また会える日まで・・・
別れは突然やってきた・・・
3月20日、私は中学校の卒業式を迎えた。
3年間通った思い出のたくさんつまったこの学校から今、旅だつのだ。
朝教室に入ると仲良しのみつきがいた。
「おはよう!」
「いよいよ卒業じゃん。」
「なんかうちらが卒業なんて笑っちゃうね〜。」
「だね〜。」
「みつき、なんか元気なくない?」
「そんなことないし〜!あ、先生来た!」
私は、みつきが無理に笑っているように見えた。
先生の話が終わって体育館に移動。いつものようにみんなで騒ぎながら階段を降りていると、やっぱりみつきが無理しているように見えた。
「さっきからどうしたの?」
私は思わずたずねた。
「だから、いつもと一緒だっていってるじゃん!杏のほうがおかしいし!」
「ごめん。」
やっぱり私の思い過ごしだったのかな?心にひっかかったまま、いつのまにか卒業式が始まっていた。式が終わりに近づいてくるにつれて、まわりの人たちが涙を流している。もちろん私も泣いてしまっていた。ふと
隣にいるみつきを見ると、まっすぐに前を見つめて、なにか物思いにふけっているように見えた。
式が終わって、みんなで写真を撮ったり、メールアドレスを交換したりして、あっという間に時間が過ぎてしまっていた。
帰り道、みつきと二人であるいていると、おもむろにみつきが話しかけてきた。
「ねぇ、杏?」
「何?」
「あのね・・・」
「だから何よ?」
「なんでもない!」
いつものみつきの笑顔だった。
それから後は、いつものように話をした。将来のこと、彼氏のこと・・どれもみつきにしか話せないことばかり。
別れ道、手をふって歩き出すと、急にみつきが
「杏!」と呼び止めてきた。
「どんなときでもあたしと杏は友達だよね?」
「当たり前じゃん!何言ってんの?」
「いや、聞いときたかっただけ。」
「それはそうと明日みつきの家に行くからね。CD返してなかったし。」
一瞬間があいた。
「うん、分かった。待ってるね!」
みつきの表情が暗い。
どうしたんだろうと心残りだったけど、気のせいだと思ってそのまま家に帰った。
3月21日、今からみつきの家に行こうとみつきに借りっぱなしだったCDを持って、自転車で坂を下っていく。
ちょっと古びたみつきのアパートについて、チャイムを押した・・・
「ピンポーン」
「・・・・」
「ピンポーン」
「・・・・」
「いないのかな?」
そんなはずはない。
昨日、みつきの家に行くって言ったはずだ。
でも、何回押しても出てこない。
すると、となりの家の人が出てきた。
「みつきちゃんのお友達?」
「はい!みつき家にいないみたいなんですけど・・」
「みつきちゃんなら昨日の夜ボストンかかえてでかけてたわよ?」
「そうですか・・」
なにかがおかしい。
モヤモヤした気持ちを抱えながら家に帰ると
一通の手紙がポストに入っている。
「杏へ」
みつきの字だ。
自分の部屋に戻って
何かいてるんだろう?
と封筒をあけた。
「急に手紙書いてゴメン。
杏のことだから、何よ!?って思ってるでしょ!?
昨日、言わなきゃいけないことがあったのに
なかなか言えなくて・・・
杏とは小さいときからいつも一緒だったね。
いつまでも一緒にいれる・・・そう思ってた。
でもね・・・あたしね・・・長く生きられないの。
実はね、この前病院で検査したときひっかかちゃってさ!
病気の名前は、ひくだろうから言いません。
というより、杏には怖くていえないんだ。
だってきっと杏悲しむから・・・
杏の泣くとこ見たくないから・・・
苦しむのはあたしだけでいいと思って・・
杏は、あたしにとって大切な大切な友達だから・・・
大切な友達だから、言えないの。あたし、これから病気治しにいきます!
治して、元気になって、杏に笑顔で会えるように・・・
だから、それまで待ってて下さい。
あたしなりに考えて書いたんだからね!
笑わないでね。
じゃあ、行ってきます! みつき」
涙がでてきた・・・
ずっと一緒にいたのに、気づかなかった。
みつきはずっとずっと病気とたたかってたんだね。
封筒の中には、もう一枚ある写真が入っていた。
キレイな青い空。
そして笑顔のあたしとみつきが写っている。裏には、
「いつかこの場所で」
と書かれていた。
そうだ!ヘコんでちゃダメだ。
いつか会える。
いつか元気になった
みつきと会える。
みつきに会ったときに
恥ずかしくないように。
笑顔で
「おかえり!」って
言えるように。
また一回り成長した姿で、青い空の下今日も
あたしは歩いていく・・・