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黄昏のラーヴォルン  作者: レトリックスター
第2章 晩夏のラーヴォルン
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6.新しい友達ができた

<<琴音>>

 気がつくと、私はいつものルフィルの遺跡にいた。

 やったあ、今日もまた、ラーヴォルンに来ることができた。

 さっそく、昨日教えてもらったミディアちゃんの宿屋ルーイエ・アスクに行こう。

「それにしても、いい天気だなあ。」

 きれいな街、きれいな海、そして快晴の青空

 何度見ても飽きない景色だよ。

 そう言えば、これでラーヴォルンに来るの3回目だけど、3日とも晴天だなあ。

 たまには、雨でしっとり濡れたラーヴォルンも見てみたい。

 それはそれで、きっと素晴らしい景色になりそうだ。


 ミディアちゃんの家はしっかり覚えていたので、すぐにたどり着くことができた。

 ルーイエ・アスクは、今日も大勢の観光客で賑わっていた。

 多分、誰にも私の姿が見えていないとは思うけど、それでもなじみのない家の中にひっそり入っていくのは、少し勇気がいった。

 ミディアちゃんの部屋の前に着いたけど、入っちゃっていいんだろうか?

 ノックできないので、中に入るか、部屋の前で待つか、どちらかしかないんだけど。

 でも、昨日、ミディアちゃん、部屋の中で待っていてって言ってたし、ミディアちゃんの部屋に入っちゃおう。

 スーッと、ミディアちゃんの部屋に入っていく。

 どこにでも入れるのはいいんだけど、やっぱり誰にも認識されないのは辛いなあ。

 部屋にはミディアちゃんはいなかった。

 どうやら、まだ学校から帰ってきていないらしい。


 とりあえず、ミディアちゃんのベッドの上に横になった。

 まあ、正確には浮いてるんだけどね。

「あーここでミディアちゃんが毎日寝起きしてるんだ。」

 そう思っただけで、なんかすごいキュンキュンしてきた。

「それはそうと・・・」

 このまま、ミディアちゃんの部屋でずっと待っているのもいいけど、せっかくだからラーヴォルンを色々見てみたい。

 昨日聞いた話だと、ラーヴォルンは海を挟んで2つに分かれているんだっけ。

 私達がいるこちら側は、確か南街だよね。

 せっかくだから、北街に行ってみようかな?

 私の体浮いてるから、簡単に海渡れそうだし。

 でも、北街に行っている間に、ミディアちゃんが帰ってきたらどうしよう?

 なんて考えていたら、部屋に近づいてくる足音が聞こえてきた。

 どうやら帰ってきちゃったみたい。

 北街はまた今度にしよう。

 それに、どうせなら、ミディアちゃん達と一緒に行きたいしね。


「ただいま。」

 扉が開くと、部屋にミディアちゃんが入ってきた。

 でも、入ってきたのはミディアちゃんだけじゃなかった。

 ミディアちゃんの後に3人の女の子が部屋に入ってきた。

「琴音、待った?」

 ミディアちゃんは部屋に入ってくるなり、真っ先に私に声をかけてくれた。

 みんな同じ服を着ているけど、あれがラーヴォルンの学校の制服なのかな?

 日本と違って、白色の制服なんだ。

 すごいかわいい服なあ。

 でも、汚れが目立ちそうだけど・・・

 そして、ミディアちゃんの後ろにはラーファちゃんとエレーネちゃんと・・・見知らぬ女の子が一人。

「ミディアちゃん、そっちの女の子は?」

 私がそう尋ねると、ミディアちゃんはその子に手招きする。

「なあに、ミディア?」

 その女の子は、首を傾げながらミディアちゃんの方にやってくる。

 ミディアちゃんが誰と話しているのかわからないって感じだ。

 てことは、あの子も私の姿が見えないってことかあ。

 ちょっとがっかり。

 ミディアちゃんが、その子に私の姿が見えるか聞いてるけど、やっぱり私の姿が見えないらしい。

 ミディアちゃんもガッカリしているみたい。

 でも、気を取り直して紹介してくれた。

「琴音、この子の名前は、アイーシャ・ミリエル・ラーヴォルン。

 私の同級生だよ。

 みんなは、彼女のことをアイって呼んでるよ。」

 アイちゃんかあ。

 なんか、見た目すごい活発な女の子っぽい。

 でも、この子もかわいいなあ。

 本当、なんでこんなにかわいい子ばかり、ラーヴォルンにいるわけ?

 ちょっとおかしくない?

「ミディアちゃん、アイちゃんはやっぱり私の姿は見えない・・・の?」

「・・・ウン・・・」

 さっきの会話で察しはついていたけど、それでも改めて言われて、すごいガッカリした。

 アイちゃんは、私の姿が見えないから、すごい困った顔になってるし。

「ねえ、ミディア、本当にここに琴音って子がいるの?」

「ウン、アイの目の前にいるよ。」

「ラーファ先輩にも、琴音って子が見えますか?」

 今度はラーファちゃんに確認しています。

 やっぱり信じられないようです。

 まあ、無理もないけどね。

「ウ、ウン、アイの目の前に琴音がいるわ。」

 相変わらず、ラーファちゃんは私のことを怖がってるけど、でも昨日よりは少し耐性ついてるっぽい。

 昨日は、私の姿を見ただけで逃げていっちゃったからね。


「あのね、琴音。」

 ミディアちゃんは私にそう言った後で、ラーファちゃんの方を見た。

 そのラーファちゃんは何かモジモジしながら、私の方を見ているけど、一体何だろう?

 何が始まるんだろう?

 まさか、私が怖いから、もう二度と来ないでほしいって言うんじゃあ・・・

「ラーファちゃん。」

「ハ、ハイ!!」

 私が声をかけたら、ラーファちゃんの体が硬直した。

 やっぱり私のことが怖いんだ。

 確かに、私は幽霊みたいな存在だけど、でも、そんなに怖がられると、本当に傷つくよ。

「私、ラーファちゃんとも仲良くなりたいよ。」

 気がついたら、私、また泣いてしまった。

 普段は全然泣かないのに、こっちに来るとどうしてこんなに泣いちゃうんだろう?

 私が泣き出したのを見て、ラーファちゃんは驚いていた。

「こ、琴音・・・」

 ラーファちゃんの方から、初めて私に声をかけてくれた。

「な、なあに、ラーファちゃん?」

 私が返事すると、またラーファちゃんはモジモジし始めます。

 でも、いつもと違って、怖がっている感じではないみたい。

 さっき私が泣いたのを見て、少し驚いてたし。

 しばらくすると、私に向かってなんと頭を下げてきた。

「き、昨日は、ゴ、ゴメンなさい。

 琴音のこと、ずっと怖がってて・・・その、ゴメンなさい。」

 これは予想外だった。

 まさか、ラーファちゃんが私に謝ってくれるなんて思わなかった。

 もう嬉しくて嬉しくて・・・本当に嬉しくて。

 気がついたら、ラーファちゃんに向かって抱きついていた。

「ラーファちゃん、ありがとう。」

「ひいいいいいいいいいいい!!!」

 私がいきなり抱きついたから、ラーファちゃんがすごい悲鳴を上げていた。

「もう琴音、いきなりスキンシップ激しすぎるよ。

 ラーファは、まだ慣れてないんだから。」

 ミディアちゃんに怒られた。

「ゴメンなさい。」

 ラーファちゃんは部屋の隅っこでガクガク震えていた。

 ちょっと傷ついた。

「少しずつ、少しずつ友達になって行こうよ。

 そうすれば、きっと、ラーファだって、そのうち慣れると思うから。」

 落ち込んでいる私にミディアちゃんがそう言って慰めてくれた。

 ウン、そうだね。

 ゆっくり、ゆっくり友達になっていけばいいんだよね。


「こ、琴音・・・」

 隅っこで震えていたラーファちゃんが、こっちに手を差し出してきた。

 どうやら、握手したいらしい。

 手が思い切り震えてるけど・・・

 ラーファちゃんは、私のことが怖いけど、でも頑張って私と友達になってくれようとしているんだ。

 じゃあ、私はそれに笑顔で応えないとね。

「よろしくね、ラーファちゃん。」

 私はラーファちゃんの手に、自分の手を重ねた。

 もちろん、ラーファちゃんに触れることはできないけど、でも確かに感じたよ。

 ラーファちゃんの手のぬくもりを。

 私がニコッと微笑んだら、ラーファちゃんも笑顔を見せてくれた。

 笑顔のラーファちゃんがあまりにもかわいくて、飛びつきたい衝動にかられるけど、ここは自制しないとね。

 また、ラーファちゃんに怖がられちゃう。

 でも、これで私とラーファちゃんは、友達として一歩前進できたってことだよね。

 ラーヴォルンに来ると、いつも素敵なことが待っているけど、早速今日も素敵なことがあったよ。


<<ミディア>>

 よかった。

 ラーファが琴音と仲良くなってくれて。

 ラーファはまだ少し怖がってるけど、時間をかければきっと怖さもなくなっていくと思うよ。

「ねえ、さっきから何が起こってるの?」

 アイはさっきから首を傾げていました。

 無理もないなあ。

「私達にもちゃんと説明しなさい。」

 エレーネ先輩にも怒られた。

 2人にはやっぱり琴音の姿が見えないんだね。

 見えないのは残念だけど、それは私にも琴音にもどうすることもできないし、私が仲介役になるしかありません。

「あのね・・・」

 私は2人に、これまでのことを説明しました。


「へえ、じゃあラーファは琴音と仲良くなれたんだね。

 よかったなミディア。」

「ハイ、エレーネ先輩。」

 エレーネ先輩はとても喜んでくれた。でも・・・

「本当に琴音なんているの?

 ミディアもラーファ先輩も、私達をからかってるだけじゃないんですか?」

 アイは信じてくれない。

「お前、普段はすごい妄想力見せるのに、こういう時は普通なんだな。」

 エレーネ先輩がアイにそう言います。

 確かに、普段の行ないをみれば、どちらかと言えばエレーネ先輩よりアイの方が信じてくれそうな気がするんだけど。

 でも、アイはやっぱり否定的だ。

「エレーネ先輩はどうしてそんなにあっさりと信用できるんですか?」

 アイは今度はエレーネ先輩に突っかかっていった。

 すると、エレーネ先輩はあっけらかんと答えた。

「だって、そっちの方が面白いじゃない。」


 前言撤回。

 そう言えば、エレーネ先輩はそういう人でした。

 エレーネ先輩は幽霊の存在も信じてるし、宇宙人の存在も信じています。

 アトゥアには太古に今以上の高度な文明があったなんて話も信じています。

 その理由はただ一つ。

「だって、そっちの方が面白いじゃない。」

 エレーネ先輩は、面白いかどうかで判断する人でした。

 イデア撮影に出かける時も、

「もしかしたら、撮影中にいろんなものが映り込まないかなあ。」

なんて言ってたし、お兄さんのイデアを確認で見る時も、そういう視点で見ているらしい。

「エレーネ先輩、面白そうだからって簡単に信じられるんですか?」

「だって、私は、ミディアやラーファが嘘をついているとは思えないし。」

 エレーネ先輩がそう言うと、アイは何も言えなくなってしまいました。

 まあ、アイも私達が嘘つきとは思っていないでしょう。

 私はともかく、ラーファのことはね。

「それに、私はね、自分の目で見えることが世の中の全てだなんて、思いたくないんだよ。

 そんな世界、つまんないじゃない。」

 エレーネ先輩がそう言うと、琴音は嬉しかったのか、エレーネ先輩に思い切り抱きつきました。

 もっとも、エレーネ先輩には見えないので、全く無反応ですが・・・


 でも、エレーネ先輩の言葉は、私の心を動かしてくれました。

 確かに、琴音は、私達には理解できない存在だし、私とラーファにしか見えない理由もわからない。

 でも、わからなくても、こうして友達になれるんだ。

 さすが、エレーネ先輩です。

「まあ、エレーネ先輩がそう言うなら・・・

 それにミディアとラーファ先輩が嘘をつくわけないし・・・

 私も琴音のことを信じます。」

 やったあ、アイも琴音のことを信じてくれたよ。

「それじゃあ、琴音がどんな姿してるのか、イデアに念写してよ。」

 アイがそう言うと、エレーネ先輩もそれはいいアイデアだと言いました。

「だって、これから友達になるんだから、せめて友達の顔ぐらい知っておきたいし。」

 エレーネ先輩はそう言うと、私にイデアを手渡しました。

 でも、私は、まだ念写魔法を使えません。

 エレーネ先輩もそのことに気づいたのか、私からイデアを取り上げるとラーファに渡しました。

「ラーファ、琴音の姿をイデアに念写してよ。」

「わ、私が!?」

 ラーファはそう言うと、恐る恐る琴音の方を見ます。

 やっぱりまだ琴音のことが少し怖いようです。

 そんな状態で、本当に念写魔法なんて使えるんでしょうか?

「ねえねえ、イデアに念写なんてできるの?」

 琴音が私に聞いてきました。

「元々、イデアは魔法媒体だからね。

 風景とかは機械の方が正しく撮影できるから、今ではイデアルーンを使ってるんだけど、昔は風景も念写でやってたんだよ。」

「へえ、そうなんだあ。私はてっきりBlu-rayみたいなものと思ってたよ。

 魔法媒体なんてあるんだあ。」

 私の説明を聞いて、琴音はそう言いました。

 ブルーレイ?

 琴音が何を言ってるのかわからないけど、琴音の反応を見る限りでは、本当に魔法にない世界から来たんだなあ。

 でも、魔法のない世界って、どんな世界なんだろう?

 私には全然想像できません。

「じゃあ、ラーファちゃんが私の姿を念写するんだね。」

 琴音はそう言うと、なにやら変なポーズを取り出した。

「ラーファちゃん、かわいく念写してね。」

 そして、ラーファにそう頼みます。

 いや、ここはありのままの姿を映さないとダメだよ。

 念写は人間が見たものを、魔法力を使ってイデアに映し出します。

 だから、かなりの集中力が必要になります。

 少しでも雑念が入ると、見た物とは全く違う映像になってしまいます。

 風景の撮影が機械の方が向いているのはそういう理由です。


「今のラーファには念写は無理だよ。」

 私がそう言うと、エレーネ先輩も頷いてくれました。

「ミディアが念写できればいいんだけど、さすがに無理か。

 でも、いつか私達にも琴音の姿を見せてよ。」

 エレーネ先輩はそういうと、とりあえず念写は諦めてくれました。

 でも、私がもっと魔法を使えさえすれば・・・

 今すぐにでも、琴音を念写して、エレーネ先輩やアイに見せることができたのに。

 改めて、自分の力のなさに、がっかりしてしまいました。


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