sacrifice 2
この先…いや、言わなくてもいいか。
これからも。
ラグ「…」
シルファ「お願い…死なせて」
泣きながら、そう訴える少女。だがその目からは、強い意思が感じ取れる。
ラグ「…わかりました」
シルファの手を押さえていた力を緩め、手放した。
シルファ「今更なんだけどさ…。…この短剣で私のを…。自分じゃ…」
手渡された一つの銀の短剣。
シルファ「私が死んだら、すぐに心臓をお願いね。しばらくしたら起きると思うから」
その短剣を握り締め、震える。
シルファ「本当なら、それであんた達を殺す予定だったのに。まさか私がやられるなんてね」
ニコッとはにかむ少女。
ラグ「シルファ…」
握り締めた短剣を少女の喉に突きつける。相手の後ろは壁。
シルファ「さよなら。ううん、またね。それと…ありがと」
エリー「…ん…あれ…わたし…」
ラグ「エリー…」
エリー「私、声出せるようになったよ!」
起きるのがメンドクサイのか、起き上がれないのか、寝転びながらそう言う。
ラグ「…そうですね」
喜ぶ場面なのに、全く喜べないラグ。
エリー「どうしたのラグ?」
その返答に、体を起こしてラグを見た。
ラグ「…」
顔や服を赤色で染めているラグ。その姿を見て、驚かない人がいるだろうか?
驚いたエリーは二、三メートル後退る。
手に液体がつく感覚があった。恐る恐る手を見ると、同じ赤い色がついていた。
後ろを振り向くとそこには、喉に銀色の物が突き刺さり、体に穴の開いた吸血鬼の姿があった。
辺りには夥しい量の血。
けれども、その吸血鬼の顔は安らかに眠っているようだった。
エリー「ラグ…」
吸血鬼への視線をずらさずに、ラグに問いかけた。
静けさが二人を包み込み、全ての声が消えた。
sacrificeの意味は犠牲。サクリファイス…。
遊戯王でそんなような名前のカードがあった気がする。