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第6話 再会

 湊斗と詩羽が出会って2週間が経った。

 出会ったその日から、湊斗は詩羽に会えていない。


「いやぁ、歌った歌った…」

「本当、湊斗ってあの曲好きだよね〜」


 今日は珍しくバンド練習がない日で、湊斗と蓮はカラオケに来ていた。

 昔から好きなバンドや、持ってきたギターで弾き語りをする湊斗。

 それに合いの手をする蓮。たまに自分から歌うときもあって、詩羽のことを忘れているように見えた。


「次はゲームセンター行く?」

「あー、そうだな。久しぶりにレースゲームしたい」

「はいはい。湊斗ってあのゲームも結構上手いよね〜」


 カラオケを出て、湊斗はポッケに入れていたのど飴を舐め、蓮はスマホを見つめ、歩く。


 その時、蓮は「そういえば」と思い出すように湊斗に話しかける。


「あの子はどうしたの?」

「あの子?」

「ほら、前ボクに相談してきたじゃん。」


 湊斗は「あー」と、すっかり忘れていたことを少し残念に思ったが、それと同時に心配が出た。


「あいつは、なんかあの後から一回も見てない。」

「え?それ大丈夫なの?」


 蓮が言った「あの子」とは、詩羽のことだった。

 蓮自体も、湊斗に相談を受けて、心配に思っていたらしい。

「同じ学校の制服」と聞いていたこともあり、蓮一人で詩羽を探したのだが、詩羽らしき人は見つからなかった。

 そこから2週間がたったのだ。忘れるのも当然。

 でも蓮は、スマホでメモっていた詩羽の情報が不意にも目に入ってしまったのだ。


「実際、一回家で泊まらせただけだし、まぁ大事にはならないでしょ。」


 湊斗は下に目をやり、蓮にそう話した。


 その姿は、湊斗が詩羽を最初に見たときみたく、儚げな、そして少し寂しく、どこか悲しいような、そんな姿だった。


 蓮はそんな姿に何も言えずに、スマホを見つめた。



「湊斗ってあのレースゲーム、何円つぎ込んだんだっけ?」

「うーん、中学の頃は1年も経たずに2万円は到達してたかなぁ…いやもっとか?」

「えぇ…どんだけそのゲーム好きなの……」

「いっつも一人だったから人と対戦することはなかったんだけど、乱入対戦OKの人がいたから、勇気出してやってみたらめちゃくちゃ楽しくて、そっから結構やってるって感じ。」

「蓮とも結構やってるよね?」

「まぁやってるけどさ…」


 蓮は湊斗の反応を伺いながら、笑って湊斗と話した。

 湊斗もそれにわかったのか、笑って話す。



 その直後だった。


「なぁ、いつもみたいに金持ってねぇの?」

「も、持ってません…!」


 耳に飛び込んできたのは、楽しげな会話とは正反対の、押し殺した声だった。


「は?チッ、使えねぇなぁ…」

「なぁアニキ。こいつ、また誤魔化してんじゃねぇの?」


 アニキと呼ばれた男が、女性の肩を強く突き飛ばす。

 ドンッ、と地面に尻もちをついた女性は、立ち上がろうとしながらも声を失っていた。


「んまぁ、どーせこいつが金持ってねぇのはわかってるけどよぉ…」



「ほら、カバンの中、全部出せ!」


 男たちはニヤつきながら彼女のバッグを乱暴に奪い、中身を一つずつ地面にぶちまけていく。

 後ろでは、その光景を面白そうに眺める男が一人、そしてスマホを構え、動画を撮っている男が一人。



 そんな光景を、湊斗と蓮は見てしまったのだ。


 幸い、それは路地裏の奥だったため、男たちは湊斗たちに気づいていない。



「チッ…なんだよ、本当に持ってねぇじゃん」


 男は財布らしきものを見つけ、その中身を漁るがそこから出てきたのは、なけなしの500円玉のみ。


 女性は男に500円玉が渡ったことで取り返そうと思ったのか、手を使ってずるずると近づく。


「わ…私のお金……」

「おいおいなんだなんだ?」


 腰が引けて足が動かないのだろう。

 その光景を見ていた連中は、笑いながら反応を取るが、その女性だけは真剣だった。


「…か、返して……」

「は?返す?」


 男は腹を抱えて笑いながら、500円玉を女性の前にちらつかせる。


「これが欲しいのか?」

「…」


「だったら、あげてやるよ!」


 男はそう言い、500円玉を上に投げた。


「ほら、取ってみろ!」


 男はそういうが、500円玉が落ちてくるところは、女性の目の前だった。

 女性は、腰が引けて足が使えないこともあり、手で一生懸命、その着地地点に行こうとした。



 だが、女性が上を見て着地地点を見計らっていた時に、突然手が目の前に現れた。


 男がその500円玉をキャッチしたのだ。



 その瞬間、連中は腹を抱えて笑いだす。


「あっはははは!!!おもしれー!!」

「本当にあげるとでも思ったのかよ!!!あっはははは!!!」



 後ろにいた連中はそう笑うが、女性を襲った男はまだ物足りないと女性に近づく。


「一回奪おうと思って襲ったが、頑なに嫌がるからできなかったけどよぉ…」


「今回は3人だぜ!?」


 男は両手を横に出し、連中たちを紹介するように大きな声で発した。

 連中たちも、男もドッと笑いだし、「よっ!アニキー!」という声が飛び交う。


「俺が抑えるから、やっちゃってくださいよー!」

「おうおう!任せとけ!!!」


 連中は手と足を押さえつけ、男はゆっくりと女性に近づく。


 女性は「やめて!!」と大きな声で叫ぶが、口も連中たちに塞がれてしまった。

 男が女性に近づき、服を一枚一枚脱がせていく。


「やっぱ金ねぇなら、体で払ってもらわねぇと!」


 女性は耐えられず、目を閉じた。


(お願い…助けて……!)



「お巡りさん!こっちです!こっちで女性が…!」

「おい!何やってるんだ!止めろ!!!」


 女性が助けを求めた瞬間、大きな声が響いた。



 湊斗たちだ。



「チッ…サツかよ……」

「おい!逃げるぞ!」


 その大きな声に恐縮したのか、男たちは急いで立ち上がり、走ってその場を離れた。

 その男たちに追いかけるように、湊斗は走り出す。



 だが、湊斗は女性のところで止まった。


「ふぅ…もうこれでいいだろ。」

「いやぁ、湊斗、演技も上手いとは…」

「だろ?」


 湊斗と蓮は笑いながら話し始める。

 その姿に、女性はきょとんとする。


「あぁ、ごめんなさい。俺ら……っ!」


 湊斗は、女性を見た瞬間に赤面をするが、自分の上着を女性にかけた。


 女性もそれに気づいたのか、赤面をし、顔を隠す。


「だっ、大丈夫です!俺ら、何も見てないんで…!」

「本当、本当です!!嘘じゃないから…!」


 蓮も赤面になり、顔を隠しながらそう言い訳を並べる。



 女性は、まだ肩を震わせたまま、二人をじっと見つめていた。

 さっきまで赤面だったその目に、わずかに涙が浮かんでいる。


「……っ」


 言葉にならない声を押し殺しながら、女性は湊斗の上着をぎゅっと握りしめる。

 その手の震えが、恐怖と安堵の入り混じったものだと、湊斗にははっきり伝わった。


「……ありがとう」


 か細く、それでも確かに届いた声。

 湊斗の胸にじんわりと広がっていく。



 湊斗は、その女性に手を貸し、立たせてあげた。


「あれ実は、演技なんですよ」

「警察が来てると嘘を並べて、”湊斗”が警察のフリをしたんですよ」


 湊斗と蓮が笑いながらそう女性に伝える。

 その瞬間、女性は「え?」と驚いたように声をあげる。


「湊、斗?」

ごめんなさい。前よりも結構投稿が遅れてしまいました。

お盆休みなので、ちょっと母親の実家へ行っておりました。

夏休みもあとちょっとなので、気合を入れて頑張っていきます!


と言っている俺ですが、少々体調が優れない状況にあります(笑)

ですが、体調が本当に悪くならない限り、本気で書きたいと思っておりますので、ご安心してください。

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