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二人の男  作者: 明家叶依
7/12

雨天

 傘を差して道路を歩いていると、大きな水たまりがあり、私はそれを大きくジャンプして、踏んだ。飛び越えずに踏んだ。なぜなら私は長靴を履いているからだ。ははは! 喫茶店に行くまでに多数の敵を倒してきてやったわ。さっきのあのでかい水たまりに比べたら、お前など全然屁でも無いわ。バシャバシャと何度かその場で足踏みをしたのち、満足をしたので歩き出した。


 喫茶店に入る前に、リュックサックから自前のタオルを取り出し、水や泥で濡れた長靴を拭き、濡れたタオルをビニール袋に入れてリュックサックの中に戻した。このためにリュックサックを持って来たのだ。店内を汚すわけにはいかないからな。少しの水滴も付いていないかを最後に確認し、傘立てに黄色い傘を置いて店内に入った。「お一人ですか?」と聞かれたから「待ち合わせだ」と言って喫煙席の方へと歩く。外から見えたが、今日は友がいて、胸が高鳴る。


 私は友の前の席に座り、リュックサックを横に置いた。持っていた別のタオルを取り出し、汗を拭いて、中に戻した。その間、友は何も言わずに私を見ていた。私は窓側に立てかけられたメニューを取り、今日は何を頼もうかと考えていた。朝食を先ほど済ませてきたばかりだから食べ物はいらないとして、飲み物は……少し甘い方がいいか。うむ、カフェモカにしよう。そう店員さんに告げ、メニューを戻し、提供された水で喉を潤した。


「当たり前のように座るんだな」


 本日の友の第一声だった。


 私は首をかしげて「待ち合わせの場所に来ただけだが?」と平然に言うと、「誰との待ち合わせだ。間違えてないか?」と返事が来たから「間違えてはいない」とまた私が返したら、友は少し言葉を溜めて言った。


「大間違いだろ⁉ いつ待ち合わせの約束したんだよ」

「友がここにいる時は大体私との待ち合わせだ」

「横暴すぎるだろ」

「むしろ、ならばなぜここに来ているんだ?」

「いや、それは……」


 友は持っていたスマートフォンを伏せて置き、視線を逸らした。下を向いたまま話す素振りがないので、私は頼んだ品が早くこないかなーと、店員さんのいる背中側のキッチンの方へと視線を向けて体を左右に揺らしていた。「ああ、早く来ないかなー」。私は待ち遠しかった。まだ、飲んだことの無い未開拓の世界に私は一歩踏み入れるのだー。


「とてつもなくマイペースだな」

「それが私の良いところだと妻にも言われたことがある」

「そうか……」


 届いたカフェモカの上にはクリーム? みたいな白いのが乗っていて、それがさっぱりした味わいでいい。私は一気に混ぜ合わせて、少しずつ飲む。友は私が来た時と同じようにスマホに視線を向けていた。たまに思い出したようにアイスコーヒーのストローを咥え、それ以外は特に変わりが無い。私は持っていたカップを置き、口元をペーパーで拭いてから「ところでな」と話し出すと、友は少しクスリと笑ってスマホを机の上に置き、私の顔を見ながら頬杖をついた。私はカフェモカへの感想をひたすら述べて、友はたまに口を挟みつつ話を聞いていた。


「うむ。まあ、結局のところ、美味いかよくわからんがな」

「時間返せよ」

「ははは!」


 友は呆れたように言ってから伸びをしてスマホを見て立ち上がった。用事があるのだと言って解散になった。少し早いが私も帰ることにした。すっかり雨は止んでいた。私はリュックサックの中から普段履いているランニングシューズを取り出して履き、長靴を入れた。これで身軽になった。


 先ほどは踏んでいた水たまりを、今度は勢いづけて飛び越えた。来る時は亀になったようにのそのそと歩き、帰る時には鶴になったように羽ばたき、いろんな水たまりを飛んだ。

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