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紫光の魔導書  作者: しぇりー
――序章――
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第四話


 紆余曲折あったが、なんとかギルドカードは発行することが出来た。ただし、カードの色は白ではなく赤。

 本来であればランクアップの際に、カードは下から白、青、赤、紫、銀、金、黒と変わる。カード全体がその色というわけではなく、縁に色が付く仕様となっている。

 基本的にギルドへ登録する場合、若い頃からの登録が多い為、魔力の量や質は低いことが常識だ。

 とはいえ、カードが粉々になるなんてことはありえないらしく、特別措置として再発行。魔力にカードが耐えられないという理由でDランク相当の赤いカードが発行となった。何でもギルドカードは鉱石を使用しているらしく、ランクが上がる毎に希少価値の高い鉱石が使われる。


「しかし君は……なんというか色々と規格外みたいだな」


 クレアは目の前に圧倒的存在感を放つ、それはもう規格外の肉を慎ましく口へと運びながら呟いた。


「そうか?」


 ヴァンも肉を口いっぱいに運びながら答える。


「そもそもカードが壊れるのも常識はずれだが、クエスト達成以外でDランクまで上がると言うのはこの王都で初だと思うぞ?」

「それはなんというか、申し訳ない……。食事まで奢って貰っちゃって……」

「いや、そんなことは気にするな。これでも楽しませて貰っている。そのお礼さ」


 クレアはニコニコしているが、ヴァンは頭を下げた。

 冷静に考えてみれば、この世界での通貨は持ち合わせていない。食事はもちろん宿にすら泊まれない有様である。そこに救いの女神が現れたのだ、感謝せずにはいられない。


「そうだ! して貰ってばかりじゃ申し訳ないし、もし良ければ一緒にクエスト受けないか? これでも前の世界では最強で通ってたんだ、足手纏いにはならないと思う」

「む、そうだな。そうしよう。この世界の魔物にも慣れなきゃならないしな……」

「今回は俺、報酬いらないからさ!」

「それはダメだ、今後の生活が困るだろう」


 痛い所を指摘されてしまい、反論できない。本音を言えば、誰も知り合いのいない世界で、世話を焼いてくれるクレアには心から感謝していた。出来ることであればなんでもしたいと思う。


「その前に、まずは少しでもこの世界について把握して貰おうかな」

「おう、ご教授お願い致します」


 ヴァンがこれでもか、というくらいに頭を下げる。クレアは苦笑いだ。


「さて、まずは今いる場所について、かな。此処はさっきも紹介したが世界最大の大陸ハルビオンサにある、王都フレーヴェル。街としての規模は最大級だと思う。大陸自体が大きいだけあって魔物や魔人も数が多い」


 そういえば、と。最初はギルドにばかり目が向かっていたが、街の活気は相当なものだったなとヴァンは思い返す。フレーヴェルに到着するまでの道中もそこまで獣道ではなく、申し訳程度に舗装されていた、気がする。


「やっぱり聞いたことないな……。前の世界でも魔物や魔人は多数いたけど」


 一切記憶にない森に街。今いる王都もだがギルド。ここまでくれば自分がいた世界でないという事実は揺ぎないだろう。


「ああ、そういえば忘れていた。出来るだけ異世界から来た、なんてのは言わない方が良いと私は思う、奇異の目を向けられるだろうしな」


 周りを見渡しながらクレアは小声で告げた。

 言っていることは至極まともだ。唐突に異世界から来ました、なんて信じる人はいないだろうし、わざわざ言う必要もない。


「よし、次に魔法だな。存在するのは火、水、風、土、雷、基本属性五つに加えて光、闇、無属性の合わせて八つ」

「これも今までと変わらないな」


 うんうん、と腕を組みながら相槌をヴァンが打つ。


「続いて魔法のランクだ。下から下級、中級、上級、最上級、禁忌級、神級に分かれている」

「んー、神級ってのは聞いたことがないな……」

「すまないが私には扱えないな」

「それは大丈夫、俺魔法使えないし」


 クレアの表情が豊かだ。ギルドカードに魔力を通せたということは、体内に魔力が間違いなく存在する。森で脚力強化の為に施した魔力の質も郡を抜いて高い。なのに、だ。『魔法が使えない』のは何故なのか。


「隠してる訳じゃないけど、魔力を魔法になんでか変換出来ないんだよね。自分に付与は出来るけど」


 笑顔でヴァンは言う。ヴァンが居た世界でも、この世界でも人々によって魔法は必要不可欠なモノである。食事に使う火も魔法。服を洗う時も魔法、夜になれば灯りが必要、これも魔法。

 世界は魔法で回っているといっても過言ではない程に大事なモノ。


 現代では魔法も便利となり、店で販売している物に魔力を通すことができるのであれば問題ないが、旅をするとなれば荷物になる。かなりの死活問題だ。


「ただ、俺には『魔導書(グリモア)』があるから問題ない」

「む、それは逆に初めて聞いたな……」

「例えばこんなの。――『開け(ルーム)』」


 右手の人差し指で水平に空を切るような動作をした。自身に宿る魔導書(グリモア)を発現する。

 すると、音もなく空中に縦三十センチ、横五センチ程の真っ黒な『切れ目』が現れた。


「な、なんだこれは……」

「勝手にルームって名付けてるんだけど、この切れ目には何でも入るように創造してる。俺の魔導書は簡単に言うと固有魔法(ユニークスキル)みたいなモンかな」

「固有魔法……」

「因みに創造が出来さえすれば何でも具現化出来る」


 ヴァンがもう一度空を切ると、切れ目は音もなく消えた。

 クレアは開いた口が塞がらない様子である。それもそうだ、固有魔法(ユニークスキル)自体は少ないが持ち合わせている者もいる。しかし、ヴァンが持つ魔導書は『何でもできる』のだ。規格外にも程がある。


 開いた口が塞がるまで、実に五分は必要であった。

 元の世界で発現するには『代償』が必要だったことは伏せておく。



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