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二人の男  作者: 明家叶依
8/12

書店

 ふと思ったのだが、なぜ、人類は漫画というものを作ろうと思ったのか。絵と文章の融合体をなぜ考えついたのだろう。しかも、それは神様をも凌駕する程の偶然に等しい。絵は動かない。しかし、時系列順に並べ、文章が付くだけであたかもそのキャラクターが現世に実在しているのかと錯覚するほどのクオリティ。そんな傑作が、それを創作している人が、世の中には沢山存在している事実に私は本当に驚愕している。私もいずれああなりたい。誰からも称賛されるような存在に。素晴らしい。本当に素晴らしい。こんな素晴らしい世界に生まれついたことに私は心から感謝をしている。


「なあ、ここ本屋だから大きな声で話すのやめようぜ」


 私が漫画の単行本の表紙を見つめて話をしていると、隣にいる友が小さな声で私に耳打ちした。


「失敬失敬。騒がしくしてはいけないな」

「いや、わかればいいんだけどな……」


 友と私は今、喫茶店の近くの書店に来ていた。なぜ一緒に来ているのかって? それは、昼前の時間にいつも通り喫茶店で話をしていると、お互いの共通の趣味、漫画の話になり、二人で好きな漫画やおすすめを言い合っていて、その時に、私が買いたいと思っていた漫画が近所の書店に置かれているということを教えてもらったのだ。アニメ化もされていたが、その時には別の作品に興味を抱いていて、今さらながらにこの漫画が欲しくなった。


 しかし、大分時期がずれてしまったため、書店に置かれていなかった。古本屋でも見たが、一巻と二巻が無く、少し躊躇した。三巻から買って前半の内容を想像するのもいいが、諦めた。アニメを見るのもいいが、如何せん私は電子機器に疎く、サブスクというものを自分の力にしていない。妻は難なくこなすから、本当に見たい時は頼んでいる。ただ、何度説明されてもわからんものはわからなかった。


「ほら、あっただろ?」

「うむ。しかし、以前来た時は無かったのに、なぜ、こんな急に」

「結構時間空いたけどアニメの二期が放送されるからだと思うぞ」

「そうか。その情報は頭になかった。感謝する」


 友はいろんな事を知っているな。凄いな。私は友の顔をじっと見ていると「なんだよ」と一歩退いた。私は「すぐに買ってくる」と計九冊の漫画本を両手で持ってレジへと向かった。聞いてみるもんだな。手に入ってよかった。帰宅後が楽しみだ……、と思った時私は立ち止まって友を振り返る。友は私を見て首をかしげる。私は友の前にまで歩いて戻った。


「今も凄く楽しいな」

「お、おう。そうか……それは、よかった」


 私は言うとすぐにレジの列に並んだ。自分の番が来ると、ポケットから取り出した動物のキャラクターの描かれた折りたたみ財布を開き、ここの書店のポイントカードと一万円札をレジに置いた。おつりを財布の小銭ポケットにしまい、漫画の入った袋を受け取る。


「俺、こっちだから」


 店の外に出ると、友は右側を指さした。


「そうか、では、またな。ありがとう」


 私は袋を両手に抱えて、反対方向に歩を進めた。


 横断歩道で止まって、漫画本に視線を落とし、信号機で止まってはまた漫画本を見る。早く読みたくてうずうずしていた。自宅まで数分の距離だった。しかし、私は我慢ならず公園に入り滑り台の階段を上って、てっぺんに座って漫画を読んだ。


 晴れてる日は、外で漫画を読むに限る。


 今日も良い一日だ。

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