ミディアちゃん、明日はどんな課題が出そうなの?」

 私が聞くと、ミディアちゃんはうーんと首を傾げる。

「まさか、明日の課題、何が出るか全くわからないなんてことは・・・」

「冗談だって、ちゃんと調べてるよ。

 明日はね、生活で使用するにあたって重要な温度調整と炎調整のテストだよ。」

 なんか、本当に生活臭たっぷりの魔法なんだなあ。

「炎と言っても、焼却炉でゴミを燃やす時と、料理で使う時じゃあ、使う炎の勢いが違うでしょ。」

「まあ、そうだね。」

「そういうのを自在に操作できるかを確認するテストだよ。

 と言っても、レベル3だから、大きな炎と小さな炎とか、大分漠然としたテストだけどね。」

 まあ、そうだろうね。

 8歳の子に厳密な温度調整を要求しても、まず無理だと思う。

「じゃあ、早速やってみてよ。」

「ウン。」

 ミディアちゃんは頷くと、早速炎の魔法を使って見せてくれた。

 もうミディアちゃんは完璧に炎を使いこなせていた。

 あとから来たラーファちゃんも、ミディアちゃんの魔法を見て驚いていた。

 魔法って本当にちょっとしたコツをつかむまでが大変なんだね。

 ウン、これなら合格間違いなしだよ。


 翌朝、通学途中で日花里ちゃんに聞いてみた。

「ねえ、日花里ちゃん、カレーライスってどういう食べ物?」

「何よ、いきなり。

 カレーライスは、ご飯にカレーをかけた食べ物でしょ。」

「じゃあ、カレーってどういう食べ物?」

「色んな香辛料を使ったスープ料理かな。」

 なるほど、そう説明すればよかったんだ。

「なんで、こんなことを聞くのよ?」

 私は昨日あったことを、日花里ちゃんに話した。


「なるほど、確かにカレーやラーメンを知らない人達に説明してって言われたら、困るわね。」

「でしょ。だって、私達にとっては当たり前の食べ物だからね。」

「でも、さっきの説明じゃ、どんな食べ物かまで想像するのは難しいと思うよ。」

「確かにそうだね。」

 まあ、カレーやラーメンの説明については、後で考えるかな。

「それはそうと聞いてよ、日花里ちゃん。

 昨日、初めてラーヴォルンの料理を見たんだけどさあ。」

「アンタ、今までラーヴォルンに行ってたのに、料理を見たことなかったの?」

 日花里ちゃんにも驚かれた。

「だって、私の行く時間って、いつももうお昼過ぎているし、かといって夕飯まではいられないもん。」

「まあいいわ。で、ラーヴォルンの料理がどうしたの?」

「ウン、ラーヴォルンの料理って、すっごい紫色なんだよ。」

「えっ!?」

 さすがの日花里ちゃんも驚いたようだ。

「ドロッドロの紫色のスープを、ミディアちゃんがおいしそうに食べてるんだよ。

 私には料理下手な子が作った実験料理にしか見えないのに。」

 私がそう言うと、日花里ちゃんは大笑いした。

「それはすごい。」

 どうやら私と同じものをイメージしたらしい。

「でも、ラーヴォルンではそれが一般的な料理ってことでしょ。

 逆に私達がカレーライス食べるところを見たら、ラーヴォルンの子達は引くかもしれないよ。」

「そうだね。」

「何でも見た目で判断するのはよくない。」

「ゴメンなさい。」

 日花里ちゃんの言う通りだ。

 なんか、ミディアちゃんに悪いことしちゃったなあ。


「で、カレーをどう説明するか考えた?」

 また、カレーの話に戻ってきたかあ。

「ウン、それならさっき思いついたよ。」

 どんな食べ物かを説明するのに、一番簡単な方法は色で説明することだよ。

 紫色のシチューと言えば、大体の人は同じシチューをイメージするからね。

「カレーはカレー色のスープだよ。」

 私がそう言うと、日花里ちゃんは呆れた表情になる。

「アンタ、カレー色ってのはカレーを知っている人にしか通じないでしょ。」

「確かに・・・」

 じゃあ、別の言葉で説明しないと。

 一番近いのは茶色かな。

 でも、茶色ってのもちょっと違うんだよなあ。

 どう説明したらいいんだろう?

 ウーン、ウーン・・・

「あっ、そうだ。カレーはうん・・・」

「ハイ、チョーップ!!!」

 思い切り日花里ちゃんに頭をチョップされた。

「食べ物の説明に不適切な言葉を使わない。」

「ゴメンなさい。」

 私はもう一回日花里ちゃんに謝った。


 どうやってカレーの説明をしようか?

 今日一日、そんなことばかり考えていたから、とても大事なことをすっかり忘れてしまっていた。

 今日が魔法検定の2日目だったことを思い出したのは、眠ってラーヴォルンに着いた時だった。

「しまった。ミディアちゃんのテストのことをすっかり忘れてたあ。」

 カレーなんかのために、こんな大事なことを忘れるなんて、私はなんてバカなんだろう。

 慌ててミディアちゃんの学校に行ったけど、既に魔法検定は終了していて、学校にほとんど人はいなくなっていた。

 校内を探したけど、ミディアちゃん達の姿はもうどこにもなかった。

「明日は理論だって言ってたから、もしかして家で勉強しているのかな?」

 とりあえず、ミディアちゃんの部屋に行こう。

 それから慌ててルーイエ・アスクまで行くと、そのままミディアちゃんの部屋に向かって一気に突進した。

 私が部屋に飛び込むと、ちょうどミディアちゃんはお着換えの最中だったみたいで、下着姿になっていた。

「あっ、琴音。」

 ミディアちゃんは私に気づくと、下着姿のままこっちにきた。

 ラーヴォルンの下着は、日本のものとほとんど同じだった。

 デザインや形状が若干違ってたけど、まあ体型が同じ人型なんだし、下着も自然と同じようになるよね。

 ていうか、ミディアちゃんの下着姿、初めて見ちゃった。

 なんかすごいドキドキしてしまって、頭の中が真っ白になった。

「ゴ、ゴメンね、着替え中に飛び込んできちゃって。」

「ウウン、だって、琴音、ドアノックできないし、仕方がないよね。」

「私、外で待ってるね。」

「ウン。」

 慌てて部屋を出て、ミディアちゃんが着替え終わるまで、部屋の外で待つことにした。

 それにしてもミディアちゃん、私に下着姿を見られても、全然平気そうだったなあ。

 私はすごい心臓バクバクしているのに。

 まさか、ミディアちゃん、私にだったら見られても構わない・・・とか思ってたりして。

 だとしたら、もっとしっかり見ておくんだったあ。

 まあ、そんなわけないか。

 無駄に妄想に体力を使い果たして、なんか疲れた。


 数分後、ミディアちゃんの部屋に入ると、今まで見たことのない服を着ていました。

 ていうか、フリルたっぷりの服を着て、まるでお人形さんみたいだ。

「ど、どうかな、琴音?」

 ミディアちゃんが少し照れながらこっちの方を見るその仕草に、私はもうクラクラ来てしまいました。

 あー、どうしてもうこの子はこんなにかわいいんだろう。

 本当にギュッと抱きしめたいよ。

「ウン、すごいかわいいよ。」

「本当?実は、実技テストで最後まで課題をクリアしたご褒美に、ラーファがプレゼントしてくれたんだよ。」

 そうなんだ。

 ラーファちゃんは、本当にミディアちゃんのことになると優しいなあ。

 そして、ラーファちゃん、いい趣味してるよ。

「てことは、実技テストは、全部クリアできたんだね。」

 私が尋ねると、ミディアちゃんは笑顔で「ウン」と答えました。

 もうなんか、すっごく嬉しくなって、気がついたら、また泣いてしまっていた。


<<ミディア>>

「もう、琴音は本当に泣き虫なんだから・・・」

「だってえ・・・」

 でも、本心を言うと、琴音が私のために泣いてくれて、すごい嬉しかった。

 実技に関しては、あとは採点結果を待つだけだけど、いい点とれてるといいなあ。

「ところでミディアちゃん、明日は理論のテストだって聞いたけど。」

 琴音、理論のテストがあることも覚えていてくれたんだ。

 琴音のことだから、実技だけしか覚えてないかと思ってたよ。

「えーっとね、これからアイの家で一緒に勉強するんだけど、琴音はどうする?」

「もちろん一緒に行くよ。」

「でも、私達ずっと勉強してるから、多分すごい退屈だと思うよ。」

「いいよ。それに、アイちゃんの家に行くのって、これが初めてだしね。」

 そっか、そう言えば、琴音にアイの家だけ案内してなかったなあ。

「じゃあ行こっか?」

「ウン。」

 明かりを消して、扉を閉めると、魔法で扉を封印した。

「ミディアちゃん、部屋の扉って魔法で封印するの?」

「えっ、ラーヴォルンではそうだけど・・・」

 琴音は封印魔法を見て、すごい驚いていた。

「二ホンではどうやって、部屋の扉を開けないようにしてるの?」

「私達は鍵を使ってるけど。」

 へえ、二ホンには部屋ごとに鍵があるんだ。

「ラーヴォルンの家は、大体玄関にしか鍵ないけどね。

 部屋に鍵があるのって、宿屋とか銀行の金庫とかぐらいじゃないかな?」

「そうなんだあ。じゃあ、部屋に鍵かけたい時は、今みたいに魔法を使うの?」

「ウン、封印魔法の初歩で、レベル2で学ぶ魔法なんだよ。」

「ちなみに、レベル1ってどんなことやるの?」

「レベル1は魔力を使えることだけで、魔法自体は何もないよ。」

「じゃあ、魔法を使えない人は、レベル1で脱落するんじゃ・・・」

 私の知る限りでは、魔法学校でレベル1で脱落した人の話は聞いたことないけど、そうなるのかな?

「ウン・・・そうなるのかなあ。」

「でも、魔法で封印するんだったら、お母さんにも勝手に部屋に入られなくてすむし、いいね。」

 琴音はお母さんに部屋に入られたら何か困るのかな?

「私の封印魔法なんか、ラーファやおばさんにすぐに解かれちゃうよ。」

「じゃあ、なんで封印なんかするの?」

「単に、部屋に入らないでっていう意思表示だよ。」

 私がそう言うと、琴音に「なんだつまんない。」と言われてしまいました。

 よっぽど親に見せられないようなものでも隠し持っているのかな?


「今日もいい天気だね。」

 外に出るなり、琴音は大はしゃぎです。

 もう何回も来ているはずなのに、本当に琴音はラーヴォルンが好きなんだなあ。

「それにしても、ラーヴォルンって本当に雨降らないね。

 もう何日も来てるけど、ずっと晴れてるし。」

「ラーヴォルンは、夏はあまり雨降らないね。

 最近では、夜にたまに雨降ったぐらいかな。」

「ラーヴォルンって、夜に雨が降るの?」

「そういうわけじゃなくて、ここ数日たまたま夜に小雨が降っただけだよ。」

「じゃあ、今度、夜に来てみるよ。

 もうすぐ夏休みだから、昼間に寝ることもできると思うし。」

 だから、夜に来ても雨が降ってるとは限らないんだけど・・・

「でも、夜に来ても、多分私達は寝てると思うよ。」

「ウン、その時は一人で夜のラーヴォルンの街を散策するよ。

 たまには夜のラーヴォルンも散策してみたいし。」

 本当に琴音はラーヴォルンのことが好きなんだなあ。

 でも、琴音がラーヴォルンのことを気に入ってくれて、私もすごい嬉しい。


「ミディア遅かったわね・・・って何その恰好?」

 アイは私の格好に驚いていた。

 普段、私の着る服って、地味な服多いから、この格好はとびきり目立つよね。

「これ、ラーファにもらった服なんだよ。」

「ラーファ先輩から!?

 なななんて羨ましい。」

 アイ、なんかすごい悔しがっている。

「アイちゃんの服も、すごくかわいいよ。」

 その横で、琴音がなんかすごい興奮しているし、なんか勉強できる雰囲気じゃありません。

「それで、ラーファ先輩は?」

「ああ、ラーファだったら、ちょっと寄りたいところがあるから、先に行っててって言われた。」

「そうなの?

 さっき、エレーネ先輩からも同じこと言われたよ。」

 もしかしたら、ラーファとエレーネ先輩、同じ用事なのかな?

 でも、こんなこと言ったら、多分勉強にならなくなるから言わないでおこう。

「じゃあ、先に勉強初めて・・・」

「もしかして二人、同じ用事なのかな?

 ミディア、気にならない?」

 アイに言われてしまった。

「私はすごい気になる。」

 おまけに琴音もアイの話に乗っかってきたよ。

「同じ用事だとしても、あまり詮索しない方がいいよ。

 それより私達は勉強してようよ。

 ラーファやエレーネ先輩に負けたくないでしょ。」

「えーでも。」

「私も気になるよ。」

 2人そろって、駄々をこねてくる。

 なんか、すごいイラッと来る。


 結局、2人に根負けしてしまった。

 いや、アイだけだったら、絶対に負けなかったけどね。

 でも、琴音まで気になるって言い出したから、結局私が折れることなった。

 そんなわけで、私達はエレーネ先輩の家の前まで来ています。

「で、これからどうするつもり?」

 私はさっさと戻って勉強したいんだけど・・・

「ねえ、ミディアの近くに、琴音っているんでしょ?」

「私ならここにいるよ。」

 琴音がアイに向かって返事してるけど、当然アイには全く聞こえるわけもなく・・・

 はあ・・・仕方ないなあ。

「いるけど・・・」

「もう、そんな不機嫌な顔しない。」

 私って、今そんなに不機嫌な顔してるのかな?

 まあ、確かに不機嫌だけどね。

「じゃあ、ちょっと琴音に、家の中の様子覗いてきてもらってよ。

 あっ、ラーファ先輩には気づかれないようにね。」

「ええっ、私が行くの?仕方がないなあ。」

 なんて言ってるけど、琴音なんかすごい楽しそう。

 私、さっさと勉強したいのに。

「琴音、行くって・・・」

「よっしゃ。」

 なんか、琴音とアイが楽しそうで、少し腹が立ってきました。


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