夕日新聞社説
――新聞!
読んで字のごとく、新しい情報を知ることができる報道紙のことである。
おいおい、だったら新聞じゃなくて新読とすべきじゃないかい、ジョニー?
HAHAHAHAHA!
……実際、この名称に関しては、子供の頃から不思議に思っていものだ。
気になったので、実際に夕日新聞社の社長に聞いてみたりもしたが、なんでも、大昔に存在した随筆書が『新聞』と名付けられていたので、そこから取ったのだとか。
となると、昔の偉い人が「素直に新読というのは語呂がいまいちだな……ちょっと捻ろう!」と考えた結果、我々はかの報道紙を新聞と呼ぶことになったのだろう。
そう考えると、先人のなかなかしょうもないこだわりが後世にまで影響を及ぼしているということになるが、世の中というものは、そういった物事が積み重なって出来ているに違いない。
ともかく、重要なのは、このやっすい紙切れに記事として書かれているのが、世で起こった最新かつ注目すべき出来事であるということ……。
そして、今最も紙面を熱くしているのが、わたしに関する報道であるということだ。
例として、夕日新聞いわく……。
--
『【社説】姫宮の渡航は軽率なり』
『皇子殿下との婚約破棄、および関税増の事態を招いた責任は如何に』
先日、トラメリア帝国首都にて執り行われた新人型蒸気の発表会は、わが国が世界市場における技術力を誇示するまたとない機会にして、外交上も重要なる節目と位置づけられていた。
されども、かの場においてわが国の姫宮ミヤビ殿下が自ら機体に搭乗し、過度に演出的・扇情的な姿勢をもって出席したことは、一部において品位を欠く振る舞いと見なされ、皇室の尊厳を損ねるものなりとする論も無視できぬものとなりつつある。
--
『設計顧問、外交官、そして姫――三足の草鞋の是非』
ミヤビ殿下がその類まれなる才知をもって蒸気機関設計に従事されていることは、誠に誇らしきことである。
しかしながら、王家のご息女が企業顧問としての顔を持ちつつ、外交の前線に立ち、かつ人型蒸気に搭乗して市民の歓呼を浴びるその姿が、諸外国において“誇り”としてのみ映ったか否か、我らは今一度、冷静なる検証を要するものと信ずる。
とりわけ、今回の婚約破棄と関税増加は、まさしく姫宮の一連の出過ぎた立場と行動が、トラメリア国内保守派を刺激した結果であるとの説も根強く、国内でも物資高騰を不安視する声があがっている。
--
『技術は誇り、されど謙抑こそ真の気品なり』
マグニシ王国が世界に冠たる技術大国としての地歩を固めつつあることは、国民皆の誇りである。
しかしながら、外交の舞台においては、単なる性能の誇示ではなく、礼節・節度・信義の重みこそ、真に信頼される国家の条件であろう。
王女殿下には、技術者としての才覚と熱意を讃えると同時に、王族としての慎みと賢慮をもって今後の振る舞いをお慎み頂きたく、紙上をもって進言する次第である。
--
「一体、どこ王国の報道機関なんじゃお前らはぁっ!」
――スパアン!
マグニシ城の自室で朝刊を読み終えたわたしは、そう叫びながら床に新聞を叩きつけた。
しかも……しかもである。
「夕日新聞だけじゃない……。
連日新聞、マグニシ新聞、売り読み新聞……。
五代全国紙のうち、わたしに同情的な書き方をしているのは王国経済新聞だけじゃない!
なんで経済新聞が一番親王族的な視点に立ってるのよ!」
――バン! バン! バン!
西洋式の生活に慣れるべく、無理言って畳張りから板敷きに改装した室内で、床へ叩きつけたクソ新聞紙どもにストンピングの嵐を見舞う。
「くぬ! くぬ! くぬ!
やはり、メディアを大衆などに任せていては、ロクな結果にならないということか!」
独裁的権力による報道検閲!
その有用性と必要性を、あらためて噛み締めたマグニシ·ミヤビ16歳初夏の出来事であった。
--
※大正時代風の新聞記事部分は、AIに書かせて一部手直ししました。
ありがとよ、イー◯ン……!