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第三話 開かずの間

※こちらの作品は、演出のため一部フィクションを混ぜています。

ですが、根本的には実話ですのでご安心下さい。

どこがフィクションなのか、推測しながら読んでみて下さい。

天井にはご注意ください。


【開かずの間】・・・特別な事情により閉ざされている部屋。開けられている事を禁じられている部屋を指す。


この学校の開かずの間は、先生達の休憩室。

しかし、心霊現象によって今は施錠されている。

開かずの間の入口は引き戸になっており、南京錠を掛ける輪が固定されている。そこまでの間には通路がある。左手には洗面台と鏡が、右手には和式トイレが二つ分ある。見るからにボロボロで床や壁のタイルの隙間には黒カビが敷き詰められている。

異臭に包まれた空間をキャプテンは気にせず、ゆっくりと中へ入って行く。

正確には、キャプテンの中にいる何かが…。


「…キャプテン、一旦落ち着こう。」

僕はキャプテンの肩を掴んだ。先程の声を思い出すだけで何かがおかしいのは明白だ。現に坂本君は恐怖で身動きが取れなくなっている。それだけキャプテンではない何かがキャプテンに取り憑いてしまったのかもしれない。

「…あれ…いや、うん。大丈夫。てか…何でこんな中に入ってんだ?」

キャプテンの意識が戻り、坂本君も安堵の表情を見せた。

「良かったぁ…。」

今にも座り込みたくなるほど腰が抜けそうだった。

ホッとしたのも束の間、僕は何か小さな音聞こえた気がした。キャプテンと坂本君に「シッ!」と鼻に人差し指を立てて伝えた。


『ドン…ドン…ドンドンドンドンドン…タタッ…』


開かずの間の中から何かが走り回る音が聴こえた。それはまるで子供が走っているかのような。

その音は徐々に聞こえなくなっていった。

「…この部屋には…やっぱり何かいるのかもしれない。」

「…おい…あれ…。」

今度はキャプテンが青ざめた表情で開かずの間を指差す。

よく見ると南京錠は外れており、引き戸の扉が少し空いていた。南京錠の部分から少し下を見た時だった。


「…あ…あ…。」

そこには大きく見開いた目でこちらを覗く女の子が立っていた。よく見ると前髪が長く、片目だけでこちらを覗き込んでいた。口角は上がっており、驚く僕達を見て楽しんでいるように見えた。

僕達が此処へ逃げて来た事、キャプテンの取り憑かれたような低い声。僕達は踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れてしまったのかもしれない。

僕達は悲鳴を上げてその場から逃げ出した。


廊下を走っていると担任に声を掛けられた。

「おいおいおいおいっ!走るな走るな!」

「せ、せ、先生っ!」

いつもは嫌な担任の顔もこの時は凄く安心させられた。

キャプテンが怯えながら先生に駆け寄る。

「せ、先生っ!きゅ、休憩室に女の子が!真っ黒な女の子が!」

「真っ黒な女の子?何言ってんだ?」

キャプテンの訴えが可笑しいあまり、先生は離れた僕や坂本君を見つめる。

僕や坂本君は先生に近付き、事の経緯を伝えた。


「…なるほどな。俺に霊感は無いし見た事も無いが、あの休憩室は出るって有名だからな。今じゃ誰も入らないし、近寄りもしない。もうあそこには近付くんじゃない。ほらっ分かったら帰れ。」


僕達は先生に見送られながらと、モヤモヤする感情を抱えて学校を出た。



『 ガラガラガラッ 』

「…何で鍵空いてんだ?あいつらだな?」

教え子の悪ガキ三人を見送った後、念の為と思い俺は休憩室を見に来た。施錠されている鍵が空いている為、教え子三人が壊したのだと思った。

俺自身この休憩室に入った事は無かった。中は至って普通の和室だが、使われてないせいか畳や押し入れの壁紙は傷んでいる。煙草を吸っていたのか壁は黄ばんでいた。そして今の時代には珍しいちゃぶ台が中心には置かれている。

「…まあ休むには良いかもしれないな。にしてもカビ臭いな。」

窓を開けようとするも固く閉ざされているのか全く動かなかった。

すると…


『バンッ!』


驚いて突発的に振り返ると、開いていたはずの引き戸が突然ひとりでに閉まったようだ。

急いで引き戸に手を掛けるもビクともしなかった。

「…ははっ…マジかよ。」

お決まりの展開に俺は笑う事しか出来なかった。

そして、先程まで何も感じなかった空間が一気に冷たくなったように感じた。

荒くなる呼吸の中、ちゃぶ台の奥辺りに何者かの気配さえも感じた。

恐る恐る振り返るも当然そこには誰もいない。


「…こういう時って…大体上にいるって言うんだよな。」

見たくはないがふと上を見上げた。


そこには、刃物を持った髪の長い女が天井にベッタリ張り付いてこちらを凝視していた。

あまりの恐怖に身動きが取れず、俺は見上げたまま悲鳴をあげた。



その後、先生は廊下に倒れていたところを校長先生により発見された。先生は白目を向いた状態で気を失っており、そのまま救急搬送された。命に別状は無かったものの、先生は精神的恐怖を植え付けられた。今だに天井を見て寝る事は出来ないらしい。

これらは退院後、先生に直接聞いた話。

この話を聞いたのは、先生が救急搬送されて一週間後。

そしてそこから更に三日後、僕は再びあの部屋へ訪れた。


次回もお楽しみに。

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