第一話 始まりの戦慄
※本作品は実話を元に執筆した作品です。万が一、あなたの周りで心霊現象等があっても一切責任は負えません。自己責任でご愛読お願いします。
尚、私の恐怖体験を聞いた友人は暫く魘されたり、似たような体験をしたと言っていました(当然嘘の可能性もあります)。
しかし、聞いた人は二度と聞きたくないと言います。それほどの心霊体験とだけここに書き留めておきます。
又、地名や建物名、人物名等は偽名を使用しています。
注意書きはしていますが、多くの方に読んで頂けると幸いです。
私の恐怖を皆様にお裾分け致します。
「さぁこぉぉぉぉぉいぃっ!!!」
カキーーーンッ!
夕方十七時頃、もうじき陽が落ちるにも関わらず白球を打った後の金属音が響き渡る。
大きく掛け声をした少年は白球に食らいつくも、後ろにボールを逸らしてしまう。
「おいおいおいっ!取れたぞぉ今のぉー!」
監督の五月蝿い声は遠くからでもガンガン響く。
確かにまだボールも見える明るさだが、打球の強さは小学生向きでは無かった。
こうして順番に鬼の守備ノックを受けた後、ランニングをして練習を終えるのだが…
この日はいつもと違った。
サード、ショート、セカンドと守備ノックが終わると、次はファーストを守る自分だった。
「さぁ次ッ!ファーストッ!」
「こぉぉぉぉいっ!」
僕は怒られる事が嫌いだ。だれでもそうかもしれないが、そこら辺のヤンチャ小僧とは少し違う。その為、いつものように目を付けられない程度に掛け声をするのだ。そして、監督がボールを打つ姿をパッと見た時だった。
視覚の右側に何か赤い人影がいるように見えたのだ。
しかし、この時は守備に集中していた為、しっかりは見えなかった。
僕は守備ノックを難無くこなし、後列の部員と変わった。
再度監督の方向を見るも、そこには監督と捕手以外誰も居なかった。
監督の後ろにはフェンスがあり、そのすぐ後ろには学校の小さな物置部屋がある。その右側に砂利道が続き、その先に倉庫や体育館に繋がっている。古い学校の為、少し特殊な構造をしているのだが…。
二週目の守備ノックが始まり、再び自分の番が来る。
「さぁ!ファーストッ!」
「こぉぉぉぉいっ!」
この時、僕はふと右側を凝視した。
砂利道の所に赤いレインコートを着た子供が立っているのだ。
その子供の顔は長い髪で目だけ隠されており、口元は笑っているように見えた。
少し距離もあり、錯覚かもしれない。
たった一瞬見ただけなのに、既にその不気味な表情を忘れられずにいた。
そんな事を考え守備をこなした。
受けたボールをキャッチし、そのボールはバケツに入れた。
そして、再び砂利道の方向を見た。
赤いレインコートの子は消えていた。
多少の距離はあっても歩けば砂利の音が聞こえる距離ではあった。しかし、この時は聞こえなかった。
ふと隣にいたキャプテンに話を聞いてみる事にした。
「ねぇ、さっきあそこに女の子いなかった?」
「あぁいたいた!」
なんとキャプテンも同じ子を見ていたと言うのだ。
「赤いレインコートの…」
「そうそう!」
正直この時点でキャプテンの訴えは信用出来なくなった。先程から相槌ばかりで特徴を答えなかった。やむを得ず、練習後に母親に話してみる事にした。
「お前見えないもの見ちゃったんじゃないの?」
母親の言葉により、考えたくない事実を叩き付けられた。
「やっぱりそうなのかなぁ。」
話しているとチームメイトの木野君と木野君のお母さんが近付いてきた。
「ちょっと木野さん!圭太、等々見えちゃったんだって!」
「何さ、お化けかい!?」
人が真剣に悩んでいるにも関わらず、母親達は何でも話題にしたがると改めて感じた。
「ウチのも少し見えるらしいんだわ。」
「え!?椎也も!?」
「子供とか動物には見えるって言うからね。」
「そういえばよく聞きますよね…。」
母親同士の会話が始まり、僕は椎也と目を合わせる。
「どんなんだったの?」
椎也はニヤニヤしながら聞いてきた。
「赤いレインコート着てて…おかっぱ頭だけど、目は隠れてて…めっちゃ笑ってた。」
「怖えぇぇぇぇぇぇッ!今日は足元に注意しなきゃ、ホラー映画みたいに潜ってくるかもよぉぉっ!」
「やめろよぉ…。」
椎也は僕を揶揄うばかりで、真剣に話を聞いてくれる様子は無かった。
「…でも圭太、一応注意しなさいよ?」
椎也のお母さんから警告を受け、僕は母親と帰宅するため車へ向かった。
車に揺られながら無言でいると、赤いレインコートの子を思い出してしまう。
結局その日は何をするにしても恐怖が襲ってきた。
トイレに入る時も、お風呂に入る時も、布団に入る時も、いつでも脳裏には赤いレインコートの子が付き纏っていた。
天井の模様が顔に見えたり、タンスの隙間が気になったりもした。ふと椎也に言われた事を思い出したりと様々な恐怖が襲い掛かる。
耐え切れず顔や足を布団で覆い隠し、体温が上がり汗をかく。
「風呂に入った意味無いじゃん…」等関係ない事を考えている内に僕は眠りに付いた。
次回もお楽しみに。