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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第3章 秋暁のラーヴォルン
101/254

55.命がけの脱出

<<ミディア>>


 メッサニアは、私の目の前までやってくると、片手で私の肩を掴んで、もう片手に魔力を集中させて、暗黒の弾を作り始める。

 あれがメッサー。

 歴史の授業で何度も学習して、メッサーの特徴についてはよく知っているけど、本物のメッサーを見るのは、これが初めてだった。

 なんて禍々しい。

 あまりにも強力な魔力のため、暗黒球の周囲が歪んで見え、それが一層禍々しさを増長していた。

 私は、あまりの恐怖に、身動き一つできなかった。

 もうダメだ。

 私が諦めかけたその時だった。


 突然、私の体から光の矢が一斉に飛び出すと、私の目の前にいたメッサニアの体を一斉に貫いた。

 私を掴んでいたメッサニアは崩れ落ちると、そのまま動かなくなった。

(諦めたらダメよ、ミディア。)

 頭の中に、お母さんの声が聞こえてくる。

 もしかして、これはお母さんが助けてくれたの?

 その時、エレーネ先輩を押さえつけていたメッサニアも、吹き飛ばされるのが見えた。

 そう言えば、エレーネ先輩にも、お兄さんの守護人がいたんだった。

 守護人は最後の切り札。

 エレーネ先輩が言っていたことが、今理解できたような気がする。

(ハァハァ・・・ミディア、大丈夫?)

 お母さんは相当疲れているようだった。

「私は大丈夫。

 それより、お母さんの方は大丈夫なの?」

(少し、力を使いすぎたみたい。

 でも大丈夫、ミディアは絶対に私が助けてみせるから。)

 お母さんは力強くそう言ってくれたけど、明らかに大丈夫じゃなさそうだった。

 守護人は魂のかけらだから、使える力にも制約があったはずだし、あまり力を使いすぎると、守護人自体が消滅してしまうこともあったはず。

 せっかくお母さんと会って話ができたのに、いなくなっちゃうなんて絶対に嫌だ。

 これ以上、お母さんに負担をかけないためにも、自分の力で何とかここから脱出しないといけない。


「何とか助かったけど・・・もうダメかも。」

 いつもは強気で、私達を引っ張ってくれるエレーネ先輩が、今にも泣きそうな表情でそう呟いた。

 メッサニアに体を押さえつけられた上に、目の前でメッサーを撃たれそうになったのだから、泣きたくなる気持ちもわかる。

 でも、今はここから逃げることを考えないと・・・

 本当はすごい怖いけど、私が頑張らないと、お母さんが消えちゃうかもしれない。

 近くに落ちていた鉄パイプをもう一度手に取り、部屋の外に恐る恐る顔を出す。

 どうやら、この辺にメッサニアはいないようだ。

「みんな、今のうちに早くここから逃げよう。」

「そうだな。

 今は、この辺にメッサニアはいないようだし、逃げるチャンスだ。」

 アイのお父さんは、さっき助けた女の子を背中におぶさる。

「行きましょう、ラーファ先輩。」

 アイは、ラーファに声をかける。

 でも、ラーファはさっきから、胸を抑えたまま、部屋の隅でうずくまったままだった。

「ラーファ先輩、大丈夫ですか?」

 そんなラーファの様子が心配になったアイが、ラーファの元に近寄る。

 でも、アイがラーファの肩に触れた時だった。

 突然、ラーファは立ち上がると、アイの体を突き飛ばして、そのまま部屋を飛び出してしまった。


「ラーファ!!?」

 私とエレーネ先輩が、ラーファの後を追いかける。でも、

「私のことは・・・放っておいて。」

 さっきまでずっと沈黙を保っていたラーファが、苦しそうにそう叫んだ。

 一体、どうしちゃったの、ラーファ?

 さっきから、なんか様子が変だよ。

 それに、放っておいてって言われても、放っておけるわけないでしょ。

 だって、ラーファは、私の大事なお姉ちゃんなんだから・・・

「どうしたんだ、ラーファ?」

 エレーネ先輩も、ラーファのことをすごい心配していた。

 私とエレーネ先輩は、必死にラーファを追いかける。

 でも、ラーファは足が速く、どんどん離されていく。

「ダメ、ラーファ・・・お願いだから行かないで!!!」

 遠ざかるラーファに、思わず大声でラーファに向かって叫んでしまった。

 でも、ラーファが足を止めることはなかった。

「ミディア。」

 私達の後を、アイが追いかけてくるのが見えた。

「ラーファが・・・どこかに行っちゃう。」

「落ち着いて、ミディア。」

 アイが私を止めようとする。

 後ろには、アイのお父さんが女の子を背負って追いかけて来ていた。

 このまま、私とエレーネ先輩がラーファを追いかけたら、みんながバラバラになってしまう。

 でも、このままだと、ラーファが・・・いなくなっちゃう。

 私はどうしたら・・・


 突然、ラーファの足がピタリと止まる。

 最初は、私の声に反応して、思いとどまってくれたのかと思った。

 でも、しばらくして、そうではないことがわかった。

 ラーファの向かっていた先に、ぼんやりと人影が見えたからだ。

 その人影は、ラーファに気づいたのか、確実にこっちに迫って来ていた。

 しかも、1人じゃない。

 ここから見えるだけで5人いるのがわかった。

 そして、全員が狂気の笑みを浮かべながら、こっちに向かって迫って来ていた。


「ヤバイ、メッサニアだ!!!」

 エレーネ先輩が悲鳴に近い声を上げる。

「そこから逃げろ、ラーファ!!!」

 エレーネ先輩は、ラーファに向かって大声で叫ぶ。

 でも、さっきまでと違い、ラーファは全く動こうとしなかった。

 走り出す前と同じで、胸に手を当てて、苦しんでいた。

 どうしよう?

 このままだと、ラーファがメッサニアに捕まってしまう。

 でも、今からラーファの元に駆け寄っても、メッサニアの方が先にラーファの元に着いてしまう。

 一体、どうしたら!?

 そんなことを考えている間にも、メッサニアはラーファとの距離を確実に縮めていく。

 そして、ついに、5人のメッサニアは、ラーファの目の前にまで迫っていた。

 ダメだ、もう助けられない。

「ラーファ!!!」

 思わずラーファの名前を大声で叫ぶ。

 その私の声に、苦しそうに俯いていたラーファが顔を上げる。


「えっ!?」


 そのラーファの表情を見た瞬間、私は言葉を失った。

 メッサニアが迫っていて、絶体絶命の状況だと言うのに・・・

 ラーファはニヤリと笑っていた。

 しかも、何とも言えない不気味な笑みを浮かべていた。

 あんな不気味な笑みを浮かべるラーファを見たこと、今まで一度もない。

 ラーファの表情に、エレーネ先輩も気づいたようで、言葉を失っていた。


 そうこうしているうちに、ついに5人のメッサニアは、ラーファのところにたどり着く。

 でも、メッサニアは、ラーファをスルーすると、その向こうにいる私達に向かって走って来た。

「えっ!?」

 どうして、メッサニアがラーファを襲わなかったのかはわからない。

 でも、そのことを深く考える時間は、今の私達にはなかった。

 5人のメッサニアが、走りながら私達に向かって、暗黒の弾を作り始めるのが見えた。

 どうやら、5人同時に、私達目がけて一斉に撃つつもりみたいだ。

 どうしよう・・・このままじゃ・・・


「逃げろ、ミディア。」

 いつの間にか、脇に隠れていたエレーネ先輩が、横からメッサニアにタックルをする。

 エレーネ先輩のタックルで、きれいに横に並んで走っていたメッサニア達は、ドミノ倒しのように一斉に倒れた。

 私達を助けるためとはいえ、メッサニアにタックルするなんて、エレーネ先輩すごいよ。

「よし、うまく行った。」

 エレーネ先輩は、メッサニアが倒れたのを見て、体を起こして、素早くその場から離れようとする。

 でも、その時、倒れていたメッサニアの1人が、エレーネ先輩の足を素早く掴んだ。

「放せ!!!」

 エレーネ先輩は強引に離そうとするけど、すごい力でがっちり掴んでいて、全く振りほどくことができない。

「クソッ、放しやがれ!!!」

 エレーネ先輩は、自分の足を掴んでいるメッサニアの手を必死に蹴りあげるけど、メッサニアには全く効いていないようだった。

 それどころか、エレーネ先輩に蹴られて、まるで喜んでいるかのように不気味な笑みを浮かべ始める。

 そんなメッサニアの様子を見て、エレーネ先輩は一瞬たじろいてしまう。

 でも、その一瞬の隙に、メッサニアは素早く起き上がると、エレーネ先輩の足を掴んでいた手を振り上げ、片手でエレーネ先輩の体を壁に叩きつけた。

「ガハッ!!!」

 壁に叩きつけられたエレーネ先輩は、頭から血を流して、その場に倒れこむ。

「エレーネ先輩!!!」

 エレーネ先輩に声をかけるけど、エレーネ先輩は意識を失っているようで、全く起き上がる気配がなかった。

 それにしても、片手でエレーネ先輩を持ち上げて叩きつけるなんて、なんて力だ。

 メッサニアになったら、人間のリミッターが外れるっていう話を聞いたことはあったけど、目の前で見た光景が未だに信じられない。

 その間に、他の4体のメッサニアは、体を起こすと、私達の方に向かって迫って来た。

 まさしく、絶体絶命だった。

 お母さんも疲弊しているし、さすがに今度こそもうダメだ。

 私が絶望したその時だった。


 突然、私達の後方から、ものすごい数の光の弾が飛び込んで来て、近くにいたメッサニアを次々と倒していった。

 気がつくと、目の前のメッサニアは、全員倒れていた。

 一体、何が起こったのだろう?

 とその時だった。

「ミディアちゃん、大丈夫!?」

 後方から、すごいスピードで琴音がやってきた。

 そして、琴音の後には、ヴィルトワさんがいた。

 どうやら、私達はヴィルトワさんに間一髪で助けられたみたいだ。

「琴音。」

 私が返事をすると、琴音はホッとしたようだった。

「ゴメンね、遅くなっちゃって。」

「ウウン、琴音のおかげで助かったよ。」

「私は何にもしてないよ。

 今のだって、全部ヴィルトワさんが倒したし・・・」

 琴音はそう言って、ヴィルトワさんの方を見る。

 確かに、私達を助けてくれたのはヴィルトワさんかもしれない。

 でも、琴音がいなかったら、きっと、ヴィルトワさんは間に合わなかっただろう。

 そして、私達は、きっと無事では済まなかっただろう。

「琴音、本当にありがとう。」

 琴音にお礼を言ったら、自然と涙がこぼれてきた。

 そんな私の姿を見て、琴音の目からも涙がこぼれていた。 


 ヴィルトワさんは、倒れているエレーネ先輩に駆け寄る。

「大丈夫か、エレーネ?」

 ヴィルトワさんが声をかけると、エレーネ先輩は意識を取り戻す。

「もう・・・遅いよ・・・兄貴。」

「琴音を見つけて、すぐに2階に来ることはできたんだが・・・

 あまりにも人が多くて、お前達の気配を見つけるのに時間がかかってしまった。

 すまない。」

「いいよ・・・ありがとう・・・兄貴。」

 エレーネ先輩はそう言うと、再び意識を失ってしまう。

「エレーネ先輩!!!」

「早く、病院に連れて行かないと・・・」

 ヴィルトワさんはそう言うと、アイのお父さんの方を見る。

「すみませんが、エレーネを連れてってもらえないでしょうか?

 多分、俺は、メッサニアと戦うので手一杯なので。」

「わかった。

 でも、無理はするなよ、ヴィルトワ。」

 アイのお父さんは頷くと、意識のないエレーネ先輩を背負う。

 一方、ヴィルトワさんは、エレーネ先輩を預けると、さっきから胸を抑えて苦しんでいるラーファの元に駆け寄っていく。


「大丈夫か、ラーファ?」

 でも、ラーファは苦しそうな声をあげるだけで、全く返事をしない。

 その様子を見て、ヴィルトワさんの表情が険しくなる。

「あの、ラーファは、大丈夫なんでしょうか?」

 恐る恐るヴィルトワさんに聞いてみる。

 でも、ヴィルトワさんは何も答えてくれなかった。

 一体、ラーファはどうしてしまったんだろう?

 さっきのラーファの笑みを思い出して、背筋がゾッとなる。

 ラーファはどうしてあんな顔をしていたのだろう?

 ラーファに何が起こっているのか、さっぱりわからない。

 ここを脱出したら、ラーファを病院に連れて行こう。

 そう思い、苦しんでいるラーファに肩を貸そうと近づく。でも、


「来るな、ミディア。」

 ヴィルトワさんに強く止められる。

「えっ、どうして?」

「ついて来られるか、ラーファ?」

 ヴィルトワさんは、私の質問には答えず、ラーファに向かって話しかける。

 すると、

「だ、大丈夫・・・です。」

 ラーファの声が聞こえてきた。

「ラーファは俺が連れて行く。

 ミディアは、セオルドさんと一緒に後からついて来い。」

 ヴィルトワさんはそう言うと、ラーファと一緒に先に歩き出す。

 色々思うところはあるけれど、今はここからの脱出が最優先だ。

 ヴィルトワさんに言われた通りに、私は琴音やアイ達と一緒に、2人の後をついて行くことにした。


 それから、どうやってリーブルガルトの外まで出たのか、よく覚えていない。

 道中、何度もメッサニアに襲われて、その度にヴィルトワさんがメッサニアを倒してくれたことだけは覚えている。

 それにしても、ヴィルトワさんってすごい強いんだね。

 天才魔導師って言われてたことは知ってたけど、まさかメッサニアを倒せるほど強いとは思わなかった。

「ヴィルトワさんってあんなに強かったんだね。」

 琴音も同じことを呟いていた。

 エレーネ先輩が、ヴィルトワさんをここに連れてきてほしいと言った理由がよくわかった。


 リーブルガルトの外の光景は、凄惨なものだった。

 公園には大勢の人が倒れていて、まるで戦場のようだった。

 でも、メッサニアの姿は、ほとんど見えなかった。

「最初に見た時は、すごい数のメッサニアがいたんだけどなあ。

 もしかして、みんなリーブルガルトに入ってきたのかな?」

 琴音が周囲を見渡しながらそう言う。

「メッサニアだったら、ヤシュラム達のおかげで、もうほとんど始末されている。」

 ヴィルトワさんがそう答える。

 なんでも、メッサニア出現時に、たまたまヤシュラムさんが北街に来ていたらしく、そのおかげで初動が速かったらしい。

 ちなみに、ヴィルトワさんも、ヤシュラムさんと一緒にいたらしい。

 加えて、ヴィルトワさん曰く、もう一つラッキーなことがあったらしい。

「どうやら、みんな無事だったようだな、ヴィルトワ。」

 大きな男の人が姿を現わすと、ヴィルトワさんに向かって話しかける。

 この男の人に、私達は見覚えがあった。

「ああ、おかげで助かった、ヤシュワント。」

 そう、この日、ヤシュワントさんが、たまたまラーヴォルンに来ていたのだ。

 そして、メッサニア出現の話を聞いて、慌てて北街まで駆けつけて来てくれたのだった。

「お前達ヤヤ・コンビのおかげで、この街は救われた。」

「だから、その呼び方はやめろって言ってるだろ。」

 ヤシュワントさんがキレ気味にそう答えると、ヴィルトワさんは冗談ぽく笑みを浮かべる。

 でも、その冗談めいた空気も、周りの凄惨な光景の前に、一瞬で消滅してしまった。

「それにしても・・・一体、どうしてこんなことになった?」

 ヤシュワントさんが、変わり果てたリーブルガルト広場の光景を見つめながらそう呟く。

 でも、その質問に答えられる人は誰もいなかった。


 それから、しばらくしてから到着したリーヴァ王国軍によって、ラーヴォルンは完全に隔離された。

「まだ、街の中にメッサニアが潜んでいるかもしれん。

 徹底的に探し出せ。」

 リーヴァ王国軍によって、ラーヴォルンは街の隅々まで徹底的に調べ上げられた。

 王国軍の読み通り、潜伏していたメッサニアが何人かいたが、全員王国軍によって始末された。

「随分、早い到着ですね。」

 ヤシュワントさんは王国軍の早い到着に驚いていた。

「昨日から、この近くのミドナ基地で大規模演習を行なっていたのが、不幸中の幸いだった。

 おかげで、ヤシュラムからの一報で、すぐに駆けつけることができた。」

 王国軍を指揮していたネビル将軍という人が、ヤシュワントさんにそう話すのが聞こえた。


 確かに、ヴィルトワさんとヤシュワントさんとヤシュラムさん、そしてリーヴァ王国軍のおかげで、ラーヴォルンに現れたメッサニアは倒された。

 でも、それでも、あまりにも・・・あまりにも大きな損害だった。

 いつもは観光客で賑うリーブルガルト広場には、大勢の死体が集められて、まるで荷物のように無造作に積み上げられていた。

 その凄惨な光景に、思わず目を背けてしまう。

 でも、一度目に焼き付いてしまったその光景は、なかなか拭い去ることができなかった。

「ヤシュワントさんは、どうしてラーヴォルンにいるんですか?」

 手当てを受けていたエレーネ先輩が、ヤシュワントさんに訊ねる。

 よかった、エレーネ先輩、意識が戻ったんだ。

「実は、フリージアさんのお墓参りに来てたんだ。

 本当は、フリージアさんのお葬式に出たかったんだけど、その日はどうしても公務で抜けられなくてな。

 何とか休暇を貰って、今日、ようやくお参りに来られたのだが・・・まさかこんなことになるなんてな。」

 ヤシュワントさんも、未だに目の前の光景が信じられないようだった。

「エレーネはとりあえず大丈夫だから、ミディアは早く家に帰りなさい。

 2人とも、すごい心配してたから。」

 ヤシュワントさんは、私に気づいて、そう話しかけてくる。

「お父さんとお母さんに会ったんですか?」

「ああ、フリージアさんのお参りを済ませて、近くのお店で食事をしようとした時に、変な気配を感じて向かったら、ちょうど2人がメッサニアに襲われているところだった。」


 殴られたような衝撃が、全身に走る。

「お父さんとお母さんがメッサニアに!?」

 さっきまで苦しんでいたラーファも、驚いた表情でヤシュワントさんの方を見る。

 2人を心配するラーファは、いつものラーファの表情だった。

「大丈夫、2人とも無事だ。

 間一髪のところで、何とか俺がメッサニアを倒した。

 でも、北街にメッサニアが大量に出現したと聞いて、2人ともミディアとラーファのことをすごい心配していた。

 早く連絡を入れてあげなさい。」

「ハイ。」

 早速、私は覚えたてのルティアで、お父さんとお母さんに連絡を入れる。

(お父さん、お母さん・・・)

(ミディア、よかった、無事だったのね。

 ラーファも無事かい?)

 お母さんがそう聞いてくる。

 ラーファも無事だと伝えると、お母さんはホッとしたのか、そのまま泣いてしまった。

(今すぐ家に帰って来なさい。)

 代わりにお父さんが、私に話しかけて来た。

(わかった、今からすぐに帰るね。)

 私がそう答えると、お父さんは安心したように頷いた。


「お父さんとお母さんが無事でよかったね、ミディアちゃん。」

 私に話しかけてきた琴音の体は、既に光っていた。

 どうやら、今度こそ帰る時間のようだ。

「琴音・・・」

「覆面に無理して眠らせてもらってたけど、さすがに限界みたいだよ。」

 琴音はそう言って苦笑する。

「今日は本当にありがとう、琴音。

 琴音がいなかったら・・・私達・・・」

「ウウン、みんなが無事で本当によかったよ。」

 琴音はそう言って、涙を拭う。

 そして、私の顔を真っ直ぐに見つめて、

「じゃあ、ミディアちゃん、また明日ね。」

 私に向かって、力強くそう言って来た。

 琴音の気持ちがすごい伝わって来た。

 だから、

「ウン、また明日ね、琴音。」

 私も笑顔で力強く答える。

 私の返事に、琴音はニッコリ笑うと、光の中に姿を消して行った。

 さっき、無理して眠らせてもらったとか言ってたけど、琴音、私達のために無茶なことをしていないといいんだけど・・・

 いくら私達が無事でも、琴音が無事じゃなかったらダメなんだからね。

 でも、琴音、本当にありがとう。

 明日、また、ラーヴォルンに来てね。

 こんなことがあった後だから、みんなで楽しく遊ぶってわけにはいかないと思うけど・・・

 でも、私もみんなも、琴音に会いたいから、絶対にラーヴォルンに来てね。


(用語集)


(1)メッサーとメッサニア

メッサーとは大量のマーシャントを圧縮した暗黒の魔法弾を魂に打ち付ける魔法で、禁呪指定されている魔法

死亡率が6割以上もあるが、生き残ると至高の快楽が得られると言われている

メッサーと呼ばれる魔法は多く存在し、中でもエヴィラルと呼ばれる魔法は、メッサーの中でも最高の快楽を得られる魔法として有名である

メッサーの至高の快楽に取りつかれた人達のことをメッサニアと呼んでいる

メッサニアになると、自分が撃たれたメッサーを自動的に習得する

メッサーは、他人から撃ってもらわないと快楽を得られないため、まず人間にメッサーを撃ち、メッサニアにしようとする。

一時期、メッサニアの存在はアトゥアを恐怖に陥れたが、アトゥア中の国々が団結して撲滅運動を行なってきたため、メッサーとメッサニアの恐怖は以前よりは小さくなった。

しかし、今でも相当数のメッサーとメッサニアが潜んでいると言われている。


(2)リーブルガルト

ラーヴォルン北街の中央にあるイベント施設

様々なイベントで使用されることが多く、最近ではハ―メルトンのコンサートでも使用された。

アトゥア最大のイデアトゥア施設を備えているため、イデアに関するイベントや学術研究等でもよく使用される。


(3)ルティア

意識間での意思伝達を行なう魔法。

意識は魂が体に憑依した時にできるものなので、魂から直接使うことも可能である。

本来はテレパシーだけの魔法だけだったが、最近では拡張されて仮想の魔法世界に意識を転送する魔法としても使われる。

魔法世界は個々の街や国単位で持っており、ラーヴォルンの場合はラヴォルティアという魔法世界が存在する。


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