Ⅰ-3
長文の上、台詞がありません…
読みづらくてすみません。
ヴィンセント様がヴィクトヘルム様に薬を渡してから半年たったある満月の日の事です。
ぼくが魔女連合に評議会用の薬を届けて建物を出ると外はもう暗くなっていました。
まっすぐに伸びた石畳の道の先には美しく輝く月がのぼっています。
そういえば、人狼って満月の日に凶暴化するんでしたよね。
ヴィクトヘルム様の配下の人どうなったんだろう。
辺りを見回すと、道を歩いているのはぼくだけでした。
珍しいですね。金曜日のこの時間に誰もいないなんて。この町のメインストリートからもそう離れていないというのに。
何かあったんでしょうか。
凶暴化した人狼が現れた、なんてね。
あ~考えるのやめよう。なんか怖くなってきた。
ぼくがヴィンセント様の屋敷のある丘への小道を歩いているとグルルという唸り声のような音が聞こえました。
ふふ。きっと聞き間違いですよね。
さっきあんなこと考えていたから、風の音でも聞き間違えたんですよね。
そうしているうちにまた唸り声(?)が聞こえました。
今度は前のものよりもずっと近いような気がします。それに、荒い息遣いまで。
まさか、本当に人狼だったりしませんか?
ぼくがおそるおそる振り返るとそこには果たして人狼がいました。
それもぼくみたいに人型に耳と尻尾が出でいるようなものではなく、一目で人狼とわかるような姿です。
つりあがった目は赤く、暗灰色の毛が服の残骸と思しき血痕の付いた布から見えていました。
それに、手首には引きちぎられたような鎖が巻き付いています。
もしかして、この人狼はヴィクトヘルム様の配下さんなのでしょうか。
ヴィクトヘルム様に連絡しようにもぼくは連絡魔法の類は使えませんし、屋敷まで行くのは遠すぎます。
戦うにも、ぼくが持っているのは小ぶりなナイフ一本ですからね…。
一応構えてはみましたが、すぐに叩き落とされてしまいました。
人狼の脇をすり抜けて逃げようともしましたが、飛び出していた木の根に躓いて転び右足を挫いてしまいました。
人型のまま逃げるのはきついですね。
助かるには猫の姿に戻るか、あるいは…。
でももう無理ですね。
人狼の鋭い爪がぼくの喉元まで迫っていますから。
そういえば、初めてヴィンセント様に会った時も狼に襲われて危うく殺されるところでした。
多分二度目の奇跡は起きないでしょう。
はぁ…。
ぼくの猫生は結局狼によって閉じられるのですね。
まるで陳腐な小説みたいだ。
ああ。
もう少しだけ長くヴィンセント様にお仕えしたかったなぁ。
読んでくださってありがとうございます。
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次で最後ですよ。