表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第1話 少女を拾った

温かい目で読んでくださると嬉しいです。

 高城湊斗(たかしろみなと)。高校2年生。

 部活は軽音楽部に入っていたが、バンドメンバーが見つかった瞬間、すぐに辞めた。

 冷たいわけじゃない。ただ、夢に対して本気だっただけだ。


「音楽で食べていく」――それが、湊斗の揺るがない目標だった。

 だからこそ、部活という“枠”の中で終わらせるつもりはなかった。

 時間に縛られて、限られたステージで満足してしまうことが、怖かったのだ。


 勿論、最初から部活を馬鹿にしていたわけではない。

 真剣に向き合って、最後に一緒に走った仲間に「これからも、続けないか?」と声をかける未来も想像していた。

 けれど、思ったより早く、思い描いていた未来よりもずっと先に、仲間が集まってしまった。


 でも後悔はしていない。

「大人になってもバンドを続けたい」ということをバンドメンバーに伝えたら、ラフな感じでOKをくれた。

 こうやってゆったりバンドを続けて、でもたまには本気でやって、楽しんで、そういうバンドを湊斗は目指している。


 そんなこんなで、湊斗のバンドは学校祭に向けて日々努力している。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 湊斗はバンド練習が終わり、家に帰っていた。

 さっきまで明るかったのとは全然違い、住宅一つ一つが光を放っていた。

 帰る途中に、少し大きい公園がある。

 湊斗はいつもここで、好きな缶コーラを購入し、飲みながら帰っていたのだが、今日は違う。


 今日はその公園のベンチに、少女が座っていたのだ。

 普通だったらスルーしている。だけど、遠くからよく見てみると、湊斗と同じ高校の制服だった。


(俺と同じ制服…)


 湊斗はそれを察し、そのベンチへと足を運んだ。


「なに…やってるんだ?」


 沈黙。

 前髪で目が隠れているからどこを見ているかわからない。

 そして夜ということもあり、顔もあまり見えない。

 だけど、その少女は悲しい思いをしていることだけはわかった。


 腰まで長い、黒に近い藍色の髪。

 手入れしていないのだろうか?あまりにもボサボサだ。


(流石にここで置いていくわけにもいかないしなぁ…)


 湊斗は自動販売機まで足を運び、缶コーラを2本購入した。

 その1本を少女の横に置き、ベンチに倒れこむように座った。


「俺も一緒にいていいか?」


 本当はいたいわけじゃない。ただ単に少女をこんな時間に外に置いていけないと思っただけ。

 でもその行動を否定されたらすぐ帰るつもりだった。

 湊斗自身もバンド練習で疲れきっていて、早くも休みたかったからだ。


 でもその少女は、湊斗の言った言葉をバレーのスパイクみたいに無言で弾き返した。


(俺も疲れてるし、こいつも無言だから、帰るか…)


 そう湊斗は思い、ベンチを立とうとしたら少女が口を開いた。


「――私、家を追い出されたの。」


 湊斗は「結局話すんかい」と脳内で突っ込みを入れ、ベンチに座りなおした。

 歩きながら飲もうとした缶コーラを湊斗は開け、その少女の話を聞きながら飲んだ。


「なんで追い出されたんだ?」


「…わからない。」


 少女も、湊斗がくれた缶コーラを開けて、その小さい口で飲み始めた。

 湊斗は「ふーん」と相槌を打ち、缶コーラを飲み続けた。

 それで、ふと疑問に思ったことをその少女に聞いてみた。


「今日はどうするんだ?」


 少女は缶コーラを飲むのを一回止め、ベンチの背もたれにぐったりと身を預けた。

 そして少し沈黙し、少女が言った。


「…わからない。」


(いや少し黙ったからなんか手でもあるのかと思ったじゃん。)


 湊斗は、少女が缶コーラを飲むのを一回止めるのとは裏腹に、缶コーラを飲み干した。

 そしてベンチから立ち上がり、自動販売機の横にあるごみ箱に缶を入れた。


「――なら…」


 ごみ箱に入れて、ふっと振り返り、その少女に手をやった。

 その瞬間、少し強い風が湊斗に降り注ぐ。


「…俺の家に来るか?」


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 湊斗はバンド練習が続いた影響で疲れていたこともあり、この状況を早く抜けて、休みたかったのだろう。


 でも本当は助けたかっただけなのかもしれない。

 明日も学校がある。公園の硬いベンチで寝泊りして、お風呂にも入らず、ご飯も食べず、ただ一人寂しく朝を待つなら、親に「あーだこーだ」言われるよりも家で寝泊りしたほうがまだマシだ。と湊斗は思ったのだろう。


 そんな訳で、湊斗は自分の家に少女を連れ込んだ。



 湊斗は靴を脱ぎ、「ただいまー」と大きな声で叫んだ。

 その瞬間、エプロンをした母、萌花(もえか)がキッチンから顔をひょこんと出した。


「あっ…あらまぁ……」


 萌花は少女を見て、口元を押さえ、にやりと笑みを浮かべる。


「…湊斗?その子はだーれ?」


 なぜか語尾にハートが付くような喋り方で湊斗に話しかける。


「あぁこいつ?こいつは…」


 湊斗がそう説明すると、萌花は「お父さんー!!!湊斗が彼女を連れてきたわよ!」と大きな声でリビングに叫びながら走っていった。

 湊斗は「はぁ」とため息をつき、リビングへ向かった。

どうも作者の水原唯翔と申します。

完結まで書いて投稿しようと思ったのですが、投稿を早くしたくて笑

今夏休みなので、終わるまでには完結まで書こうと思います。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ