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二人の男  作者: 明家叶依
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すれ違い…… 話し手の男視点

 朝七時に起床すると、リビングの方から朝食の匂いがしてきた。私は勢いをつけて起き上がり、タンスの中から青や緑、赤などの色が乱雑に描かれたカラフルなTシャツを着て、適当なジーンズ、白い靴下を履いた。カーテンを開くと、雲の切れ間から陽光が差している。小鳥のさえずりや、近所の犬の鳴き声なんかが聞こえてきた。世界が目を覚ました。朝になると活発に動き出すのだ。この世界は、規則正しい生活を心がけている。


「うむ。いい天気だ。今日は良いことがありそうだ」


 カーテンを閉じて頷き、リビングに行くと、妻が朝食にたまごサンドを作ってくれた。私はたまごサンドが大好きだ。それと熱い熱い緑茶が大好物だ。この二つがあれば、いつでも元気がみなぎってくる。今日は緑茶ではなく、紅茶だった。もちろん、紅茶も好きだ。


「おはよう。なあなあ、聞いてくれ。最近、仲のいい友人が出来てな、今日もその友人とカフェで待ち合わせしているんだよ。はっきりと言葉をいう人でな、そうだなあ、君にそっくりだ。君も学生時代から私の言葉をしっかりと聞き、親身になってくれた」


 私は机の上に置かれた新聞を手に取り、パラパラとめくる。そうか、今日は日曜日で、10時まではアニメやら特撮ヒーロードラマが立て続けにあるから、少し行くのが遅くなってしまうな……どうするべきか。しかし、連絡先は知らないからなあ。まあ、仕方がない、会った時に謝罪をすればいいか。テレビを見ることに負い目を感じる必要は無いのだ。しっかりと仕事をしていればそれでいい。


 妻はたまごサンドが乗った皿と紅茶をダイニングテーブルの上に並べた後、目の前に座った。ふむ……。たまごがぎっしりだ。私は360度色んな方向からたまごサンドを見た。近づけたり遠ざけたりした。そして、一口囓る。美味い。落ち着く味だ。私は何度も咀嚼し、飲み込んで、喉が渇いたら紅茶で潤した。


「そういえば、漫画は描かなくていいの?」

「今は思いつかないんだよー」

「そうなんだ」


 私は今、絶賛スランプ中だった。だから、とにかく人の気持ちをもっと知らないといけない。友には人の目を気にすると相談してしまったが、私はこう見えてあまり他人に頓着がない。人からの目線や、言葉をいちいち気にしてしまう主人公を書こうと思ってはいたけれど、自分にはその気持ちがわからない。だから探っていくしかなかったのだ。うーん。難しいなあ。皆、どんな悩みがあるんだろう。人の目を気にするだけが悩みではない。悩みというのは似たようなのがはびこっていても、当人同士で話してみたら多少のずれがあったりして、全てが同じというのでも無い。


「まあ、いっか。友に聞こう。朝食ありがとう。行ってくるよ」

「アニメはいいの?」

「外に行った方が色んな刺激があっていい。世間を知ることは大切なことなんだよ」


 私は靴紐を結びながら、今日はどんなことを話そうかな、と考えながら一人鼻歌を歌っていた。


 向かう途中、段々と嬉しくなり、気分よくスキップをした。途中大きく飛び跳ねたり、楽しくなってくるくる回ったりもした。ああ、本当に気持ちが良い空気だ。風が私をいつもの喫茶店に誘うように先導してくれる。私はただ、それに従って動くだけ。


 喫茶店の敷地内に入り、外から中の様子を確認すると、今日はまだ来ていないようだった。中に入っていつもの席に座り、今日はアイスコーヒーを頼んでみた。たまには冷たいのも良い。それから店内に流れるクラシックのBGMを聞いて時を過ごす。いつになったら来るだろうか。


 しかし、昼食の時間になっても、夕方になっても、男は現れなかった。


 最初に頼んだコーヒーはとっくに無くなり途中で頼んだ牛乳も既に飲み干していたが、いつまでもこの席に留まっていた。夕方のチャイムが鳴って私は立ち上がった。


「明日は多分来るだろう。よし、帰ろう」


 帰り道、明日、友に会えると思うとワクワクして、道中をスキップしながら自宅に向かった。

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