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二人の男  作者: 明家叶依
2/12

再び

 人にどう思われているかと考えてしまう、と以前話したが、私はどうしてか人の顔を見て話すことができないのだ。だから、いつも口元を見ている。そのせいか、たまに何を言おうとしているのかを先取りしてしまい、私が相手の言いたいことを先に口にすると、最初ポカンとした顔をされ、段々とその話を面倒くさがり、その話はなかったことにされる。私が言わなければよかったのだろうか。私が先に口にしたから、相手はもう気持ちよく話せないと思って、少し顔を歪めさせたのだろうか。私にはわからなかった。私が気を遣うべきだったのか。私はどうすればよかったのか。


「と、いうことなんだが。友よ。君はどう思う」

「勝手に友達呼ばわりするなよ」

「何を言う。以前一緒にコーヒーを交わした仲ではないか」

「コーヒー1回飲んだだけで友達認定するお前の発言がもう怖いよ。まず、俺に気遣え」


 この男と初めて会ってから四日ほど経ち、また、今日偶然ここの喫茶店で席が一緒になった。そして、今日も私の話し相手……いや、相談相手になってもらっていたのだ。私は彼のストレートな気持ちをそのまま言葉にするところが気に入って、自分の話を聞いてもらっている。今日も私が身振り手振りを交えながら話をしていると、男はアイスカフェラテを飲みながら頬杖を突いて聞いてくれていた。しかし、男は机に置いていたスマートフォンとタバコの箱を持って立ち上がろうとしたから私は「まてまて」と中腰になって止めた。まだ話は終わっていない。


「一体どこへ行く」

「帰るんだよ。知らんやつの相談に乗るほど余裕なんてない」

「それは困る。私の問題は解決していない」


 通路に出ようとする男を私は腕と足を広げて、身を挺して止めた。周りのお客さんや店員さんも私たちの動向を見ていた。男は慌てた声で「やめろやめろ。ここに来づらくなるだろ」と言ってまた座り直し、私も腰を下ろした。男は深く嘆息し、諦めたように、空になったグラスの溶け出した氷水をストローで吸い上げた。男は白いTシャツに水色の短パン、黄緑色のサンダルを履いていて、今、この店内で最も夏らしい格好をしている。


 だから私は「君はこの季節に存在するために生まれてきたのだな」と言ったら「他の季節の俺の存在価値全否定かよ。俺は冬派だ」と抑えめの声で返してきた。私は本題を思い出し、「ところで話は元に戻すが」と前置きをすると、「おっと。急だな。怖い。怖いよ」と私から距離をとるように壁にくっついた。


「人にどう思われているか気にするか?」


「うん? ああ、俺は全然気にしないね。何をそんなに気にする事があるんだ? 相手が何考えてたって、話してたってそんなの結局は別の人間の言った言葉でそんなのに自分の根底にある芯が左右されるなんておかしいだろ。俺は好きな服着るし、好きな食べ物を好きな時間に食べる。もういいか? 解決したろ。解決したな? したでいいよな」


 男はそう言うとそそくさと席を立ち、会計を済ませて喫茶店から出て行った。


「ふむ。気にしない人間もいるのか。これは新たな発見だ」


 私はポロシャツの胸ポケットからメモ帳を取り出して、メモした。


 うむ。実に有意義な時間だった。

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