第一話ドM、異世界に降り立つ
拙い作者の腕ですがよろしくおねがいします。後プロローグなので少し短いです。
気が着くと石畳の一室にとじこめられて俺はいた。
「目が覚めたのですね」
その声を聞いてそちらを振り向くと銀色の髪をした美女というのか美少女というのか解りづらい綺麗な人がいた。
そうかそういう事か。そう考えると彼女が微笑む。
「ええ、そうですあなたは――」
「貴方が俺を罵ってくれる人か?」「え?」
拷問用途らしい部屋に器具が無いのならやはり人の手を下す、という事だろう。
「いや何でですか」「そうなのか、勿体ない…」
彼女は俺の言葉を追及しようか逡巡したがコホンと咳払いをして俺が止めた言葉を続けた。
「貴方は死んでしまったのです、覚えていますか」
そう言えば思い出した。
「日課のランニングをしてて」「そうそう」
「日課として自動車に跳ねられて」「そうそ…!」
「跳ねられる落下位置を間違ってトラックに引かれたんだった」
「待って!最初と最後はまだしも途中何か変ですよ!」
「そこはともかく俺は地獄に行くんだよな、逝かないだろうか、いや無い」
彼女は自分の頭に手を当てつつ答える。
「いいえ、貴方には天国でも地獄でもなく異世界に行ってもらいます」
「異世界…」
「そこはとても危険な場所なんですよね」
と俺は尋ねる。
「魔物などが生息している世界です、勿論着の身着のままだけで行かせるわけではありません。貴方がた転生者には加護としてチートスキルを与えます、何が良いでしょうか?」
あまり考えることなくすぐに決めた。
「じゃあ挑発で」「…はい?」
「挑発で」「あ、あの究極魔法とか業炎の焔とか竜人化とかでもいいんですよ?」
「挑発で」
「…貴方はチートの意味を解ってますか、わざわざ敵をおびき寄せるためのスキルを最初に選ぶべきですか?」
「確かにそうですね…」「でしょう!でしたら」
「歓迎会もついかで」
「……」
彼女は黙りこくっていた。歓迎会とは有り体にいってしまえば挑発の上位スキルだったのだ。
「もういいですよ、好きにしてください」
彼女は拗ねたような顔で手を振りかざすと石でとしこめられた空間から空に浮いているような風景に変わり半透明な階段ができた。
「ここから先には貴方に様々な出逢い、別れなどがあるでしょう。そして暫くはここに戻ってこられませんがこの梟のストラップを付けていればいつでも話すことができますよ」
そう言って彼女はそれを渡した。
「じゃあ行ってきます貴女の名前は」
「女神と呼んでください」
そして階段を確認し俺は約百メートルから
落ちた。
勿論下には地面があるわけかで
「グフッ」当然俺は地面に頭から落っこちた。
たちまちストラップが喚き立てる。
「咄嗟に死なない程度にはしましたが何やってるんですか!」
しかし彼には別の感動が心を揺さぶっていた。
そうだ。この痛みだ。俺は生きているのだ。
彼は思わずニヤリと笑う。
そうして気絶特有の徐々に視界が暗転していくのを喜びつつ感じた。
こうして一人のドMが異世界へと降り立った。
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